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63.0話 救われた少年

 


 ―――6月7日(水)



 憂は前日の学園生活を頭痛なく乗り切った。


 3,4時間目の連結の保健体育を、午前中の睡眠に当てた事が大きかったのだろう。保健室での睡眠に付き添ったのは、佳穂と千晶と更に数名の女生徒たち。


 みんな仲良く『あの日』だと体育の授業をパスした者たちだった。


 何名か嘘吐きが混じっていそうだが、それは追求されなかった。いや、出来なかったのだろう。した瞬間にセクシャルハラスメントに成りかねない。



 本日は先ず、2時間目を睡眠に当てた。この日の3,4時間目が家庭科の連結授業だったからである。


 調理実習だった。


 この日も例のエプロンを装着した憂は、熱心に授業を受けていた。大切な出来ること探しの時間なのであろう。


 4~6人のグループで調理に当たった実習。憂は千穂、佳穂、千晶とグループを組んだ。2人も戦力外が居たが、普段から家庭で家事を行う千穂が居る。完成度は高かった。


 おばちゃまをして可愛いではなく「あらー。凄いわねぇ……」と言わしめたほどである。


 逆に意外な所が露見してしまったのは梢枝であった。


 梢枝は完璧人間と目され、様々な3人のグループから勧誘を受けた。本人は憂と一緒したかった様子だったが、かつての孤高の存在では無かった。「仕方ありませんねぇ……」と憂の班と別になる事を厭わなかった。


「ウチ、家事は苦手です」と言っていたにも関わらず、勧誘を受けジャンケンと云う争奪戦を経た上で、有希と優子……委員長コンビの居るグループに入った。


 そして、本当に調理が出来なかった。包丁をぎこちなく扱う梢枝に「それだと怪我します」と例の2人組の片割れ、陽向(ひなた)から手解きを受けたくらいだ。有り体に言えば、例の2人組は余っていた。出来上がった4人班は2グループのみであった。委員長班と憂班の2班だ。この2班はどちらも優しくこの2名に声を掛けた。そして、またもやジャンケンに勝った有希の班に入ったのである。


 因みに拓真たち男子勢は健太率いるサッカー部トリオと合流し、6人班で調理に当たった。

 キザ男……凌平も案外、クラスに馴染んでいる様子だ。すぐに別の班に誘われていた。口調は変わらないものの、高飛車な様子が鳴りを潜めているからだろう。


 肝心のメニューは和食。一汁三菜。ご飯、汁物、鯖を使った主菜、酢の物、煮物を作り上げると云ったものだった。


 多く用意された中から好きな具材を取り分けると云う方法が取られた。この学園では、大抵の場合がこの方法だ。クラス数の多いこの学園だからこそ出来る方法だろう。


 千穂は先ず、時間が掛かるであろう煮物に取り掛かった。班員総出で野菜たちの皮剥きを開始。千穂と千晶は包丁、佳穂と憂はピーラーだ。佳穂と憂があーでもないこーでもないと2人で話しながら、慣れない手付きで人参を1本ずつ剥く間に、牛蒡(ごぼう)蓮根れんこんの乱切りを始めている。千晶は丁寧に里芋の皮を剥いていた。


 千穂は「包丁は後で使わせてあげるからね」と2人ににっこり。


 確保されている野菜に胡瓜(きゅうり)がある。おそらく酢の物に使うのだろう。


 牛蒡と蓮根を切り分け、灰汁(あく)抜きの為、水にさらすと、千穂は人参を2人から回収し、佳穂に「お米研いどいてね」と4合の米を取り分けた袋を手渡し、千晶の元に向かった。鯖を捌くという大仕事を2人で……と云った処だろう。


 憂と佳穂は狐につままれたように、千穂の普段に無い素早さを眺めていたのだった。


 米担当となった2人は、流石に洗剤で洗うような真似はしなかった事を追記しておこう。



 それから時間は流れ、4時間目も残り20数分と云った処。冒頭へと戻る。



 シンクも調理台も綺麗そのもの。

 ご飯は蒸らし中。

 千晶によって照り焼きにされている鯖は良い匂いを醸し出す。

 煮物は筑前煮。既に完成し、鍋の中で盛り付けを待っている段階だ。

 味噌汁はかき卵汁。千穂は卵を多めに確保し、余った卵でプリンを作り始めた。その様子を見たおばちゃまが「プリンね! 可愛いわー! クラスの人数分+αを作りましょうねー!」と手を貸し、今は冷蔵庫の中である。プラス分は生徒たちによって、5組受け持ちの先生たちに配られる分である。


「そうそう。慣れない……内は……猫の手だよ」


 千穂は現在、憂と佳穂への包丁指南中。佳穂もいつになく真剣な顔付きで包丁を扱っている。


「……猫? にゃあ!」


 ……前言撤回させて頂こう。佳穂はすぐにふざけ始めた。

 猫の手で千穂の肩をツンツンと突付く。


「佳穂、やめて。ふざけないの」


 叱られている事を解っているのか居ないのか、佳穂は尚も続ける。千穂の腰へ。


「にゃにゃ!!」


「あははっ! ちょっ! くすぐったい!」


「――にゃ」


 じゃれ合い笑い合う2人を見て、羨ましく思ったのか、憂も参加した。


 猫の手で佳穂の二の腕に、ちょんと触れる。


 ……佳穂の目の色が変わった。

 彼女の目に入ったのは、上目遣いで見上げ、両手で猫の手を作り、それを自分に向けた随分と小柄な美少女。幾ばくか恥ずかしいらしく、ほんのり頬を赤らめている。


「可愛すぎるじゃないかぁー!!!」


 ギューっとハグする佳穂に憂は目を白黒。


「――にゃんれ!?」


 千穂佳穂と同じようにいかない事に納得の行かない憂なのであった。



 それから10分ほど。千穂の指導により、胡瓜とワカメ、春雨を加えた酢の物を佳穂と憂は完成させた。

 千穂は手を貸さず、口を出したのみだ。きちんと2人のレベルに合わせた役割を用意していた所が何とも彼女らしい。


 更に数分を掛けて盛り付けすると、佳穂と千晶が学園長室に。憂と千穂、手助けの康平が職員室へ向かった。学園長室は中央管理棟にある。遠い為にこうなった。


 憂たち3名は職員室の利子に完成した和の昼食と、失敗するであろう班が出る事を見越して、多めに作った筑前煮と酢の物を持っていった。

 因みに食べられないほどの失敗を犯した班は、千穂の予想に反して出現しなかった。おばちゃまの目が行き届いていたのだ。



「リコちゃん――たべて――」


 車椅子の憂が差し出した昼食に、授業の受け持ちの無かった職員室の先生方は「おぉ」と感心とも驚嘆とも取れる声を上げた。

 少なくとも高校1年生の調理実習のレベルでは無かった。時折、こう云う班が現れるが、その度に職員室は盛り上がる。


「あの。これ、漆原さんらが作りすぎてしもうたらしくて……」


 そんな5組の授業の受け持ちのない先生方に康平が筑前煮を差し出すと、彼らは大いに喜んだ。

 JKの手料理はやはり嬉しいらしい。羨ましいものだ。


「美味しい! 鯖の味付け最高! 酢の物もいい感じー!!」

「この筑前煮は絶品。俺の母を超えてる……」


 口々に紡ぎ出される嬉しい感想に後ろ髪を引かれながら3人は辞した。


 自分たちも昼食が待っているのだ。



 昼食は実に騒々しいものだった。他の班員が現れては「ひと口だけー」と交換していった。自身らが食べたのは半分以下だったかも知れない。


 例の2人組もクラスに馴染むきっかけとなった授業だった。






 そんな昼食後……。






 憂ちゃん……。どこに……?


 僕の恩人。立花 憂ちゃん……。


 1年5組はどこに……?


 教室はもぬけの殻だった。


 早く。早く、お礼を言いたい。もう、我慢出来ないんだ……。


 僕を学校って空間に戻してくれた友人は、あの子は……憂ちゃんだけは止めとけ……って。



 ……僕は引き篭もっていた。


 原因は中学2年の時、突然始まったクラス全員からの無視だった。何故、それが始まったのか僕には分からない。今でも分からない。


 すぐに学校に行かなく……行けなくなった。


 両親は県を越えて、私立蓼園学園に僕を進学させてくれた。


 ここなら例え、一切の授業を受けなくても卒業だけはさせてくれるからって。わざわざ引っ越しまでした。引き篭もりに独り暮らしなんて無理だから、両親も一緒に……。


 ……でも、僕は入学式にも出席しなかった。友だちだった連中が突然、変わった。あの冷たい目を思い出すと、足が震えて動かなくなった。心機一転。蓼学に通うつもりだったのに出来なかった。



 僕はあるサイトを覗くことが日課になった。そのサイトで情報だけは集めていた。


 いつか、僕の名前が挙がり、優しく『出席しろー』なんてコメントが流れる日を夢見て。


 それから2年。僕は勝手に3年生になった。1度も出席しないままだったのに。

 僕はC棟、3-7に籍があるらしい。それは両親から聞いていた。


 サイトには、いつまで待っても僕の名前は挙がらなかった。


 僕はもう諦めていた。このまま勝手に卒業させて貰って、それからなんとか仕事に就こうと思っていた。

 それでも日課になっていた裏サイトの閲覧だけは続けていた。掲示板と多少の勉強しか、暇を潰せなかったから。



 5月の連休明けだった。


 僕の運命を変えたスレッドが立ったのは。


【【可愛すぎる転入生】立花 憂ちゃんを愛でるスレ【天使降臨】】


 個人名が挙がる事は珍しくなかった。各部の中心や生徒会長。サイトの中での有名人は大勢いた。


『転入生』と言う文字に惹かれた僕は、そのスレッドに飛びついた。もしも、転入生と言う文字が無くても、結局は覗いていたと思う。僕は全てのスレッドの全てのコメントに目を通していたから。時間は有り余るほどあったから。


 最初は、ただ単に可愛さを讃えるだけのスレッドだった。

 高校生には見えないほど小さな美少女。最初の情報は、その程度だった。

 でもすぐに『憂ちゃん』にまつわる情報は、時間の経過につれてどんどんと増えていった。


 僕はそのスレッドに釘付けになった。あそこまで勢いのあるスレッドは初めてだった。あれだけの情報が集まったスレッドも初めてだった。他のスレッドを確認する時間がなくなるほどだった。


 多くの後遺症。施設の子。数学教師からのイジメ。


 それからも悲しい情報は増えていった。それでも多くの人たちが『憂ちゃん』の魅力を語り続けた。笑顔が物凄く可愛いらしい。


 更に情報は増えていった。


 過去に手首を切った事。リストバンドの下には傷痕が残されてるんだって事。おそらくそれが後遺症の原因だって事。

 前に古いスレで見付けてた情報。事故死した天才、立花 優くんの両親に貰われた事。優くんの代役だと激怒した人も居た。でも、スレッドの流れは違った。


『憂ちゃん』はそれでも笑顔だと言う。憂ちゃんの新しい家族は憂ちゃんにとっても大切な家族。スレッドの情報はそれで落ち着いた。


 僕は、そんな『憂ちゃん』の笑顔が見たくなった。必死な想いで『憂ちゃん』の画像を探した。1つくらい上がっているはずだって。見落としてるかも知れないって。画像が上がる事が無いのは知っているはずなのに。

 あのスレッドは『憂ちゃん』に優しいスレッド。やっぱり画像はどれだけ過去ログを漁っても見付からなかった。美少女スレとか色々なスレッドを探しても見付からなかった。


 不幸なのに……。よく泣くって、まとめには書いてあるのに……。

 それでも笑顔が可愛いすぎるって。


 不思議だった。意味が解らなかった。


 僕なんかより『憂ちゃん』は、ずっと不幸だった。過去には過ちを犯すほどに。


 そんな『憂ちゃん』は笑顔で学校に通っている。どうして笑っていられるのか。どれだけ考えても解らなかった。


 その笑顔が見たくて……僕は2年以上のROMを経て、勇気を振り絞り、初めてその掲示板にコメントした。




 362:憂ちゃんを見たいんです。お願いします。画像を上げて下さい。


 367:>362画像禁止。憂ちゃんに迷惑かかる。憂ちゃん以外も禁止だけど。昔、画像が上がって、トラブル起きて退学者まで出たらしい


 

 初めて書いたコメントにレスが付いた。嬉しかった。


 ……そして、運命を変えるレスが付いた。


 370:>362自分で見ればいいじゃんww ん? お前、幽霊か?


 僕は悩んだ末、返信した。


 434:>370そうです。2年間、学校に行ってません。


 436:この学園、不登校多いんよな。学園生活できない裕福層の子どもの最後の砦って側面。


 437:362は先輩でしたか。すみませんw


 439:>434それじゃ3年か? 俺のクラスにも居るぞ? お前、E.Yか? ちなみに学校じゃなくて学園なw


 そのイニシャルは残念だけど違った。それから色々とイニシャルは出てきたけど、僕の名前は出なかった。流れが変わったから。


 561:めんどくせー! これまでイニシャル出たヤツも出てねーヤツも、どいつもこいつも球技大会観に来やがれ! 土曜日! 憂ちゃんも出場すっから! 他にもROMってるヤツ、居るんだろ!? お前ら、1回だけでいいから憂ちゃん見てみろや! お前らの腐った人生観を憂ちゃんが変えてくれるわ! でもお前らの苦手な人はクソ多いぞ! 覚悟して来いや!!!!!





 僕は5月27日。蓼学の制服に袖を通した。入学式の日、通えはしなかったけど、あの日以来。


『球技大会……見てくる……』


 そう言った僕に母さんは泣いて喜んだ。


『いってらっしゃい! 気を付けてね!!』


 僕は母さんのそれを聞いて慌てて玄関を飛び出した。今までどれだけ母さんが心配していたのか身に沁みたから。涙が……止まらなかったから。



 僕は教室にも立ち寄る事は出来ず、そのまま大体育館に入った。


 試合開始まで心臓の鼓動がうるさかった。そこで気付いた。僕は会ったことも、見たことさえ無い『憂ちゃん』に恋をしているって。


 か弱くて、それでも強い『憂ちゃん』に。



 ……試合が始まっても『憂ちゃん』は居なかった。


 僕は苦しくなった。逢いたくても逢えない。涙まで出てきた。僕は泣きながらスマホでいつものスレッドを覗いた。いつもはPC。スマホなんてほとんど使ってない。それでも、いつか学園に行った時の為に……って、両親が与えてくれたスマホ。


 スレッドの情報で僕は愕然とした。『憂ちゃん』は怪我をしてしまった。階段から落ちた。


 僕は落ち込みながら試合を観戦した。バスケなんてほとんど分からなかった。でも、高身長コンビが物凄いのは分かった。『純正制服コンビ』の千穂ちゃんらしい子も、ポニーテールの千晶ちゃんも必死に頑張ってた。


 グループメンバーたちの頑張りをもう1度見たくて、僕は1年5組の2試合目も観戦しようとそこに残った。


 そのグループメンバーの奮闘のお陰で、僕は初めて『憂ちゃん』を見た。


 車椅子だった。『憂ちゃん』は怪我をした当日にも関わらず、応援に駆け付けた。やっぱり強いと思った。本当に凄いと思った。可愛い声で仲間に指示する『憂ちゃん』は誰よりも輝いて見えた。


 1年5組は最後の最後に卑怯な形で敗北した。僕は自分が所属しているはずの3年7組が憎かった。

 でも憂ちゃんは最後にファールをした人とさえ、笑顔で握手を交わしていた。



 何かが変わった僕は、すぐに家に帰り、ネットに繋いだ。慣れないスマホでの入力は苦労するから。



 131:憂ちゃんを見てきました。憂ちゃんが天使って意味が分かりました。僕は学園に通いたい。誰かフォローして欲しい。


 134:>131乙。イニシャル晒せ


 137:>134M.Kです。


 145:>137俺のクラスにM.Kの幽霊居るわ。クラス晒していいか? 個人特定余裕になるが


 147:>145構いません。むしろこちらから。C棟3-7です。


 150:>147よっしゃ! お前の覚悟は受け取った! 明日だ。日曜、早く来い。8時だ。俺がお前をクラスに迎え入れてやる!



 このレスを最後に僕はスレッドを覗く事は無くなった。


 翌日、僕は指定された8時に初めて蓼学の教室に入った。


『うわ。マジで来た! お前が幸坂(こうさか)だよな? よろしく! 早速、作戦会議だ!』



 女子バスケ部員が揃った頃合いを見て、僕と彼は教室に再度、入室した。このクラスの中心的な立場になっているのは女子バスケ部だから。


 僕が入った瞬間、教室内は静かになった。覚悟は出来ていた。『憂ちゃん』に負けていられないから。


『ちゃこ! こいつ、幽霊だった幸坂! 昨日の試合、観戦してたんだ。それで俺が声掛けて連れてきた! みんな仲良くやってくれよ?』


『そんな事言って、憂ちゃん目当てで観戦してたんじゃない?』


『あ……。実は……その通りです……』


『あはは! 正直者だね! 幸坂(こうさか)くん……かな? 今日はちゃんとウチを応援してよ!?』


『そだよー。絶対、優勝するんだから!』


 そうして僕は3年以上の不登校を解消した。



 だから憂ちゃんは僕にとって恩人。ひと目会ってお礼を言いたいんだ。


 僕のもう1人の恩人。彼が言うには僕と同じように球技大会で憂ちゃんを見て、立ち直った人は6人居るらしい。スレッドの情報だって。僕にはもうあのスレッドは必要ない。だから聞いた話……。


 居た!!


 憂ちゃん!!


 車椅子を押すのは千穂ちゃん。あと、リーゼントの……康平くん。


 すぅ……はぁ……。


 呼吸を整える。あれは……空の食器? そうか! 調理実習で居なかったんだ!!


 少しずつ憂ちゃんが近づいてくる。


 大声はダメ……。ゆっくりと話し掛ける……。


「あ、あの……」


「はい? こんにちは」


「こ、こんにちは」


 千穂ちゃんが返事するとは思わなかった。

 ……きっと、変な人だと思われてるよ。

 でも、大丈夫。言えばいい。


「――こんにちは」

「先輩、こんにちは」


「こんにちは」


 よし。言おう。目を合わせて、ゆっくりと、途切れ途切れに。


「あの……僕……」


「――はい?」


「憂ちゃんの……お陰で……学園に……来れました」


 憂ちゃんは小首を傾げる。可愛い……。これが噂の仕草なんだね。


「――なにも――してない――けど?」


 しばらくすると憂ちゃんは返事をしてくれた。可愛い声に鼓動が一層、高鳴る。


「不登校……でした……」


 また小首を傾げる。


「――――?」


「憂ちゃんを……見て……勇気を……ありがとうございました」


 もどかしい! 一気に伝えたいのに! あぁ! もう! 僕はこんなに憂ちゃんに感謝してるのに! 想っているのに!!


「好きに! なって……しまいました!」


 言っちゃった! ここまで言うつもりは無かったのに!!



 僕は気が付くと、いつの間にか3-7に駆け込んでいました。




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