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9、模擬戦再開、仲間達の強さ

 朝、朝食を食べる俺達。

 しかしその様子は、昨日とは違っていた。


「ガツガツガツ! 駄目だわ、食べても食べてもお腹いっぱいにならない!」

「ガツガツガツ! せ、拙者もでござる! お腹空いたでござるー!」


 俺とランランは一心不乱に食事をしていた。なぜか食べても食べてもお腹がいっぱいにならないのだ。


「うーん、どういう事でしょう?」


 ちなみにロミリアちゃんは何ともないらしい。俺達はすでに5人前は食べている。昨日はそんな事なかったのに、ほんとどうなっているんだ?


「考えられるとすれば、必殺技を使用した事、ですかね?」


 必殺技……

 俺で言えばエターナルブレイカー。ランランで言えば粘着砲か。ロミリアちゃんは……絶壁は使用していなかったっけ。


「まさか、必殺技を使用した代償って事?」

「私とユミルさん達の違いを考えれば、そうかもと」


 なるほど確かに。しかし、必殺技を使用する度に次の日これじゃあ……


「エターナルブレイカーは、封印、かしらね」

「了解! エターナル! でござるな?」

「なんですぐに使用する事になってるのよ!」


 こうなると、出来れば使いたくないものだ……あ、これフラグかな?


 結局、8人前を食べた所でなんとか治まり、授業に向かった。ランランは6人前だった。必殺技の違いか。



 今日は昨日の続きで、ドングさんとの模擬戦となった。昨日は俺の時点で授業中止になっちゃったしな。


「よしでは次! ロミリア・コナゴ!」

「はい!」


 ロミリアちゃんが呼ばれる。

 ドングさん対ロミリアちゃんか。一体どう戦うのか、見せてもらうぜロミリアちゃん。


「さあ、かかってこい!」

「いきます!」


 ドングさんの声にロミリアちゃんが応える。するとロミリアちゃんは魔法を展開し始めた。


「パワディル……ディフェル……スピーディル……マジフェル……!」


 ロミリアちゃん得意の補助魔法だ。

 パワディルは力を、ディフェルは防御力を、スピーディルは素早さを、マジフェルは魔法防御力を上げる魔法だ。……ドングさん相手に魔法防御はいらない気もするが。


「ほう、そこまでの魔法を一気に展開するとはな」


 ドングさんが感嘆の声を上げる。

 実際ロミリアちゃんの魔法スピードと技術はすごい。俺も少しは魔法を使えるが、あんなに早く発動は出来ないし、同時発動も3つまでしか無理だ。


「あの子、やるじゃないか」


 そう言って俺に話しかけてきたのは、昨日俺の前にドングさんに負けた……


「ヤラレッパ、だっけ?」

「ヤラレール・デ・マタだ!」


 そうそう、そんな名前だっけ。

 赤い短い髪の結構がっしりとした身体つきの戦士型の男で、こんな名前じゃなければ実は強いんじゃないかと思えてくる。


「君は、今話題の光の三本角、ユミルだったか?」


 ピキッ


 この野郎、言ってはならんあだ名を……! 俺の中でこいつの評価が急降下した。


「私のは角じゃない! トリプルテールだヤラレッパ!」


 渾身のアッパーカットがヤラレッパの顎を打ち抜き、ヤラレッパが宙を舞う。


「今度三本角って言ったらぶっ飛ばす!」

「そういう事は、ぶっ飛ばす前にいってくれたまえ……」


 ガクッとヤラレッパが意識を失う。……うん、放っておこう。

 それよりロミリアちゃんは……と。


「まだまだいきますよ!」


 そう言って、ロミリアちゃんは更に魔法を唱える。


「パワディル……ディフェル……スピーディル……マジフェル……!」


 2重がけだ。補助魔法は2重がけまでは効果がある。が、重ねがけ自体難しい事で、俺なんかは重ねがけをやろうとしても1種類しか出来ない。それを4種類重ねがけ、しかもまだまだ全然余裕があるときた。ロミリアちゃんマジすごい。


「な、なんと……」

「いきますよー!」


 ロミリアちゃんが駆け出す。小さな身体に大きなパワーといった所か。

 次々拳を繰り出してドングさんを追い詰める。確か、八極拳だっけ? 俺はあまり武術に関して詳しくないので良くわからないが。


 ロミリアちゃんが激しく動く度に、スカートがヒラヒラしている。見えそうで見えない。

 ……いや、見えてもあれだ、中身は男なんだ、落ち着け俺。


「はあああああああ!」


 ドングさんを追い詰めるロミリアちゃん。ドングさんも応戦するが防御力が上がっているロミリアちゃんには効果がない。というかいくらドングさんの剣が模擬剣だからって腕で受け止めるのはすごいな。


 ……しかし、ここまでだ。

 そこら辺のやつならこれで倒せるが、ドングさんを倒すには決定打が足りないようだ。まあロミリアちゃんはアタッカーじゃないしなぁ。


「よし、いいぞ、ここまでだ!」

「ふう……ありがとうございました!」


 しばらく応戦が続き、これ以上は消耗戦となると見て、ドングさんが終わりを告げた。


 拍手があがる。みんなロミリアちゃんのすごさに驚いた様だ。

 俺もなんだかうれしくなって拍手してしまう。ロミリアちゃんとはそういうものだ。


「がんばりました」

「お疲れ様、ロミリアちゃん」


 俺はロミリアちゃんの頭を撫でる。彼女にとってのご褒美だという事だが、俺にとってもご褒美だ。


「えへへー、でも、あんまり目立つと良くないんで、少し手加減しちゃいましたけど」


 おお、なんと驚きの発言である。どう手加減したのかは気になるが、そこはあまり触れないでおこう。


「えらいねー。ロミリアちゃんは」

「えへへー」

「エターナルブレイカーをぶっぱしたユミル殿とはえらい違いでござるな」

「ランランうるさい」


 いつの間にそばにいたのか。いや、ランランはいつでも気がつくとそばにいたっけ、そういえば。


「それより次はクリーナ殿の番でござるよ。果たして拙者達の知っているクリーナ殿なのか、見物でござるな」

「え?」


「クリーナ・セン! 前へ!」


 目を向けると、ドングさんとクリーナが相対している。


 クリーナ、冷静沈着な剣士。黒いロングヘアをたなびかせ、凛影りんえいという刀を使い、戦姫せんきというあだ名を持つ。

 ってあれ? あの刀……


「クリーナが持ってるあの刀、凛影よね?」

「いかにもでござるな」


 クリーナの持つ刀を見る。見慣れた刀、凛影だ。


「という事はやっぱり、あれば私達の知ってるクリーナで、間違いないのかな?」

「凛影を持っているから拙者たちの知っているクリーナ殿であるとは限らんでござるよ」

「それもそう……なのかな?」


 そうこう言っている内に、模擬戦が始まった。

 クリーナが先に仕掛ける。

 基本的に模擬線はドングさんが受けにまわる事になっている。クリーナは凛影を抜き放ち、次々に技を決めていく。


 横なぎの技、凛影閃。下から上に打ち上げる技、凛影昇。下に打ち付ける技、凛影斬、だったっけ。色々説明されたけど俺は剣術も詳しくない。いまいちわかってないのを悟られて、説明していたクリーナがしょんぼりしてたっけ。


「あの型は間違いなく、クリーナ殿でござるな」

「そうね、ドングさんが完全に防戦一方になっている、すごいわ」

「さすがですねー、クリーナさん」


 これで俺達が知っているクリーナである事はほぼ決定だ。

 問題は、俺達の事をクリーナが覚えているかと、中の人がいるのかだが。


「あれ? そういえば……」


 覚えているか、でふと思い出す。

 そういえば俺は最初この世界にきた時、自分の意識はなく、完全にユミルだったはずだ。他のみんなはどうだったのだろう?


「ねえ、二人とも、聞きたい事があるんだけど」

「なに?」

「なんでござるか?」

「二人はこの世界に来た時、最初から自分の意識があったの? 私は最初、ユミルの意識しかなかったんだけど」


 そして、デュノスの姿を見て、自分の意識が蘇ったのだ。


「拙者はユミル殿を見た時、中の人の意識が復活したでござるな」

「私も、ユミルさんを見たら思い出したの」


 やっぱりそうか、という事は、クリーナやデュノスも、私達の姿を見て、思い出している可能性が高い。


「……試合が終わったら話しかけてみましょうか」

「昨日話した通り、まずは拙者が話しかけるでござるよ」

「そうだったわね、早めにお願いね」

「合点承知!」


 そうこう話している内に、クリーナの模擬戦が終わった。クリーナの圧勝だった。ドングさんは防戦一方で、最終的にクリーナの凛影閃が決まった。


「うむ、すばらしい剣術であった。では次!」


 そう褒め称え、次の指示を出すドングさん。

 おおもう次にいくのか、ドングさん、あれだけやられたのにすごいな。さすがは騎士といった所か。


「デュノス・カギア!」

「……」


 デュノスが呼ばれた。

 空気が変わる。相変わらず威圧感が半端ない。制服が今にもはじけ飛びそうな位、筋肉が膨れ上がっている。周りの生徒達もその闘気にあてられたのか、少し震えている。


 ドングさんと相対し、模擬戦が始まる。


 勝負は一瞬だった。

 デュノスは持ち前の巨大な斧、ヴァニシングアックスを振るい、ドングさんを吹っ飛ばした。

 激しい暴風が巻き起こり、トリプルテールが激しく揺れる。


破砕衝撃斬はさいしょうげきざん


 ただ斧を縦に振るう。それだけで衝撃波を生み出し、相手を吹き飛ばす技だ。


「相変わらず、デュノスはすごいわね」

「うむ、正直デュノス殿には勝てる気がしない、というか戦いたくないでござる。あんなのくらったら死んでしまうでござるよ」

「私もですねー、いくら魔法で防御しても吹き飛ばされそうです」


 しかし、この発言は後にフラグであった事がわかる。

 この日の授業は模擬戦で終了したが、翌日の授業、それは……


「こちらで組み合わせの抽選を行い、今度はお前達同士で模擬戦を行ってもらう」

「「え?」」


 ドングさんの発言に、早くもデュノスと戦わなければいけない可能性が出来てしまった事を知り、ロミリアちゃんとランランが固まった。


「それでは今日はこれにて解散! 各自、明日に備える様に!」


 ドングさんの言葉に従い、俺たちは解散した。

 絶望の表情を浮かべるロミリアちゃんとランランを残して。


「死んでしまうでござる」

「死んじゃうよー」

「いや、いくらなんでも死にはしないでしょ」


 俺はむしろ、デュノスと戦えるかもしれないのは楽しみだった。

 出会ってからずっと、デュノスと模擬戦らしい模擬戦はした事が無い。それだけに楽しみだ。


 俺は明日の模擬戦への期待に、胸とトリプルテールを躍らせていた。



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