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帰り道の花田さん

作者: 紀ノ月

僕は、昼休みに弁当を食べながら友達と駄弁っていた。最近遊んでいるゲームとか、来週のテストとかについて話した後、1人の友達がこう切り出した。


「なぁ、この高校に伝わる都市伝説知ってるか?」

「都市伝説?そんなのあるの?」


都市伝説なんてものはまやかしに決まってるし、科学的根拠がない。誰かの勘違いでしたってケースがほとんどだ。ちょっと、興味ある風を装ったのは、友人の名誉を守るためだ。


「帰り道を夜に1人で歩いていると、「コッ…コッ…」って後ろから花田さんの足音がする事があるらしいぞ。 」

「へぇ!」

「といっても、いくつかルールがあるらしい。」

「ルール?」

「ルールその1、足音を聞く可能性があるのはこの高校に通う男子生徒であること。」

「男子だけなのか。」

「その2、花田さんの足音を聞くのは1日だけ。いつかの帰り道に聞いたら、それ以降聞くことはない。」

「1日だけ笑。そしたら、その1日さえ我慢すれば怖くなんかないな。」

「その3、 足音がしている時に振り返ったら死ぬ。」

「…ベタだなぁ。」

「ベタ言うな。死人が出なきゃ面白くないやろ。」


友人の物騒な発言は置いておくとして、都市伝説は、人々の恐怖心を煽るために「振り返ったら死ぬ」とか、「怪物と目が合ったら死ぬ」とか。「○○したら死ぬ」というのがよくある。そんな簡単に人を殺すな。人の命を大事にしろ。バカヤローと声を大にして言いたい。

…まあ、友人の言う通り、死とか命とかが関わってこないと都市伝説として成立しないだろうから仕方ないのかもしれない。


ふと気づくと、友人はニヤニヤしながら、何かを待ちわびるようにこちらを見ている。


「…ところでさぁ、花田さんはどうして幽霊になったの?」

友人はその質問を待ってました!と言わんばかりに、いつもより少し大きな声で花田さんの誕生秘話(?)を話してくれた。要約すると…


35年くらい前、花田さんが一年生の時、同級生のA君が好きになり、告白した。が、「Bさん(同級生。クラスのボス的存在)が好きだからと断られてしまった。


次の日から、花子さんはイジメられ始めた。


主犯格はBさん。といっても、実際にイジメていたのはBさんの手下たち。Bさんの世界においては、A君を好きになる人間は全員邪魔だったのだ。やがて、辛い日々に耐えられなくなり花田さんは遺書を残し、屋上から飛び降り自殺をしてしまった。遺書には、親への感謝、この世への未練、そして、A君やBさんをはじめとしたクラスメイトたちへの恨みが書き連ねてあったという。遺書の最後には「呪ってやる」とも書かれていた。自殺した花田さんは、復讐を果たすため、今でも当時のクラスメイトたちを探しているのだという…


「…信じてないだろ。」

「うん。」

「即答かよ。」

「だってしょうがないだろ。科学的根拠がないんだから。」


丁度その時、チャイムが鳴って授業が始まったから、その話はそれで終わりになった。授業が終わり、部活も終わって、家路を急いだ。


*********************


歩いていて、ふと気づく。いつもなら、ちらほらと人が歩いているはずなのに、今日は1人も歩いていない。しばらくして嫌な予感がした。と、同時に気づいてしまった。1人での夜の帰り道。都市伝説の花田さんの出現条件は、すでに満たされていた。

恐怖が背中を走り抜けた。急いで帰ろうと思った時に、"それ"に気付いた。


「コッ…コッ」


と、足音が聞こえてくる。

初めは気づかなかったが、段々と、音が大きくなっている。誰かいるのか?と思い、振り返ろうとしたところでルール3、「振り返ったら死」を思い出してしまった。


「マジかよ…」


思わず独り言を呟き、溜息をついてしまった。オカルトだとかなんだとか、そういう系の話は信じていないが、それでも死ぬかもしれないと言われたら、振り返るのは怖いものだ。そんなことを考えている間も、


「コッ…コッ」という足音は近づいてくる。


「逃げなきゃ…!」


そう思った。でも、足がすくんでゆっくりと歩くことしか出来なかった。


「コッ…コッ」という足音はだんだんと大きく、甲高く響いてくる。ついには、僕のすぐ後ろまで、その音は近づいてきた。


「コッ…コッ」


「コッ…コッ」


「コッ…コッ」


数分後、僕の家が見えてきた。僕は慌てて、ドアを開けて中に入った。外で足音はしていたが、しばらくするとしなくなり、僕は安堵した。が、万一のことを考え、きちんと鍵を閉め、家中の窓も閉めてカギをかけておいた。


1時間後、僕はリビングでくつろいでいた時に、背後に何かの気配を感じた。帰り道ではないから、花田さんでないであろうことは分かった。が、それでも何かが心に引っかかって、振り返ることは出来なかった。すると、

「ねぇ。」と聞こえた。母だった。


「ねぇ。明日何があるか分かってる?」

「え…何だっけ」


すると母は、大きな溜息をついた後に、


「お父さんの誕生日パーティーでしょ!?明日で50歳なのよ!?ちゃんとお祝いしてあげなきゃ!…まぁ、お父さんが50歳ってことは私も50歳になるってことなんだけどね、あ、これは祝わなくていいから。」

「ああ、そういえば明日か。」


内心、呆れながらそう返す。誕生日パーティーって、子供か!


「プレゼントってちゃんと用意してくれてる?」

「あぁ、それなら大丈夫だよ。」

「あらそう、良かったわ。」


そういうと母は満足して台所仕事を始めてしまった。まったく、自己中なんだから…


「もう50歳ってことは、あの人と会ってからもう35年も経つのかぁ…時が流れるのは早いわねぇ…」

なんて、独り言をブツブツと呟きながら玉ねぎを切っている。

少し、暗い顔をしているような気もするが、きっと、自分がもう50歳になってしまったことを悲しんでいるのだろう。年齢なんて関係ないのに…


*********************


翌日、いつもと変わらない1日を過ごして(怖くて花子さんのことは友人に話せなかった)、昨日と同じくらいの時間に学校を出た。

ルールによると、今日以降は花子さんは出ないらしいから安心していた。出ない…はずだった。


「コッ…コッ…」


内心で「またか…」と思いながら溜息をつく。ルールと違う。おかしい。花田さんは一度出たら、もう出ないはずだった。そこから、家に帰るまでの数分間の記憶はほとんどない。


「コッ…コッ」という足音が鳴る恐怖と戦いながら、無我夢中で歩いていた。やっぱり今日も、足がすくんで走ることは出来なかった。今考えてみると、風切り音を耳に捉えることが出来なかったのは、そのせいだろう。


*********************


なんとか、家にたどり着くことは出来た。今日もきちんと、鍵を閉める。


「た…だいま…」

「おかえりー。もうすぐ始めるわよー。」

「うん…分かった。」


怖かった。とても怖かった。でも、なんとか家にたどり着くことができた。誕生日パーティーの準備を眺めているうちに、もう、花田さんは現れないような、根拠はないけど不思議な感覚に襲われていた。

ルール通りに花田さんが現れなかったのは気がかりだけど、二回連続で出たのだ。明日以降はもう大丈夫だろう。そう思った。だから僕は、花田さんのことなんか忘れて、お父さんの誕生日パーティーをめいっぱい楽しむことにした。


*********************


包丁を手にした女が笑っている。


「やっと…やっと復讐できた!」


包丁にはベットリと血が付いていた。女はまるで壊れた人形のように、泣きながら笑っていた。涙がポタポタと落ちる音と、女の笑い声が、しばらく響いていたが、やがてピタリと止んだ。


*********************


「あれ、リモコンどこいったかなー。」朝起きて、俺は、とりあえずテレビを付ける。観ると、ニュースをやっている。アナウンサーが淡々と事件を語っている。


「今日未明、××市の住宅地で、3人の惨殺遺体が発見されました。警察は、3人はこの家に住む父親と母親、高校生の息子であると見て、調べを進めています……」


物騒な事件もあるもんだなぁと、俺は思った。

はじめまして。

この度、小説を書き始めた紀ノ月と申します。

まず、この作品を読んで頂き、ありがとうございました。

ネタバレを致しますと、A君、Bさんというのは、「僕」の両親です。ホラー小説を書いてみたいと思い、「身近な人が過去に誰かを死に追いやっていた」という設定は怖くて良いのではないかと思い、この作品を書くに至りました。

初めての投稿なので、誤字脱字、拙い文章は見逃していただけると幸いです。

では、またどこかで。

(追伸)

読んでくださり、本当にありがとうございました。ただ、これからはホラー系だけじゃなく、色んなものを書いていきたいと思っているので、自由気ままに頑張っていきたいと思います。

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