表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無知な勇者様  作者: 黒猫(ヤマト)
第四章:泥棒猫、街に現る
4/11

「こそ泥って?」「隙をみて物を盗む奴だ」


ルーダ城から出たクリス達は次なる目的地を目指して、とある街へと向かっていた。




「えっと……確かルーダ城から離れた所に“ニーマス”という街があるはずなんですが……ハワード王子、このルートであってますか?」




カイルはついさっき仲間に加わったルーダ城の王子である、ハワードに聞いてみた。




「あぁ。ニーマスならこの先を北東に向かって進めば行けるはずだ。あと、王子って言うのはやめてくれ」




王子と言われるのが気まずいのか、あるいは恥ずかしいのだろうか。カイルは申し訳なさそうに頭を下げて謝った。




「す、すみません……ハワード……さん」





カイルは歳上相手には必ず『さん』をつけるようにし、常に敬語で話すようにしている。とても礼儀正しい子である。




「北東ってあっちだな?よぉ~し、早速行ってみようぜ!」




テンションが高い。クリス達は先に進もうした瞬間、突如、クリス達の前にモンスターが現れた。




「うわっ!?モンスターか!?突然出てきたらびっくりしたぞ。おっ、なんだ囲んできたぞ」




モンスターの群れはクリス達を囲み、逃げれないようにしてきた。逃げも隠れもしないクリスは戦う気満々である剣を抜き構える。モンスターは三匹いる。




「さっそく出てきたな。……何だ、スネークキラーか。たいしたことはなさそうだな」




名は“スネークキラー”“蛇型モンスター”であり、剣と盾を持つ普通のモンスターだ。余裕そうにハワードは剣を抜き構える。




「数は三匹ですね。接近タイプならこちらが有利ですら。行きますよ、スピード!」




カイルはまた新しい魔法を唱えた。味方全体の素早さを上げる強化魔法のようだ。




「なるほど、カイルはサポート魔法が使えるのか。こいつはいい、体が軽くなったぜ。よし、先に行くぜ!」




ハワードはスネークキラーAに素早く近付き、蛇型に有効な“特技”を使いだした。




「蛇ならこいつを使う。くらえ、"ヴェノム斬り"!」




見事に直撃。なんと、ハワードは一撃でスネークキラーAを倒した。どうやら蛇類に有効な特技だったらしい。




「お…お…おぉー!!」





ハワードの華麗な動きを見たクリスは驚いている。だか、今はそんな場合じゃない。スネークキラーBがクリスに向かって攻撃してきた。





「おわっ!?あ、あぶねぇ……次は俺の番だぞ!」




クリスは辛うじてスネークキラーBの攻撃を躱した。すると、クリスはいきなり叫びだした。




「うぉぉぉー!ヴェノム斬りぃぃー!!」




なんと、ハワードが使った特技を真似してみた。しかし、普通に振っただけでの攻撃では出来ない。スネークキラーBは怯む。




【内心:俺の技を真似しやがった……出来てないが】




続けてスネークキラーCがクリスに攻撃を仕掛けてきた。クリスは当たってしまう。




「うわぁ!や、やりやがったな!」




クリスは尻餅をつくが、すぐに立ち上がる。傷をおったクリスを見て、カイルは回復魔法を唱えずに攻撃魔法を唱えた。





「ここは一気に仕掛けます。雷鳴よ、“ザベル”!!」




カイルは“雷の魔法”を唱えた。スネークキラーBに命中し、見事やっつけた。




「攻撃魔法も使えるのか。頼もしいな、残りの一匹は俺に任せろ」





またもやハワードはスネーク斬りを使い、スネークキラーCを一撃で倒した。クリス達は全てのモンスターを倒し、落ちたGを拾った。




「クリスさん傷を治しますね?」




カイルはキールを唱え、少しは浮上したクリスの傷を治した。いつどこで何が起きるか分からないので、回復は常にしておこう。




「ふぅ…ありがとなカイル!なぁなぁハワード!どうだった俺のヴェノム斬り!」




「……だめだな。あれはただ剣を普通に振っただけだ。それに声を出せば出来る訳じゃねぇ」




サラッとキツく言われた。クリスは少し落ち込むが、すぐに立ち直り、やる気を見せた。





「そっか……でもよ、諦めずに絶対に出来るようになってやるぞ!」




「でもまぁ、初めてにしては角度はよかったかもな。すぐに出来るようになるだろう」




クリスの“気合”だけは一人前である。今後の成長で変わるかもしれないが……。ハワードは後から褒めるタイプなのかもしれない。





「僕は魔法がメインなので多分無理ですね。さ、引き続きニーマスへ目指しましょう!」




ニーマスまで、まだまだ距離がありそうだがクリス達は黙々と目的地へと目指した。そして、歩くこと数時間……ようやくニーマスの街が見えてきた。




「あ、見えてきましたよ!あそこがニーマスです」




黙視で確認したカイルは歩きながらニーマスの街を指差し、クリスに教えてあげた。




「はぁ……やっと着いた。おっ!?サマータウンと同じぐらいあるんじゃないか?どんな街か楽しみだな!」




「いや、そこまで広くない。よし、入ったら先ずは情報集めをするぞ?バラバラに別れて、住人に聞き込みをしよう。集合場所は宿屋だ」




流石は王子、冒険の基本を心得ていいる。……なにも知らずに旅を出たクリスとは大違いだ。




「あのぉ……僕はクリスさんと一緒に行きますね。いや、行かせてください……」




クリスを一人にしたら何をやらかすか分からない。クリスが世間知らずだということはハワードはまだ知らない。




「……そうか?なら、俺は一人で行くよ。先に行ってるぜ」




ハワードは先に街に向かって走っていった。せめて街まで一緒に行けばいいのに……。




「俺達も早く行こうぜ!」




「フフッ…急がなくても街は逃げませんよ。それじゃ、行きましょうか!」




早く行きたくてウズウズしているようだ。どんなところか気になるのだろう。クリス達はニーマスの街に入っていった。




ニーマスについたクリス達は街を拝見していた。




「確かにそれほど大きな街じゃありませんね?クリスさん、情報集めを始めましょう」




住人を探し始めた。暫く歩き回っていると、クリスが腰掛けている住人を見つける。




「おっ?いたいた。あそこに座ってる。あのばあさんに何か聞いてみようぜ?」




「そうですね?声をかけてみましょう」




クリス達は歩き疲れて、少しばかり休憩しているおばさんに近付いた。カイルが声をかける前におばさんから話かけてきた。




「なんだいあんた達。アタシに何かようかい?」




「すみません、少しお尋ねします。この辺りで何か変わった事がありませんでしたか?」




カイルは丁寧に聞いてみた。おばさんはこう答える。




「変わった事ねぇ~……そういえば、ここ最近だけど、街の回りにすっかりモンスターが見かけなくなったかねぇ」




「確かに……ここに来る途中モンスターにあんまり会わなかったぞ」




カイルは何かあると思い、深く考える。教えてくれたおばさんに礼を言った。




「なるほど……おばあさん、教えてくださりありがとうございました」




「ウフ……よく見たら可愛い子だね~。女の子かと思ったよ。また何か聞きたいことがあれば言いなさいな。ほな」





カイルは可愛おばさんは立ち上がり、歩いて腰を叩きながらクリス達の前からいなくなった。




「か…可愛いだなんて…//」




カイルは顔面が赤くなり、照れている。それを聞いてクリスは納得するようにこう答えた。




「カイルって男に見えないし、女だと間違われてもおかしくないと思うぞ?」




「ぼ、僕は男ですよ!」




「アハハ!そんなこと分かってるって!さてと、宿屋に行こうぜ。情報は聞いたしな!」




まだ一人しか尋ねてないけど……。だが、なんだかんが言ってると日が暮れてきた。




「そうですね。あまり遅くなると申し訳ないですし、ハワードさんも待ってるかもしれませんからね?」




「ふぁ~……ちょっと早いけど、今日は早めに寝ようかな……眠いぞ」




「ずっと歩いてましたからね。僕も早めに寝ることにします。宿屋に行きましょう」




クリス達は眠たそうに集合場所である宿屋に向かった。


「三人分の部屋を頼む」




「畏まりました。120Gになります」




ハワードは情報集めを終え、一足先に宿屋に着いていた。Gを宿屋の兄ちゃんに手渡した。




「確かに120G受けとりました。ごゆっくりとおやすみください」




「あ、ハワードさん」




しばらくして、クリス達が宿屋に入ってきた。丁度会計を終わらせた後だったようだ。




「丁度いいところに来たな。お前等の宿代は払っておいた。先に部屋で待ってるぜ」




行動が早いハワードはスタスタと先に部屋へ向かった。先程から先に行くことが多いような……。




「ハワードさんを見てると憧れます。なんていうか(たくま)しいです」




カイルはハワードに聞こえない距離で呟いた。すると、隣にいたクリスは素直に思ったことをカイルに言ってあげた。




「俺はカイルの方が充分逞しいと思うぞ?カイルの行動力を学びたいぐらいだぞ」




「えっ?僕なんか全然ですよ……。でも、そう言ってくれると嬉しいです!」




頭脳と丁寧の良さならカイルが上手だろう。クリスとカイルはハワードについていく。




クリス達は泊まる部屋に入り、ベッドや椅子に座って情報集めの結果を話し出した。




「先ずは僕から話しますね?えっと、おばあさんから聞いたのですが、この辺りにモンスターが少ないらしいです」




カイルは聞いた通りに話した。ハワードは納得したように答え、他の予想も話し出した。




「モンスターが少ないか……確かにそうだな。誰かが倒しているか……若しくは何処かに集まっていると俺は思う」




「そうそう?このニーマスの街に来る途中に不思議に思ったんだけど、木の実らしき物がなかったぞ?それが原因なんじゃないかな?」




流石は田舎者(主人公)……そこまで見ているとは……食べ物に関してはモンスター並である。




「なるほど……どちらもありえますね?調べてみる価値はあると思います」




「そうだな。じゃ、次は俺が聞いた事を話すぜ」




今からハワードが話すことは今後の物語に関係があることである。ハワードは話し出した。




「この街の夜中に妙な鳴き声が聞こえるらしい。どんな鳴き声か分からないが……俺は寝ないで、そいつの正体を暴くつもりだ」




ハワードは一睡もせず、姿を隠して見張るつもりでいるらしい。




「不気味ですね……でも、今のうちに仮眠をとった方がいいんじゃないですか?」




カイルは仮眠を勧める。しかし、ハワードは遠慮するように言った。




「いや、その必要はない。俺は夜行性だからな?特に眠たくもないし大丈夫だ」




「じゃあ、夜に備えて俺は今のうちに寝るそま。ふぁ~お休み」




クリスはすぐにベッドの中に潜り込み、一瞬にして眠りに落ちた。……まるでどこぞの天才射撃者である。




「僕も夜に備えて仮眠をとることにしますね?ハワードさん、お休みなさい………スゥスゥ」




カイルはベッドの中に入り、クリスと同じく一瞬にして眠りに落ちた。その光景を見たハワードは驚いたように言う。





「す、数十秒も経たないうちに寝やがった……」




一瞬で寝れるスキルがほしいと思ったのかもしれない。時が流れ、深夜になった。




「ふわぁぁ~……よく寝た。んぁ、カイルはまだ起きてないのか?」





クリスは目を擦り、ベッドから降りて行く支度をする。カイルは起きているがなにやら様子がおかしいようだ。




「起きたなクリス。残念だが、カイルは体調が悪いらしい。だから、俺と二人で行くぞ」




カイルは辛そうに二人に声をかけて謝った。




「ハワードさん、クリスさん……すみません」




「気にすんなよカイル。今は体を治す事だけを考えるんだ」




仲間思いのクリスは優しくカイルに休むように言ってあげた。




「クリスの言う通りだ。さて、そろそろ聞こえる筈だ……。外に出て身を隠し、何者なのか確かめる」




「よぉ~し!俺達が正体を暴いてやるぞ!」




そう言って、二人は宿屋から出ていった。




「大勢で行けばバレる確率は高い……申し訳ないんですが嘘をついてしまいました」





カイルはカイルなりに考えて嘘をついたようだ。疲れが溜まっているせいか、ゆっくりとまた眠りに落ちた。




その頃、クリスとハワードはその正体不明の相手に見つかりにくい所に潜み、姿を隠していた。




「………来ないな」




「そうだな………ん?」




何か聞こえたのだろうか?ハワードは口を閉じる。すると、微かに何かが聞こえてきた。




「ニャハハハハ~」




妙な鳴き声とはこの声らしい。声から判断すると、どうやら女性のようだ。




「女の声だな?何処にいやがる」





「随分と高い声だな?勘だけど、屋根上にいるんじゃないかな?」





ご名答である。女は屋根上から飛び降り、華麗に地面に着地した。




「「!?」」





何故クリスとハワードは驚いたのか?それはこの家の屋根の下に隠れているからである。二人には女の足が見えている。




「さぁ~て、今日はこの家にしようかなっと」




女は見知らぬ家の中に入っていった。




「……家の中に入ったみたいだな?しかし、ノックをしていなかったとすると……こそ泥か。クリス、入口で待つぞ」




ハワードは匍匐(ほふく)して、家の下から出た。クリスも後に続く。




「なぁハワード?その……こそ泥って何なんだ?」




【内心:こ、こいつ……こんな時によくそんなバカな事が言えるな!?】




声を出すと見つかるかもしれないので、ハワードは喋らず女が出てくるのを待つ。




「ちぇ……無視かよ」




状況を把握していないクリスはいじける。家の中からギシギシと歩いてくる音が聞こえる。




【内心:俺は女だからって容赦はしないぜ……取っ捕まえてやる】





因みに二人は入口前に待機している。ハワードは左、クリス右にいる……とその時!




「よいしょ~!ニャハハ!!」




「んがっ!?」




女は家の中から扉を足で強く蹴り、乱暴に開けた。扉の前にいたクリスは女が蹴ったドアに当たり倒れる。




「おっと、逃げ場はないぜ?観念するん――っていない!?」




家の中を見回すが女の姿がなく、中はもぬけの殻だった。どうやら、空き家だったらしい。女はハワードを呼び掛ける。




「残念でしたぁ~!最初からいることは気づいていたわよ~だ!」




いつの間にか外に出ていた。まるで“忍者”のようにすばしっこい女である。




「なっ!?い、いつの間に!?チッ……念のために聞くがお前は何者だ!」




警戒しだしたハワードは剣を抜こうとする。女は隠さず、言われた通りに名を言い出した。




「物騒なヤツ……まぁいいわ。私は“ミレルダ・ユイ”、“泥棒猫”よ~ん」




とてもテンションが高い奴だ。見た目は可愛らしくてスタイルもいい女だがコロッと“口の聞き方”が変わる時があるので恐ろしいかも。歳はクリスと同じ18歳。




「フン……泥棒とか言うが、何も盗めてないじゃないか?そういや、家の中は空き家だったな」




ハワードはユイを挑発するように言ってみた。案の定、多少は怒らせたようだ。




「う…うるさいわね!それ以上喋ったら痛い目にあうわよ!」




ユイは何処からか……“クナイ”を取り出した。クナイとはまた珍しい武器である。やはり、この武器を愛用してるとなれば忍術を極めているに違いない。




「フン、返り討ちにしてやるぜ」




ハワードは剣を抜き構える。すると、倒れていたクリスがドアをどかして立ち上がり、ユイとハワードの間に入ってきた。




「ちょっと待てよ!“人間同士”で争うなんて絶対に駄目だ!俺達の敵は人間じゃないんだぞ!それに、ユイって奴は何も盗んでないから悪い奴じゃないはずだ!」




二人の争い始めようとした光景を見て、止めようとするクリス。ハワードは剣を納め、気を許さずに返事を返した。




「……それもそうだな。だが、過去に何か盗んでいたらコイツを捕まえるぜ?まぁ……何か訳ありなら話は別だが」




「私は何度もこの街に来ているけど何も盗んじゃいないわ。“お父さん”を助けるには“閃光玉”を見つけて盗むしかないのよ……あっ!」





ユイはついつい大事な事を口滑ってしまう。それを聞いたハワードは更に聞き出そうとした。




「閃光玉だぁ~?父親を助けるのに何でそんな物が必要なんだよ?」




「にゃう……つい口に出てしまったわ。だ、誰がアンタなんかに教えてやるもんですか!……あっ?そうねぇ~可愛い子を連れてきてくれたら教えてあげてもいいわよ。ま、無理だろうけど!」





「ふざけてるのか。まぁいい……俺には全く関係ない事だ。じゃあな」





ハワードはユイのふざけた発言で話しにならないと思い、一足先に宿屋に戻っていった。




「わ、私は……」




「なぁ?可愛い子を連れてきたら閃光玉の事や親父さんの事を教えてくれるんだよな?」




クリスはユイに近づき、もう一度確認した。




「フフーン!連れてこれるもんならね!」




「言ったな?よし、今からその可愛い子を連れて来るからそこで待ってろよ!」




そう言って、クリスは急いで宿屋に向かった。誰を連れてくるかは健闘がついてる。




「えっ!?ちょ…ちょっと待ちなさいよ!冗談で言ったつもりなのに!もぉー!」




遊び半分で言ったつもりだったらしい。クリスに待ってろと言われたのでユイは待つことにした。




クリスは全速全身で急いで宿屋に着いた。部屋の前には先に帰っていたハワードがいた。




「ハァハァ…早く行かないと」





「なに慌てた顔してんだ?まさかお前……まぁいいか、好きにしろ。俺は一旦寝る」




「ハワードってよくわからない奴だな…」




クリスはハワードに続き、部屋の中へ入った。嘘をついたカイルが起きていた。




「あっ!?お、お疲れ様ですクリスさん、ハワードさん!ど、どうでした…鳴き声の正体が分かりましたか?」




カイルは呑気に横になってモンスター図鑑を見ていた。ハワードは何も言わずベッドに入り眠りについた。




「ハワードは寝かせてやってくれ。ていうか元気だなカイル」




「えっ!?えぇ…少し楽になりました…うーんうーん」



嘘をつくとこういう気まずくなるので、気を付けよう。クリスは鳴き声の正体をカイルに教えてあげた。




「ふ~ん…まぁいいか?実は妙な鳴き声の正体は女だったんだよ。で、なんか訳があって行動してたらしい。あとーー」



クリスは簡単に話した。カイルはベッドから降りて、クリスにこう言った。




「えと、要するに僕が行けば話してくれるのですね?その…閃光玉の事を。しかし、女性だったとは驚きましたね……とりあえず行きましょうか?」




カイルはこう思った【閃光玉についてなら教えてあげるのになぁ~】と。




「サンキュー!そうと決まれば、急いで行くぞ!」




クリスは部屋のドアを開けて、宿屋から急いでユイがいるところへ走っていった。




「あっ…準備がまだ出来て…行ってしまった。僕も早く行かなきゃ」




カイルはすぐに準備をして、クリスを追いかけた。そして、クリスは先にユイがいるところに着く。





「あ、やっときた!って、ちょっとちょっと!せっかく待っててあげたのに可愛い子がいないじゃない!」




クリスの後ろにはカイルがいない。どうやら早く来すぎてしまったらしい。




「そう急ぐなよ。カイルならもう少しで来るはずだ……ほら来た!」




カイルは嘘で体調が悪いと言っていたが、本当に辛そうになってきたようだ。突然、これだけ走ったら辛くなるだろう。ちょっと不機嫌な様子である。




「ハァハァ……ク、クリスさん……先に行ってしまうと途中で見失い…ましたよ……」




もしハワードだった場合、かなり怒鳴られるであろう。仮にハワードなら見失う事はないと思うが。




「うーん……よく見えないよ」





辺りが暗いのでカイルの姿が見えない。すると、ユイはもっとカイルに近づき、ジーッと顔を見つめた。




「か…か…可愛いぃぃぃぃー!!」




ユイは突然カイルにくっつき、抱き締めた。いきなり抱きつくとは……大胆な奴である。




「うわぁぁぁーー!!ななな、何をするんですか!?!?は、離れてください!!」




急に抱きつかれたのでカイルの顔面は真っ赤っかである。無理やりユイから離れて、カイルはクリスの後ろに隠れる。




「あぁ~照れてる!こんな可愛い子は初めてだよ!」




「可愛いと言ったな!さっきの事を教えてくれ!」




クリスは羨ましいと思わず、閃光玉についてどうしても知りたがっている。




「うっ…そうだった。……ちゃんと聞くのよ」



クリスとカイルは頷き、ユイは少しでも詳しく話すため、少し長くなるが全て喋りだした。




「私のお父さんは“魔王の部下”の“ファンダル”って言うモンスター?に捕まっているのよ。でね?何で閃光玉が必要かと言うとファンダルは多分“光に弱い”の。それに、閃光玉を使うと眩しすぎて目を押さえるでしょ?その隙に父さんを連れて逃げようと思ったわけ……名案でしょ!」




ユイは隠していた事をクリスとカイルに全て話した。カイルは質問をする。




「なるほど、いい案ですね。えと、ユイさんでしたよね?捕まっている場所は知っているのですか?」




また抱きつかれると嫌なのでクリスの背中に隠れながら聞く。




「ホ~ント可愛いなぁ……よく聞いてくれました!捕まっている場所は此処から少し離れた所にある“隠し地下”だよ。正確に言えば“迷路地獄”ね。……ハッキリ言って絶対に迷ってしまうと思う。ほら、これで私の隠し事は全て話したわよ?」




ユイはカイルの顔をニコニコと見て今にもまた抱きついてきそうだ……ある意味怖い。




「地下って何だ?カイル教えてくれないかな?」




クリスは右手で頭をポリポリとかき、カイルに申し訳なさそうに聞く。




「え~と……地下とは地面の下にある事を示していますね?簡単に言えば“秘密基地”みたいなところです。一応念のために迷路について話しておきますね?迷路とは迷いやすい道を示しています。また、入り込むと迷って出られなくなるような所ですね?クリスさん、分かりましたか?」




カイルは詳しくクリスに教えてあげた。ユイは【えっ!?】という表情をしている…無理もない。




「ふ~ん…ややこしい所なんだな?なんとなくわかったよ。ありがとなカイル!よし、決めたぞ。ユイの親父さんを助けに行こう!」




クリスは思いきった事を言い出した。困っている人を放っておけないのがクリスの良いところであるら。それを聞いたユイは驚く。




「ちょ…ちょっと!何言ってるのよ!?気持ちは嬉しいけど、本気で言ってるの!?生きて出られないかもしれないんだよ!」





ユイは必死に言葉でなるべく止めようとする。クリスは勇者っぽいというか冒険者らしい事を言い出した。




「親父さんはモンスターに捕まっているんだろ?だったら、尚更そのまま放っておく訳にはいかない!それにそこには魔王の部下がいるんだろ?だったらそいつを倒して魔王の居場所を聞き出す!」




「クリスさんの言う通りです。ユイさん、僕達に手伝わせてください!(内心:魔王の部下は絶対に倒せないと思いますが……)」





なんて頼もしい少年達なんだろう。ユイは目を擦り、涙ながらも感謝の言葉を述べた。




「うぅ…さっきの物騒な奴とは大違いだよ…。それじゃ、朝起きたらあの空き巣の家に来て……本当にありがとう」




ユイは涙を溢しながら空き巣の家の中に入っていった。寝床はこの空き巣で過ごすようだ。




「この出会いは運命だと思うな?大魔王の所までもう少しな気がするぞ!」




「いや、今の僕達の力では到底大魔王には及びませんよ……。クリスさん、もっと強くなってから挑みにいきましょう!さ、戻りましょうか」




今の状態で大魔王の所に行けばやられるだろう。クリスとカイルは宿屋へ歩いて戻っていった。




「……………ファンダルだと」




密かにコソコソと盗み聞きをしていたハワード。クリスとカイルにバレないように先に宿屋に戻っていくのだった。




第四章:泥棒猫…街に現る、終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ