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魔女


 「あれ、ここに人が来るなんて久しぶりだねえ」


 頭上から声が聞こえて目を開くとそこには若い女の人が僕の顔を覗き込んでいた。


 「魔女ですか?」


 なんとなくそんな気がした。


 「そうだよ」


 そう言うと、風で揺れている長い黒髪を耳にかけ魔女は僕に笑ってみせた。ばあちゃんが話していた通りのすごく綺麗な人だ。歳は高校生くらいに見える。


 しかしその見た目は僕のイメージしていた魔女とはずれていた。


 お伽話なんかで出てくるような黒いハットも被ってないし、マントも着ていない。半袖の白のtシャツにショートパンツという魔女とは思えない普通の格好だった。


 「本当に魔女?」


 「そうだよ。もしかして信じてない?」


 魔女は笑顔でそう答えた。


 「魔女なら空も飛べる?」


 「うん、飛べるよ。でも今はホウキがないからなあ」


 「あ、君いい物持ってるじゃん。それちょっと貸してよ」


 そう言うと山で拾い杖代わりにしていた棒を指さした。そして言われるがままに魔女に差し出した。


 「よし、これならいけるかな。まあ見てなよ」


 そう言うと魔女はそれを地面に突き立てた。そして次の瞬間ゆっくりと杖と共に空へと浮き上がり、あっという間に僕の頭上へと飛んでいった。


 思わず立ち上がり空を見上げる。全身に掻いていた汗が、ぶわっと吹き飛んだ気がした。


 魔女は「へへっ」と得意げな笑みを浮かべゆっくりと空から降りてきた。


 「今はホウキがないから浮き上がるくらいしかできないけどね、これ中々いい木だよ」


 そう言って僕に返してきた。僕は杖受け取ると魔女と同じように杖のように地面へと突き立てて飛べ、と念じてみる。


 しかし、いや当然体は持ち上がらなかった。


 僕は魔女に詰め寄った。


「僕も飛びたい。どうやったら飛べるの?」


「んー魔女じゃないと飛ぶのは難しいかなあ」


 と魔女は少し困った表情を浮かべる。


「じゃあ、僕に魔法を教えてよ!今夏休みで時間があるし、魔女みたいに空を飛びたいんだ!」


 これまで空を飛ぶなんて考えてみたこともなかった。そもそも飛べるなんてあり得ないと思っていた。だが飛べるものなら飛んでみたい。


「んー弟子は募集してないんだけどなあ」


 そう言うと魔女は困ったように苦笑いをこぼした。


 その後ハッとしたような顔をして魔女は


「そういえば60年くらい前にも君みたいに魔法を教えてくれって言ってきた女の子がいたなあ」


「え、それ僕のばあちゃんかも、ばあちゃんに魔女がいるって教えてもらってここまで来たんだ」


「へーてことは千代ちゃんのお孫さんなのか君」


 魔女がへーと言いながら僕の顔をまじまじと見る。


「確かにちょっと面影あるね。目元なんかが千代ちゃんそっくりだ」


「まあ取り敢えず家に来なよ。君すごい汗かいてるし、ちょっと涼んでくといいよ」



 魔女は笑顔で僕に手を伸ばして来る。


 「はい!」


そう言って僕は魔女の手を掴んだ。




 


 


 




 



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