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54.0話 トイレで涙

本日、4話目の投稿です。

読み飛ばしにご注意下さい(3度目

 


「憂? 明日……どうする?」


 入浴後の憂の自由時間直前。愛は問い掛けた。

 内心では怪我をしたばかりでもあり、家でゆっくり……と思っているが、憂はのんびりと家で過ごすような子ではない。


 ……話を進める前に、入浴について語っておく必要があるようだ。


 憂の足首のギプスは着脱可能な構造である。一度、完全にギプスで固定した後、そのギプスを真っ二つに割り、弾性包帯で締め付けてあるのだ。


 このような中途半端とも云える構造にしたのは、主治医・島井の提案からだった。


 憂は、痛みは無いが痒みは存在している。痒みは大きな敵だ。ひと度、掻痒感を抱けば、痛みを感じないが故に出血するまで掻き(むし)るかも知れない。憂にとって、清潔保持は必須事項だ。故に清潔については、驚くほどに気を使われている。醸し出す清潔感は、姉の努力の賜物だ。


 いくら清潔を保持していても、夏になれば蚊などの虫が敵となってくる……が、それは別の話だ。


 清潔の保持ともう1つ理由がある。ギプスにより完全に固定してしまえば、筋力の低下に繋がる。それは何としても避けたい。目覚めた当初は歩行にも苦労していたのだ。繰り返す訳にはいかない。


 筋力維持と無痛の秘密保持。清潔の確保と怪我の保護……。

 島井の苦悩が伺えるひと幕だった。



 憂は傾げた頭を元に戻すと、ようやく口を開いた。


「――けっしょう――みたい――」


「けっしょう……?」


「――バスケの――」


 憂の懇願するような上目遣いに、愛は苦笑いを浮かべる。


「憂は本当にバスケばっかりだね」


 その早口に再び、小首を傾げてしまったのだった。








 ―――5月28日(日)球技大会最終日



 この日は各棟の代表……優勝チームが集結し、5チームによる総当りのリーグ戦が開催されている。

 A棟代表・男子バスケットボール部最高学年である3年生が集結する3-7。

 B棟代表は2-7。男子バスケットボール部、女子バスケットボール部。それぞれが集結している2年生。2年生の勝ち上がりは毎年恒例でもある。



 ―――この球技大会は2年生にとって、3年生にガチンコでぶつかる事の出来る数少ない機会だ。当然、男バス、女バス共に顧問……いや、監督も観戦する。

 バスケ部門に限らず、2年生の彼らにとっては絶好のアピールの場であり、願ってもない下克上のチャンスなのである。


 その為、1年生時分にバスケ部員たちは相談を重ね、棟を超えて集結し、この日に備えていく。今年度の2年生の集結も例年通りに男バス3年のA棟、女バス3年のC棟を外し、B棟へと転室を重ね、結集したのである。

 だが、今年度は様相が若干、違っているようだ。例年通りならば、男バスと女バスは別のクラスに散っている。しかし、今年は男女共に同クラスに集まっている。性別と云う垣根を超える事は、無いことは無いが非常に珍しい。集結ともなれば、蓼学の黎明期以降では、史上初めての出来事だろう。


 全国大会の常連である女バスは、地区大会決勝止まり。万年2位の男バスを見下す傾向にあった。要するに仲が悪かったのだ。この2年生の世代は1つ下……優の世代の影響を多分に受けている。優の世代の活躍期間は、その中心……優の事故により端を発した崩壊があり短かった。しかし、今の女バス1年生たちは男バスの優勝を大いに喜び、祝福したのだ。その様子を目の当たりにしていた現2年生は、男バスと女バスの敵対関係に終止符を打ったのである。こんなところにも、バスケ選手としては身長的に小さく、精神的な支柱として大きかった優の影響が及んでいるのだ―――



 話を戻そう。


 C棟代表は女子バスケットボール部が集結する3-7。ダークホースと言われた、憂たちの1-5を破ったチームである。


 T棟代表は工業系を選んだ男子バスケ部員が数名、所属するクラス。

 O棟代表は商業系を選んだ女子バスケ部員が同じく何名か所属するクラス。


 力は当然、劣っている。


 蓼園学園高等部の優勝争いは、三つ巴の様相を呈していた。


 因みに、日曜日に開催されているが、代休などは用意されていない。学園サイドから見れば、休みたければ負ければいいと云う事だろうか? 休日に関しては、どこか無頓着な学園なのである。





 初戦の直前、憂と愛は大体育館に到着した。憂は制服着用である。もちろんギプスを嵌め、車椅子に座っている。


 憂の姿を見ると、観戦に来ていた生徒も父兄も驚きの表情を見せ、次第に哀しみへと移り変わった。

 憂を初めて見る父兄は、その天晴な美少女ぶりに驚き、その姿に哀しむ。


 しかし、在学生たちは違った。



 ―――あの薄幸の美少女、立花 憂はバスケ経験者である。



 口コミでの広がりと、SNSや裏サイトを通じ、(まこと)しやかにそう噂されている。


 後遺症に苛まれた躰では、もう部活動に打ち込む事は出来ないだろう。それでも少女は自らの希望により、1-5のバスケ部門代表として名を連ねた。


 ……不自由な躰を精一杯動かし、衰えてしまった力を可能な範囲で使った。1年の代表を勝ち取り、C棟内の頂点を決める戦いの直前で怪我。

 遣る瀬無い心中は察するに余りある。


 その為、在学中の生徒たちは、憂がこの会場内に姿を見せた事に驚き、そして悲哀の眼差しを向けたのだった。



 憂と愛は遅い到着にも関わらず、初戦、A棟3-7とB棟2-7との試合をセンターラインの一直線上と云う特等席で観戦している。なんて事は無い。そこを確保していた2-7の生徒……応援団が譲ってくれたのである。つまり、周囲は2-7の生徒と父兄ばかりだ。


 普通科のクラスでは見事に7組が揃い踏みしている。愛は理由を2-7の生徒に聞いた。単純な理由だった。人気の背番号にあやかっているらしい。

 因みにサッカー部は9組やら10組に集まっている。蓼学OBの愛は、こちらは把握済みだった。

 バスケに於いて、もう1つの人気の背番号『4』は特進クラス。集結は出来ない。よって、3-7が2クラス、2-7が1クラス出場しているのだ。


 ピピ……。


 小さな電子音が鳴り、愛はスマホを確認する。手慣れた手付きで、例の発表前に総帥によって強奪されたアプリを開いた。



【愛さん! もしかしてA棟とB棟の試合側に来てますか?】千穂


 愛【え? 千穂ちゃんも来てるの?】


【はい! 反対側、C棟の試合のほうです!】千穂


 愛【よく見えるね……】



 大体育館はバスケコート何面も設置できるだけの広さがある。

 その為、最終日の今日、楕円形のホールの端と端で試合が行われている。



【ほとんど見えないですよ……。でも、周りの動きでなんとなく……】千穂


 愛【あー。人が集まってるからねー】


【そちらにお邪魔してもいいですか?】千穂


 愛【大歓迎! 待ってるよ!】





 千穂が到着すると、彼女もまた早々に席を譲られた。愛と千穂が観客席の最前列に座り、憂はその前方の通路に車椅子のまま、最前列の席の更に前の超特等席で観戦中だ。すり鉢状の観客席の階段を男子生徒たちの手によって降ろして貰ったのだ。


「今度は噂の千穂ちゃんだねー!」

「蓼学アイドルユニット揃っちゃった!」

「千穂ちゃん、久しぶりー!!」

「俺ら棟が違うから滅多に見れねーもんなぁ……。今日はラッキーじゃ!」

「久しぶり……ですか?」

「あれ? 純正制服コンビはトリオに増えたって聞いてるよ?」

「今日は来てないんじゃないん?」

「久しぶりだよ。よく練習観に来てたじゃん。私、『入部したいの?』……って、声かけた事あるし」

「えー? いつも見守ってるって聞いてるよー?」


 騒々しい周囲に千穂は愛想笑いを浮かべている。B棟2-7の生徒たち……バスケ部の2年生は騒がしかった。席を快く譲ってくれ、感謝したのも束の間、質問責めからの大騒ぎである。


「ねぇ……? B棟2-7()……勝てる?」


 そんな喧騒の中、憂は2人の女生徒に挟まれていた。

 枠から漏れたバスケ部員らしい。よく見れば、球技大会3日目。1-5の試合で審判に狩り出され、憂の為に笛を吹きまくっていた少女である。


 そんな審判少女の問いに、憂は小首を傾げ考えた後で答える。


「――むずかしい――かな?」


「「「わぁぁ!」」」

「――おぉ――」


 会場が歓声に包まれる。大注目の1-5が敗退したものの、バスケ会場となった大体育館は前日ほどではないが、この日も観客は多かった。


 ここまで観たなら最後までと云った生徒が多い為だ。その他の会場の惨状が気にかかるが、気にしても仕方がない。


 憂はA棟代表3-7のプレイに釘付けになってしまった。

 蓼園学園高等部男子バスケットボール部は毎年、東部の藤校に敗れているものの、他の県で戦えば十分に全国大会に出場できるだけの力は持っている。

 迫力のある3-7……全国クラスのプレイに、息を呑むほど魅了されていた。


「「「わぁぁ!」」」


「――おぉ――うらやま――しい」


 3-7のエース。7番のダンクシュートに憂は瞳を輝かせる。思わず腰を上げかけたが、隣の女子に妨げられた。当然だ。憂の両足は車椅子の足置き(フットレスト)に置かれている。立ち上がれば最悪、車椅子ごと転倒する。


 ダンクシュート。それには優の頃からの憧れもあるのだろう。恋する乙女のように、その男子部員にキラキラと瞳を奪われていた。


 千穂も同様だ。大のバスケ観戦好きだったと云う、その片鱗を伺わせている。


 この件で、1つ憂に噂が立つのだが、何事も無く収束した為、この場では触れない事とする。




「憂ちゃん?」


 審判娘が話し掛けるが、反応は無い。


 スルーされている訳では無いと察し、「……憂ちゃん? 憂ちゃん!?」と、肩を揺らすと「んぅ?」と、ようやく反応があった。


「ダンク……どうだった?」


 インチキダンクの事を言っているらしい。確かに気になる部分だ。


「――こわ――かった」


「そう……なんだ……」


「――うん」


 ……怖かったのか。予想外の返答だ。もっと……こう、色良い返事を返すものと、この女子は思っていた。それ以降、声を掛けれど反応は戻ってこなかった。憂は、ある意味で集中力があるのかも知れない。


 しばらくは愛1人で、時折飛んでくる質問に対応する羽目になってしまったが、次第に彼ら2-7の面々も劣勢の自クラスの応援に熱中し始めた。



 結果……。憂の見立通りにA棟の勝利に終わった……と言うか、これは大方の予想通りである。

 バスケ部2年生たちは前半戦こそ接戦に持ち込んだものの、後半から1年間の経験と成長の差を見せ付けられたのだった。





 ―――試合は進み、最終戦の開始前。


 それはそうなる事を予想していた運営サイドの、粋な計らいであったのだろうか?


 3戦全勝同士、A棟代表・男子バスケットボール部とC棟代表・女子バスケットボール部との優勝決定戦となった。


 逆サイドではB棟とT棟の試合(最下位決定戦)が同時に行われるが、そちら側の観客は少ない。可哀想だが仕方あるまい。



 憂たち3名は大体育館の2箇所だけに設置された、多目的トイレへと移動中である。


 姉に車椅子を押され、愛らしい友人と笑顔で語らう憂は、通りがかった者たちに微笑みを与えた。

 憂が微笑む訳ではない。

 憂とすれ違う者たちは赤子や子犬、子猫を見た時のように自然と口元が緩んでいるのである。


 どうやら怪我により無念のリタイアとなった少女は、悲嘆に暮れる事も無く前を向いているらしい。それもアクセントになっているのだろう。




(あぁ……本当に良かった。憂ちゃんは今日もいい笑顔だぁ……)


 彼は幾度となく、この思いを反芻している。想いと謂っても差し支えないだろう。

 明日、月曜日になれば正式に発足する『憂ちゃんをそっと見守る部』改め、『学園内の騒動を未然に防止する部』の部長は、物陰からそっと見守っている。

 個人名の入った部名は流石に認められなかった……が、やる事といったら一緒である。

 今日もこうして()の周囲の騒動を未然に防ぐ為、活動している。


「対象はエレベータに乗り込んだ。行き先は多目的トイレと思われる。どうぞ」


『ト……トイレ!? ぐ……了解。エレベータの下降を確認。到着。対象を捕捉した。周囲の安全確保に入る』


 彼らが使用している通信手段は……なんて事はない。普通のスマホである。おかしな口調は単なる雰囲気作りだ。部費が入り無線を購入するまでの間、スマホで代用するつもりなのである。

 ……部費が入るのか心配になってしまうのだが、入らなくても上手くやるのであろう。


(頼むぞ……。部員12号。憂ちゃんの安全は君に掛かっている……!!)


 部長は5号へとTELする。


 プルルル……プルルル……。


 コール音が滑稽だ。雰囲気が台無しではないか。


「はい。こちら5号。ど「遅い!! 1コール以内だ! その1コールの間に憂さんに何かあったらどう責任を取る!?」

「申し訳ありませんっ!!」

「時間がない。速やかに東側、多目的トイレ内の安全を確保せよ」

了解(ラジャー)!!」


 ツーツーツー。


 ……是非とも早く別の通信手段を確保して頂きたい。





 一方の部員12号は、エレベータを降りた憂たちの進路で、障害物排除と言う名のゴミ拾いをしている。


 彼は誰かひっくり返したか知らないスナック菓子の残骸に苦戦中だ。


「ゴミ拾いしてくれてるのかな? 偉いね。ありがとう」


 透明なゴミ袋が仇になった。落ちていた空き缶や紙屑が大量に入っている。

 隣を通りがかった憂の姉の言葉に、12号は石像のように固まる。(対象)と、その関係者への接触はご法度だ。


 彼の様子を見て、愛と千穂がしゃがみ、そのスナック菓子に手を伸ばす。手伝おうとしてくれているらしい。


「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 12号は叫んだ。力の限り。

 その突然の大声に2人は驚き、憂は怯える。


「だだだ大丈夫です!! ぼ・僕の仕事ですので!!」


「そ……そう? ありがとね……」


 彼は、そそくさと遠ざかる3名を呆然と見送ったのだった。




 3名は多目的トイレに到着した。その扉を横開きに開けつつ、愛は千穂に1つお願いをする。


「千穂ちゃん……。本当に申し訳ないんだけどね。トイレ……見ててあげて欲しいんだ。転ばないように……」


 已むを得ない話……? いや、少し過保護が過ぎる気もする。


「……え? ……はい。私も心配ですから……」


 広いトイレの中、両サイドに手すりが設置された便座が、ぽつりと鎮座している。愛は車椅子を便座の傍に寄せる。


 憂は片側ずつ足の置き場(フットレスト)を上げると首を回し、2人に振り返る。


「あの――」


 憂は眉根を下げている。

 言いたい事は分かる。2人にトイレから出ていて欲しいのだろう。


 愛はそんな憂を説得する。時間を掛け、ゆっくりと。

 愛がこれまでそうしていたように、憂の立ち上がりをフォローした後、ショーツを千穂が下げる。そして終われば千穂がショーツを上げる……と言う。


 憂は、なかなか折れなかった。涙目で拒否の意思を示した。お風呂を一緒した仲とは言え、トイレの様子を見られる事が恥ずかしい。しかもそれは愛する彼女だ。


 そんな憂に、愛は妥協案を提示した。


 押し迫る尿意に切羽詰まっていたのだろう。憂はその妥協案を受け入れた。


 それは立ち上がりの際のフォローと、便座に座るまでの見守り。つまり車椅子から便座への移乗。

 下着の上げ下げは憂が自分で行う。

 今度は逆に、便座から車椅子までの移乗のフォロー。


 千穂は極力、ショーツの上げ下げの時は顔を背け、排泄時には背中を向ける……。この辺りが憂と愛の妥協点だった。



 憂が手すりを持ち、立ち上がる。


 千穂はバランスを崩さないように、憂の右側で躰を支える。

 憂は鼻を「グスッ」っと鳴らしつつ、ショーツを下げる。

 千穂は憂を支える自身の手の感触を頼りに極力、顔を背けた。

 憂はスカートを捲り上げ、便座に腰を下ろす。


 千穂は、その様子を音と手の感触で察すると、憂から離れ、背を向けた。


 ザァァァァ……。


 憂は水を流しながら用を足した。音姫は付いていなかったようだ。

 トイレットペーパーを取り、拭き上げると再び水を流した。


「千穂――おわった――おねがい――」


 その涙声に千穂は思わず憂を見てしまった。

 彼女は涙を流していた。羞恥心に押し潰されんばかりに、顔を真っ赤に染めていた。


 千穂はまた顔を背けつつ、憂の右側に立った。


「ごめんね……」と言う言葉と共に。


 憂もまた「ごめん――」と千穂に返したのだった。





 憂にとっての羞恥の時間は終わり―――と、言っても学園に愛は付いていけない。明日からはトイレの度に恥ずかしい思いをする訳だが―――3人は観客席へと戻った。


 憂の説得もあり、時間が掛かった為、前半は終了していた。


 そこで千穂が見たのは、余りにも予想外のスコアだった。


 C棟代表の3-7、女子バスケットボール部がA棟代表の3-7、男子バスケットボール部に大差を付けていたのだった。




『女バスさんは昨日、一年生相手にみっともない試合をしたそうだな?』


 試合前、そう挑発した男バスのキャプテンに女バスのキャプテン、ちゃこはものの見事に言い返した。


『優くんの世代の残されちゃった4人はね。間違いなくあんたたちより強かったよ。それをこれから証明してあげる』


 元々、犬猿の仲である。

 男バスはこの挑発に乗ってしまった。


 フラットな精神状態では無く、怒りの中で試合を開始してしまった。


 そんな男バスの精神状態を見透かしたように、序盤、女バスは執拗にインサイドに切り込んでいった。冷静さを失っていた男バスはファールを繰り返した。女子へのファールで2点、若しくは3点を得た上で、ボールは女バスのモノとなる。


 そして、女バスの最大の武器である3Pシュートならぬ5Pシュートが立て続けに決まった。


 男バスは序盤戦だけで、どうにもならない得点差を付けられたのである。


 それから男バスは、1-5がそうしたように、高さを活かした立体的なバスケで対抗したものの、1ゴールの得点そのものが違う。多少、点差が詰まった程度で前半戦が終了した。



 3人が観戦した後半戦は、それとは違う流れだった。


 女バスは前半戦の序盤で上げたリードを活かし、遅攻に終始したのだ。

 イライラを募らせた男バスは、再びファールを繰り返し、終わってみれば前半戦以上の得点差となっていたのである。


「――うまい」


 憂は周囲の生徒たちに、この試合を総評を問われ女バスをそう評した。


 確かに実に見事な試合巧者ぶりだったと謂えよう。

 しかし、他に言い方があるのではないだろうか? 余りにひと言過ぎるのだが、これが憂クオリティなのだろう。



 帰りの車中、愛は千穂にまた明日からは治癒の間、車での送迎をすると伝えた。帰りは島井の迎えだ。

 更には改めて、本当は骨折などしておらず、ただの軽い捻挫である事を伝えた。もちろん、今度は理由を添えて。


 対する千穂は、元のバスケ部メンバー。池上 京之介と渓 圭佑の両名に、バレた事を話した。


 内容が内容だけに電話では難しく、情報共有もまた難しい。


 愛は千穂の報告に『……そう』と、険しい顔で呟いただけだった。




これで球技大会編は終了となります。


お付き合い頂き、ありがとうございました^^


次話から日常に戻りますよ。



一部、文面削除しました。


野球の人気番号10番って、なんでやねん。

今日、追加した部分なんですけど……寝呆けてたみたいです(苦笑

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