夜が来る
私も年を取った・・・。
誰もいない休日の夕方。
窓の外は雨・・・時間は五時を少し過ぎたところ・・。
自分の部屋でウィスキーのグラスを傾けている。
テレビも電気もつけてなく、薄暗くなった部屋で黄昏ている自分がそこに居る。
”カラン”とウィスキーの氷がはじける音。
♪ダンダンディダン シュビダディンガァ
オデーエエーオー ハァザァ ♪
♪ザンザンディダン シュビダディンガ
ァドンザン ジュビダドーンガ♪
自然とこの曲を口ずさみ、何故か・・涙が一筋頬を伝う・・・。
グラスを傾けウィスキーを口に含む。
若かった頃の思い出が脳裏をよぎり、私はウィスキーを飲み干す。
心地よい酔いが身体を包み・・・
・・静かな部屋の中で、雨の音だけが私の五感に響く。
闇が部屋に忍び込み、私はウィウキーのグラスを手の中で弄ぶ・・・。
♪・・心の中にも 灯がともる
地球が回る 日が沈む・・♪
また私の頬に、涙が一筋伝う・・・・・。
人並の家庭があり、愛する家族がいる。
・・・しかし過ぎ去った青春は、頬を伝う涙と共に私の記憶から薄れて往く。
部屋の中は真っ暗になり、夜が私の部屋を支配した。・・。
”ピンポ〜ン”
家族の楽しげな話声が、私を現実へと引き戻す。
私は笑顔で家族を出迎えに玄関へと足を運ぶ。
「お帰り・・・・・。」
・・・私の部屋にはもう闇はなく、家族の笑い声が響き渡っている・・・。
おわり