トンネルへ
7月23日
ばあちゃんが書いてくれた地図によると家の裏山を少し登ったところにあるトンネルを抜けたところに魔女の家があるらしい。
まずは山を登らないといけない。山の上を見上げて見るが生えている木が邪魔で上の方がどうなっているのかまるで分からない。
とりあえず目の前の葉っぱをかき分けて山の奥へと進んでいく。ちゃんとした登山道がつくられておらず地面の草を踏み固めて進む。僕の身長では目の前は木や草で遮られていた。
「おっと」
何かにつまずいて足をとられた。
ふと足元に目をやると長い枝が転がっていた。手にとってみると加工された木のように硬く表面がつるつるとしていて、まるで杖みたいだ。
そのまま拾った枝で道を切り開きながら先へと進む。しばらく歩くとひらけた場所へと出た。
ふう、と一息つき額の汗をTシャツの袖で拭う。髪の先から汗が地面へとポタポタ落ちた。
そして、ばあちゃんが持たせてくれた水筒の水を思い出したように流し込んだ。
「トンネルってこれのことだよな?」
そこには僕の腰くらいの高さのトンネルのような穴があった。小学生の僕でも手と膝を着かないと通れなさそうなくらい小さいトンネルだ。
腰を落として奥を覗き込んでも真っ暗で何も見えない。
手と膝を地面につけ恐る恐るトンネルへと進んでいく、暗くて何も見えないので壁に右手を這わせゆっくりと足を進める。トンネルの中は地面も壁も石で出来ていて、ひんやりしている。少し進むと目の前から急に光が差し込んできた。
おかしい。
トンネルに入る前は出口なんて見えなかった。まだ数歩しか進んでないのに急に出口が見えるのはおかしい。後ろを振り返ると入り口は見えず暗闇が広がっていた。
背中に掻いていた汗がサッと冷えていくのを感じる。
もう進むしかない。覚悟を決めて出口へと踏み出す。
眩しい光が差し込んできて思わず目を伏せる。
そして再び目を開けるとそこには辺り一面の草原が広がっていた。
汗をかいていた僕を労うかのように涼しい風が吹きつけ、すうっと全身から汗が引いていく。
トンネルを抜けて気が抜けてしまった。僕は草原にバタンと大の字に寝転び目を閉じる。
草が風でなびいて聞こえる音が涼しげで心地いい。このまま眠ってしまいそうだ。
「あれ、ここに人が来るなんて久しぶりだねえ」