表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/73

13、いきなりの魔王襲来

仲間が全員揃ったので、物語が動き出します。

 気がつくと、知らない場所にいた。

 周りの建物は崩壊し、空は暗い。


「ここは、どこなんだ?」


 問いかけても返事は無い。

 その時、空が割れて、黒い何かが現れた。


「なんだ、お前は何なんだ!」


 黒い何かは口を開くと、そこから暗黒の霧が放たれた。


「あああああああ!」


 近くで叫び声がした。そこには暗黒の霧に包まれたクリーナがいた。


「クリーナ!」

「ユミル、逃げて……」


 暗黒の霧に包まれ、クリーナが消えた。


「クリーナ、どうして……」


 ふと見渡すと、そこにはロミリアちゃんとランランがいた。二人にも、暗黒の霧が迫っていた。


「ロミリアちゃん! ランラン!」

「ユミルさん! 逃げてくだ……!」

「おのれ魔王! ユミル殿! 早く、逃げるでござ……!」


 二人も暗黒の霧に包まれ、消滅した。


「何なの? どういう事なのこれ? 魔王……? もしかして、あれが、魔王なの?」


 空を見上げる。そこには黒い何かがいる。

 これが魔王なのか? みんな、やられてしまったのか? どうして? なぜ?


 そして視線を地上に戻すと、そこには、デュノスが立っていた。


「デュノス!」


 俺は叫んだ。まさか、デュノスまでも消えてしまうのか?


「……」


 デュノスが何か言っている。だが、聞き取れない。

 暗黒の霧がデュノスを包み込む。

 デュノスが……消える。


「いやぁああああああああああ!!!」


 やがて俺自身も、暗黒の霧に包まれた。




 気がつくと、俺は……ベッドの中にいた。


「今のは、夢?」


 夢……だったのか? 考えてももう思い出せない。とても恐ろしい夢だった気がする。


 ふと周りを見渡す。

 ここは俺、ユミルの部屋だ。

 俺はある日、この世界ジュネシリアに俺が作ったキャラクター、ユミルとして存在していた。ここはルカディアという国の冒険者や騎士を養成するルカディア学園。俺達はそこの生徒だった。今はこうして女子寮の部屋で寝泊りしている。

 そう考えていると、右手にやわらかな感触があった。……なんだ?


「う……ん……」


 ふと横を見ると、同じベッドにピンク色の髪の美少女が眠っていた。元の世界のオンラインゲームでパーティを組んでいた、ロミリアちゃんだった。


「おはようございます、ユミルさん」


 寝ぼけ眼で挨拶をするロミリアちゃん。そのやわらかさと仕草に鼓動が早まる。

 落ち着け、落ち着いて対処するんだ俺。


「お、おはようロミリアちゃん。ところで、どうしてロミリアちゃんが私の隣で寝てるのかな?」

「えへへー、忍び込んじゃいました」


 ロミリアちゃん可愛い。じゃなくて!


「あのねロミリアちゃん、忍び込んじゃいましたーじゃなくてね?」

「迷惑、でした?」

「うっ!」


 そのうるうるした瞳はずるい。何も言えなくなってしまう。


「どうしたでござる? ユミル殿」


 天井が開き、中にはランランがいた。


「大丈夫? ユミル」


 椅子に座ったクリーナが、心配そうに聞いてくる。


 まて、まてまてまて!


「あのねみんな、ここ、私の部屋よね? どうしてみんなここにいるの?」


 ここは俺の部屋。一人部屋だ。だというのに、ロミリアちゃんは隣で寝てて、クリーナは部屋の椅子に座っていて、ランランに至っては……何勝手に天井に穴あけてるんだよ!


「ユミル殿の寝顔が可愛くて」

「ユミルさんと一緒に寝たくて」

「ユミルと一緒の部屋に居たくて」


 さらっと言う3人。


「いやいやいや! ていうか、いつからいたの?」

「23時くらいでしょうか?」

「拙者もそれくらいでござるな」

「同じく、私が来た時にはロミリアがもう居たね」


 23時って事は、中の人に変化する前からって事だよな? ちなみに俺は昨日は22時には寝てた。


「って事は何? みんな中の人に変化した状態で一緒の部屋に居たって事!?」

「そうですね」

「そうでござるな」

「そうだね」

「そうじゃないでしょおおおおお!」


 これが3人とも、見た目通りの美少女なら嬉しい所だが、この3人、中身は男だ。

 そう、俺達はみんな、見た目は美少女だが中の人は男なのだ。

 今の外見は俺達が作ったキャラクターなのである。

 そして、俺達は俺の近くにいると、0時から5時の間、中の人に変化するという特性を持っている。


 つまりだ、こいつら0時前から俺のそばにいたという事は、0時の時点で男に変化して、男の俺のそばに男のこいつらがいたという事で……


「で……」

「「「で?」」」

「出て行けー!」


 俺は最強の剣、エターナルを取り出し、振り回した。


 夢の事は、完全に頭の中から消えていた。



 ユミルに部屋を追い出された3人は、隣のロミリアの部屋に集まっていた。


「うーん、朝起きたらすぐそばに作戦は失敗だったでござるなー」

「でもユミルさん、少しは動揺してたから、まったく無意味じゃなかったはず」


 3人はユミルを愛していた。だがユミルの中の人は男で、彼女達の中の人も男である。しかし彼らは、ユミルの事が好きなら、中の人も愛せるのではないか? そう思い、ユミル中の人である涼を想い続けた結果、……涼にも恋をしてしまっていた。

 男心と女心、これも男女両方に変化する事が出来る者の成せる業なのか。


「やっぱり一緒に寝る位じゃ甘いのかな?」

「今日はパジャマでござったが、もっと過激な服の方が良いのかもしれんでござるな」

「たとえば?」

「水着……とか?」

「え? それって、男女どっちの?」

「いや、男性用の水着を着ていても男に変化したらジャージになるんだから、女性用でしょ?」

「しかし夜中、涼殿になっている時にふと目を覚ました時のインパクトも必要ではござらんか?」

「つまり変化した後、ジャージを脱ぐ?」

「それだ」

「とにかくもっと、色仕掛けしていかないと、だね」

「モタモタしていたら、デュノスにとられてしまうかもしれんでござるからな」

「そうだね、がんばろう」


 3人は今日も元気だった。ユミルはまだ、この事を知らない。



 その後、みんなで教室に向かった。女子寮から教室はそんなに遠くは無い。最近は俺達4人だけではなく、クラスメートとも一緒に行く様になった。


 ちなみに今日の俺のトリプルテールも素晴らしかった。

 ポニーでもツインでもない。揺れる3本のテール。トリプルテール。というか髪型が固定されていて他の髪型は出来ない。寝癖を直せば綺麗なトリプルテールが完成だ。

 俺は今朝の事も忘れ、3本のテールをなびかせて、ご機嫌な足取りで教室へ向かった。



 生徒同士の模擬戦から、1ヶ月が経っていた。

 あれから俺達は色んな事を学んだ。この国の事、周りの国の事、冒険者の事、騎士の事。剣術や魔法、錬金術に探索術。国の事以外は、大体が俺達がはまっていたオンラインゲーム、「Fine Online」と同じだった。


 あと、クラスメートの中の人に関してランランに調べてもらった。

 結果はなんと、中の人がいると思われるのは俺達5人だけの様だった。

 それを知ってから、寮のお風呂はみんなが出てから最後に1人で入る様にしていた。……ヘタレって言うな。バレた時に困るのが嫌なだけだ。


 この1ヶ月、平和な日常を、俺達は過ごしていた。

 そんな中、俺はふと思い出す、この世界に来た時に聞いた言葉を。


 -この世界を救ってほしい-

 -仲間を集めて-

 -3年後、魔王が世界を破壊する-


 3年後、魔王が世界を破壊する。

 仲間は集まった。だが、俺達はこの調子で、魔王に勝てるのだろうか?

 なんだか引っかかる。今朝、何か重要な事があった様な。しかし思い出せない。主にあの3人のせいである。


「最近、怪しいんだよな、あいつら……」


 以前はユミルに対して、好意を向けているという事がわかる程度だったが、最近はどうも、ユミルの中の人である俺に対しても怪しい。具体的に言うと俺が男になっている間もスキンシップが増えてるというか、距離が近い気がする。


「まさか、あいつら……」


 俺は思いついた考えを打ち消す。ありえない。そうだ、あいつらは大切な仲間だ。そんな事あるわけない。大丈夫だ。うん、大丈夫。


 俺は誰に言い聞かせるでもなく、呟きながら教室へ向かった。



 そしてむかえる今日の授業。今日は広場で模擬戦だった。


「いいかお前ら! お前らがこの学園にきて、1ヶ月が経った! 今日はその成果を見せてもらう!」


 ドングさんが声をあげる。


 模擬戦か……

 1ヶ月前の模擬戦を思い出し、ふとデュノスを見る。


 デュノスと言えば、いまだにデュノスの中の人を見ていない。

 デュノスは男だ。1人だけ男子寮にいるもんだから、夜会えない。中の人に変化するのは0時~5時。しかも俺のそばにいないと変化しない。そういう機会はいまだに無い。だからデュノスの中の人はまだ見ていない。


 いつかは見てみたいもんだ。何せ、俺の一番の相棒だからな。


 そんな風に考えていた。

 少なくとも、あと3年はこんな日々が続いていく。


 ……そう思っていた時期が、俺にもありました。



 突然、空を黒い雲が覆った。空気が変わる。ドングさんも何かに気づいた様で、空を見上げる。

 それにつられて、俺達も空を見上げる。


 嫌な予感がする。こんな事、前にもあった様な……


 その考えを打ち消す様に、轟音が鳴り響き、空に何かが浮かび上がる。

 浮かび上がってきたのは……化け物だった。


「ごきげんよう、我は……魔王である!」


 醜悪な声が響き渡る。

 今なんて言った? 魔王……だって?


「魔王?」


 誰かが呟く。それに応える様に、魔王が話し出す。


「そう! 我は魔王、デスブラックである! 人間どもよ! 我に恐れおののくが良い!」


 魔王、デスブラック。

 そういえば魔王の名前は聞いた事がなかった。あれが魔王? どういう事だ?


「魔王って、現れるの、3年後じゃなかったの?」

「でござるな、拙者達、だまされたでござるか? それとも勘違い?」

「いや、確かに俺も3年後だと聞いた」


 俺の問いに、ランランが、デュノスが応える。

 そう、魔王が現れるのは3年後のはずだ。ならばあれは、なんだ?


「待ってください、確か私達が聞いたのは、-3年後、魔王が世界を破壊する- ですから、魔王が3年後に現れるとは言っていません」

「あ……」


 ロミリアちゃんの言葉に俺達はハッとなる。

 じゃあ、あれは本当に、魔王なのか?


「どうやら我に関して、疑問を持つ者が多い様だな。では見せてやろう、我が魔王だというその力を!」


 そういうと魔王の姿が消えた。変わりに、何かがこちらに向かって飛んでくる。


「何? あれは?」


 だんだん近づいてくる。それにつれて、近づいてくるものの正体がわかる。

 その姿は、様々な動物を合成した様な魔物、いわゆる、キメラだった。


「全員構えろ! 魔物だ、気をつけろ!」


 ドングさんが吼える。

 我に返った俺達はそれぞれ武器を取り出して構える。


 ふと見れば、近づいてくるのは1匹だけではなかった。ぱっと見、10匹以上はいる。


 1匹が地上に降り立つ。すぐさまこちらへ向かって駆けて来る。


「くっ! このおおおおお!」


 トリプルテールが輝き、最強の剣、エターナルが現れる。

 俺はエターナルを振りかぶり、振り下ろす。キメラはあっさりと消滅した。


「た、大した事無い?」

「油断するな! まだまだくるぞ!」


 空を見上げると、さっきより数が増えている。どんどんこちらに向かってくる。


「各自! バラバラにならず、2~3人で固まれ! 無理はするな! 生き残る事を優先するんだ!」


 ドングさんが大声で指示を出す。

 みんながその指示に従い、近くにいる者と身を固める。


「ユミル、デュノス! お前達はフォローに回れ! おそらくこいつらを倒せるのは、俺とお前達2人だけだ! だが油断するな! 確実に1匹ずつ倒していけ!」


 その指示を聞き、俺とデュノスは散開する。


 俺はエターナルをキルモードに切り替え、キメラ達を切っていく。切った魔物の死体は残らず、消滅していった。

 デュノスもヴァニシングアックスで次々とキメラを屠っていく。

 ドングさんは……なんとかキメラ達を倒している。

 他の生徒達は必死に抵抗している。

 ロミリアちゃんが全体に強化魔法をかけているが、表情は厳しそうだ。

 ランランは素早く動き回って、キメラ達を翻弄している。

 クリーナは他の生徒達を庇っている。そのせいで本来の動きが出来ていない様だ。


 俺は焦っていた。キメラは1匹1匹はそう強くないが、数が多い。俺だけなら時間をかければ殲滅出来る。俺達だけなら問題無い。だが、今は他の生徒達が、ドングさんがいる。早くしないと犠牲者が出てしまうかもしれない。だから焦っていた。

 その焦りを、デュノスに指摘される。


「焦るなユミル! 俺もいる! みんなもいる! 1人で抱え込もうとするな! 目の前の敵を全力で倒すんだ!」


 デュノスが戦いながらも、こちらに声をかけてくれる。

 そうだ、焦るんじゃない。落ち着いて、素早く、全部倒せばいいんだ。

 俺は必死にキメラ達を倒していった。


 やがてキメラ達の増援は無くなり、地上にいたキメラ達を倒しきった。


「はぁ、はぁ……全員、無事か!?」

「はい、ドングさん、全員無事です!」


 ドングさんの問いにクラスメイトのトリメンテが応える。最近こういう時、俺達を取りまとめるのはトリメンテだった。そのせいで俺の中のあだ名が委員長になっているのは秘密だ。


「そうか、全員そのまま待機! まだ油断するなよ!」


 そう、黒い雲はまだ晴れていない。

 そう思っていると、再びあの醜悪な、魔王が空に現れた。


「ふははははは! どうだ我が召還したキメラは! 抵抗した者もいた様だが、相当ダメージを与えられたようだな? これは魔王としての力のほんの一部だが、恐れ入ったか人間どもめ!」


 俺達は全員生存している。ダメージもそう負ってはいない。

 一体、何に対して言っているんだ?


「どうやら、攻撃を受けたのは自分達だけだと思っている者がいる様だな。教えてやろう。先程放ったキメラは1箇所だけではない! 世界中に放ったのだ! もちろんこの映像を見ているのも貴様達だけではない! 世界中に流している!」


 魔王が親切に説明してくれる。

 そうか、そういう事か。俺達以外にも戦った人達がいて、中には……


「さて、このまま世界征服といきたい所だが、あいにく我はまだ完全に復活してはおらん。完全な復活までに後3年はかかるだろう。だが! その間にも我が四天王が貴様ら人間を苦しめるであろう! そして3年後には、我が復活し、その時こそ! 貴様ら人類を滅ぼしてやろう! 恐怖に怯え、生きるが良い! この3年をせいぜい楽しむのだな! ふはははははは!」


 一方的にそう告げると、魔王の姿は消えていった。

 雲は晴れ、青空が広がった。

 しばらく、誰も言葉を発する事が出来なかった。


 俺達の死傷者はゼロ。

 だが……ふと周りを見渡すと、国全体が戦火に包まれていた。


 戦いの音が、日常の終わりを告げる音に聞こえた。


 俺は、エターナルを握り締める。

 トリプルテールが、悲しげに揺らめいていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ