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無知な勇者様  作者: 黒猫(ヤマト)
第五章:壁壁壁の地獄迷路
5/11

「コンビネーション?」「連携と同じです」

時は流れ、とても天気のいい朝になっていた。クリスは誰よりも早く目覚めた。




「ふぁ……よく寝た。眩しいなぁ……」




ベッドが窓際にあるため、光が当たる。クリスは起き上がって、隣で眠っているカイルを呼び掛けた。




「起きろカイル~朝だぞ~」




「うーん……お、おは…ようございます…クリスマスさん…」




名前が違う。まだ少し寝ぼけているようだ。カイルはゴシゴシと目を擦り、ゆっくりと起き上がった。




「今日は大変な一日になるかも知れないけど頑張ろうな!……あれ?ハワードがいないぞ?」




辺りを見回すが、ハワードの姿がない。どうやら先に起きて外で待っているのかもしれない。




「宿屋の前で待っているのかも知れませんね?よし、準備が出来ましたので行きましょうか!」




「そだな。ハワードと合流してユイに会いに行くぞ!」




クリス達は支度を終え、宿屋から出た。宿屋の前にはカイルが言った通りハワードがいた。




「あ、いましたね。おはようございます、ハワードさん」




「おはようカイル。体調の方は良くなったようだな」




嘘だったことは誰も知らない。すると、クリスがハワードにこれからどうするか話し出した。




「ハワード、今からユイの所に行くぞ。詳しくは後で話すからさ?ついてきてくれよ」




「……わかった。あの女の所に着いたら聞かせてもらうぜ?」




ハワードが盗み聞きをしていた事をクリスとカイルは知らない。既に知っているがハワードは話をあわせた。





「サンキュー!よぉ~し、そうと決まれば行くぞ!」




クリスは仲間を待たず、先にユイがいる空き家へと走っていった。




「あ、あの……ハワードさん。察しているかもしれませんが、クリスさんについてなんですが……」




カイルはもじもじと話しかけ、クリスについて話そうとするが……ハワードは既に感づいていたようだ。彼が世間についてなにも知らないことを。




「カイル、言わなくてもわかっているよ。色々と大変だと思うがなんとかなるさ」




「クリスさんは物覚えは早いんですが、知らないことがありすぎて正直驚いてます……」




今後、クリスに知らないことを聞かれることが沢山あると思うが、それを覚悟した二人であった。そのまま話しながらゆっくりと空き家へ向かった。




「お~い、来たぞユイ~!」




クリスは先に着き、外で空き家の中にいるユイに呼び掛けた。回りにも民家があるので、ここはノックをするべきだが……。




「んぅ~もう来たの……。ふぁ……待ってて、準備してから行くから……あ、入ってこないでよ!」




入るな。ということは服を脱いで寝ていたのだろう。……中ではお着替え中である。




「なんかわからないけど怒られた気分だぞ……待つか」




ここでもしドアを開けて中に入ったら確実に悲鳴が鳴り響いただろう。暫くして、カイルとハワードが遅れてやってきた。




「遅かったな?何処か寄り道してたのか?」




「お前が早いだけだ!夜中に女が言った事をカイルから聞いておいた。お前から詳しく話すとか言われてもわからないからな」




思ったことを言ってしまうハワード。この口調で言うとクリスが少し可哀想である。




「そんなハッキリ言わなくてもいいだろ……俺だってそれぐらい話せるぞ!……多分」




やはり無知なクリスに説明は難しいらしい。空き家の中からユイが出てきた。




「お待たせ!あっ…物騒な奴いるじゃん」




ユイはハワードを見て睨み付ける。この先、この二人の口喧嘩が勃発していきそうな気がする。 




「おい、その呼び方はやめろ!俺はジャック・ハワードだ!覚えておけ!」




「そういえば、自己紹介がまだでしたね。僕はディア・カイルと言います」




「この流れは俺もした方がいいよな?俺はバット・クリスだ。大魔ーー」




クリスが自己紹介をしている最中にも関わらず、ユイはカイルだけを見て名を言い出した。




「私はミレルダ・ユイだよ!よろしくねカイルくん!」




「こ、こいつ…………」




【内心:ハワードの目が恐ろしいぞ……】




ハワードの目付きは狂犬みたいになっている……。眼中になかったのが気にくわなかったのだろう。




「え…え~と、ユイさんの準備が出来たみたいなので、案内をお願いしますね!」




「了解!……あなた達には本当に感謝してるよ……。じゃあ、私についてきてね」




なんだかんだ言って、クリス達には感謝しているようだ。ユイは先にニーマスから出ていった。



「ファンダルって奴を倒して情報を聞き出すぞ!行こうぜカイル、ハワード!」




「クリスさん、ユイさんのお父さんの事を忘れないで下さいね」




【内心:……無理だ。お前達が敵う相手じゃない。奴は……】




ユイに続きクリス達はニーマスを出た。……新たな冒険が始まろうとしている。地下を目指して歩いていくクリス達。すると、ユイが何か言い出した。




「スト~ップ!曲がって“森”の中に入るわよ」




ユイは怪しげな森の中に入るようにクリス達に言い出した。いかにもモンスターが沢山いそうな所である。




「この先は……確か何もなかった筈だぜ?あったとしても“井戸”だけだ」




「おぉ~井戸があるんだな!村でよく使ってたぞ!」




軽くスルーされる。ハワードは過去にルーダ兵を連れて森の中を探索した事があるようだ。




「フフフ……まぁ、着いてきなさいよ。私が必死で見つけた所に案内するからさ!」




そう言って、ユイは森の中に入っていく。続けてクリス達も森の中へと入っていった。




「森の中って意外と暗いですね。木で光が隠れていて暗く感じます」




「前が見えるからまだ明るい方じゃないか?……むっ!?」




クリスは何か気配を感じたのか……足を止め、剣を抜く構え見せた。




「鋭いなクリス。気を付けろ、三~匹ぐらい……俺達をつけてやがる」




「えっ!?」




カイルは気づいていなかったようだ。ユイは相変わらずのテンションでこう言った。




「やっぱ大勢で来たからバレやすいよねー!サッサと片付けるわよ!」




クリス達はクルッと後ろを振り向いた。言った通り、四匹のモンスター達がつけていた。




「なぁ~んだ、大した相手じゃないわね。“プライムモンキー”よ」




ユイは投げナイフを取り出し、投げる構えをする。先にハワードが攻撃を仕掛けた。




「プライムモンキーか。組み合わせただけのモンスターにやられるかよ!」




ハワードはプライムモンキーAに力強く剣を振り降ろした。見事に命中し一撃で倒した。




「ハワード!負けないぞ!でぁぁぁぁー!」




ハワードに続き、クリスはプライムモンキーBに剣を横に振り斬りつけた。命中するが惜しくも倒れず。




「後は任せてください!凍てつく氷よ……フィル!」




カイルはプライムモンキーBに氷魔法を唱え、見事に命中しやっつけた。




「わぉ!三人ともチームワークがバッチリじゃない!よぉ~し、私の得意技(特技)を見せてあげるわ。“飛び回転ナイフ”!」




ユイは高く飛び、回転しながら2匹のプライムモンキーの頭に目掛けてナイフを投げた。なんと、見事に命中し全てのプライムモンキーC・Dを倒した。




「あの体制から当てるなんて……凄いですね!」




華麗な動きを見せたユイにカイルは驚いているようだ。クリスはプライムモンキー達が落とした400Gを忘れずに拾った。





「フフ~ン、私はこの森で何度もモンスターを倒していたからねぇ~!弱点ぐらいわかるよ!」




自信満々にクリス達に自慢するユイ。すると、あのハワードがユイの動きについて褒めてきた。




「中々やるじゃねえか。だが、お前が言った通り、今の奴等は大したことなかったな」




前半は褒めるが後半に一言余計な事を言ってしまう。それさえなおせば上手くやっていけるのに……。




「ふん。……あっ?クリスとカイルくんのコンビネーションもよかったよ!」




「コンビ…ネーション…何だそれ?それにしても、俺もユイみたいに一撃で倒したかったな……。もっと強くなってやるぞ!」




クリスは落ち込んでいたが、すぐにやる気を見せた。目標を諦めずに学んでいく主人公……だが無知である。




「クリスさん、コンビネーションとは息がピッタリって事ですよ?ユイさんが戦闘中に言ったチームワークと同じみたいなもんです」




カイルはふとこう思った【冒険についてわかる本はないかな……】と。あればクリスに説明しなくて済むのだから。




「カイルくんも大変だね……。さ、この調子で行きましょ!まだちょっと先だけど」




「「はぁ………」」





先に進むユイ、ハワードとカイルは後に続いていった。理解してる最中のクリスを置いて。




「なるほど……って!置いていくなよ!」




置いてかれたクリスは慌ててユイ達を追いかけた。




クリス達は襲ってくるモンスターを倒し、徐々に地下に続く所まで近づいていた。そして――




「見えてきた見えてきた!あ、見張りがいるわね」




クリス達は茂みに隠れていた。先程ハワードが言った井戸の所まで着いたようだ。




「やはり井戸か……まさかあの下にあるんじゃないだろうな……」




井戸の中に入りたくないような表情をするハワード。




「そうだけど?っていうかあの見張りを何とかしなきゃ進めないわよ」




「見たところモンスターですね?出来ればバレずに行きたいですが……」




どうすればいいか考えるカイル。すると、クリスが思いきった事をしだした。




「バレずにあの井戸の中に入ればいいんだよな?なら……てぃ!」




クリスは石ころを拾い、遠くの方に投げた。モンスターは音に反応し、井戸から離れていく。




「モ、モンスターって案外マヌケね…。とにかく、これで中に入れるわね。行くわよ!」




モンスターが戻ってくる間にユイは井戸の中に飛び込み、中に入った。




「くそっ……汚い所は苦手だな。だ、だが……アイツが躊躇なく入ったんだ。信じてみるか」





ユイに続きハワードも井戸の中に飛び、中に入った。ロープがぶら下がっているが、なるべく早く降りるようにしているようだ。





「先に行っていいぞカイル。俺が見張っているからさ?」




「うぅ…クリスさん助かります。では、お先に失礼しますね。高いなぁ……飛び降りるのは僕には無理そうです……」





カイルは井戸を除き混み、どれぐらいの深さか見てみた。見たところ意外と深いので、飛び降りずにぶら下がっているロープを使って井戸の中を慎重に降りていった。どうやらカイルは高い所が苦手らしい。




「降りたな?よぉーし、俺も行くぞ……うりゃ!」




クリスはカイルが下に降りたことを確認し、モンスターが戻ってくる前に井戸の中に飛び降りた。




「ギギギ ダレモイナカッタ」




「オレサマ オドロイタ」




戻ってきた二体のモンスターは井戸の前に立ち、見張りを続けたのだった。





※地下の地図(迷路地獄)



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※因みにクリス達は此処の地図を持ってません。



井戸の中に入ったクリス達は驚くように辺りを見回していた。とても井戸の中とは思えない造りになっているようだ。




「洞窟みたいな所だと思いましたが……意外と明るいですね……うん、良くできてる」




辺りには所々にランプのような灯りが設置されている。カイルは壁をコンコンと叩く。




「全て鉄で出来てやがる……地下という事だけはあるな」




「……鉄?俺が持っている鉄の剣みたいなのか?ひぇー凄いな!」




クリスは剣を抜き、壁にくっつけて見比べてみた。色は若干違うが、鉄である。




「あんた達、感心している場合じゃないでしょ?ぼやぼやしてないで先に進むわよ!……道がわからないけど」




ユイは一度この地下に来たことがあるのだが、奥に進んだことがないようだ。




「ユイさんは確か迷路と言ってましたね?う~ん……とりあえず先に進みましょう」




「迷路か。子供の頃によく絵描き迷路をしていたな。って、そんな事はどうでもいい!行くぞ!」




ハワードは先頭に立ち、先に進む。いきなり過去の事を言い出したハワードを見て、クリスは?マークを浮かべている。




「何言ってんだハワードの奴?まぁいいか、モンスターがいるかも知れないから警戒して行こう」




いつモンスターが襲ってくるか分からないので、油断は禁物である。クリスは辺りを警戒しつつ、ハワードの後に続いた。




「エヘへ……私ったら怖くなってきちゃった。カイルくん、手を繋いで行かない?」




「な、何を言ってるんですかユイさん!?勘弁してくださいよ!!」




カイルの手を握って来る前にユイから慌てて離れて、クリスを追いかけていった。




「もうっ!照れ屋さんなんだからぁ~。あっ…ま、待ってよカイルくん!」




一人になると迷いやすいので、ユイはカイルを追いかけた。カイル、ユイはハワード、クリスに追いつくが――




「くっ…行き止まりだ」




「壁だな………。じゃ、後ろに向いて真っ直ぐ行ってみよう」




クリスは行く方向を指差した。迷いやすいようになっているので、来た道も覚えておかないといけない。




ひたすら進んでいくクリス達は一旦動きを止めた。迷路ではお決まりの分かれ道が出てきた。




「うーん……道が別れてるぞ。どっちに進むんだ?」




「危険かも知れないが……二手に別れるのが良いかもな?お前達はどう思う?」




ハワードは案を言い出した。しかし、非常に危険な事だ。ユイやカイルにも意見を聞いてみた。




「いいんじゃない?行き止まりだったらここに戻ってくればいいんだしさ?」




「賛成です。では、集合場所はこの分かれ道のところにしましょう。誰と誰が行くのですか?」




二手に別れるにはペアを決めなければいけない。クリスは即言い出した。




「じゃ、俺はカイルと行こうかな?よし、行くぞカイル!」




「それはいいですねぇー!行きましょう!」




クリスとカイルは(ユイから)逃げるように左側の方へ走っていった。




「なっ!?」




「はぁ!?」





相性が悪い二人が残された。仕方なく、ハワードとユイは一緒に行くことにし、右側の方へ進んでいった。




一方、クリスとカイルは真っ直ぐ進み、慎重に進んで歩いていた。




「長い道ですね。あっ…壁です」





「いや、右側に道があるぞ?どうか…どうか行き止まりじゃありませんように」





クリスは祈る。前には壁があるのでクリスとカイルは右側に曲がった。




「……また一直線ですね。何か嫌な予感がします」




カイルの予想は結構当たるというのをご存知の筈です。




「その嫌な予感が当たらなきゃいいけどな。大丈夫大丈夫!」




二人はひたすら前に進む…がーー




「い、行き止まりです。アハハ……当たりましたね……ごめんなさい……」




「カイルの予感が当たったな。まぁ、そんなに気にしなくてもいいさ。よし、戻るぞ!」




「はい!……はぁ、悪い予想が当たるなんて気味が悪いです…。今後は言葉に出さないように気をつけます」




カイルの予想は“良い予想”と“悪い予想”が良く当たるようだ。二人は集合場所に戻っていった。




クリス達と別行動中のハワードとユイは口を交わさず無言のまま地味に進んでいた。




【内心:何でコイツと一緒なんだ……クリスめ】




【内心:カイルくんと一緒に行きたかったのに……よりによってハワードとなんて冗談じゃないわ】




お互い内心の中で愚痴を言っている。すると、口に出して言わないといけない所まで来たので、やむを得ずハワードはユイにどうするか聞いてきた。




「おい、道が別れているがどっちに進むんだ?」




「この感じ……。この先に進んでも多分行き止まりな気がするわ。残念だけど、戻るしかないわね」




もちろん予想である。行き止まりなのかはまだわからない……がハワードは喜ぶように答えた。




「そうかそうか!なら早いとこ集合場所に戻るか!先に行ってるからな」




【内心:なによ、嬉しそうに……】




あっさり信じた事が気にくわなかったらしい。因みにユイのデマは当たっていた事は内緒である。ハワードとユイは戻っていった。数分後、先に戻ったのはもちろんこのペアだった。




「何だ、まだ来てないみたいだな?」




ハワードはキョロキョロと周囲を見て、クリス達がいない事を確認する。




「私達が早すぎたのよ?もう少しで来るわよきっと……ほか来たよ」




スタスタと歩いて戻ってきたクリスとカイル。ハワードはクリスを睨む。




「うっ……嫌な視線を感じる。と、とりあえず結果を言うぞ!行き止まりだった!」




「そちらはどうでしたか?」




ハワードの目線を合わせずに残念そうに言うクリス。カイルは結果を聞いてきた。




「残念ね…。えっと、こっちも同じ結果ね?壁だらけで嫌になるわ!」




ちゃんと確認してないのに言い切るユイ。すると、ハワードはふと思ったことを言い出した。




「さっきからおかしいと思っていたんだが、この地下にモンスターはいるのか?気配が全く感じないんだが?」




「その事については僕も思いました。何か怪しいですね?」




カイルは右手で顎を触り、よく探偵がしているポーズをしている。クリスは安全を考えてこう言い出した。




「そだな?いつ出てくるかわからないから、やっぱり別行動はナシにしよう!」




クリスの言った事に賛成する一同は頷いた。




「油断は禁物って訳ね?このまま警戒して先に行きま……なっ何!?」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ(以下略)




「うぉっ!床が揺れてるぞ!?」




「うわわわわ…み、皆さん伏せてください!」



グラグラと地下全体が揺れている。カイルは咄嗟に床に伏せた。




「この地下で仕組んだ地震ならいいけど、本当の地震だったらヤバいわよ!?」




ユイはこう思っている【埋まって死んでしまう】と。慌てて伏せるユイ。




「不吉な事を言うんじゃねぇ!クリス!ボーッとしてないで伏せろ!」




クリスはボケーッと立っていた。何か考えていたのだろうか。




「大丈夫だよ。俺の勘だけど、この地震はこの地下の仕組みだと思うぞ?……何となくだけど……うわっ!」




揺れに耐えきれなかったクリスはコテンッと頭から転けた。そして、暫くして揺れは治まった。




「イテテ……どうやら納まったみたいだな?」



「そのようですね?一体何だったのでしょうか…」




クリスは頭を押さえながら立ち上がり、カイルは服についたホコリを払った。




「分からん。とにかく早いとこ親父さんを助けないとな。こんな所はもう二度と御免だ」




立て続けにこんな地震が起きたらシャレにならない、ハワードは一刻も早く地下から出たいようだ。




「あんた、たまには嬉しい事を言ってくれるじゃない。そうね……二度と来たくないわ」




「おい、[たまには]は余計だ。そうと決まれば行くぞ」




ハワードは先頭に立ち、ツカツカと先に歩いていった。




「ちょっと待ちなさいよ!」




少しは新密度が上がった……かもしれない。ユイはハワードを追いかける。カイルとクリスも後に続くのだった。




「なぁ、ここって井戸から降りた所じゃないか?」




クリス達はスタート地点に戻ってきたのである。クリスは来た道をちゃんと覚えていた。こういうことに関しては優秀かもしれない。




「そうだ、俺達は振り出しに戻ってきたが、東側(上)に行けば正規ルートの筈だ。また迷路が待っているかも知れないけどな」




先程、クリス達は西側(下)に言っていたので、今度は東側に行くと言い出すハワード。確かに西側は行き止まりだったので、必ず正しい道はあるだろう。




「す、凄いわ……正しく天才ね……って言うのは冗談よ。グズグズしてないで行くわよ!」




「あ、おい待てよユイ!俺達も行くぞ!」




完全にハワードの事を馬鹿にしている。……喧嘩を売っているようにしか見えない。クリスはユイの後に続いた。




「あ、あのハワードさん?堪えてくださいね……きっと場の空気を楽しませるために言ってるんですよ、多分」




「このまま帰ってもいいんだぞ……なんてムカつく女だ。カイル、それは絶対にない」




カイルは不機嫌なハワードを見て恐る恐る言う。ハワードは怒りを堪えて先へ進むが、先に行っていたユイが立ち止まっていた。




「もぅ!また道が別れてる!どっちが正解かしら……迷路ってホント嫌になるわ……」





立ち止まるクリス達…そのまま一直線に行くか左に曲がるかのどちらかである。




「悩むな……クリス、お前ならどっちに行く?」




「えっ、俺?そうだなぁ~……俺なら左に曲がるかな?」





過去を思い出しましょう…クリスとカイルは一直線に行った経験があるからである。




「僕もクリスさんに同感です。多分ですけど、このまま真っ直ぐ進むと行き止まりな気がします」




流石にカイルもよく分かっている。二度も経験するのは流石に嫌だからな……。




「決まりね。カイルくんを信じて曲がろう!」




【内心:うぅ……クリスさんが先に言い出したのに……。なんだか悪いです……】




カイルは申し訳なさそうにクリスを見ているが、クリスは気にしてないというかどうでもいいというか……全く気づいてないようだ。




「そうと決まれば全身あるのみだ。行こう」



「この先が行き止まりだったら詰みね。ん?……変ね、何かいたような……」




ユイは何か気配を感じたのか後ろを振り向くが誰もいなかった。クリス達はそのまま先へ進んでいく。




「こっちであってたみたいだな。やれやれ、また更にややこしい道が出てきたな」




「こ、これは予想してませんでしたね……。まさか三つの分かれ道だなんて……」




別れようにも人数が割りに合わないので、別れるのは無理そうだ。クリス達が来た所は地図で見ると【田マーク】の中心部分にいる。




「左に行くか、正面に進むか、右に行くか……一番迷いやすいパターンね」




「お手上げですね……僕にもさっぱり分かりません」




流石のカイルでも分からなかった。すると、なにやらクリスが何かの気配に勘づいた。




「………みんな気を付けろ。俺達の背後から誰かが来るぞ」




クリスは剣を抜き、小声で仲間達に伝えた。




「なんだと!?き、気づかなかった……背後だな」




あのハワードが気づかなかった。クリスは素質があるのかもしれない。ハワードも剣を抜き、辺りを警戒する。 




「もしかしたら……さっきの地震と関係があるかも知れませんね?とにかく、今は戦闘に備えます!」




カイルは杖を構え、戦闘体勢になった。先程ユイが何か見たのは気のせいではなかったらしい。




「フ、フフ~ン……やっぱりね!さぁ、いるのは分かっているのよ!隠れてないで堂々と出てきなさい!」




「ぺぺぺ!?バレていたのか!?なら仕方ないぺ…お前達をやっつけてやるぺぎ!」




クリス達の前に現れたのはやはりモンスターだった。しかし、クリスは何故か驚いていた。




「うわぁー!モンスターが喋ったぞ!?」




「お、お前……今まで知らなかったのかよ……予想以上のバカだな……」




ついついハワードはクリスにバカと言ってしまう。もちろんクリスは怒鳴った。




「バカとは何だ!失礼だぞハワード!」




「しまった……つい口に出してしまった。じ、事実を言ったまでだ!」




暫く言い争うクリスとハワード。モンスターは完全に忘れられている。




「ペキーー!俺がいることを忘れるなよ!!来いお前達!」




モンスターは仲間を呼んだ。すると、北東西側から一匹ずつモンスターと似た奴等が走ってきた。




「ぺ~ぺッぺぺ!“ペンギーズ”がギッタンギタンにしてやるぺぞ!」




どうやらモンスターには“何とかズ”という“戦隊系”な名があるらしい。




「逃げ道を塞がれたな。まぁ、逃げるつもりは全くないがな?ほう、じゃあ俺達はお前等をボコボコにしてやるぜ」




ハワードは剣をペンギーズの一匹に向けた。すると、ハワードの言ったことに怯えたペンギーズの一匹は逃げていった。




「あっ!“ペンオ”!何処に行くんぺだ!」




「やっぱり“ペンギン”なんですね?うーん……僕が言うのはどうかと思いますが……すごく弱そうです」




思った事を言ってしまうカイル。それを聞いたペンギーズの一匹がショックでペタッと倒れる。




「オ…オイ!?“ペンコ”!よくもペンコをやったっぺなぁー!」




「えっ……俺達はまだ何にもしてないぞ?何言ってんだアイツ!?」




「よく見たら可愛いモンスターじゃない?でも、人間じゃないから容赦はしないわよ」




ギロッとペンギーズの一匹を睨むユイ。するとペンギーズの一匹はビクビクと震えて逃げていった。




「ちょ…ちょっと待て“ペンク”!?お…おのれぇ~お前達許さないぺぞ!」




ペンギーズはあと一匹だけになった…。リーダーである“ペンタ”のみである。




「お前は俺達四人と戦うってのか?いい度胸してんじゃねぇか……」




ブンブンと剣を振り回すハワード。ペンタはビクビクしている。




「ヒッ!?きょ…今日のところはこれで勘弁してやるぺ!覚えてろぺよ!」




訳の分からない事を言って逃げ出した。が、ユイは先回りしてペンタを逃がさないよう回り込んだ。




「あ~らぁ…何処に行くのかしらペンちゃん?逃がさないわよ」




「ペペッ!?い、いつの間に!?あ、あひぃ……何でも言うことを聞くから殺さないでくださぺぃぃ!」




ユイに土下座をするペンタ……。モンスターでも土下座を知ってるのが驚きである。





【小声:ユイってやっぱり恐ろしいな……カイルもそう思わないか?】




【小声:えっ!?えっと……その……確かに怖いです……】




ヒソヒソとクリスとカイルはユイに聞こえないように小声で会話している。




「ん?今何でもって言ったな?なら、ファンダルがいる場所まで案内しろ!」




ペンタに強く怒鳴るハワード。まるでいつものハワードじゃないみたいだ。




「えっ!?ファンダル様の居場所だって!?お前、本気で言ってるのか!殺されるぺぞ!」




何故か心配してるように聞こえる。ペンタはどうやらファンダルの居場所を知っているらしい。




「ファンダルってそんなに強いのか?俺達四人で一気に攻めれば簡単だろ?」




「クリスさん、ファンダルは大魔王の部下ですよ?いくら僕達が束で挑んでも勝てるかどうか……」




「…………………………」




カイルはクリスに理解するようにもう一度同じ事を話す。ここでいつもなら突っ込んでくるハワードだが、何故か黙っていた。やはりファンダルについて何か知っているようだ。




「お父さんを助けるためにはどうしてもファンダルがいる所に行かなきゃいけないのよ……さぁ案内しなさい!!」




「どうなっても知らないぺぞ?お前達、オイラについてこい!」




そう言ってペンタは先頭に立ち、クリス達をファンダルの居場所まで案内する事になった。クリス達はペンタの後に続いた。





そして……クリス達はついにユイの父親が捕まっている所まで到着した。




【内心:やっとだ。やっと……あんたに会える】




ハワードは拳をギュッと強く握っている。憎しみの感情だろうか…。過去に何かあったのは確かである。




「つ…着いたぞ!案内をしたんだ!早くオイラを解放してくれぺよ!」




「逃がしてやろうぜ?コイツがいなかったらここまで来れなかったと思うぞ?……多分」




確かに。もしクリス達が自力でここまで来るまで相当な時間が掛かったかもしれない。




「それもそうね。じゃあ、そうゆう事だから何処にでも行きなさいよペンちゃん」




「ペンギンさん、案内をしてくれてどうもありがとうございました」




例えモンスター相手でも丁寧にお礼を言うカイルは本当にいい子である。



「ぺっ!ファンダル様にやられちまえー!ぺェーぺっぺ!」




ペンタは物凄い速さでクリス達の前から走り去っていった。というか逃げた。




「次に会ったら逃がさないように縛ってあげるわ……フフフ」




不気味な笑い方をしているユイ……お、恐ろしい……。





【内心:この中にユイの親父さんがいる……間違いない。それに、邪悪な気配がするぞ……ファンダルって奴か】




クリスは気配をマスターしたのか?否、それはまだ早すぎる。しかし、奥に潜む者の気配が誰よりも早く分かってしまう。




「開けるぞ……準備はいいか?」





扉を開けずに蹴る構えをするハワード……。どこぞのヤンキーがやる行動である。




「ここまでやっと来れたんです。全力で行きますよ!」




「ファンダル……お父さんを連れていった時はマントで姿を隠していたけど、やっと正体がわかるわね。絶対に助け出して見せるわ!」




カイルとユイは頷き、ハワードに準備が出来たことを伝えた。クリスはハワードの隣に行き一緒に扉を蹴る構えをする




「結局、弱点の閃光玉を持ってないけど何とかなる!みんな、行くぞ!」




クリスとハワードは同時に扉を蹴飛ばし、一斉に中に入った。しかし、クリス達が見たのは……




「えっ?モンスターがいないぞ!?」




クリス達が見たのは縛られているユイの父親と壁に寄りかかっている人物の2人だけだった。




「お父さん!貴方が助けてくれたの!?ありが――」




「「近づくな!ユイ!」」




クリスとハワードには分かっていた。ファンダルがすぐ近くにいることを。




「へっ……モンスターなら俺達の間近にいるぜ。そうだよな!ファンダル!」




ハワードは剣を抜き、壁に寄りかかっている人物を剣で向ける。




「これは驚いたな。懐かしい……私の事を覚えていたのかハワード。もう五年も経つのか……早いものだな」




ファンダルは寄り掛かっている壁から離れ、ユイの父親の近くに立つ。やはりハワードとは過去に会っているようだ。




「忘れるわけがねぇ……あんたは俺の親父とお袋を殺したんだ……あの時――」




ハワードは過去に起こった事を話しだした。ハワードの“父母”は何故、ファンダルに殺されたのか……こんな場面で申し訳ないですが、次回は過去編に続きます。




第五章:壁壁壁の地獄迷路、終




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