日常ストーリー
祖母の家は退屈だった。
祖母の家は山奥にある。家の周りには田畑が広がっていて、お隣さんの家は山を1つ越えた先にしかない。当然周りにお店なんてないし携帯も圏外だ。
正直家に帰りたいが仕方がない。共働きの両親は毎年僕を夏休みの間、祖母の家に預けていた。
そして今日で夏休みが始まって3日目
7月23日
まだ宿題はやらなくていいか、なんて事を縁側で寝転びながら考える。床がひんやりしていて時折吹く風が気持ちいい。このまま眠ってしまいそうだ。
「全く子供が昼間っからゴロゴロして表で遊んできたらどうだい」
上からばあちゃんの顔が覗き込む。
「ばあちゃん、でもここ遊ぶものもないし遊ぶ人もいないよ」
と目を擦りながら答える。
「じゃあ、ばあちゃんが昔話でもしてやろうかね」
よいしょと言い、僕の隣に腰を下ろして話を始めた。
「この土地のあるところには魔女が住んでいるんだよ」
「ばあちゃん俺もう小3だよ?そんなのいるわけないよ」
と笑いながら起き上がり隣に座って言った。
「ばあちゃんも子供の頃に会った事があるんだよ。若くて黒髪のべっぴんさんだった」
「その魔女さんは物を浮かせて見せたり、空を飛んだり、不思議なことをばあちゃんに見せてくれて夢中になって毎日家を訪ねたもんだよ」
「空?空を飛んだの?」
「ああ、こんなふうにホウキに跨ってね。ばあちゃんも乗せてもらったことがある、風が気持ちよかったなあ」
そう昔を懐かしむみたいにばあちゃんは話した。
「ただある日突然、魔女の家はなくなっていたんだよ」
「毎日行ってたのに急に家がなくなったの?」
「ああ、まるで初めからそこには何もなかったかのようにね」
「どうだい?暇だったらその魔女の家を探してみないかい?」
確かに家で寝ているよりは良さそうだし、暇つぶしくらいにはなるかもしれない。
「暇だし行ってみるよ。その魔女の家?はどこにあったの?」
「家の裏の小川に沿って歩いて、、ああ、ちょっと待ってなさい。地図を書いてあげよう」
そういうとどこか嬉しそうに広告の裏に地図を書いてくれた。
「じゃあ行ってくるよ」
「暗くなる前には戻るんだよ」
こうして僕は魔女の家を探すことになった。