「魔法?」「魔力を持つ者が使える魔術です」
クリスとカイルはサマータウンを後にし、ナルム洞窟という所に徒歩で向かっていた。
「なぁカイル?親玉ってどんな奴なんだ?俺には親が玉を持っているようにしか思えないんだけど……」
なにも知らない者が普通に考えれば確かにそう思う……かもしれない。
「えっ……組み合わせただけじゃないですか!えと、簡単に言えばいわゆる“ボス”見たいな事です」
カイルはだれでも分かるように分かりやすく教えてあげた。しかし、クリスは更に聞いてくる。
「え~と…ボスって何だ?」
ボスと言う意味すら知らなかった。カイル少し呆れ果てた表情で更に詳しく教えてあげた。
「うーん……ボスとは普通のモンスターより数倍強くて、大きいのが多いです。なので、気を付けてくださいね?」
「そうなのか!?ん~……けどさ、この辺にいるモンスターって大したことなかったし大丈夫だろう!」
彼は何を言っているのだろうか……クリスはまだプライム一匹としか戦ってない。
【内心:本当に大丈夫なのかな……不安になってきた……】
肩を落とし、トボトボと歩くカイルであった。
「ん?なぁカイル、あのでっかい穴は何だ?暗くて先が見えないぞ」
クリスはとある穴を見つけた。その穴とはもちろん洞窟のことである。 カイルはただただ聞かれたことを教えてあげた。
「ク、クリスさん……アレが洞窟ですよ……」
カイルは深い溜め息を吐く。すると、クリスはウキウキ気分でこう言った。
「おぉーアレが洞窟か……よし!早速入って見ようぜ!何が出てくるかワクワクするぞ!」
一人だけテンションが高いクリス。カイルはクリスの目を見て、真剣な表情でこう言った。
「クリスさん、この中にいるモンスターは今までのモンスターより強くなっていますので慎重に行きましょう」
カイルの言葉にクリスの反応はやはり明るく答える。
「おう!あっ?そうだ!先ず洞窟の中に入ったらお宝を捜そうぜ?」
彼はどうしても宝が欲しいらしい。宝の中身に何が入っているのか気になるのだろう。
「アハハ……その元気を僕に分けてほしいですよ。宝をですか?う~ん……そうしましょうか。それじゃ、行きますよ!」
カイルは少し悩んだが、宝を探すことにした。クリス達はナルム洞窟の中に入っていった。
ナルム洞窟に入った二人は辺りを見回す。しかし、暗くて何も見えないようだ。
「カイル~暗くて先が何も見えないぞ。こういう場合はどうすればいいんだ?」
クリスは先に進みたいが進めず、カイルにどうすればいいか聞いてみた。
「ちょっと待ってくださいね。暗くてよく見えないなぁ……この辺にないかな……あった!」
カイルは手当たり次第地べたに手を差し伸べて、とある落ちている物を拾った。いったい何を拾ったのだろうか。
「おぉー!それって“松明”じゃないか。なるほど、それで明るくするんだな!」
なんと、クリスは松明の事を知っていた!田舎者だからだろうか……。すると、カイルはブツブツと何か言っている。
「これをこうして………“ガルス”!」
カイルは予め持ってきておいた布と灯油を松明に巻きつけ、“火の魔法”を唱え松明に火をつけた。もちろんクリスの反応は――
「う……うぉぉー!!なんだ今の!?スゲェー!!カイル!!今のは何だ!?!?」
カイルに寄りそい、キラキラと目を輝せてカイルを見つめる。余程珍しかったのだろう。
「ちょ……クリスさん近いですよ!今のは魔法です。ガルスと言って火の魔法ですね」
あまりにも近いので、カイルはクリスから少し離れる男同士でも恥ずかしいらしい。
「魔法って言うのか!凄いな……あっ?俺も魔法って使えるのか!?」
クリスは興味津々で聞いてくる。ちょっと言いにくそうに、カイルはクリスにこう答えた。
「うーん……僕は父から教えてもらいましたので何とも……あっ?こういう噂を聞いたことがあります。詳しくは分かりませんが、確か何処かの“神殿”に“職業・転職”してくださる所があるみたいですよ?例えば~“剣士”、“ぶどうか”、“魔法使い”、“そうりょ”僕にはこれぐらいしか分かりません」
「そっか……じゃあ、その神殿とやらを見つけたら一緒に行こうぜ!おっと……そろそろ先に進むか」
クリスは内心【ぶどうかになってみたいな!】と思っていた。……恐らく無理だろう。
「そうですね、クリスさんが良ければ喜んで!よし、準備が出来ましたので行きましょうか」
この2人の冒険はまだまだ続きそうだ。クリスとカイルはナルム洞窟の奥に進んでいく。
「フンフンフフーン……ん?」
呑気に鼻歌を響かせるクリス。すると、なにかを見つけたのか?クリスは立ち止まった。
「あれ?クリスさん、どうかしましたか?」
止まったクリスを見て?マークを浮かべるカイル。クリスはこう言った。
「ん~あの物体は何かなぁ~って思ってさ」
クリスはある物体を指差す。
「ちょっと借りますね?……む?あれはモンスターですね。まだ気づいてはいないようです」
カイルはクリスが持っている松明を借りて、よく照らしてみた。その物体とはモンスターだったのだ。カイルは松明をクリスに返し“ポケット”から“モンスター図鑑”取りだして広げる。
「なんだそれ?」
不思議そうにカイルが出したモンスター図鑑を見る。
「モンスター図鑑です。倒したモンスターが自然にこの図鑑に記録される不思議な本です。え~と…あのモンスターは載ってないとすると……初めて見る奴ですね?やっつけましょうクリスさん!」
「へー便利な本だな?おっ!倒すんだな!よーし、おいモンスター!!」
クリスとカイルは戦闘モーションに入った。初めての共同バトルが始まろうとしていた。
モンスターの“ブルック”はクリスの呼び掛けに気づき、襲いかかってきた。
「スゲェ……“犬”が走ってきたぞ!あっ…モンスターだったな」
向かってくるブルックは犬にそっくりなので、クリスは一瞬だがモンスターだと言うことを忘れていた。
「よし、1匹だけなら……」
カイルはブツブツと呪文を唱え始める。すると、向かってきたブルックは棍棒でクリスに強く振り降ろしてきた。
「うわっ!?ににに……なんのぉー!!」
鉄の剣で受け止め、棍棒を振り払いブルックの腹を切りつける。ブルックは怯みクラクラ状態だ。
「やりますね!凍てつく氷よ……“フィル”!!」
カイルは“氷の魔法”を唱え、ブルックに命中させた。ブルックはバタッと倒れ、2人はブルックをやっつけた。
「おぉー倒したぞ!やったなカイル!これが仲間という奴だな!」
クリスはとても嬉しいのでカイルの手を握る。倒したのが余程嬉しかったようだ。
「クリスさん大袈裟ですよ//モンスターがGを落としましたね。拾いましょう」
クリスは照れているカイルの手を離し、ブルックが落としたGを拾った。
「え~と……1、2、3(以下略)10Gか……少ないな」
なんと、あのクリスが10Gを少ないと言った。……少しは成長したと思う。
「1匹だけだったんで仕方ないですよ?クリスさん、さらに奥へ行きましょう」
クスクスと微笑むカイル。カワイイ
「そうだな?よし、先へ進もうぜ!ふむふむ、なるほどな、モンスターが多ければたくさんGが貰えるのか……なるほどなるほど」
ブツブツと呟きながらカイルと共に奥へと歩いていった。そして、しばらくするとクリスは突然大声で叫びだした。
「お…お…おぉー!?ア、アレはもしかして!!」
クリスはある物を見つけたので、ある物の近くまで走っていった。
「わわっ…クリスさん声が大きすぎますよ!というかあの反応……僕にはわかります」
カイルはクリスが見つけたある物の事を察していた。……誰でもわかる筈です。カイルはクリスの後についていく。
「おほほ~やっぱりだ!カイル!宝箱があったぞ!」
やはり、クリスが見つけた物は宝箱だった。皆さんは当たっていたでしょうか。
「アハハ、当たってました。クリスさん、せっかく見つけましたので中身を見てみましょうか」
カイルも実は中身が気になるようだ。クリスは楽しみそうに宝箱をパカッと開けた。
「ザックザッ……えっ……何だ……中身は50Gだけかよ……」
クリスは宝箱の中身にGがたくさん入っているんだと思ったのだろう。
「50Gだけでしたか。でも、“宿屋”代ぐらいにはなるんでちょうどいいですね」
「それもそうだな……よし!先に進もうぜ!」
クリスは開き直り、明るくテンションを上げた。が
「あのぉ~クリスさん……。先は行き止まりなんで戻りましょうか」
無知なクリスくんは宝箱に集中していたせいか、全く前を見ていなかった。
「あ……ハハハ!すまんすまん!気を取り直して行くぜ!!」
照れるクリス。カイルは苦笑いしクリスの後ろについて行く。すると、何かが走ってきた。
「うわわ……モンスターが飛び出してきた!?って小っさ!?」
2匹のモンスターがクリス達の目の前に現れた。見たところ、かなり小さいモンスターのようだ。
「アレは“チビまどう”と“チビけんし”ですね。くっ、僕にとって厄介なモンスターなんですよ……。アイツ等には攻撃魔法があまり効果がないんです」
カイルはとても困った表情をしている。それを聞いたクリスは自信満々にこう答えた。
「心配すんな!俺がいるから大丈夫だぞ!お前等、チビだからって容赦はしないぞ!」
2人は武器を構え、戦闘モードにはいった。
「魔法が効かないなら、これで行きます!………“マックル”!」
カイルはクリスに“防御力”を上げる魔法を唱える。すると、チビけんしはクリスに向かって攻撃を仕掛けてきた。
「うぁぁ!?あ、あれ?あんまし痛くないぞ?こりゃいいや!今度は俺の番だぞ!うりぁぁー!!」
カイルが唱えた魔法をクリスは気づいていないようだ。クリスはチビけんしに向かって剣を振るが見事に躱される。
「やはり動きが速いですね……それならっ!」
カイルはとある“呪文”を唱え始める。しかし、チビまどうがカイルにガルスを使ってきた。
「っ……これぐらいじゃやられませんよ。よし、クリスさん行きますよ!"スピード"!」
カイルは味方全体の動きを速くする魔法を唱え、クリスの素早さをあげた。
「小さすぎて当たらないぞ。……ん?おぉー!なんだか体が軽くなったぞ!?これならなんとかなるかも!」
クリスは身軽になった体で素早くチビまどうに向かっていき、剣を力強く振り下ろした。見事に命中し、チビまどうを倒した。
「初めてだったので、上手く使えてよかった……あっ!?クリスさん後ろです!」
カイルはクリスに呼び掛けるがチビけんしの攻撃が一歩早かったようだ。クリスの背中に命中してしまう。
「ぐぁ!いつつ……今のは効いたぞ……倍返しだ!こぉんの野郎!!」
クリスはガクッとヨロつくが、体制を建て直し、素早い動きでちょこまか動くチビけんしに渾身の一撃を突きつけた。急所に当たり、チビけんしを一撃で仕留めた。
「大丈夫ですか!?」
カイルは傷を負ったクリスの元へ駆けつける。クリスは“傷口”を押さえていた。
「イテテ……怪我なんかしたの久々だぞ」
「背中に傷が……待っててください。今僕が傷を癒します!癒しの恵み……“キール”!」
カイルは“回復魔法”を唱えた。するとクリスの傷口がみるみる消えていき、綺麗に傷跡がなくなった。
「えっ……痛みがなくなったぞ!今の魔法は回復魔法か……へへ、カイルはなんでも使えるんだな。ありがとな!」
クリスは体を左右に動かして元気なった表情を見せたあと、カイルに礼を言った。
「仲間として当然ですよ。クリスさん、落ちたGを拾いましょう」
二人で散らばったGを拾い上げていく。今回は先程より多くGが落ちたようだ。
「45Gか……前に倒したモンスターよりかなり貰ったな。ん?ということは事は俺達は前のモンスターより強いモンスターと戦ったことだよな?」
ニヤニヤと苦笑いを浮かべる。クリスは強いモンスターを倒したことが余程嬉しいのだろう。
「岩石のロックベルがいない……だと。お前達が倒したのか?いや、聞くのは後にして瀕死状態のお友達を助けるのが先だな」
現れたのはいかにも生意気そうな見た目をしている“謎の青年”だった。クリスは謎の青年に礼を言う。
「誰だか知らないけど助かるよ……っ!!」
クリスは左足を押さえる。謎の青年はゆっくりとカイルを持ち上げておんぶした。
「お友達を運んでやる。……ん?何だ、お前は足を怪我してるのか?肩を貸してやりたいが、人手不足だ。おい、この先に“城”があるから自力でついてこい」
そう言って、謎の青年はカイルをおぶったままロックベルが塞いでいた出口からナルム洞窟を抜けて去っていった。
「お、おい!?ちょっと待ってくれよ!……行ってしまった……うぅ……城って何なんだよ!?」
クリスは城と言う言葉を初めて聞いたようだ。当然、城について全く知らなかった。
「どうしよう……このまま此処にいたら危険だよな。あいつに付いていくか……イテテ」
クリスはゆっくりと立ち上がり、足を引きずりながら洞窟を後にした。暫くすると眩しい太陽の光が見え始めた。
「うわっ……眩しい。なんか、久々に出た感じがするぞ。……何だあれ?」
クリスが見たのは大きな城だった。しかし、クリスには城だという事をわかっていない……と思いきや、珍しく鋭い勘で当てる。
「デッケェ~!!なんなんだあれ……あっ?もしかして城って奴かもしれないな?よし……行ってみるか」
歩くペースが遅すぎたせいか、よくよく見たらカイルを抱えた謎の少年はいなかった。クリスはゆっくりゆっく~りと城に向かって歩いていくのであった。
第二章:洞窟を潜む親玉、終