迎えが来たようだ
掲載日:2020/02/10
「前出過ぎだよ、危ないよ」
突然、背後からそう声をかけられた。
振り返ると姿は見えなくて、目を下にやると、まだ5歳くらいの男の子がいた。
「そうね」
それだけで終わらせて私は動かなかった。
間も無く電車が来るとアナウンスが響く。
迎えが来たようだ。
というのに。
男の子のせいか、周りの人に気づかれたか。
目線が痛い。
「君、名前は?」
「らいと、来る人と書いて来人」
「そう、来人くん」
名前を聞いたのは、なぜかわからない。
単に呼びかけにくかったかからだろうか。
私はそれだけ残して後ろに下がった。
「うん、それで大丈夫。じゃあ、またね」
来人はそう言って次の言葉を続けた。
「“お母さん”」
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白い部屋に、苦しそうな声が響いた。
「おめでとうございます。男の子ですよ。」
そう看護婦に言われ、その手に抱くものを渡された。
「お名前は?」
と、聞かれたので、私は嬉しさか、痛みか、混ざり合った涙を流してこう答えた。
「らいと、来た人と書いて、来人よ」
そして部屋に響く声は止んだ。
迎えが来たようだ。
「いつかまた」「今度」
ソレって結局、いつのことなのでしょうか




