風呂は命の洗濯
「ジークスヴェルト、城についてだが・・・・」
「あなた、後にしてください。ジークちゃんは着いたばかりなのよ」
「あぁ、すまん」
「大丈夫だよおばあちゃん! 実は既に考えてあるんだ!」
「ほう、そうか! それでどんな城だ!」
「山城風にしようかなって!」
「山城?」
「ジークスヴェルト、山城風とは何だ?」
「えーとね、山の特徴を活かして、城を建てる事だよ叔父さん」
「「山の特徴? 単に山に城を建てるのとは違うのか?」」
親子でハモリながら聞いてくるお爺ちゃんと、叔父さん。
小高い山に、城を立てる事はこの世界でも普通にある。だが、山全体を要塞化した城はこの世界に無い。日本のような山城は、この世界、いや、この大陸では珍しい物だろう。
「うん、山の地形を活かした城だよ。守りやすく、攻めにくい城にしようかと思ってる」
「ほう、成る程のう」
「守りやすくて攻めにくいか・・・・ここ、北の地にはいいかもしれんな」
「グスタフ様、ダスティン様! 若様に任せおけば、クラメルの守りは万全となりましょう!」
「うむ、ジークスヴェルトの城を見たが・・・・凄かったからなぁ〜」
「そんなにですか? 見て無い俺としては何とも言えませんが・・・・ふむ」
「そりゃ、凄いぞぉ! 出来るなら、わしが住みたいくらいだ! わぁーーはっはっはっは!」
「ほら貴方達! 屋敷に行きますよ!」
「「「「はーい」」」」
もう、日が沈み始めたので、今日は出歩けなかった。夜はダスティン叔父さんの屋敷で、歓待され豪華なディナーになったのだが・・・・。
「このポテト? 美味しいわね。バターと合うわ」
「うむ、この油で揚げたポテトも美味しいぞ!」
「うちでも育ててみようか?」
「いいですわねあなた! ジーク君、育て方を教えてもらっても?」
「ジークスヴェルトの分際で・・・・もぐもぐ」
文句言うなら食うなよ。それにしても、収穫して持って来たポテト[ジャガイモ]が、こんなに人気になるとはな。やっぱり、食に関してこの世界は、あまり進んで無い。
「叔父さん、お風呂ある?」
「お風呂? お風呂って何だ?」
えっ、そこから? あっ、そう言えば、お爺ちゃんとおばあちゃんも、うちに来た時驚いていたっけ。この世界に、お湯に浸かると言う概念がそもそも無い。基本、桶にお湯を入れて、濡らしてタオルで拭くだけだ。
「あぁ、アレか。大量のお湯に入るやつ」
「確かにらあれは良かったわね」
「そうなんですか、お義母様?」
「えぇ、アイーシャさん。でも、水を大量に使いますし。それを沸かすとなると・・・・」
「うむ、労力と金がかかるな」
「いや、タダだよ?」
「タダとはいかないだろう? ジークスヴェルト」
「タダだけど? 何なら今から作ろうか?」
「「作れるのか?」」
「うん、場所さえあれば。出来れば井戸の近くがいいかも」
「ダスティン! あまり使って無い井戸は!」
「えーと、裏庭の奥にある奴なら・・・・」
「ジークちゃん、そこにお願いね」
「はーい」
「ジーク君、本当に作る気なのね」
「うん」
「ジーク、こっちだ」
「ほーい」
ダスティン叔父さんに連れられ、裏庭へ。
「ここだ」
「この井戸大丈夫?」
ボロい井戸が目の前に・・。・・・・貞○とか出て来そう。
「一応、定期的には水を確認してるぞ? それに、ジークスヴェルトが入れるといいと言ったから、スライムも入れてる」
「なら大丈夫かな?」
異世界あるある。スライム万能説は、この世界でも、有効だった。捕まえたスライムを、汚水処理や飲み水の浄化に使っている。お陰で、トイレは綺麗に保てるし。井戸水でお腹壊す人も居なくなった。
「それじゃあ、この辺に作るね。レギオン!」
魔法兵の工兵隊が光り中から現れる。「おぉー!」とダスティン叔父さんは声をあげた。
「後、材料を・・・・よっ!」
木材に石材が、山積みになって現れた。お城の建設の為に、物資は大量にストックしてある。
「では! 開始!」
俺の指示に、工兵隊二〇名はせっせと動き始める。
「凄いな! 話しには聞いていたが・・・・」
『コンコンカンカン』と建設を行う工兵隊に、叔父さんは目を見開いていた。
「この感じなら・・直ぐに出来るかな?」
「おい、凄い速さで作って行くぞ。何だこの速さ! 人間離れしているぞ?!」
「いやいや。そりゃ、人間じゃ無いから」
「そうだったな・・・・人の姿だからついな」
『カンカン、コンコン。カンカン、コンコン』
工兵隊の恐ろしい程の速さによって、お風呂場がどんどん出来あがっていく。綺麗に並べられた石畳に、湯船は檜をふんだんに使った檜風呂。勿論、露天風呂も作るつもりだ。
見た目、旅館のお風呂だな。温泉なら凄く良かったんだけど・・・・本格的に温泉を探すか? それとも、掘ってみるとか・・・・うーん、やっぱやめとこう。
「さすがに、屋根までは無理か。屋根は明日でいいかな」
「完成か? ジークスヴェルト」
「取り敢えずはね。見られないように壁は作ったし、今日の所は充分でしょ。よし次は・・・・レギオン! 皆んな、水を汲んで入れてね」
工兵隊を戻して、パワーのあるムキムキマッチョの魔法兵隊を召喚する。最近、魔法兵の一部がレベルアップした事で、重装歩兵に進化? した。ジョブチェンジ? みたいな感じだ。兵士見習いだった者の多くが。それぞれ、別の職業に進化していった。現在、大半の魔法兵は経験豊富なベテラン兵になっている。
その他にも弓兵、槍兵、戦士、剣士と色々なジョブが増えている。ただ、制約があるのか、強力な兵ばかりは出せない。なので、バランスを考えて編成が必要になって来ているのだ。正直、凄く面倒だ。
「もういいかな?」
「ジークスヴェルト、お湯は沸かさんのか?」
「えっ、魔法を使えばいいじゃん?」
「魔法を?」
「うん、こんな風に・・・・ファイア!」
火の初級魔法を発動させて、手の平の上で圧縮して球体にする。それをそのまま、水の中へと入れる。
『ジュワアァァァァァ』と音を立てて、水から湯気が出始める。
「ほう、ジークスヴェルトは魔法の使い方が上手いな」
「初級魔法しか使えないけどね。このくらいでいいかな?」
「もう、入れるのか?」
「うん」
「あらあら、もう入れそう? それじゃあ私達が先にね」
「はい、お義母様。レミーシャ、入るわよ」
「はい、お母様。ジークスヴェルトお風呂、仕方なく入ってあげるわ」
面倒くさい奴。入りたくて仕方ないんだろ本当は!
「おいリーファ、狡いではないか」
「殿方は、後でお願いします。ジークちゃんは一緒に入りましょう」
「僕は後でいいよ。お爺ちゃん達と入るから。それより、お風呂の入り型を教えてあげてね」
「えぇ、分かったわ。レミーちゃん、アイーシャさん、行きますよ」
「はい」「はーい」
「ぬぬぬ、リーファめ」
「まあまあ、お爺ちゃん。後でゆっくり入ろう」
「うむ、ジークスヴェルト」
おばあちゃん達の入浴が終わった後、お爺ちゃんと叔父さんの二人と、一緒に入浴した。
「ふうーー、お風呂最高」
「うむ、いいのぉー」
「ジーク・・・・これは悪くないなぁー」
ふっふっふっ、皆んな風呂の虜なってしまえ。
「ジークスヴェルト、あんたが作ったわりには、悪くなかったわ。あんたの事、地虫くらいには認めてあげる」
「褒めてるのかそれって?」
「うっさいわね。褒めてあげた事感謝しなさい!」
・・・・・・・・面倒な奴だよ本当。




