僕達の理想郷(朔空視点)
「リセ、俺と駆け落ちしようっ!」
もう何年も思いを寄せる幼なじみ・理世に唐突にこんなことを言ってみた。果たしてどんな反応するかな…。
理世の反応を少しドキドキしながら窺うと彼女は、紅茶を変なところに詰まらせたようで、ゴホゴホと噎せていた。うわ、辛そ。ごめんね、そんな反応になるとは想定外だったわ。
「ゲホッ、ゴホンッ、ちょっと朔空!?な、何を言ってるの!?駆け落ちの意味、知ってるの!?」
んー。ここは、予想通りの反応かな。まあ、そうなるよね。
「んー、何となくー?アレでしょ、逃げるやつ。」
俺は、わざととぼけてみた。俺は、理世の前以外ではそこまで馬鹿じゃないし、本当の意味くらいは勿論知ってるよ?愛し合う男女が示し合わせて逃亡することでしょ?
でもね、本当の意味を知ってることがバレたら、きっと君は笑ってこう言うんだ。私達は、そんな仲じゃないと。そしたら、俺は傷ついて、上手く冗談に流せないかも。
でも、俺の中では、これは駆け落ちなんだ。愛する君を守りたいんだ。だから、この言葉を間違えて使ってるフリをすることくらい、許して?
「いきなり、どうしたの?そんな変なこと言い出しちゃって。」
俺は、理世の問いかけに上手く言葉を濁しながら、ここが危ないことを話しておいた。ごめんね、まだ詳しくは言えないかな。きっと、今君が全てを聞いたら、ショックが相当大きいと思うから。でも、君が戸惑いながらも頷いてくれたから、これで安心して連れ出せる。大好きな理世、君は俺が守るからね。君は、絶対にこんなところで、死なせたりしない。
朔空君のおバカな発言は、計画的なものだったんですねー。何気に策士です。