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第1話 すべての始まりは理不尽な置き去り

サクサク更新でがんばります。

 ダンジョン。それは大地の下に広がる不思議な空間。


 無数の魔獣が生息する危険地帯だが、あえて挑戦する者が後を絶たない。

 魔獣から採集できる貴重な素材や、隠された財宝が人々を惹きつけてやまないのだ。


 そして、ダンジョン探索で金銭を得る職業を『冒険者』と呼ぶ。


 数十年前はならず者のような扱いを受けていたが、現在ではギルドも存在する立派な職業の一つである。






 ダンジョン内部には、魔獣だけでなく知的な種族が暮らしていることもある。


 彼らは『魔族』と呼ばれ、人間にそっくりな種類や怪物じみた外見の種類など、幅広い種類が存在している。


 だが、魔族は必ずしも人間に友好的だとは限らない。


 魔族の王――魔王の中には地上を侵略しようと目論む奴もいる。

 実際、魔王によって滅ぼされた国もあるくらいだ。


 そして『悪しき魔王』を討つためにダンジョンを探索する者を、人々は敬意を込めて『勇者』と呼ぶ。






 私利私欲や探究心でダンジョンに挑む冒険者。

 正義感や名誉心でダンジョンに挑む勇者。


 一見すると相容れないように思えるが、実はお互いに手を組むことは珍しくない。


 何を隠そう、俺もその実例である。


 俺はキャリア十五年を誇るベテラン冒険者で、今は勇者パーティに雇われている。

 探索場所はAランクダンジョン『奈落の千年回廊』。

 恐るべき魔王が封印されていると伝えられる難関ダンジョンだ。


 魔王の野望を打ち砕く勇者の戦い。

 それをサポートしたとなれば、冒険者としての俺の格付けも急上昇するわけで――











「――おい起きろ! ルーク! 三流冒険者!」

「げふっ!」


 全力の蹴りをみぞおちにぶち込まれ、強引に眠りから引きずり起こされる。


 とてつもない吐き気を堪えながら顔をあげると、怒りの形相の勇者ファルコンと目が合った。


「げほっ、ごほっ………な、何なんですか勇者様……」

「どうもこうもねぇよ! これを見やがれ!」


 ファルコンが指さした先には、勇者パーティの荷物がまとめて置いてある。それが一体どうしたと……。


「……ああっ! しょ、食料が! 食い荒らされてる!」

「テメェのせいだろうが、このド無能! 魔物に食われまくって半分も残ってねぇ!」


 立ち上がろうとしたところで再び蹴りが飛んできて、容赦なく蹴り転がされた。


 口に入った砂を慌てて吐き出しながら、もっと詳しい説明を求める。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。状況が全く……」

「結界石だ! 魔物除けの結界石! 寝る前にキャンプの中央に置いておけって言ったよな!」

「え、ええ……置きましたけど……」

「位置がズレてたんだよ! お前のせいで、俺らの荷物は結界の外になってたんだ!」


 言われてみれば、確かに結界石が予定と全然違う場所に転がっている。


「おいジュリア! 食料はどれくらい持ちそうだ!?」

「ギリギリまで切り詰めても、探索目標をクリアしてから地上に戻るのは無理かな……」

「だとよ、ルーク! どうしてくれんだ、この有様!」


 ファルコンは更に語気を強めた。

 女剣士のジュリアも責めるような眼差しで俺を睨んでいる。


「一歩間違ったら、俺らの誰かが食われてたのかも知れねぇんだぞ、このクソ野郎が!」


 エスカレートしているところ悪いのだが、ファルコンの認識には決定的な誤りがあった。


「いえ、俺はちゃんと命令通りの場所に置きましたよ」

「はぁ!? 言い訳のつもりか?」

「だってほら。キャンプの中央に石を積んで土台が作ってあるでしょ」


 結界石が置かれる予定だった場所を指さす。


「俺が結界石を置くときはいつもこうしてますよね? 多分、俺が置いた後で結界石の位置が変わったんですよ」


 俺が結界石の置き場所を間違えたんじゃない。

 原因は他にあるはずだ。


「そういえば勇者様。確か夜中に、喉が渇いたとか言って荷物のところに行ってましたよね。そのとき何か蹴っ飛ばしてませんでした?」

「え? あ……そんなことも……あったような、なかったような……」


 ファルコンの声がだんだん小さくなる。どうやら昨晩のことを思い出したらしい。


 俺は結界石を正しい位置に置いてから眠りについた。

 その後でファルコンがうっかり蹴っ飛ばして、適当な位置に戻してしまったのだろう。


 つまり、食料を食い荒らされた責任はこいつにある。俺は無実だ。


「そういうことなんで、あんまり人のせいにしたりは……」

「パラライズ!」

「ぐはあっ!?」


 突然、背後から状態異常の魔法が飛んできて、全身が痺れて動けなくなった。


 魔法を撃ったのはファルコンじゃない。

 パーティの一員である双子の魔法使いだ。


「まったくもう。誰が悪いとかどうでもいいじゃないですかぁ。大事なのは、これからどうするかですよぉ。姉さんもそう思いますよね?」

「う……うん……そうだな……」


 白髪の白魔法使いの方が妹のブランで、黒髪の黒魔法使いの方が姉のノワールだ。


 外見はそっくりだが性格は正反対。

 ブランは明るくて腹黒、ノワールは根暗で流されやすい奴だ。


 ブランはこのとおり腹の立つ性格をしているが、ノワールの方はそうでもない。

 というか自己主張が弱すぎて、良い奴なのか悪い奴なのかよく分からなかった。


「だーかーらぁー。食料が足りないなら、人数を減らせばいいんですよぉ」

「おま、え、なに、を……」

「そーすると、切り捨て対象は決まってますよねぇ。ね? クソザコ三流冒険者さん?」


 麻痺した体で文句を言おうとするが、馬鹿にした眼差しを向けられるだけだった。


 しかも更に悪いことに、ファルコンとジュリアまでもがいい笑顔でそれに賛同し始めた。


「おお! ナイスアイディアだ、ブラン! それでいこう!」

「うん、一人減らせば切り詰めて何とかなるかも!」

「【修復】スキルしか使えねぇ雑用係なんか、ここまで来たらいなくなっても大差ねぇだろうしな!」


 俺がパラライズの魔法の効果でシビれている間に、ファルコン達はさっさと出発の準備を整えてしまった。


「せめてもの情けだ。これだけは残しててやるよ、オッサン」


 足元に刃こぼれだらけの剣が投げられる。

 他の冒険者が捨てていったゴミのような剣だ。


 そして、勇者パーティは身動きできない俺を残し、四人でダンジョン攻略を再開してしまった。


「う、う、うおおお……!」


 パラライズのせいでろくに叫ぶこともできない。


 あいつらの言う通り、俺は三流の万年Eランクの冒険者だ。

 キャリア十五年というのも、十五年間ずっと最下層にいたという意味でしかない。


 使える『スキル』は【修復】だけ。

 ギルドからの評価はいつも最底辺。


 勇者のパーティに雇われたのだって、あいつらが「荷物持ち兼雑用係が欲しいので、死んでもよくて格安で雇える冒険者を紹介してほしい」とギルドに要請したからだ。


 代金は馬を借りるよりもずっと格安。

 俺は最初から、荷運び用のロバと同程度の価値しかなかったのだ。





 それでも……それでも!

 俺は今回のダンジョンアタックに賭けていたんだ!





 勇者パーティの探索を成功させれば!

 冒険者ギルドでの立場も良くなると信じて!


 その結末が、勇者のミスの尻拭いをさせられて追放だって!?

 しかも高難易度ダンジョンのど真ん中で!


 こんなの、いくら何でもあんまりじゃないか!

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よろしければ、平行連載中のこちらの作品も応援お願いします。

「異世界【転校】 ~元問題児の天才児は最高のスクールライフを送りたい~」

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[一言] コミックシーモアで作品を見つけて 面白そうだと思い購入前にお気に入りに入れて こちらを読みに来ました。 序盤を読んで面白かったらコミックシーモアで販売されている 全冊購入をしようと思います。…
[良い点] 普通に面白そう。 [気になる点] 自分の感想がお馬鹿っぽい [一言] 勇者くんパーティーがおバカ過ぎるwww よくぞその歳まで生きながらえてるな…
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