「武器屋?」「武器が売ってるお店です(呆)」
「よし、決めた!アキナ、兄ちゃんはこの世界の危機を救うため大魔王を倒してくる!」
何を考えてその発想が出てくるのか?クリスは突然立ち上がり、拳をギュッと握り締め、誰かの台詞をパクったような言い方で言う。すると、あまりにも突然だったので、妹のアキナは理解出来なかった。
「えっ…どうしたのお兄…?熱でもあるの?ちょ…そんなにすぐ支度して急すぎるよ!確かに魔王は存在するけど、世界がどうなっているとか知識とかお兄は何も知らないでしょ!」
「それは…な、なんとかなるさ!」
この言い草だと本当に何も知らないようだ。それからアキナが何を言ってもクリスは旅に出ると言い出し、アキナはやむを得ず了承した。
「あぁ…もう!何を言っても聞かなそうだね。分かった、もう止めないよ。……辛いと思ったら帰ってきてね。それと、妹としてこれだけ言わせて……死んだらどうもこうもないんだから」
「うっ…分かっているよ。そこだけは常に気をつけるようにする。でも、少しは安心してくれよ。それにアキナも知ってるだろ?俺は体力だけは自身があるってことさ」
「体力だけね。お兄は優しくて人想いなところが取り柄だから…人には好かれると思う。駄目なところは世の中の事について全く学ばなかったところだけど……」
クリスは村の仕事を真面目にこなしつつ、日々のんびりと生活していただけなので、村以外の事は何も知らない。しかし、彼等の両親は凄い人物だった事はクリス…だけが知らない。
「うっ…それは…ま、学ぶ必要がないと思ったからだ!でも…今となってちょっと後悔してるかも……」
なのに旅を出ると言い出したのは謎である。こんな少年が果たして大魔王を倒す事が出来るのだろうか……。クリスは支度を済まして家を出た。アキナが見送りに出てきれくれた。
「気をつけてね。さっきも言ったけど、辛くなったらすぐに帰ってきてね。まぁ、お兄は諦めることが大嫌いだから…それはないかな」
「そういうことだ。それじゃ、行ってくる!留守番頼むな!」
そう言って、クリスはアキナに別れを告げ、パトリック村を後にした。
「全く…あの自信はどこから出てくるんだろうね。やっぱりお父さんかな……あ、いけない!“お父さん”の“御守り”を渡しておけばよかっ…あれ?」
“父の御守り”とは一体何だろうか…アキナは家の中に戻っていった。
クリスは村から出たのはいいが、ある事に困っていたの。そう、パトリック村しか知らない彼は目的地すら分からなかった。
「参ったな……これから何処に行けばいいんだろう?村から出たことないんだよな……」
行き場所が分からず、早くも積んでしまう。クリスはアキナに内緒で持ってきた“地図”を開いた。
「どれどれ……おっ?向こうの方角に街があるな!とりあえずそこに行ってみるか」
目的地を確認し、地図を仕舞うとクリスの前に“モンスター"の“プライム”が現れた。
「うわっ!?何だコイツは…ハッ!?コイツがモンスターとか言う奴だな!よし、かかってこい!」
攻撃を仕掛けないクリスはプライムに挑発をする。すると、プライムはクリスに体当たりをしてきた。
「おっと…何だ何だ?モンスターってこんな程度なのか?こんな奴、俺の拳で一発だ!」
余裕な表情…クリスはプライムに正義の鉄拳を当て、クリスはプライムを倒した。
「呆気ないなぁ…もしかして大魔王って大したことないかも!ん…何だコレ?」
クリスはプライムを倒したので“G”が落ちている。…クリスはGを拾う。
「光ってるぞ…モンスターの体内に入ってるレアな物なのかな?何だか知らないけど持っておくか」
Gを袋の中に入れ、ある町に向かったクリスだが、パトリック村ではGがない。食べ物などは自然に栽培しているので完全なる“田舎者”…本当に大丈夫なんだろうか。
クリスはあれからモンスターに会わずに“サマータウン”という街についていた。運だけはいいのかも…。
「村の近くにこんな街があったんだなぁ~…さて、俺はこれから何をすればいいんだ…あっ?そう言えばじっちゃんがなんか言ってたな?え~と…何だっけ…そうだ!武器”だ!」
じっちゃんとはパトリック村にいた“老人”である。因みにクリスに伝えた言葉とは「クリスよ、冒険には武器が大事だからのぉ…武器が欲しい時は――」
――からはクリスは話を聞かず家に向かった。人の話は最後まで聞こう。
「武器って何処で手に入るんだろう?誰かに聞いてみるか。いたいた……あのぉ~ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
この街の住人だろうか?偶然ブラブラと歩いている老人を見つけた。クリスは見知らぬおじいさんに声をかける。
「あぁ~ん?なんだオメェ~……ワシに何の用だ」
「あのさ、武器って何処にあるんだ?」
武器屋も知らない主人公……妹にナメられている事がよくわかる。じいさんはフッと軽く笑い、クリスに言ってやった。
「ダハハッ!オメェ~相当なバカじゃな!まぁいいじゃろ…武器は武器屋にあるぞい?ここから真っ直ぐ行くといいじゃろ」
クリスは老人にバカにされた。笑われて当然だ、武器屋を知らないのが悪い。
「おいあんた!バカとは失礼だぞ!よぉ~し、真っ直ぐだな?ありがとな!」
初対面でタメ語聞くのも失礼だと思うが…。クリスは礼を言って武器屋がある方面へ走っていった。無知でもお礼はちゃんと言えるみたいである。
「困った時はお互い様じゃ。さて、ギャルをナンパしてくるかの……ヒヒヒ」
親切なおじいさんだったが、中身はなかなかのスケベじいさんだったようだ。
クリスはキョロキョロとただただ武器屋を探していた。
「ん~多分この辺りだと思うんだけどなぁ……武器といえば“棍棒”だし……おっ?」
普通なら“剣"と言うべきだ。クリスはやっとこさ武器屋を見つけた。
「間違いない!武器屋って書いてあるし此処だな!」
失礼だと思うが、字は読めるようだ。クリスは嬉しそうに武器屋の中に入っていく。
「おう!いらっしゃい!」
怖そうな武器屋の店主だ。クリスは棍棒を探す。
「なんか…包丁らしいのがいっぱい置いてあるなぁ?え~と棍棒…棍棒っと…あった!」
剣の事を包丁と呼ぶ時点でこの先やっていけるのだろうか…。クリスは棍棒を手に持ちそのまま立ち去ろうとする。
「え……オ、オイ!テメェ!何処に行きやがる!戻ってこい!」
クリスは金を払わずに出ていこうとするので武器屋のおっちゃんに注意される。……当然である。
「金?……金って何だ?」
彼は家に帰った方がいいかも…。すると、クリスの袋からポロッと1Gが落ちる。
「ハァァァァ!?か、金を知らないだと!?そうか、分かったぞ。パトリック村から来た田舎者だな?だが、金ぐらいは知っているはずだが……ぐぐ……どう説明すりゃいいんだ…ん?それだ!今落ちたのが金だ!」
ナイスタイミングである。武器屋のおっちゃんはクリスの袋から落ちた1Gを指差した。
「これか?これが金って言うのか……なるほど」
金について少しだけ学んだようだ。クリスは落ちた1Gを拾う。武器屋のおっちゃんはクリスにどう言えばいいのか悩んでいた。
「言いにくいな。簡単に言うとだな?その金に1と数字が書いてあるだろ?棍棒を買うには50Gが必要だぜ」
クリスに詳しく話す。武器屋のおっちゃんが可哀想なので名前をつけてあげよう……“ウィルソン”だ。
「50G?え~と2個あるから2Gだな?……足りないぞ」
プライムを倒しただけで買えるなら苦労しない。ウィルソンが店の前に出てきた。
「足りないなら棍棒を返してもらうぜ?頑張ってモンスターを倒してくるんだな」
ウィルソンはクリスが持っている棍棒を取り上げた。
「ぬぁ~~何て面倒なんだ!世界を救うんだからタダでいいじゃないか!」
「バカ野郎!こっちは生活がかかってんだ!買えないなら帰れ!」
ウィルソンはクリスを掴み、武器屋から放り出された。
「イテテ…乱暴なオッサンだなぁ。とりあえず、棍棒を買うにはGを集めるしかないのかぁ……よし!」
ヤル気が出たのか、クリスは立ち上がり大きな声で叫んだ。
「モンスターを倒しまくって棍棒を買うぞーー!」
クリスは大声で叫び、周りにいる民にクスクスと笑われる。すると“杖”を持った一人の少年がクリスの元へ近付いてきた。
「ん?誰だアンタ?」
クリスは首を傾け、少年に誰なのか尋ねる。少年は笑顔で挨拶をしてきた。
「初めまして、僕は“ディア・カイル”と言います」
礼儀正しくクリスに自己紹介する少年の名はディア・カイル、歳は16歳でとても頭がよく、大人しくて“可愛らしい”少年だ。
「ふ~ん…カイルね?それで、俺に何か用があるみたいだけど?」
相手が挨拶をしてきたのにクリスは自己紹介をせず用件を聞く。カイルはクリスにある事を聞いてきた。
「実はアナタに頼みがあって声をかけました。噂で聞いていると思いますが、サマータウンの近くに“ナルム洞窟”がある事をご存知ですか?」
「う~ん……初耳だな?そもそも洞窟って何だ?」
洞窟の名を知らず、意味すら知らないクリス。カイルは内心の中でこう思った。
【内心:えっ…この人冗談で言ってるのかな?洞窟を知らないなんて……田舎の方が洞窟とか近そうなのに……高原とか、そういった場所の民族育ちなのかな?一応話しておこう】
クリスは正直に言ったまで。カイルは詳しく洞窟についてクリスに教えてあげようと思い、分かりやすく言ってあげた。
「簡単に言えば洞窟とは暗い所でとても広いですね?それに捜せば“宝”やGがあります。ですが、モンスターがいますので油断は禁物です」
「おぉ~なるほど!それで、その洞窟ってサマータウンの近くにあるんだろ?」
クリスはカイルが言った宝とGが気になっている。手っ取り早く言えば、今すぐにでも洞窟に行きたいらしい。すると、カイルは深刻な顔でクリスにこう言った。
「その通りです。話を戻しますね?僕の頼みはその洞窟に道を塞いでいるモンスターの“親玉”がいるみたいなんです。先に進むにはその親玉を倒すしかないんです。ですので、僕に協力してくれませんか?」
カイルは頭を下げる。クリスにどうしても協力してほしいようだ。すると、クリスは喜んでこう答えた。
「ふっふっふ…このバット・クリス、宝かGの為なら何だってするぞ!だから、カイルに協力するぞ!あ、でもちょっと頼みがあるんだけどいいか?」
このタイミングで自分の名前を言う。クリスはカイルに何か頼みたい事があるようだが……大体は予想できる。
「あ、ありがとうございます!クリスさん!えっと…頼みですか?僕に出来ることなら何でもしますよ」
「そっかそっか!じゃあ、Gを譲ってくれ!」
案の定、やはりお金だった。
「Gをですか?これから一緒に倒しに行くのですからもちろんいいですよ。あっ…1000Gしかありませんが足りるでしょうか?」
「そんなにあるのか!スゲェー……助かるよカイル!じゃあ、武器屋に行くからついてきてくれよ」
つい最近知ったばかりのクリスにとって、1000Gは大金である。クリスとカイルは武器屋に入っていった。
「いらっ――何だ、またお前か……金はあるんだろうな?」
またクリスが来たので、ウィルソンはガッカリな様子。クリスは自慢するよう鼻を高くして言ってやった。
「へへ~金なら1000Gあるぞ!余裕で棍棒が買えるぜ!」
【内心:こ、棍棒!?よりによって何故弱い武器を……】
棍棒は使い方によっては強い武器だが、クリスには使いこなせないと思う。カイルはちょっとだけ不安になっていた。
「ほぅ~…結構あるじゃねぇか?けどよ、棍棒より剣の方がオススメだぜ?なぁ~カイル」
少しでも儲かるためクリスに高い物を選ばせるウィルソン。どうやらカイルとは知り合いらしい。
「そうですね。僕も剣の方がいいと思いますよ?棍棒では恐らく洞窟にいる親玉には効かないと思います」
カイルはどうしてもクリスに棍棒を買わせたくないらしい。クリスは残念そうにこう言った。
「剣ってその包丁のこと言ってるのか?切れ味悪そうだなぁ……でもまぁ、そこまで言うんなら棍棒は辞めとくよ。じゃあ、その剣というやつで」
どうやらまだ包丁と思っているらしい。クリスは人差し指でスゥーっと剣を指差した。
「包丁って…。む、お前にしてはなかなかいい物を選ぶじゃねぇか?コイツは“鉄の剣”という名で、始めたばかりの冒険者にはかなり売れてるぜ?値段は10……いや500Gだ」
本当は1000Gなのだがウィルソンは半額に値下げしてくれた。この人は案外いい人かもしれない。
「500Gって事は半分だな…1…2…3(以下略)これでいいか?」
1枚1枚数えて時間が掛かったが、クリスは500Gをウィルソンに渡す。ウィルソンはクリスからGを受け取った。
「丁度だな?まいどあり!ほら、持っていきな」
ウィルソンから渡された鉄の剣をクリスは手に取り、直ぐに装備した。クリスはとても嬉しそうだ。
「うぉぉー!棍棒より重いけど、この剣の方が良いかも!ありがとなオッサン!そんじゃ!」
「あっ…クリスさん待ってくださいよ!おじさん、色々とありがとうございました。失礼します!」
そう言って、二人は武器屋を後にした。
「……あの真面目なカイルが変わった奴を選ぶとはな?まぁ…これから大変になるだろう。クリスとか言ったなアイツ…へっ、覚えておいてやるぜ」
クリスとカイルは“なんでも屋”に行き全てのGを使った。それから時間が流れ準備万端。そして、ついに洞窟に行く時がきたのであった。
第一章:旅に出る少年、終