始まる異世界生活
転生して三ヶ月が経過した。ある程度、会話などで把握したが、どうやら俺の父は貴族らしい。ただ、田舎の地方領主のうようだ。
田舎と言っても、人口は五、六千人はいる様だ。何故分かるかって? それは、俺の魔法で調べたからだ。
俺が貰った特別な魔法! レギオンと言う魔法。ローマの兵団を意味する言葉だっけ? それか聖書の亡霊の奴か? まあいい、兎に角その魔法で、魔法兵を作成した訳だ。
作成、召喚した魔法兵は・・・・何か弱そうだった。
えーと、兵士見習い? えっ? ちゃんとした兵士じゃ無いんかい。レベル1? 魔法兵にもレベルがあるのか。と言う事は強く出来るって事だな。
みんなが寝静まった頃に、魔法兵を召喚。そして、研究を重ねた。その一つとして、一度作成した魔法兵は使い回しの様で、召喚と言う事になるらしい。他にも活動時間はとか、強さはとかも研究した。後、一番気になったのは、魔法兵がやられたら、どうなるの? かだった。倒された場合、魔法兵を召喚した俺に、影響があるのか無いのかは、非常に重要な事だった。
結果、分かった事は、活動時間は一時間程。これは俺の魔力量によるものだ。強さは普通の成人男性くらいで、一番気になっていた、倒された場合については、これと言って影響は無かった。作成し直す事になるだけ、ただ、それが逆に怖いけどね。
分かった事はそれだけでは無い。特に驚かされたのは、それをまるで自分が動いている様に、操る事が出来ると言う点だ。憑依と言ってもいいかも知れない。
それを使えば、俺はベッドに寝ていながら、経験値が稼げる。深夜に魔法兵を召喚し、憑依して操り森に行く。そして、森の魔物と闘って経験値を稼ぎまくる。
まあ、最初は上手くいかなかったけど。まあ、何事もトライアンドエラーってやつ?
そんなこんなで、夜の森でレベル上げを頑張った。その結果、生後三ヶ月にしてレベル7に達した。しかも、レベルが上がった事で、魔法兵のレベルも5に上がった。それにより、召喚出来る数が1体から5体に増えた。これはかなり大きい。
一人では対処しきれ無い事が、五人なら色々割り当てられる。それに、俺が直接操作出来るのは一人だが、残りの四人は自動で動く。俺が出し指示に従って動いてくれる。
そっから二ヶ月、さらにレベルは上がって、レベルは12
なった。それに伴って、魔法兵のレベルも上がり、見習いから5等兵になった。さらに、剣だけだった武器が、槍と弓が追加された。
攻撃の幅が広がるのは、戦略上とてもいい。だが、問題もある。それは何かと言うと、あまり兵が多くなると、バレる可能性が高まる。暫くは、二、三人編成の、小規模で運用するしかない。
そうそう、もう一つ貰った魔法だが・・・・取り敢えず、魔力変換錬金生成を使って、何か生み出そうとしたが・・・・どうやら、触った事がある物じゃないと駄目なようだ。
と言う事で、夜中に魔法兵に抱っこしてもらい。部屋にある物をいくつか触った。その結果、石壁を触って石を生成。鉄釘を触って鉄を生成出来た。まだ、豆粒くらいの大きさだけど。まあ、レベルを上げていけば、もっと作れるようになるよな多分。
異世界に転生してから、早くも五年が経過した。
最近は、世界情勢の情報が入り始め、分かった事がある。
この世界、日本で言う所の戦国時代ど真ん中なのだ。
「地球の神、何て所で転生させてるんだ」
今の所、この田舎まで戦火は届いていないが、大陸のあちこちで戦争は起きてるらしい。まったく、嫌なもんだ。戦争何て本当にアホらしい。
しかし、いつ巻き込まれてもおかしくない。だから、勉強に剣の稽古に励んでいる。
「ふん、ふん、ふん!」
「いいぞ、ジーク」
「はい! 父さん!」
あっ、言い忘れてたけど、ジークは俺の名前だ。正確には、ジークスヴェルトが名前。ジークは、親族や仲のいい友人知人から呼ばれる時の愛称だ。
ジークスヴェルト・フォン・ナインテイル・バルクルート。
これが俺の名前。フォンは貴族のみが名乗れるもので、ナインテイルは住んでる地名を表している。領地があるのがナインテイル地方だから、フォン・ナインテイル・バルクルートは、ナインテイル地方の、バルクルートと言う名の貴族と言う意味だ。
「ふん、ふん、ふん! ふうー」
「よし、今日はここまでにしよう。遊びに行ってもいいぞ」
「はーい」
「そうだ、護衛にオットーを連れてけよ!」
「はーい」
「大変だね。子供の護衛何て」
「そう思うのであれば、少しはお控え下さい若様」
「無理」
「ハァー」
深い溜め息をついたのが、護衛を頼んだオットーだ。年齢は15才。だけど、見た目より老けて見える。たまに、中年のおっさんかと思う時がある。
さて、今日もやりますか。屋敷を出て、やって来たこの場所は! 現在開拓中の森。と言っても、俺が勝手に開拓している。
「さてと・・・・魔法発動! レギオン!」
ズラーっと、百体の魔法兵が現れる。レベルが上がった現在では、最大で三百体上召喚可能だ。
「相変わらず、凄い魔法ですね・・・・」
オットーはこの魔法の事は知っている。勿論父上もだ。
この事を話した時、はいぃ? と言った顔をされたが、今では問題無く受け入れられてる。
「ゴホン、では! A小隊は木の切り出し! B小隊は、切り出した木材を運べ! C小隊は地面に残った木の根っこ掘りを! D小隊は畑作り開始!
命令を出すと、命令の内容に沿って、テキパキとこなしていく。逆らう事は絶対に無い、最強の軍隊だ。・・・・農作業させてるけどね。
体を動かすだけで、魔法兵の経験値にはなる。だったらと、太公望式を実行した訳だ。太公望式とは、兵農一体の事だ。戦が無い時は、畑を耕させ、いざとなったら兵士となる方式。・・・・だったと思う。まあ、そんな感じで、魔獣や魔物と戦わない時は、こうやって畑を耕しているのだ。
「おーい! ジークー!」
「ん? あっ、カルだ」
「・・・・また、凄い事してんな」
やって来たのはカル。カル・オデール。父上の家臣の子供で、俺の友達だ。
「カル! また、若様を呼び捨てに!」
「いいよオットー。俺がそう呼んでって頼んだんだから」
「ハァー・・まったく若様は。カル! 皆の前ではちゃんとしろよ」
「分かってるって!」
「他のみんなは?」
「その内来るんじゃないか?」
「そうだな。さて、やりますか?」
「ふっふっふ、今日こそ勝つ!」
互いにポケットからとある物を取り出した。それは・・・・ベーゴマだ。俺が錬金魔法で作った物だ。
高さ六十センチ、幅四十センチの丸太を台にする。その上に互いのベーゴマを投げあった。
「おーし、行けー! ジークのコマをぶっ飛ばせ!」
「ふっふっふ、それはどうかな」
バチッ、バチッ、とぶつかり合う鉄のコマ。カルのコマが最初は押していたが、最後は『バチッ』「あぁー!」カルのコマを弾き飛ばした。
「クソー! また負けた」
「ふっふっふ! まだまだだなカル!」
「前々から思ってましたが、ソレそんなに面白いですか?」
「オットーの兄ちゃん、おくれてるぅー」
「結構人気何だけどなベーゴマ。父さんもやり始めたし」
「えぇっ! 領主様がですか?」
「うん、だから最近しつこくって、新しいのを作れって」
「オットーの兄ちゃん。流行には敏感にならないと、置いてかれるぜ」
「お、俺も始めます。教えて下さい! 若様!」
「別にいいよ。えーとねここをこうして」「ふむふむ」
「そんで、紐をこう巻いてこんな風に投げる!」
「おおっ、回ってます」
「と、まあこんな感じかな。ん? あっ、皆んな来た」
「「「「おーい」」」」
複数の男女子供が駆けて来るのが見えた。どうやら、友達がやっ来たようだ。
後からやって来た友達と、夕方までベーゴマで遊んだ。
のちに、このベーゴマが、王侯貴族の男子の間で嗜みの一つなる事を、ジークスヴェルトはまだ知らない。
「だから! そうじゃなくてこうだって!」
「オットーの兄ちゃんって、不器用だな」
「ぐっ、こうですか?」
「だ・か・ら! こうだって!」
因みに、オットーがベーゴマを回せるようになるのに、二週間を要する事となる。
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