4、3つの機能とトリプルテール
エターナルブレイカー。
俺の必殺技は、早速この世界に爪痕を刻んだのだった。
ゴーレムがいた場所を中心に広がる大きなクレーター。ゴーレムは見る影も無い。
爆発の余波で巻き起こった風が、トリプルテールをなびかせる。
唖然とするドングさん。周りの生徒達。
そして、俺。
まあ俺の場合は、懐かしいなーこの感じ、とか。やりすぎちゃったなーどうしよう? とか、そんな事を思っていたわけだが。
いち早く現実に戻ったドングさんに呼ばれて、俺も現実に戻った。
「ユミル! 色々と聞きたい事があるが、その剣、そのままで大丈夫なのか?」
ドングさんが俺の剣、エターナルを見ている。
そりゃそっか、剣を振るっただけで毎回こうなるのか心配だよなぁ。
「大丈夫です、私が必殺技を叫ばなければあの光は出ません」
「そ、そうか」
そう聞いてホッとするドングさん。
だがこの事態を起こしておいてそれで終了、とはいかなかった。本日の授業は中止になり、その後俺は、学園長室に呼ばれた。
ロミリアちゃんには「慎重にって言ったのに」と小言を言われた。まぁあの状況ではしょうがないと、ロミリアちゃんもわかってくれてはいたけど。
ちなみに、エターナルはあの後、光となって消えた。もう一度取り出そうとしたら再びトリプルテールが光り、俺の手元に現れた。常に持ち歩かなくてもいいのはすごく便利だと思った。
学園長室に着いた。学園長室には大きな机やソファーがあり、棚には様々なトロフィーが飾られていた。
俺はそんな学園長室で、学園長とドングさん、そして秘書っぽい女性に囲まれていた。
「ユミル君、だったね? まずは錬金術科の不手際を詫びよう。どうやら実験中にゴーレム製造機が暴走してあの巨大なゴーレムを生み出し、更に制御がきかなくなったそうだ、すまなかったね」
「いえ……」
実際に被害を受けたのは吹き飛ばされたドングさんで、俺はなんともなかったんだよなぁ。
「それで、ドングの話では不思議な剣を使ってゴーレムを倒したとか?」
はいきた。そりゃあ気になるよな。さて、どう答えたものか……
とはいっても、何にも思いつかないんだよなぁ。ここはある程度正直に話すか。
俺はエターナルの名を呼ぶ。するとトリプルテールが輝き、俺の手には1本の剣が握られた。
「な、なんと……」
「これは私が作った剣、名をエターナルと言います」
「君が作った?」
学園長達の顔が驚愕に染まる。エターナルの出現方法もそうだが、こんな小娘がこんな剣を作れるとは信じられないよな。
「はい、製造方法は一族に伝わる秘伝の為、秘密ですが」
適当にごまかす。まあ実際は、鍛冶スキルを習得して剣作りにはまって、色々試す内に偶然出来た、ほぼチートみたいな剣なんだけどね。
……あの時の俺は神がかっていた。
「にわかには信じがたいが、その様な剣、見た事も聞いた事も無い。であれば、今は君の話を信じるしかないな」
学園長はそのまましばらく黙ってしまった。ドングさんもなんと言っていいか分からないといった感じだ。秘書の人は良く分からない。
「わかった、その剣を君の製作物、及び所有物と認めよう。しかしだ、その剣の使用に関しては安易に認めるわけにはいかない、わかるね?」
ですよねー。まああれだけ派手にぶっ飛ばせばそりゃ安易に使うなと言いたくなるわな。
「わかります、私もこの剣の力の事は理解してはいましたが、その、正直やりすぎたと思っています」
エターナルブレイカーはしばらく封印だな。……いざという時以外は。
「わかってもらえて結構。まったく使うなとは言わないが、くれぐれも慎重に行動してくれたまえ」
また慎重にって言われちゃったよ。
「わかりました。それで、お話はこれで終わりですか?」
「いや、まだだ。その剣の事を、生徒達にどう説明するかが残っている。その為にも、もう少し詳しく説明してもらいたいのだよ」
ああそうか、結構多くの人に見られちゃったし、噂にもなってるよなぁ。
「それで、君のその剣は、君が叫ぶとあの光を打ち出す剣、という事でいいのかな?」
うーん、どうしたものか。……うん、どうせ黙っていてもいずれバレるだろうし、ここは素直に説明するか。
俺は覚悟を決めると、エターナルについて説明する。
「エターナルには3つの機能があります。
1つは今回使用した、全力開放のエターナルブレイカー。
2つ目は全てを切り裂くエターナルキル。
3つ目は切った相手を完全回復するエターナルヒールです」
俺はエターナルについて説明した。
さて、どういう反応が返ってくるかと見ていたが。あれ? 黙っちゃったよ?
沈黙が場を支配する。しばらくして、学園長がようやく口を開いた。
「……本当、なのかね?」
「信じて頂けないなら、冗談という事にして頂いても構いませんが?」
「いや、そういうわけにもいくまい。我々は事実、1つ目の機能を見ているからな」
「そういえばそうですね」
「……全てを切る、というのは本当に何でも切れるのかね?」
「切れます。そういう概念の技だと思っていただければと」
「むう……」
学園長が唸る。そして次は、ドングさんからの疑問が飛んできた。
「剣で切って回復するのか?」
「はい、切った対象を完全回復します」
「そ、そうか……」
まぁそりゃそんな顔になるよな。切ったら回復するなんて。でもまあ、そういうものだからと思ってもらうしかないんだよなぁ。
学園長は大きく一度ため息をついた。そして改めて俺の方に向き直す。
「君のその剣については良くわかった。生徒達にはこちらでうまく説明しておこう。あとは先程言った通り、安易に力を使用しないでくれたまえ」
「わかりました」
「それにしても……」
「はい?」
学園長がふと、にやりと笑う。
「1本の剣に3つの機能か……まるで君を現している様だ」
「私を、ですか?」
突然何を言い出すんだこの学園長は?
「ああ、きみのその、1つの身体に三本の角、1本の剣に3つの機能の剣、君はまさに、剣と一体になっているんだね」
ピキッ
ほがらかに言う学園長。しかし、それは、その言葉は……地雷だった。
「学園長、悪気が無いのはわかりますが、これは角じゃありません。トリプルテールです。いいですか? 角じゃありません」
そう言いながら、俺はエターナルのキルモードを開放する。エターナルが赤く光り輝く。
「私、このトリプルテール、気に入ってるんです。だからそれを、三本角って呼ばれると、ちょっと頭にきちゃうんですよね。大体なんですか? 角って、これは髪の毛ですよ? なのに角って、ねえ?」
どんどん赤い光を増していくエターナル。それにつれて、学園長達の顔が青くなる。
「う、うむ。そうか、すまなかった。いいものだなその……トリプルテールは!」
大汗をかきながら学園長が訂正する。俺はそれに満足すると、エターナルのキルモードを解除した。
「はい、そう言って頂けると嬉しいです。それでは、これで失礼しますね」
俺は笑顔で学園長室を退室した。
自慢のトリプルテールをなびかせながら。
いわゆる説明回でした。次回からまた仲間と接触していきます。