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二者択一

私の家の中は、ユウタが一旦帰ってきたというのにとても空気が悪い。

それもその筈だ、自信満々にかけた異世界転移魔法が失敗してしまったのだから、あんなにかっこつけて魔法を使ったのに、上手くいかなかったなんて、恥ずかしい。

土下座したまま制止している私の対応に困りかねたユウタはあたふたしている。

魔法が失敗したのなんて生まれて初めてだった私は、初めての挫折に心が折れそうだ。

「ユウさん、いい加減顔を上げてくださいよお。」

「うるっさいなあ……あんたが良くても私が許せないのよお。何で、失敗しちゃったのお。」

ユウタへの申し訳なさから、いつの間にか自分への憤怒と土下座の目的が変わってしまったが、この際気にしない。というか、本当に自分が情けなくていらいらする。

コンコンと二回ノックの音がすると、入ってきたのは黒髪の魔女、オニキスだった。

「ユウ、そう気を落とさないで。」

しゃがみ込んで私の頭を優しく撫でてくれる。

慰めに来てくれたことが分かり、親友の優しさで私の涙腺は緩みそうになった。

「オニキス……、私なんてダメな魔女よ。すぐに力は暴走させるし、大事な局面で魔法は失敗するし……魔女としての才能、無いのかもしれない。」

「ユウに魔女の才能が無かったら、私なんて生きてる資格もなくなるよ。ユウから魔力の強さをとったら何が残るの?何も残らないでしょ?もっと自分の才能に自信を持って。」

「オニキスさん、それ……ちょっと酷いような。」

折角オニキスが慰めてくれたというのに、ユウタが横からぐちぐちと口を挟んでくる。

多少言葉遣いが乱暴な所がオニキスのチャームポイントなのだ。

「それに、魔法が失敗した理由は必ずしもユウにあるわけではないと思うの。」

その言葉に勢いよく頭を上げる。

オニキスに習って私の頭を撫でようとしていたのか、ユウタの右掌と激突してしまった。

「それって、どういうこと?」

「魔法をかけられる者自身が確固とした意志を持っていると、魔法の効力は薄れるという話をウィルから聞いたことがある。……それで思ったのだけど、ユウタ自身が元の世界へ帰りたいと思っていないのではないの?」

「そうなの?」

二人の魔女に詰め寄られたユウタは困ったように頬をかく。

「そんなこと言われても……そうなのかなあ。」

「帰りたくないと思っていなくても、この世界に留まりたい理由があるとか、やり残したことがあるとか……、そういった理由でも意志は発動するんじゃないかしら?」

ユウタはしばらく思案したあと、思い出したようにハッとする。

「お店……マスターのお店をほっとくのは、ちょっと気がかりかもしれないです。」

「それよ。」

食い気味にユウタの言葉に反応する。

「あのお店が、マスターの力だけで繁盛するお店になったら、ユウタの心配が無くなって元の世界に帰ろうと思えるんじゃないの?」

私の言葉にユウタは信じられないような顔をするが、オニキスは納得したのか何度も頷く。

「私はあながち悪くない提案だと思う。お店のことが気がかりならそれを解決させるのは妙案だ。それに、古ぼけたお店を繁盛させるのは悪いことでもないしね。」

「いや、でも……。」

まだ狼狽えるユウタの首根っこを掴んで無理矢理私と顔を合わせる。

鼻先が触れそうな距離になっても、ユウタの前髪からはその目元は伺えない。

ブラックホールにでもなっているのだろうか。

「マスターのお店、助けるの?助けないの?」

こんなにシンプルな二者択一なのに、何故ユウタが素直に首を縦に振らないのかが不思議で仕方がない。

私に圧倒されたのか、ユウタはびびりながら頷いた。

「た、助けます。」

オニキスも言ったとおり、ユウタが帰る云々は置いといて、お店の復興は決して悪いことではない。それでユウタも元の世界に帰れるようになったら、一挙両得ではないか。

良い魔女ユウ・ライトの腕がなると、私はやる気に満ち溢れて、本当に困った顔をしているユウタのことを見てあげられなかった。


今、マスターの名前を考えています。

実はマスターのお店の名前は前から決まってたんですよね。


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