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174.0話 確認するお仕事

 次回、8月1日の投稿で半脳少女の1周年となります。

 現行110万字強。3日以内の更新で突っ走ってまいりました。


 ……ですが、申し訳ございません……。


 8月はこちらの本編も不定期投稿とさせて頂きます。

 エタらせるつもりは毛頭ございませんので、ご安心下さい。


 この頃、性的描写の基準が厳しくなってきておりますので、見直し、改稿を行ないたいと思っているのです。

 もしも警告を受けた場合、110万字の中から、その該当部分を探すと言う、途方も無い厳しい状況に陥ってしまいますので、その善後策となります。

 ご容赦くださいませ。


 3日以内の更新が可能となりましたら、また前書きを活用し、お知らせ致します。なるべく早く3日以内更新に戻りたいと思います。


 あ。『ちょっとこの1話、やばいんじゃないかな?』みたいなご意見ありましたら、作者にお伝え頂けると物凄く助かります。


 えっと……。


 お目汚し失礼致しました。
















 下記より本文です。



    ↓

 


「みんな、今日は来てくれて本当にありがとう! いっぱい話して、いっぱい食べて、いっぱい楽しもうね!」


「千晶にぜーんぶ言われたー! グレてやるー! かんぱーい!」


「「「かんぱーい!」」」


 かんこんかんこん、至る所でグラスとグラスを合わせ、佳穂と千晶の16度目の誕生日が祝われる……と、事件が発生した。


 何故、右手で持っていた!? ……と、姉の悲鳴が聞こえそうだ。その姉は山城と大守の両家の両親へのお酌の真っ最中である。




 ―――その姉は、ワンボックスカーをワンコイン駐車場に停車させた後、遅れた登場となった。


 そして、全員に鑑賞される憂を目の当たりにし、周囲の格好を見ると平謝りしたのだった……が、まんざらでもなさそうだった。


 やはり、自慢の妹を見て欲しい欲求があるらしい。


 ついでに言えば、自分はそんなおめかしなど、していない。憂の引き立て役に徹しているのだろう―――




「ばか! 健太! 憂ちゃんには手加減しないと!!」

「俺! ごめん! ちょっと布巾!!」

「先輩! とりあえずハンカチです!」

「あー! シミになるー!」


 どうやら、憂の持つ葡萄の生ジュース入りのグラスに遠慮なく、グラスを当ててしまったらしい。そして、グラスを力の無い右手で持っていた、小さい子はそのグラスを取り落してしまったわけだ。総帥から贈られた純白のパーティドレスは哀れ、僅か着用され1時間ほどで盛大に汚れてしまったのだった。


 ……追記しておく。その葡萄ジュースは野口英世さん1人で2本は買えない、濃縮還元ではない、本物の果汁100%のジュースだ。結構、高い。皮を剥き搾ったと思しきジュースは赤ではない、白である。それが救いか。


「あぁ――べたべた――」


 物凄く嫌そうに顔を顰めている。美貌も台無しだ。相変わらずべたべた嫌いのすべすべ好きらしい。そう簡単に人は変わらない……が、半年ほどで、盛大に姿形(すがたかたち)を変えた憂にだけ(・・)は使いにくい言葉ではある。


 流石に憂の周囲の騒動に気付いたのか、姉が反応した。


「どうしたの?」と、近づくと……「あはは! やっちゃったか!」と、笑い飛ばし「あちゃー。着替え持って来なかったよー。誰か何か持ってる?」と続け様に言った。何があったかは健太と有希の動揺である程度、察したらしい。愛が慌てると、余計に2人を凹ませる事を理解しているのだ。


「わたしので良ければ、貸しますよ?」と言ったのは、もちろん千晶だ。おそらくこの中に着替えを用意できるのは彼女だけである。徒歩10秒の佳穂も居るが、サイズ的に千晶のほうがマシだ。


 ……それでも身長差20cmはあるのだが。


 スマホを取り出し、何やら操作していた梢枝が動いた。1つの提案をしたのだ。


「憂さんはベタベタ嫌いですよねぇ……? お風呂をお借りしてはどうですかぁ? 使い勝手の問題もあるよって、千晶さんに入れて頂くとええ思いますわぁ……」


「そうだね! 憂? お風呂……借りる? ベタベタ……嫌でしょ?」


 即座に提案をプッシュした人物は愛だ。


 愛は梢枝に聞かされている。憂に男の娘疑惑が浮上している事を。それは『知っていた』はずの佳穂や千晶にまで及ぶと云う事を。そして、経験が無く、子どもの頃に父や康平のモノを見ただけでしかない梢枝自身でさえ、確信を持てていないと云う事を。憂の下着姿だけでは、駄目だと云う事を。


 早々、女性物の下着に男のシンボルを隠せるものではない。しかし、これはソレを見た事のある者でなければ、難しいのかもしれない。だからこそ、この機会に千晶を使い、はっきりと確認させようとしているのである。


「うん――嫌――」


「え!? ちょっと待って!?」


 梢枝は動揺を隠せない本日の主役を「千晶さん? ちょっとこちらへ……」と招き寄せたのだった。





 この謀略に巻き込まれたのは千穂だ。巻き込まれ属性、ここに顕在。

 作戦はこうだ。憂がお風呂を借りるとなると、付き添いが必要となる。その付き添いが憂と共に浴室に入り、シャワーを使おうとする……が、勝手が分からず、苦戦。外に待機する千晶にヘルプを求め、颯爽と浴室にお邪魔する。

 付き添う相手は姉でも問題ないのだが、姉は姉で両家の両親と絶対に話しておきたい事があると言う。佳穂と千晶を巻き込んでしまった謝罪と、2人の憂との付き合いの御礼……などだ。憂の性転換やら色々とバレて以降、関係者の家族には迅が各家庭に電話を入れているが、面と向かうとなると話は別物だ。大人は色々と大変なのである。


「……わかった。解りました。私が一緒に行きます。みんな私の言葉、信じてくれないんだから……」と千穂も渋々ながらも了承し、一件落着……な、訳がない。


「千穂と――!? じゃあ――がまんする――」


 ……と、今度は憂が駄々を捏ねた。


 いや、駄々を捏ねたと言ってあげるには余りにも理不尽だ。憂はそんな疑惑が浮上している事など気付いていない……はず……? いや、ここのところ察しが良いので気付いているかも知れない。

 兎にも角にも、この疑惑を払拭させる為に、全裸を晒させようとしているのだ。


 ……この一件で千穂の言葉が信じられていない理由は……なんだろう? 大方、もしも男性機能を有したままだとすれば、女子の告白が相次ぐ事になるから、千穂にとって不利となる……と、云ったところだろうか? ぶっちゃけ、はっきりとは語れない。見てみたいとか興味やら色々と複雑な事情も重なっているのだろう。



「憂? 聞き分け……ないと……怒るよ?」


 姉の目が据わっていた。わざとなのだろう……が、これをされると憂は逆らえない。「うぅ――はい――」と不承不承ながら了承の意を示したのであった。


 ……はっきり言って、可哀想である。



 憂への浴室の貸し出しについて、千晶の母は問題なく許可を下した。父も表面上、問題なく許可した。後で大掃除などしない事を祈る。



 そして、脱衣所である。


「憂ちゃん? 着替え……これ……」


 もちろん、千晶の服だ。用意されたものは長袖のTシャツとスポーツ用のロングタイツ&ショートパンツだった。なるべくタイトな物を……と、選んだ結果らしい。千晶でさえ余裕のある物を選んでしまえば、目も当てられない事になりそう……などと思ったのだろう。因みに下着は……無い。仕方ない。サイズが合わない。未使用が無い。


「うぅ――ありがと――」


「じゃあ、外で待ってるから困ったら呼んでね」


「……うん。よろしく……」


 何とも気まずい女子3名なのだった。





 全裸の千穂を前に……いや、前にはしない。全裸の千穂が傍に居ると、憂はいつも背を向ける。背中を向けて硬直する。


 そんな憂の背中をチラリと確認すると、シャワーの蛇口を捻った。内心は、罪悪感で一杯だろう。けれども、千穂も理解している。このままではいけない……と。

 最悪のシナリオは『本当に女の子なのか!?』が爆発し、確認しようとする輩が出現する……。こんなシナリオだ。


 その為には、まず梢枝を筆頭に佳穂と千晶の親友2人に確信を得て貰う必要がある。だからこそ、罪悪感を誤魔化し、元彼氏の裸体……、しかも陰部の確認と云う、困った提案に嫌々ながらも協力を了承したのである。


 捻ったシャワーは、いつまでも冷水を出し続ける。

 当然だ。蛇口に並んで付いている温度は冷水に設定されている。


「……あれ?」


 千穂は小首を傾げてみた。拙い演技である……が、「――どう、した――の?」と背中を……お尻を見せたまま、壁に向かって呟く。やはり、千穂側には視線を送れない。全てが予定通りだ。


「千晶ー! お湯、出ないー!」


 呼んだ。声を少し張り上げ、脱衣所に居るはずの親友の片割れを。


「分かったー! ごめん! ちょっと、入るね!」


 ガタッと、2つ折りのアコーディオンタイプのドアが開かれると……、憂はしゃがみ込み、全力で自身の前を隠していたのだった。千穂の声で千晶の入場を察知したのだろう。

 ついでに言えば、千穂も自身のポイントを隠していた。


 内心では、この子は相変わらずスリムだね……。憂ちゃん、隠しちゃってる……などと思いつつ、「えっと……。これでいいよ」と、シャワーの水に軽く触れた。


「そう? ありがとね」


「ううん。また外に居るから困ったら呼んでね」


 千穂の手の内のシャワーは湯気を発し始めた。憂は壁を前にしゃがみ込み、全力で隠し切る構えを見せている。


 ……作戦は失敗である。そのシルエットは少女の躰そのものなのだが、確信部分の確認には至らなかった。


「憂? 掛けるよー」


 浴室内では、そんな声が響いてくる。


(これは困りました。でも、どう見ても女の子なんだけどね。それじゃダメなのかな? ……小さかったら布の1枚で隠せるの……? はい。わかりません。でも……、どう考えても悪い事してるよね……)


「はい、タオル。洗ってね」


 脱衣所で小難しい顔。しかも合同誕生日会の主役の1人である。意味不明な状況だが、流石の千晶も状況に流されている。


(わたしもお風呂乱入して……、とか思ったりしたけど、やっぱりダメ。確認は出来なかったけど、ちゃんと女の子だったよ……って、わたしが言えば、梢枝さんも佳穂も納得してくれる……よね?)


「そんなに……慌てない……の……」


 どうやら急いで洗体しているらしい。憂の慌てぶりが想像出来る。転倒にはくれぐれも注意して欲しいものだ。


「はい。これ……シャワー……」


 シャワーを手渡したらしい。この会話を千晶は聞いてなんかいない。思考の渦に入り込んでしまっているらしい。


(千穂、何も無かった……って、言ってたよね? ……って、事はやっぱり毛が? その後に慌ててたし……)


 どうやら、千晶は『どうだった?』と聞かれた時のシミュレートをしている。


「泡は……うん。無いね。先に……出てて……」


「――うん。――千穂――いつも――ごめんね――」


「ごめんは……嫌だよ?」


「あ――。ありがと――」


「……うん」


 ガタッと、浴室と脱衣所を隔てるドアが開かれた。しかも憂、自らの手で。

 もちろん、千晶に幼い肢体の正面を向けている。


「――ち!」


 ばっちりと憂の全裸を真正面から目撃した千晶は元々、丸みのある愛嬌のある瞳をパチクリさせた。


「千晶――! ――なんで!?」


 そして、体を隠す為か、再びしゃがみ込んだ。


(ばっちり見えちゃった。はい。やっぱり問題なく女の子でした……)


「うぅ――はずかしい――」


 どうやら千穂の裸体と視線から逃れようと、急いで浴室を出たのはいいが、外で待機している千晶の事をすっかりと忘れてしまっていたらしい。


(本当に生えてなかったね……)


 またもや恥ずかしい目に遭った憂なのであった。





 その頃、山城邸のリビングの隅では、拓真と美優、そして護衛の2人が何やらコソコソと話し合っていた。


「……隠せるもんじゃねぇよ」


「そうでんな。間違いなく隠してなんかおらんわ」


「そうなんですかぁ……。それならええです。やっぱり、こう言う事は男子の皆さんに聞くべきでしたわぁ……」


「でも、それって、憂先輩のパンツ見たって事ですよね……。お兄ちゃんも……1度、見ちゃったのは知ってるけど……」


「憂が無防備過ぎんだよ……!」


「せやせや……! 元々の女子より、明らかに見せはる機会、多いんでっせ……!」


「康平先輩もそんな事言って……! お兄ちゃんも……!」


「2人とも正直者なんやから……。水着の時に……とか、言えばええでしょうに……」


「あぁ……」


「せやな……」


 男子2名の見解は、あのショーツの中に隠している訳は無い、隠せるはずが無い、だった。それを馬鹿正直に明かした事で、中学生の美優から少し軽蔑されてしまった拓真と康平なのであった。





 更にその頃、色々と話をしたいであろう、愛に断りを入れた上でリビングに置き、千晶の両親は佳穂を1人娘の部屋に連れていった。


「佳穂ちゃん? 千晶と上手くいってないのね……。ごめんね……」


 千晶が居ない今だからこそ、したい話があったのである。


「ううん。上手くやってるよ?」


 佳穂はタメ口だ。それだけで大守と山城、両家の仲の良さを感じさせる。


「千晶が5組から離れた理由はね……。この人が原因なの……」


 少しの間、佳穂と千晶の仲が壊れていた事を、大守の両親も山城の母も把握していた。互いに1人娘。問題があるのは、気付かない千晶の父のほうだ。把握していて当然だろう。何しろ、一緒に蓼学に通学し、10年目だ。その2人が別々に通学し始めた。気付かないほうがどうにかしている。


 その娘同士の仲は、憂の記者会見を機に……、つまり、千晶の母が離婚届を突き付け、父に謝らせて以降、ある程度、回復した。


 ある程度だ。そこを見極められないほど、親子関係は希薄では無かった。そこで両親は、大守と山城の娘の情報を統合し、千晶は父との一件を。一時的にとは言えども転室した理由を話せないでいるものと断定した。


「だから……。そんな理由だから、千晶の事、許してあげてくれないかな……?」


「済まなかった……」


 その時、佳穂は……魂が抜け落ちたかのように、ぼんやりと千晶の両親の間を眺めていた。

 視線の先には千晶の勉強机。そこには憂の声で起こしてくれる、佳穂の部屋にあるものと同じ目覚まし時計。千穂と3人での写真。更には憂を含めた大勢で撮った高1での写真。


 ……そこに千穂と出会う前、小学生の頃の幼き2人の写真が、今も飾られていたのだった。





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