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無知な勇者様  作者: 黒猫(ヤマト)
第七章:輝く勇者の御守り
7/11

「ナンパって?」「うっ……さ、誘う行為よ!」

        ~前回のあらすじ~



前回の話では、ハワードの過去が明らかになった。



それは五年前に遡る。この時のルーダ城はとても平和な日々が続いていた。しかし、とある人物が悪夢を引き起こしたのである。城は大惨事になり、最悪な展開になってしまう。なぜこうなったのか改めて振り返ってみよう。



この事態を巻き起こしたのはハワードの師匠、もとい大魔王の部下(四天王)ファンダルである。ハワードの父、フリードはファンダルの計画を見破り、百人のルーダ兵士を集め、完全に阻止した……と思えたがファンダルはその事に激怒する。



中庭が騒がしい事に気付いたハワードは中庭に向かった。その現場を聴いてしまったハワードは師匠のファンダルが悪に染まったのを見ても信じられなかった。



怒ったファンダルは魔力を右手に集め、丸い邪悪な物を作り、容赦なく地面に向けて投げたのだ。


父であるフリードは飛び出してきた息子のハワードを助けるために己の体を盾にし、ハワードを守ったのだ。


ファンダルが放った魔力により、中庭はメチャクチャになり、辺りはルーダ兵の死体…そして、跡形もなく消えてしまったハワードの母、マリア。


辛うじて息があったフリードは最後の言葉をハワードに伝えた。フリードはやがて静かに息を引き取り、亡くなってしまう。ハワードだ両親を亡くしたショックで気を失ってしまう。


それから二日の日がたった。ハワードはジャンゴが看病していたお陰で目が覚める。ハワードはベッドから起き上がり、中庭に建てた父母の墓へ向かう。


ハワードは父母の墓の前に立ち、これからの事を伝えたのだった。そして、現代の話に戻り、クリス、カイル、ハワード、ユイとファンダルの対決が始まろうとしていた。





「そんな過去があったのね……。と言うか、ハワードってルーダ城の王子だったのね!?」



驚くところが違うと思われる…。今の話を聞いたクリスはファンダルに向かって叫んだ。



「そんな事があったのか……。おい、ファンダル!自分が何をしたか分かってんのかよ!!」



「やっと終わったか。随分と懐かしい話をしてくれる。……私はあの方の為なら何だってする」



魔王に一体何を吹き込まれたのか……。次にカイルがファンダルに何か聞き出した。



「あの方とは魔王の事ですよね?貴方は何故、魔王に従うのですか?この世界を支配しようとしているのですよ!」



「そんな事は知っている。従う理由か……お前に話すつもりはないな」



見ず知らずの少年に教える必要はないと判断した。すると、ファンダルは太刀を構えだした。



【内心:どうしよう……勝てる気がしないし、逃げようにも追いかけてくるだろうし……やるしかなさそうね】



閃光玉で逃げる計画を最初から立てていたが、手持ちにないので戦うしかない。



「気をつけろ。散開して奴の動きをよく見るんだ」



ファンダルの恐ろしさをよく知っているハワードは素早く剣を抜き、クリス達から離れるように言った。ハワードの忠告を聞いたクリス、カイルは武器を手に持ち、一人一人バラバラに散る。



「いいぞ……お前達の実力を見せてもらおう」



「来るぞッ!」



その瞬間、ファンダルは地面を蹴り、素早い動きで誰かに向かって攻撃を仕掛けた。



「うわっ!」



「先ずは貴様からだ」



ファンダルはクリスに上から下に斬るように太刀を振り上げた。だが、クリスはファンダルの動きをよく見て剣でギリギリで受け止めた。



「ほぅ…よく見たな。だが、足元がお留守だぞ」



攻撃を止めたが、ファンダルは隙を見せた無防備のクリスの両足を蹴った。



「うぁっ!!」



クリスは膝をついてしまい、両足を手で押さえる。そして、ファンダルは体勢を崩したクリスに向かって太刀で突き刺そうとした。



「スピード!ハワードさん!」



カイルはスピードの魔法を唱え、仲間達の素早さを上げた。



「やらせるかよ!“流星斬”!!」



ハワードはまた新しい特技を使った。縦横に綺麗に斬りかかる。しかし、動きを見破られたかのように簡単に避けられてしまう。



「そんな動きでは私を……甘いな」



隙を見せたと思いきや、ユイが投げたナイフを避ける。



「ちょ、今の避けちゃうの!?信じられないわ……。クリス!いつまで倒れてるの!立ちなさい!」



ユイはクリスを立つように呼び掛ける。クリスは剣を地面に刺して立ち上がった。



「蹴りがハンパねぇ……まだまだやれるぞ!」



クリスは再び剣を構えて戦闘体制になる。ハワードがクリスの元に近づいてきた。



「すまんクリス。俺の判断ミスでお前がやられるところだった」



「気にしないさ!それより、俺に考えがあるんだけど……」



クリスは小声でハワードに思った作戦を伝えた。



「何をコソコソと……もう話す時間など与えん」



ファンダルはハワードに向かってきた。



「くそったれ!」



ハワードはクリスの作戦を聞いた直後にファンダルが攻撃を仕掛けてきたが、なんとか太刀を剣で受け止める。



「ぐぅ!」



「多少は腕を上げたなハワード。だが、私はまだまだ本気を出してはいないぞ」



ファンダルは受け止めた剣を弾き飛ばし、ハワードの首を掴む。クリス達に不利な状況が続く。



「ハワードを離しやがれ!」



「ちょこざいな……無駄だ」



クリスはファンダルに向かって力強く剣を振り降ろした。ファンダルはハワードを離し、クリスの攻撃を躱した。すると、カイルとユイがクリスとハワードの近くに集まってきた。



「クリスさん、傷を治します!“ヒキール”!」



カイルはヒキールというキールの一つ上の段階の回復魔法を唱えた。ハワードは締め付けられた首を押さえ、呼吸を整える。



「ゲホッゲホッ……ち、畜生…とんでもねぇ力だ……。危うく気を失うところだったぜ……」




「力だけじゃないわ、速さもよ。私達と比べ物にならない速さだわ……」



ユイの言う通り。今のクリス達ではファンダルの速さについていけない。



「お前達の実力はその程度か?つまらん……遊びは終わりだ」



ファンダルは五年前、ルーダ城のほぼ崩壊させた時に出していた黒い翼を出した。



「ま、まずい…翼を出しやがった。クリス……お前の作戦は役に立ちそうにない」



ハワードはギリッと奥歯を噛みしめる。勝ち目がないと思っているのだろう。



「スゲェ~……翼が生えたぞ!?」



人に翼が生える光景を見たクリスは思った事をついつい言葉に出してしまう。



「感心している場合じゃないですよクリスさん!」



カイルのツッコミはお約束である。ハワードは構っている場合じゃないと判断し、クリスの発言を無視した。



「気をつけて!来るわよ!」



ユイはファンダルに視線を向ける。ファンダルはゆっくりとクリス達に近づいてきた。



「少しだけ私の力を見せてやる」



一歩足を踏み入れた瞬間、ファンダルは一瞬で消えた。ユイの間近に行き、目にも見えない動きでユイに斬りつけた。



「な……何よ……今の……」



一瞬の出来事だった。ユイは斬られた事に全く気付かず、その場で倒れた。



「ユイさん!!……えっ?」



更にファンダルは同じ動きでカイルに近付いていた。カイルは前に杖を出していたが、ガードをする暇がなく…やはり速さについていけず、杖を粉々に斬られ、体の左手、右手、左足、右足を斬られてしまう。



「あ……そ…んな……」



抵抗するこ事も出来ず、カイルは倒れて気を失ってしまった。



「カイル!ユイ!このやろう……やりやがったな!」



「待てクリス!今は冷静になるんだ!……一旦下がるぞ!」



悔しいが今はそうするしかない。クリスは落ち着いて、ハワードと共にファンダルから少し距離をとった



「呆気ないものだな……次はお前達の番だ」



またしてもファンダルはゆっくりと近付いてくる。 なにか仕掛けてきそうだ。



「集中しろクリス!奴を見ていれば受け止める事ぐらい出来るは―――なん……だと……」



なんと、ファンダルは更にスピードを上げ、一瞬でハワードに近付いて腹部を突き刺した。そして、そのまま左手に持っている太刀で持ち上げる。



「ハワード!くそぉぉぉー!」



クリスはファンダルに向かって行き、がむしゃらに剣を振り降ろした。しかし、クリスはファンダルの右手の魔力(突風)によって、勢いよく壁に吹き飛ばされる。




「所詮、お前達の実力はこの程度だという事だ」




ファンダルは太刀で持ち上げているハワードを勢いよく投げ飛ばす。




「かはっ!ぐっ……ま、まだ……まだ終わって……ねぇ……」




ハワードは刺された腹を押さえて立ち上がるが傷が深く深過ぎるため、敢えなく倒れてしまった。



「ぅく……ち、畜生……よ、よくもハワードをやりやがったな!」



飛ばされたクリスは腰を強く強打したが、そこまで大したダメージではなかった。クリスは怒りを爆発させる。



「そうだ……その怒りだ。その勢いで向かってくるがいい!」



「うわぁぁぁぁぁー!!……えっ?な、なんだ!?」



ファンダルに向かって行く途中にクリスのポケットが光りだしたのである。クリスは立ち止まり、ポケットに入っている物を取り出した。



「な、なに!?それは!!ぐぅぅ……き、貴様……何故それを持っている!」




ファンダルは強烈な光を浴び、目を隠して一歩一歩下がってクリスから離れていく。




「これは親父から貰った御守りだ。で、でも……何で光っているんだ!?うわぁ!!」



クリスがポケットから出したのは父の御守りだった。御守りは更に輝き、不思議な事が起こったのだ。



「うぅ…あ…あれ!?傷が消えていく!?」



なんと、気を失いかけていたユイが何事もなかったように元気よく立ち上がった。傷が綺麗さっぱり消えていた。因みに服は斬れつけられてやぶれているので、ちょっとセクシーな状態である。




「ユイ!それにハワードにカイルまで!」



無論、傷が治ったのはユイだけではなかった。ハワードとカイルは驚いたような表情で立った。



「クリスさん、これは一体!?」



カイルは斬られた両足、両手の傷があるか確認する。やはり綺麗になくなっていた。



「話は後だ!奴をどうにか………いない!?何処に行きやがった!」



ハワードは辺りを見回すがファンダルの姿がない。いるのは縛られている



「ちゃんと見てなさいよ!上よ上!ったく……ん?あれって月じゃない!」



ファンダルは上空に飛んでいた。よく見ると、このエリアから月が見える。どうやら長い間、迷路で迷っていたので時間がかなり経過していたようだ。



「あ、ありえない……それはこの世にない筈だ……。まさか、貴様は奴の知り合いか何かか!?くっ…力が出ない。だが、私はあの父親(ユイの父)からある秘密を聞き出せた。お前達、次に会った時は八つ裂きにしてやろう。……さらばだ」



ファンダルは更に上空に舞い上がっていき、クリス達の前から去っていった。



「……………………」



クリスは真剣な表情で父の御守りをジーッと見ていた。



「辛そうな表情をしていましたね…。僕の勘ですが、もしかしたらクリスさんが持っている御守りの効果でファンダルは力を吸いとられたのでしょうか?何はともあれ助かりました……」



カイルは腰が抜けたのか、ペタンと地面に尻餅をつき、安心して深い息を吐いた。



「あぁ…それに秘密って何だろうか?そのオッサンがある秘密とやらをファンダルに教えたらしいが……」



「それ気になるよね。あ、ヒゲ親父で老けて見えるけど、これでもお父さんは38よ」



すっかり忘れられていた。ユイは父親に近付き、しゃがんで眠っている父親の体を揺らす。



「う……うぅ~ん……ケイト……やっぱり綺麗な足だなぁ~……スリスリ」



ユイの太ももをスリスリと顔で擦る。セクハラ行為をしている彼の名は"ミレルダ・ベルサーチ"と言い、ユイの父親である。因みにケイトとはユイの母親である。



「こ…この糞オヤジ!みっともない事をしてんじゃないわよ!」



ユイは立ち上がり、寝ぼけているベルサーチの腹を力強く蹴った。



「はうっ!ぐぅぅ……ハッ!ここは何処だ?」



何だ!?何だ!?という感じで首を左右に振り、ベルサーチは辺りを見回す。



「………やっぱり怖いです」



怯えるカイルは立ち、ハワード後ろに隠れて少しだけヒョコッと顔を出す。



「ん?誰だお前達は…いや待て!言うなよ……俺が当ててやる。どれどれ、男二人に女二人か…。ふむ、先ずは男2人から見てみよう。ほぉ……これはなかなかいい男じゃないか。だが、男に興味はない」



ベルサーチはハワードに近付き、じっくりと見て感想を述べた。いい男と言われたハワードはちょっぴり嬉しかったりする。



「次は……んっ?はて……どこかでみたことがあるような……思い出せんなぁ……」



「えっ?ユイの親父さんとは初対面だぞ?」



クリスの言うとおり、彼とは初対面である。しかし、ベルサーチはどこかでクリスを見掛けたことがあるようだ。



「だよなぁ……まぁいいか。次に女二人は……おぉ!二人とも可愛い顔してんじゃないの!どうだ?俺と一緒にやら……あうっ!!」



ベルサーチはユイに股間を蹴られ凄く痛そうに股間を押さえて踞る。



「娘をナンパしてんじゃないわよ!それ以上訳のわからない事を喋ったら首をへし折るわよ!」



「うぅ……僕は男ですよ……」



女と間違われたカイルは軽く落ち込む。



「あぐぐ……なんて強烈なキックだ。流石は俺の一人娘だな。さっき言った事は全て冗談だ……ほ、本当だ!」



「冗談には見えなかったけど………まぁいいわ」



冗談ように聞こえなかったが、仕方なくユイはベルサーチを許してあげた。



「面白い親父さんだな。俺の親父と気が合いそうなノリだぞ。……なんだ!?」



またもやガタガタと地下全体が揺れ始めたのである。



「うわわっ!!さっきより揺れが激しいですよ!?」



カイルは慌ててクリスの肩に捕まる。



「おーっと?早くここから出ないとペタンコに潰されるか~もしくは永遠に出られなくなってしまうぞ?ほれ、床を見てみろ」



クリス達は床を見た。なんと、床がだんだんと上がって来ているのだ。



「お、おい!?呑気に説明してる場合じゃないだろ!?だったら早く脱出するぞ!!」



「まぁ、慌てるなイケメン。すぐ近くに脱出通路があるから大丈夫だ。俺についてこい」



随分と余裕な表情である。ベルサーチはクリス達を出口まで案内するのであった。



第七章:輝く勇者の御守り、終

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