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天魔屍侠譚  作者: スキャット
第3話「動乱のカルィベーリ」
44/44

3-23

第3話最終回です



「ぐおぉ端から出られん! ハメだろお前これ! ノーカン! ノーカ……ぐあああ!!」


 モニターの中では、雷火の操作するキャラクターが無残な屍を晒すところだった。


「はい余裕〜〜雷火さん雷火さん? ウケる〜〜」


「ちくしょうめぇぇ……」


「貴様ら……」


 乱雑に魔術用品が散らばる、ヴェステライネンの工房。カルィベーリでの一件から数日の間は、負傷者を治すと言って憚らないリリィと共に街の片付けなどを手伝っていた雷火達だったが、それも一段落ついてからはもう何日もここで寝泊まりしていた。朝から晩まで食べて寝て遊ぶだけの恐ろしい怠惰さを発揮して。


「いつまでここにいるつもりだ! 邪魔だ邪魔! さっさと出て行け!」


「仕方ねえだろ他に行くとこねーんだよ、モイの異能で例の魔導書の在処が分かり次第出て行くっての」


「一体いつになるんだそれは! 俺はもう一秒たりとも耐えられんのだぞ!」


「まあまあ先生……」


 だらだらする雷火達に騒ぎ立てるヴェステライネンを、霽月が宥める。


「たまにはこういう賑やかなのもいいじゃないですか、いつも僕達二人じゃあ寂しいですよ」


「助手ゥ! お前の意見は求めていない!」


「あ、そういえば先程カルィベーリから転移要請がありましたが……どうします?」


「何? 誰だ?」


「いえ、分かりません。形式は正規のものですが……」


「ふん……まあいい、通してやれ」


「はい、分かりました!」


 霽月が奥に駆けていく。洗濯物に埋もれたソファに寝転がっていたアルテミスが顔を上げる。彼女も含めて全員、カルィベーリでの負傷はリリィによってすっかり完治していた。


「転移? 誰が来るの?」


「さあな」ヴェステライネンはかぶりを振る。「おおかたカルィベーリの件で支援でも頼みに来るんだろう」


「ファァーック!!」


 想兼がコントローラーを放り投げた。ヴェステライネンが怒鳴る。彼女を一方的に完封したのは、コントローラーを握るリリィだった。


「ふふふふ……勝ちました勝ってしまいましたよ……いやぁすいません! このリリィ! 天賦の才がありすぎて! 」


「ぶぇぇぇ雷火さぁぁんこの女ブッ殺してくださいよぉ〜ッ! ボコボコにしてくだせぇよ〜ッ!」


「よし、愚かな小娘にこのオレが現実というものを教えてやろう……」


 雷火がコントローラーを握った時、奥の部屋から何やら物音が聞こえてきた。


「ちょっと! そんないきなり……あなた誰なんですか!?」


「いいから退きなさい! わたくしを誰と心得ますの!?」


「いやだから誰なんですか!?」


 一人は霽月の声。もう一人は覚えのない女の声だ。揉み合いになっているのか、どたんばたんと騒がしい。


「……何事だ?」


 ヴェステライネンが首を傾げ、雷火達もそちらを見る。全員の視線が注がれるドアが、唐突に開け放たれた。

 現れたのは、一人の少女。軍服のような白い装いに身を包み、縦に巻かれた貴族めいた髪型が目を引く。黄金に煌めくその髪は、どこかラジエルを彷彿とさせた。


「“篠突く雷火”っ!!」


 いきなりその少女が、雷火にびしりと指を突き付ける。


「うぉっ……!? え……はい……?」


「わたくしは誇り高きラジエル様の使徒、シャロン・バプテスマ! 主の命により、貴方がた特別諜報部α分遣隊の監督役として赴任しました!」


 シャロンと名乗った少女は、異様にハキハキと威勢よくまくし立てる。


「わたくしが監督するからには、貴方がたには今後一切の怠惰も堕落も許しはいたしませんわ!!」


「…………。…………は?」


 面食らう雷火達に、シャロンは誇らしげに胸を張った。







 ハワイ諸島、マウイ島。かつて観光客で賑わったその島は、今は生存者なき無人島となっていた。そんな島に忽然と聳える、巨大な建造物が一つ。城や神殿を思わせるその豪奢な建築は、悪魔達が造ったものだった。その目的はただ一つ――『十二の比翼』同盟に名を連ねる魔王達の、会合の場として。

 

 魔王達の会合の場――締め切られた薄暗い広間。備え付けられた巨大な円卓に就く影は、十。人とそう変わらぬものから動物のようなもの、果ては名状しがたい異形までその姿は様々ではあったが、その誰もが常人ではとても耐えられぬであろう覇気、瘴気、あるいは邪気とでも言うべきものを放っていた。彼らは皆、地上を支配する魔王達の中でも一握りの権力者達だった。


「でさぁー……」


 魔王の一人が口を開く。


「誰か見つけたやついない? 『機甲戦記ザイガー』の七巻。マジで状態はどうでもいいからさあー……」


「あー、なんか前に言ってましたっけ。そんなに見つからないんですか?」


「そうなのよ! 七巻、七巻だけ無くて続きが読めなくてさあ!」


「お二方、会議に関係の無いお話は……」


「そうだとも、静かにしたらどうなんだ……!」


「奴ここに来ぬ未だ? 我疲れた待つこと既に……故に我寝る頼む起こす我誰か後で……」


「ちょいちょい、それ見つけたらいくら出すよ? タダってワケじゃねーっしょ?」


「家畜と穀物なら山程、バールなら一千万は出すよ。どう?」


「うっわ、マジで? イかれてるっしょ! 笑うわ! ちょっと帰ったら死ぬ気で探させるわ! マジで!」

 

「ヴォゥッ……ヴォッ……砂……家鴨……北斗七星……ベンガルヤマネコ……花瓶……シシャモフライ……」


「眠いんじゃボケェ!! 早く帰らせろカス共ァ!!」


「ちょっとちょっと、その話こっちも乗っていい? 早い者勝ちだよね? ウチ多分あるよその本」


「うん、見つけてくれりゃ誰でもいいよ」


「はー!? マジかよ! 速攻探させるわ!」


 まるで協調性とは無縁の魔王達は好き勝手に騒ぎ立てる。それぞれの側近がそれとなく注意を促すも、まるで効き目は無い。馬鹿騒ぎをする全員が有り余るほどの権力と暴力を携えているから始末に負えない。誰にも止められぬと思われた騒ぎだったが――。


「…………奴は」


 円卓の一席、岩のように黙りこくっていた一人が口を開いた瞬間、ぴたりと水を打ったように静まりかえる。


「まだ、来ないのか」


「……もうすぐらしいっすよ? 今着いたところだとか」


「……そうか」


 再び腕組みをして黙り込むその魔王の名は、アバドン。北アメリカ大陸のほぼ全域を手中に収める彼は、魔王の中でも更に別格――名実共に世界の主の座に最も近い存在といえた。

 白けた顔をする面々。アバドンによって静寂に包まれた広間に、不意に小さな人影が入ってくる。


「いやいやいや皆様! 遅くなりまして大変申し訳ありません!」


 子供ほどの背丈の、卑屈な笑みを浮かべた男。悪魔ロキだった。


「おっっせェーぞカス!! いつまで待たせんだゴミ!!」


 魔王の一人が放り投げた灰皿が、ロキの頭に直撃する。彼は呻き、だらだらと血を流しながらも顔を床に擦り付ける。


「申し訳ありませんん!! すべてこのあっしの不徳の致すところ!! 何卒ぉ! 何卒お許しをぉ!!」


 哀れっぽく土下座するロキに、嘲笑すら起こらず呆れた溜息の音が満ちた。


「もういいだろう、面倒臭い……。さっさと始めてさっさと終わらせよう」


「さんせーい」


 ロキは血を拭き、いそいそと席に着く。あまりに小柄な彼は、ほとんど円卓に埋もれそうな有様だ。


「おい、あのジジイはまた欠席か?」


「はい、申し訳ございませんん……」


「いや、そう言ってもあの爺さんマジで来ても対応に困るだろ」


「分かるわ〜それ。マジ何考えてんだか分かんねえし」


 未だ無駄話を続ける面々に、進行役の魔王が咳払いをする。


「……本題に入りましょう。皆さん、シェムハザ卿が亡くなられたのはもうご存知ですね?」


 一同、まるで驚いた様子はない。報道やインターネット、どころか交易や国交すら断絶されて久しいが、情報はこの生き馬の目を抜くような魔王同士の潰し合いにおいて、生命線にも等しいものだった。その程度の事はここにいる誰もが知っているだろう。


「知ってるぜ。自害だろ?」


「くくっ……自害、自害、自害ねえ……殊勝なことで」


「あのシェムハザちゃんにも自殺なんてする健気さがあったなんて……泣けるわねえ……」


「映画化するしかねーなこりゃ!」


 意味深な含み笑いをする面々に、もう一度咳払いが響く。


「……ともかく、これで我ら『十二の比翼』同盟は十一人になってしまったわけです。急ぎ次の候補者を見つけなければ沽券に関わります。どなたか候補者を推薦出来る方、いらっしゃいますか?」


「別に十一人でもいいんじゃね?」


「同盟の席が価値あるものだと示したいって話でしょう? 私は特に推薦は無いけど」


「そもそも最初は『七つの比翼』だったのだ。減らせばよいのではないか?」


「我賛成する彼の意見」


「てめぇ俺が友達いねぇってバカにしてんのか!? オォン!?」


「…………どなたか他に意見か推薦は? ………………。…………では、保留ということで……他に議題お持ちの方は?」


「ロキのアホがおっせぇからあらかた話しちまっただろ」


「ひひっ……いひひ……いやいや! 申し訳ございません旦那がた!」


「……えー、それでは、早いですが今日の定例会議は……」


「あっと、ちっとばかし待ってくだせえ、あっしから一つ二つばかりよろしいですかい?」


 グダグダさにげんなりしてさっさと切り上げようとする進行役に対し、ロキが声を上げる。


「皆々様……先日のカルィベーリの一件、ご存知ですかい?」


 一瞬で、空気が乾ききる。

 難攻不落のカルィベーリに悪魔が侵入、甚大な被害を出した大事件。無論、ここにいる誰もが知らぬはずはない。だがこの日、その話題を口にした者は一人もいなかった。何故か? 全員が全員、互いに疑い合い、鎌をかけ、情報を引き出そうとしていたからだ。

 絶対不破の結界に容易く侵入する、誰も知らぬ方法。そのすべを手にすれば、他勢力に対し絶大なアドバンテージを手にできる。逆に取り逃せば、この同盟の席から転がり落ちる……どころか、文字通り寝ている間に首を掻き切られるかもしれない。今、魔王達は常にも増して、極限の緊張状態にあった。

 その緊張を破り、凍てつくような、あるいは焼き焦がされるような魔王達の視線に一斉にさらされても、ロキはいたって平然としていた。


「いやぁ、素晴らしい見世物でした……。誰もが死力を尽くし、生き、戦い、死んでいく……。やはり人間というものはああでなくては。皆さんもそう思いやせんか? ひひっ」


 答えるものは無い。ロキは気にせず続ける。


「……結界を破った悪魔の皆さんには感謝してもしきれやせんなァ……。はてさて、一体どんな方法を使ったのやら。ひょっとして、どなたかご存知で?」


 煽るようなロキの言葉。卑屈なようで意味深なようでもあるその笑みに、さらに空気が乾き冷えていく。


「……おっと!」


 そんな空気を打ち消すように、ロキは頓狂な声を上げる。


「そうそう、忘れるところでした。先日あっしが出した依頼、どなたか覚えていらっしゃいますかねぇ?」


「……依頼、だぁ?」


 一人が怪訝そうに口を開く。ロキは頷き、


「はい。人探しの依頼です。いやぁ、何分あっしは向いてないので、お手伝いいただけると助かるんですがねぇ……。ちなみにその尋ね人、最後に目撃された時は……」


 ロキの口端が、次第に吊り上がっていく。卑屈と自虐の内に浮かぶその笑みは、ともすればこの場の魔王の誰よりも邪悪にすら見えた。


「……カルィベーリにいたそうですよ」







 定例会議が終わり、魔王フルーレティは彼の居城へと帰ってきた。ひと息つく間もなく、彼の副官が声を掛けた。


「はぁっ……ふっ……フルーレティさま!」


 ぶかぶかの給仕服を着込んだ、年端もいかない幼い少女。短い足をせっせと動かしてフルーレティに駆け寄り、舌足らずな声で言う。


「ザレオスさまから転移の要請が! いかがいたしましょおか!」


「……ザレオスから?」フルーレティは少し逡巡してから、「分かった、通してくれ」


「かしこまりました! 迎賓室にお連れしますので、そちらでお待ちを!」


「うむ。頼んだ」


 よちよちと走っていく副官を見送り、フルーレティは迎賓室へと足を向けた。質実剛健、冷静沈着の名将として知られる魔王フルーレティ。意志の強い瞳と男らしい眉が特徴のその顔には、今は怪訝な表情が浮かんでいた。

 一体、ザレオスが何の用だというのだろう。彼はザレオスという魔王が苦手だった。底知れないところがある――というのは他の魔王にも言えることだったが、フルーレティはもっと単純にザレオスの人間性と相容れなかった。

 端的に言えば、ザレオスは軽かったのだ。より正確に言えば――チャラかった。




「オゥィーッス! レティっち! 元気してた〜〜?」


 現れるなり、ザレオスはフルーレティに熱烈なハグをかましてきた。フルーレティはげんなりした顔を浮かべる。


「……先程会ったばかりだろう……」


「あるぇーそうだっけ? ごっめーん! 忘れてたわ! レティっち影薄いからさぁ〜!」


「…………」


 ザレオスの隣には、彼の副官が一人付き従っている。ダークスーツに身を包んだ、氷のような雰囲気の女。ザレオスとは正反対に、一切無駄口を開かない。ザレオスを席に着かせるのに、彼女の助けを借りてもゆうに五分はかかった。


「……で? 何の用だ」


 山札から引いた手札を眺め、フルーレティは口を開く。


「決まってんじゃん。レティっちと遊びに来たんだよぉ」


 ザレオスは場にカードを出す。トランプやチェスならば格好が付いたが、彼らが持っているのは旧世界で親しまれたトレーディングカードゲームだった。流通が途絶えた今、こうして大災厄以前の品々を楽しむのは魔王達の特権でありステータスでもあった。


「御託はいい、本題を話せ」


 フルーレティはザレオスの顔を見つめながら、彼のカードを破壊する。


「つれないなあ……。……んじゃあ言うけど、ロキの話、ぶっちゃけどう思う?」


 ザレオスは場にカードを出す。強力な札だ。今のフルーレティの手札では対抗策がない。


「…………」


 フルーレティは山札からカードを引き、


「……確かにカルィベーリの件は俺も注目していた。あの結界を破る術があるとすれば……興味深い」


「…………。……でっしょぉ? 俺もそこが気になってさぁ!」


「……調べる価値はあるかもしれんな」


 フルーレティはカードを出す。場のカードを手札に戻す効果――ザレオスの札もその例外ではない。


「……ご自慢の諜報部隊で? つってもさあ、一体どこ調べたらいいのか分かんなくね?」


 ザレオスは場に札を伏せて置く。その中身は、フルーレティからは分からない。


「そうだな……。……まず調べるべきは……現地。カルィベーリからだな」


 フルーレティのカードが、ザレオスの裏札を攻撃する。ザレオスはゆっくりと笑み、投了のポーズを取った。


「……やるね。……じゃあそれさあ、ウチも人員するから結果教えてよ。協力体制ってことで、どう?」


「…………。……いいだろう」


 フルーレティはザレオスの最後の裏札をめくろうとしたが、それより速くザレオスがカードを片付けてしまう。フルーレティが顔を上げると、にやりと笑むザレオスと目が合った。







「……よろしかったのですか?」


「何がァ〜?」


 けたたましいダンスミュージックが鳴り響く、ザレオスの拠点。半裸の男女がそこら中に寝転ぶ通路を歩きながら、副官である“静寂(しじま)莫目(まくも)”は、ザレオスに声を掛けた。


「フルーレティ卿と協力体制など結んで。出し抜くはずでは?」


「ん〜、分かってないねぇマクモちゃんは?」


 ザレオスはくるりとターンし、莫目の顎を撫でる。


「あれはお互いにブラフだよ。本当にカルィベーリに草を忍ばせるなら、俺に素直にそう言うはずがないっしょ?」

 

 莫目はその手を払いのける。


「……では、本命は別にあると?」


「そ。俺が注目してるのは、ロキの話の後半……人探しの件。前に聞いた時は何のこっちゃだったけど、これでようやく分かった。ロキは魔王どもに、その尋ね人を追わせたがってる。多分相当な厄モノだわ。同盟も相当荒れんだろーなー」


「……そんな事をして、ロキには何の得が?」


「ははっ!」ザレオスは頭から生えた獣の耳をぴこぴこと動かし、「あいつにマトモな理屈は通用しないって! 滅茶苦茶のしっちゃかめっちゃかの地獄絵図が見れりゃーそれで満足なんだからさ!」


「…………」


「……でも、俺はまんまと巻き込まれるだけじゃねえ。全員出し抜いて、俺が勝ってやるよ。そう決めた。今! ははは!」


「……では、その尋ね人の捜索を?」


「いいや」ザレオスはかぶりを振る。「もっとスマートな方法があるっしょ? 考えてみ? ロキの話の骨子に気付いたのはあの場で俺以外にも大勢いる。じゃあ何でわざわざ、その中から俺はフルーレティに会いに行ったと思う?」


「……それでは……」


「ああ」


 目を見開く莫目に、ザレオスは頷いてみせる。


「人探しなんて大変な仕事はフルーレティご自慢の諜報部隊に任せる。俺はそのフルーレティに、スパイを送り込ませてもらう」








「フルーレティさま! リストをまとめました!」


「うむ、ご苦労」


 フルーレティが頭を撫でると、副官の少女は嬉しそうに顔を赤らめた。


「もう下がっていい。今日は休みなさい」


「はい! しつれいします!」


 副官が去ると、フルーレティは用意されたリストの確認に移る。ザレオスや他の悪魔も興味を示しているであろう、ロキの持ち込んだ事案。腕の立つ者を諜報に送りたいが、何分不確かな情報だ。側近を無闇に城から離すわけにもいかない。

 フルーレティは手配書を見つめる。まだ幼さの残る少女の念写。名はリリィというらしい。必ず生け捕りにする事。その他一切の事情は不明――ロキらしいやり口だ。興味があれば自分で調べろ、というのだろう。

 副官に用意させたリストは、重要な側近以外で腕の立つ部下をリストアップしたものだ。ぱらぱらとページをめくっていたフルーレティは、ある頁で手を止めた。


「……こんな部下、うちにいたか……?」


 それは鳥の頭蓋のような仮面を被った、黒ずくめの悪魔。名を、アッシュ・ブラックバードといった。




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