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96.0話 聞きたい事は女子も一緒

 


 きーんこーんかーんこーん。


 6時間目終了ー。


 憂がチャイムに反応してむくりと体を起こした。


「あー。今日の範囲も期末テストに出るからしっかりだよー」


 先生の纏めのひと言。期末テスト……。嫌だなー。他の学校は2学期制がほとんどなのに……。蓼学は年に3度もあるんだよ?


「起立」


 有希さんの声に色んなところで椅子と床が擦れるギギぃ……って音。もちろん私も。隣の憂も。


「礼」

「――ごめんなさい」

「「ぷぷっ」」


「着席」


 憂! 笑わせないでよ!


 ちっちゃい声だったから先生は気付かなかったみたい。そのまま出て行っちゃった。


「憂ちゃん! 吹いちゃったじゃないかー!!」


 振り向いて早速、ツッコミの佳穂。早口だったけど。時々、やっちゃうんだよね。私もやっちゃうし……。


「憂……。ごめんって……?」


 だから、佳穂のフォロー。


「――ねちゃった――から――」


 ……悪いと思ってるのが憂らしいよね。仕方ない事なんだよ?


「それで……どうするの?」


 千晶の言葉に憂はいつも通り、小首を傾げて思案。



「――なにが?」


 待つこと10秒ほど。憂の普通の反応時間だったかな?


「………………」


 千晶は閉口。うん。気持ちは分かる。放課後になって『どうする?』って聞いたんだから、これからの事に決まってるよね。


「これから……だよ?」


 だから千晶のフォロー。みんな分かってる。分かってるけど、ちょっと……って思っちゃう時がある。私もあるから……。


「ろぼっと――見に――いく――」


 昼休憩の事、憶えてたんだね。ロボ研さんからの再度のお誘い。


 行ってもいいのかな? ……行っちゃったら、また勧誘攻撃にあっちゃうかも……。


「……うん。わかった」


 でも、やっぱり憂が行きたいなら連れていってあげたいんだよね……。


 ばん!!


 ……いきなりのでっかい音に、ちょっとびっくり。

 勢い良く窓を外から開けたのは七海ちゃん。ヒビ入るよ?


「憂先輩! 正式に許可が降りました! もうちょっとだけ待ってて下さいね!!」


 そのままダッシュで行っちゃった……。


 あ。戻ってきた。


 窓をそっと閉めて、会釈してまたダッシュ。


 ……元気だよね。


「憂ちゃん?」


 あ。後ろからのでっかい音でびっくりしちゃったんだね。目を真ん丸にして固まってた。


「さて! 健太さんは部活だー! テスト休みくらい作ってくれー!!」


「そんな事言ってないで、行っといで!!」


 有希さんと健太くん。2人はいつ会ってるんだろうね……。


「勇太ぁ! そろそろ行くぞー!」


「あいよ!」


 勇太くん活き活きしてるね。ホントに良かったと思う。


「あ――それ――!」


 ……憂……いつ戻ってきたの? あ……。それ……。


「言われた通りにバッシュ入れてんだ。ちょっとはみ出してるけどなー。はは! 折角、憂が手ぇ刺しながら縫ってくれたんだ! 使わないワケにゃいかねーよ!」


 憂の縫った巾着袋だね。勇太くんのバッシュ、彼の言う通り、大きいからはみ出しちゃってる。憂の足のサイズの1.5倍くらいあるのかな? ホントにでっかい。


 あの大切な巾着袋……私は何に使うか散々迷って、優との数少ない写真を入れてる。紐は締められないけどね。角とか折れちゃったら嫌だから。


「おおきいの――また――ぬう――」


「おぅ! 頼む! それじゃ行ってくるわ……っとと!」


 …………ん?


「んぅ?」


 あはは! かぶっちゃった!


「憂? 先輩……たちも……監督も……いつでも遊びに「長い」


「……バスケ部……遊び……来いってよ」


 ……あれ? 小首傾げた。拓真くんの言葉では珍しいかも。基準がわかんない……。


「――うん!」


 嬉しそう。


 憂? 良かったね。




 そして、やってきました。T棟付属の作業棟。


「あたし、ここ来たの初めて。ちょっと緊張」


「佳穂は緊張なんてしない子のはず」


「なんだとー?」


「お待ちしていました!! ロボ研へようこそ!!」




 ……結局20分ほどでお(いとま)しました。


 私たち……って言うか、憂を出迎えて深々と頭を下げたのは部長さん。もちろん3年生。憂の学園内でのポジションって、どんどん高い位置に行っちゃってる気がするよ。


 お暇した理由は……話が難しすぎたから……。憂も最初は顔を輝かせてロボットを見てたんだよ? その辺はやっぱり男の子だなーって思った。でも、ロボットの説明がちんぷんかんぷん。私がそうなんだから憂は……ね。

 理解しようと思ったら私は1ヶ月くらい掛かりそう。梢枝さんでも困った顔してたからね。どんなに頭が良くても専門外はあるよね。

 途中で部長さんもそれを理解しちゃったみたい。『またの機会に……』って、切り出した千晶の言葉にホッとしてたみたい。


 作業棟を出ると憂がひと言。


「まぁ――いいや――」


「……何が?」


「ぶかつ――」


 ……ちょっと淋しそうに言った後、笑顔を見せた。これが愛さんはいつだったか言ってた誤魔化し……だよね?


「……憂ちゃん」

「憂さん……」


「できること――する――」


 ……ん? 何か自信ありそ。何か見付けたのかな?


「出来る……事?」


 千晶が小首を傾げた。


 ……ついに千晶まで……。私はもう伝染っちゃった自覚まであるけどね。


「でき――そうな――こと――」


 なんか格下げされちゃったよ? みんな苦笑い浮かべちゃってる。


「それは……なに?」


 代表して質問。愛さんからも島井先生からも何も聞いてないよ? 随分と遣り取りしやすくなったから、チャットしてるんだけどな。


「――ひみつ――」


「秘密!? 憂ちゃんに似合わない!!」


 ……えっと。


 憂自体は秘密だらけだけど、憂自身は秘密にするのが苦手……。ややこしい。

 ややこしいよりも今までよく、暴露までいってないよね? 聞かれなきゃ問題無いから……かな?


「ね? 教えて?」


 佳穂が食い下がる。

 私は、やめてあげて欲しい気持ちと、知りたい気持ちがせめぎ合い。


「裁縫の……関係……?」


「うぅ――きかない――で?」


「佳穂。やめなさい」


 千晶が止めてくれた。裁縫関係の事だって解っちゃったんだけどね。巾着の次の段階に移行したのかな? それが上手くいってるとか? ホントに見付かるといいね。憂がホントに出来る事。それがやりたい事だったら……。もっと、いいんだけどね。そこまでは難しいかな……?



 結局、今日、部活の見学で訪問したのはロボ研さんだけ。


 ……手芸部がある事……。教えてあげたほうがいいのかな? 家庭科の……あの先生が顧問してるはずなんだけど……。


 帰ったら愛さんに相談してみよっと。



 ……それで。


 見学じゃなくて、参加しちゃった。憂と佳穂は……ね。他のみんなでまたもやバスケ部見学。


 私と千晶は運動得意じゃないからそれでいいんだよ? でも、梢枝さんと康平くん。2人は経験者だから参加すれば……って、思ってたら『部活動に参加するのは、年齢的に卑怯な気ぃがするんですわぁ……』って。そんなものなのかな?


 拓真くん、ここに居ると思ってたのに居なかった。どこ行ったんだろね?


『圭佑! お前、憂ちゃん来たらヤケに張り切ってるなぁ!』って、知らない先輩の言葉。高等部から入学のバスケ部員なのかな? 憂の事故まではよく見学してたから何気に男バスさんには、かなり詳しいんだけどね。


 圭佑くんは……たしかに張り切ってたかも。誰にいいとこ見せようと思ったのかな? 言葉通りに憂の前だから?


 バスケ部を見に来てた女子は、私と千晶に梢枝さん。後は憂だね。佳穂はずっと参加してたから。


 誰だろ? 彼の目的の人は? ちょっとうずうずしてきちゃった。私の悪いところって解ってるんだけどね。そのせいでこの前、酷い目に遭ったし……。


 でも……気になるなぁ……。






 そして、この日の夜。チャットの遣り取りがすっごく楽しかった。始まりは佳穂が書き残してたひと言。


【1-5知った者倶楽部】


 このグループは1-5で知っちゃった人の集まり。もちろん憂も入ってる。憂は文字でのやり取りはやりやすいから……だろうね。チャットを手に入れたばっかりの憂は、ちょこちょことコメント付けてる。


 えっと……それで……佳穂のだった。



【憂ちゃんに、しつもん!】佳穂


【佳穂のことだから、きっと碌でも無い事】千晶


【千晶ちゃん、ひでぇ……】勇太


【よめない……】圭佑


【ろく】拓真


【ロクってよむのか】圭佑


【ひらがなつかえ?】佳穂


【ごめん】千晶


【なに?】憂



 佳穂の質問ってコメントが20時。それからログの進みが遅かったんだよ。たぶん、流れないようにみんなが控えたんだと思う。私も控えたしね。

 それで憂の返事が入ったのが21時頃。1時間ほど貰ってる自由時間中なんだと思う。


【憂ちゃん、じょしと、だんしのちがい、きいていいかな?】佳穂


【ちがい? どんなこと?】憂


【たとえば……ふくそう?】佳穂


【Tシャツにいわかん】憂


【くわしく!】佳穂


【男女ぎゃく】憂


【どういう事?】千晶


【くびのまわり、ひろくて、体のせん、出る。ぎゃくにするべき】憂


【???】佳穂


【女子こそ、かくすべき。なのに】憂


【あー! なっとく! たしかに、へん……】佳穂


【そうじゃないのも、あるけど、たしかにそうかも】千晶


【男のくびまわりひろくて、だれがよろこぶんだ?】勇太


【だいべんしてくれた。ありがとう>勇太】京之介


【くつぞこ】憂


【康平はムチムチになりそだな。メンズでも】勇太


 千穂【くつ……? 何かちがうの?】


【ちょ! やめ!w】圭佑


【くつ……くつのちがい……?】佳穂


【女の子のくつぞこ。やわらかい】憂


【そうなの……か?】圭佑


【さべつ】憂


【男子のくつぞこって、かたいの!?】佳穂


 千穂【しらなかった……】


【女子のってやわらかいのか!?】勇太


【こんなにならなかったら、ずっとしらなかったかも】憂


【ほかには!?】千晶


【しょうげきをうけた】京之介


【やわらかいの多いかも>勇太】佳穂


【ふくのしゅるい】憂


【俺、あしのうら、いたくなる時、あるんだけど】圭佑


【ごめん。ちょいおち】勇太


【それはしってた】佳穂


 千穂【しってた】


【さべつ】憂


【しゅるいは、じゅようと、きょうきゅうの、もんだい】京之介


【すべすべのきもちいいのおおい】憂


【なんの、はなしだ?】拓真


【くつぞこ、ヒールのもんだい……かな?】千晶


【あるね。かわぐつのときとか>圭佑】京之介


 千穂【なんでもさべつ、いわないの】


【ログあされ>拓真】圭佑


【いま、おもいついたのは、こんなとこ……かな?】憂


【すべすべ? そんなに多い?】千晶


 千穂【ほら。憂は……ね?>千晶】


【ん? なになに?】圭佑


【おいついた】拓真


【今、ペースおちてるからなw】圭佑


【憂ちゃんってすべすべすきだよね?】佳穂


【ちょっと……すきかも……】憂


 千穂【せっかくにごしたのに……】


【憂のにゅうりょくそくどw】圭佑


 千穂【咲子された】


【咲子?】千晶


 千穂【先こされちゃった】


【咲子w】佳穂


【咲子……】京之介


【咲子】拓真


 千穂【もう! ていせい、したよ?】


【咲子】千晶


【はやいよね、にゅうりょく】京之介


【じゃあさ。体のちがい……は?】佳穂



 この時、この瞬間から男子たちは、かなり静かになっちゃった。なんとなく気持ちはわかるかな?



【こりゃ!】千晶


【千晶は気にならないの?】佳穂


【それは……なるけど……】千晶


【はえぎわ】憂


 千穂【はえぎわ?】


【はえぎわ?】佳穂


【咲子wされたw】佳穂


【おでこのとこ。なぞのけ】憂


 千穂【佳穂! おこるよ!】


【このみじかいの?】千晶


【みんながおでこみてるはずw そうぞうしてわらった】佳穂


 千穂【これ、ないの?】



 おでこと髪の境界線の短い毛。産毛にしては長いし、言われて見たら不思議かも。



【なんのこと? 男子にはないの?】佳穂


【ない】拓真


【あるよ? すこしだけど】京之介


 千穂【ひとそれぞれ?】


【ないなぁ……】圭佑


【まえは……?】佳穂


【佳穂!】千晶


【ちょっとだけ、だったとおもう】憂


 千穂【男女にそんなちがいが……】


【ほかには!?】佳穂


【かんせつ。やわらかい】憂


【それはわかる。でも憂ちゃんはとくべつやわらかいよ?】千晶


【なんでだろ?】憂



 ……ホントになんでだろうね?

 事故の傷が無いのも不思議。どうなってるんだろう?


 そのコメントを最後に憂は消えちゃった。たぶん、寝落ちしちゃったんだと思う。チャットの会話でもそれで落ち着いちゃった。


 それからも男女の性差を憂抜きで話してたり……。ちょっと恥ずかしい部分とかあったけど楽しかった。


 終盤で梢枝さんが現れた。


【男女変わりませんねぇ……。チャットだけにしておきましょうね】梢枝


 なんか意味深な事をコメントしてた。


 それと! 康平くんが風邪を引いちゃったみたい。憂への接触禁止令が出ちゃってショックを受けてるそうだよ。


 ……ちょっと可哀想……かも。




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