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202.5話 野望は尽きぬ

 2/4、挿話致しました。









 薄暗い、とあるマンションの最上階の一室。

 ここにガウンを羽織った例の男の姿がある。似合いそうで余り似合っていない体を重そうに起こすと、今しがた『失礼します』と入室を果たし、隙の無い所作で腰を折っている最中の、心を許す数少ない存在と向き合った。


「1つ、お伺いしたい事が御座います」


「なんだ? 改まってとは珍しいな。良い。君も普段は見せない顔を見せてくれるようになった」


 顔と言われた瞬間、鉄面皮を纏ってしまった遥の姿に嗤った。それまではどこか普段よりも優しい顔立ちだったようにも見えていた。


「これも憂くんのえい「お戯れを」


 言葉を制されたが、少しだけ不満さを口元に示しただけだ。当然ながら、可愛くはない。


 男の『私』に立ち入る者は、現在、この秘書だけだ。蓼園 肇は今も生きる母と接触していない。数多くの恨みを買う男は、母の身を守る為……か、電話さえしない。

 その結果、不名誉な二つ名、『家族さえ捨て去った男』とも陰で呼ばれているのだが、彼は表面上、意に介していない。


「それで、何だ?」


 なかなか要件を切り出さない遥だが、総帥は嗤ったままだ。

 感情の起伏の激しい激高するタイプの人間と思われがちだが、これは地声の大きさに起因しているのだろう。男が激しい感情を見せた事は、実は数少ない。

 見た目とは異なる冷静さをこの男は持ち合わせている。


「連合は強大なモノと成りました。これを纏めた貴方は夢を叶えられたのですか?」


 男の口角が吊り上がった。それまでで十分に『嗤った』と表現出来ていたが、それを上回ってしまった。


「どう思う?」


「意地悪をなさらないで下さい。私は割と真剣です」


 秘書の目が細まってしまった。そこに見えた感情は、怒り、だ。


「う、む……。すまん。夢だったな……」


 秘書の見せた珍しい感情にたじろいだ総帥は、即座に表情を取り繕う。

 ところが、現れた顔は至って普通のどこにでも居そうなおっさんに成り下がった。先程までの堂々とした態度は消え去ってしまっていた。


「未だ、到達点には至らん」


 どこか遠くを見るように、やっと答えを返した。

 数多の物語の中に在る黒幕。

 経済を支配し始めた男だが、まだ不足しているらしい。なんと強欲な男だろうか。


「儂が目指す処は黒幕(フィクサー)だ。主役でも英雄でもない」


「左様ですか。お陰様で大体の意味は掴めました」


 遥の言葉は実に淡々としたものだった。蓼園 肇にその感情が読み取れたのかどうは判らない。そもそも掴めたと言う秘書の言葉が本当か、でまかせか判らない。


「もうひと押し。インパクトが必要だ。機会を伺え。瞬間を逃すな」


「畏まりました」


 このきな臭い会話の下の階には、憂たちが……と、言う事はない。

 本社近隣のマンション内での事である。





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