73.5話 週刊誌の企画
……目を見張るほどの可愛い子ねぇ。見付からないわ。
足を使う身にもなって欲しいわ。編集長のバカ。月一の記事とは言え、辛いわ。一眼レフは重いし肩凝るし。
あ! あの子なかなか!
……なかなかじゃダメなのよねぇ……。
蓼園市かぁ……。もっと都会だったらすぐなのに……。
裕福な家庭が多いとか聞いてたのにさ。ちょっと流行遅いんじゃないの?
渋谷とか楽だったなぁ……。半日仕事だったし……。なんか、垢抜けないのよねー。この街の子って。素材良さそうな子はちょくちょく見かけるのに……。
ま、どうでもいいか。もう1人、名古屋行ってるし。
ほぼ、あっちで決まりでしょ。名古屋はセーラー服可愛いし。名古屋襟って言って、でっかいセーラーカラーが特徴なんだよね。
やっぱり都会よ。政令指定都市直前じゃなくて政令指定都市よ。レベル高いのは。
今日は適当に流そうかな?
……逆転の可能性はある。狙いは私立蓼園学園生。裕福な層が多いこの街でも特別な存在。在校生の人数は日本一。聞き込みして辿っていけば学園一の美少女に辿り着けるはずだわ。
……でもねぇ。なんであの学校って制服ぐちゃぐちゃなのよ! 昨日だって誰が蓼園学園の子か分からなくて! 中等部と区別も付けにくいし!
……まぁ、昨日は到着が遅くなったのが失敗ね。明日は放課後に合わせて正門前で聞き込みよ!
……街の美少女特集。高校生限定。ウチの総合情報誌の人気記事。この記事から芸能界デビューした子も居るんだよねー……なんて、妄想だけどね。小さな編集社だからそこまでの影響力は無いんだよねー。でも、いつかそんな子が出てきたらいいな……なんて。
……。
どうしようかな?
……勝てる可能性はあるんだよね。
…………。
やっぱり負けられない! 絶対に超絶美少女見付けるんだから!!
今日から聞き込みよ! そうと決まれば……。
「ねぇ? 君たち高校生?」
「え? あ、はい」
「雑誌の取材でかわ「ごめんなさい!」
……逃げられた。昨日と同じ。
あー。編集長があたしをこっちに送ったの解った気がする。裕福層が多いって事はお嬢が多い。警戒心が強いんだね。あいつだと返事もして貰えないかも?
それじゃ聞き方変えますか。良心に付け込むみたいで嫌いなんだけどな。記者の常套手段。割り切っていきましょ!
……高校生らしい子は凄い多いんだよね。蓼園モール。蓼学生行き付けっての情報は、本当みたい。
「あの……すみません」
困った顔で尋ねる。路上だと道に迷ったと思われて反応してくれる。ここだと店が見付からなくて困ってるってところね。
「はい?」
「少しお尋ねしたいのですが……」
「はい……」
「可愛い高校生を探してまして……。雑誌の記事にする……」
「あ……。そう言うの、よく分かりませんので……」
あ……。
……逃げられたじゃないの。何なのこの街は!?
それから何人にも声を掛けて何人にも振られた。せつなくなってきた。少年にまで振られた。
可愛い子……。
可愛い子は居ませんかー?
取って喰わないから出ておいでー?
ホント、高校生らしい子は多いよね。
……直接、割りと可愛い子に声掛けてみよっかな?
「ねぇねぇ!! 向こうにユウちゃん居たよ!! すっごい可愛いカッコしてた!!」
「え? それマジ!? 行こ!!」
ユウちゃん……? 誰それ? 芸能人? ありふれた名前で該当多すぎる……。
付いてってみよっかな。気になったら追い掛けろってね。
「ロリータファッションってヤツ? びっくりするくらい似合ってたよー?」
「うわ! マジで? 超楽しみー!」
ロリィタね。発音違うよ? この街だと珍しいのか。原宿行けばいくらでも居るよ? 最近では外国人も多いし。
「あ! ユウちゃん居た!」
「ホントだー!」
ありゃりゃ。走ってっちゃった。案内ありがとねー。
うん。たしかにロリィタ発見。やっぱり目立つねー。黒ロリさんか。
……やけにちっちゃい子だね。
さて、可愛ければ、い……い……。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………嘘。
…………すっごい。
ちっちゃい顔。柔らかな髪。黒目がちのぱっちり二重。遠目でもわかる睫毛の長さ。小さめの鼻に可愛い唇……。
……いいわ。
……今までこの街で……。この街だけじゃないか。今まであたしが見てきた中で断トツだわ。
でも……。
小学生……? 中学生……かな? そこが残念。
あぁ! 悔しい! あの子なら絶対、あいつが見付ける子より可愛いだろうに!
……あ。
周りの子たちも可愛い! 平均レベル高いよ! 特に可愛い子と綺麗な子! この綺麗な子は……高校生? 大学生かも。おっと……綺麗な子と目が合った。
逸らしてどうする!? とりあえずこの2人キープしないと!
「ユウちゃん、可愛いー!」
「やーん! 連れて帰りたいー!」
君たち……。もう用事は終わったんだけどなぁ……。
黒ロリちゃんは赤くなっちゃったね。可愛い……。
照れちゃったのかな? ……だったらロリィタなんてやめて目立たなけりゃいいのに。
「ごめんね! 邪魔……しちゃった」
「ありがと! またね!」
お。行ってくれるんだね。会話にもなってないのに。
『ユウちゃん』は手を振り返して、さっきの2人とバイバイ。
わお! すっごい人目集めてるねー! 外見1つでカリスマ性を見せちゃってるんだねー! 逸材だわ! 東京来たらその日の内にスカウトされるよ!
あー。重ね重ね、幼いのが残念だわ。
この子はあれかな? 学園のアイドル的存在ってヤツ?
あ。いけない。他の子が声掛ける前に高校生ぽい2人をキープしないと……。ユウちゃんは人気者みたいだからね。
「あの……」
「はい?」
あ。このショートの子もまあまあ可愛いね。でも、もしデビューしたとして売れるのは、こっちのポニーテールの子かな? 可愛いだけじゃダメなんだよねー。
「あなたたち、雑誌に載りたくない?」
「雑誌?」
「街の高校生特集! 蓼園市編!」
小柄な可愛い子と綺麗な子を釣るために全員よー? 興味あるでしょ?
「「……………………」」
……あれ? 盛り上がんないね。
黒ロリィちゃんは……?
あ。隠れちゃった。人見知り? プリチーだねぇ。鼻血出ちゃいそ。
それより、リーゼントの厳つい……。なんでこんな人混じってるのさ?
「どう? 興味ない?」
ロリちゃんに続いて、小さい可愛い子。この子、いけるわ。きっと勝負出来るよ。
「私は興味ないです……」
涼しげな声ね。断られちゃった。でも、誰か捕まえれば問題なし。その子を通じて世界に引き込む。そんなものなんだよー。
「君は……?」
ショートの子。スラッとしててカッコイイじゃない?
「えー? めんどくさいー」
……面倒って。やばいわ。この子で釣ろうと思ってたのに。
「じゃあ、あなたは?」
「なんでわたしですか? 綺麗、可愛い、各種、取り揃えてますよ」
うわ。そんな不審な目で見ないでよ。芸能界ではショートの子よりも君みたいな感じが受ける……って、スカウトじゃないんだけどねー。誰1人、デビューもしてないけどねー。
「君も可愛いよ?」
愛嬌あっていいじゃない?
「ごめんなさい」
あぁ……振られた。それじゃ……もう1人の本命……。
「ウチも興味ありません……」
速っ! まだ目があっただけじゃん!!
はぁぁ……。わかりましたよー。わかったよー。
この蓼園市には3年後に来ましょうねー。ロリィタの『ユウちゃん』ね。
覚えておかないと……。むしろ忘れられないかもね。
……企画が続いてたら……だけどねー。
可愛いまま育ってねー。
でも、折角だから……。記念に……。
「ごめんね。残念だけど諦めるよ。邪魔しちゃった」
「いえ……」
「最後に、一枚だけ。写真いいかな? ロリィタの子……」
「やっぱり本命はそこかー!」
「本人に聞きはったらええのでは?」
リーゼント君が『ユウちゃん』の前から避けてくれた。
あらためて見る『ユウちゃん』にときめく。可愛いじゃ済まないね。あたしも今まで多くの女の子を見てきたけど……。あぁ……言葉が出ないわ……。今まで記事だって書いてるのに、表現できない。
……離したくない。
「貴女が『ユウちゃん』かな? 写真1枚撮らせて貰っていい?」
『ユウちゃん』は小首を傾げて困惑の表情……。ダメなのかな……?
「ユウ? 写真……撮らせて……って」
……?
……可愛い子があたしの言葉を伝え直した。どう言う事?
さっきの子たち。『ユウちゃん居たよ!』か。気持ち分かるわ。どんな字かな? 優? 悠? いっぱい有りすぎるね。
……それにしても……なんだろう? 小首を傾げたまんま、ぼんやりと……。
可愛さより美しさが勝っちゃった……。不思議。神秘的とも言っていいのかも……。
「――だめ――はずかしい――」
綺麗な声! うわぁ……芸能界の一線で勝負できるよ。この子……。
赤くなっちゃって……。今度は可愛いに傾いたね。コロコロ表情変わっちゃって、飽きさせない。ダメって言われたけど……一枚くらいいいよね?
っっ!?
カメラを構えた途端に、レンズの前に沢山の手……。
「駄目言ってますよ。本人」
……大きいね。うわ! この人はもっと大きい!
それより……。
「ごめんね。職業柄、どうしても写真を残しておきたくなったんだ……」
「ユウ? 行くぞ」
「――うん」
あ……。ユウちゃんが行っちゃう……。振り向いた!
「――ごめん――なさい――」
………………。
………………。
……しっかりお辞儀して謝って……。
なんていい子……。
「失礼します……」
「失礼しますわぁ……」
…………足……引きずってる……。怪我……かな?
あぁ! だめだぁ!! 胸を締め付けられたぁ!!
……あんな可愛い良い子が……。
……ユウちゃん……か。もう、この際、中学生でも小学生でもいいか……。ちょっと追い掛けてみますかね……。
その夜……。
「えー!? 高校生だった!?」
安いホテルの一部屋。彼女は私立蓼園学園の裏サイトを探し当てた。あれだけの美少女。名前くらい調べ、メモしておこうとでも思ったのだろう。
憂たんまとめ♪
本名:立花 憂 年齢:15歳 誕生日:7月7日 身長:137cm 体重:28kg 足のサイズ19.5cm 制服:純正制服が日本一似合う 一人称:僕(あざとい! あざといが逆らえない!)
部活:未定。元バスケ部説最有力!(自己紹介時、好きなスポーツ「バスケ」と発言あり、球技大会で的確な指示、自身も利き手ではない左手を器用に使い、上手にボールを扱う)
趣味:裁縫に目覚めた様子。一生懸命にチクチク……。健気!! 女子力上げの最中?
特技:見付からず……。だが、それがいい!!
性格:泣き虫(可愛い)、感情の起伏激しい(可愛い)、頑張り屋さん(健気)、寂しがり屋さん(ウサギっ子(1人になると泣いちゃうらしい))、ドジっ子属性あり(可愛い)
好物:ハンバーグ(確定情報。美味しそうにクマさんバーグもぐもぐ。可愛いすぎw)、甘いもの全般。総合すると子供舌。
香りの良い物が好き。一時期、匂いフェチったw
可哀想情報:元親不在(死別離別不明)、施設出身(真偽不明情報として県外の施設(所説あり))、後遺症あり(理由は語るな。禁止事項)(軽度右麻痺、失語、記憶力低下、感情失禁、痛覚については諸説あり。未だに混乱中)、添桝事件、球技大会前の怪我(しばらく車椅子生活だった)、とある理由で足裏に怪我(理由は語るな。禁止事項)、一時期激しい頭痛に苦しむ……。
グループメンバー(女子)
漆原千穂:純正制服、美少女、憂たんのお世話担当、憂たんとのハグ美しい、憂たんと共にグループ内の癒しの双璧。憂たんにそっと囁く姿は必見の価値あり! 優くんの元カノ。優くんの件もあり、憂たんと同じく薄幸の美少女。人気急上昇中。更なる詳細は単独スレにて。
大守佳穂:純正アレンジ、可愛い、ボケ担当、賑やかし役、肉食系(憂たん逃げて!)、グループ内のバランスメーカー、スポーツ全般卒なくこなす。単独スレ建てちゃう?
山城千晶:純正アレンジ、愛嬌あって好きな人はとことん好むタイプ、ポニーテール、ツッコミ担当、成績優秀。単独スレ建てちゃう?
榊梢枝:私服組→純正制服、和風美女、カメラ屋さん、軍師(孔明。添桝事件で活躍)、京都訛り、総帥に派遣された憂たんの身辺警護(確定と言っても良い)、更なる詳細は単独スレにて。
グループメンバー(男子)
本居拓真:制服、でかい(推定183)、寡黙
新城勇太:制服、くそでかい(190弱?)、砕けた口調
鬼龍院康平:ジャージ→制服、鋼の肉体、総帥に派遣された憂たんの身辺警護(ほぼ確定)、胡散臭い、エセ関西弁
その他の友達
クラス内に大勢。クラス外にも拡大中? 名前はなかなか憶えられていないらしい。本人は頑張ってる! 寛大な心で許して差し上げろ!
お近づき:不可能状態。騎士ども強すぎw、絶えず誰かが傍に付いている、カメラマン付きw 総帥が後見人。
更なる情報求む。
80話まで進んでおりますが、水面下で物語は進行しておりますよ。




