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6 デパートに行こう?



「年齢はぁ、大きく見ても4歳かなぁ。5歳以上にするには無理があるよねぇ」

「そうだなぁ。4歳くらいが適当だな。まぁ4歳でも小さい方になるだろうが3歳じゃ言動的に無理がありすぎる。もっとも4歳でも微妙なんだろうがな」

「仕方ねぇじゃん。魔力が安定してれば15歳に見えるようにちゃんとできるんだ。嘘じゃないぞ」


 ふーんと聞き流しつつ、誠一はショウを抱き上げた。 小さな体はわきに手を差し入れた状態でなんとか持ち上げられた。


「ああ、ショウ君はやっぱり男の子なんだねぇ」

「は?」


 ショウは一瞬何のことだと固まったが、誠一の目線に気が付くと真っ赤になって暴れだした。


「こ、この変態! 何処見てやがる! 離せ~」

「お、落としちゃうよ。暴れないでって。ショウ君」


 騒ぐショウをカウンター越しによいしょとギリルが取り上げ、自分の肩口に抱きかかえる。ショウはギリルの服をしっかりと掴んだ。

 そのショウの背を宥めるように叩くと「取り敢えず着るもんを何とかせんとな」と言い、苦笑したのだった。












  店の2階の現在使われていない部屋に捨てるために纏めて置いてあった誠一の小さくて着られなくなった服の中からショウが着られそうな服を探す。ずいぶんと前の物などすでに黄ばんでいたりしてとてもじゃないが着られそうにない。

 そんな中からなんとか無事なTシャツと短パンを見つけてショウに着せた。もちろん大きいので襟ぐりを安全ピンで止めてずり落ちないように調整し、短パンのウエストを紐で締めて落ちないようにする。見栄えは悪いがちゃんとした服をデパートで購入するまでの間だから、そこは我慢してもらうしかない。

 靴だけはごまかしようが無いから店まではギリルが抱いて行くことになった。店までは近いから問題はないだろう。すぐ必要なモノだけ買って戻るだけなら夕方の営業時間までには間に合うだろうが、念のために1時間開店時間を遅くする旨の張り紙をドアに貼っておくことにした。


「じゃ、行くぞ」

「うん。行こうね」

「おー!」


 店のドアを施錠し、三人で近所のデパートへと向かったのだった。






 デパートに到着して、子供服の売り場を探すと2階にあった。

 エスカレーターで上がると、すぐ脇が売り場のようだ。その横には子供が遊べるスペースもある。その場所は床にマット状のものが敷かれ、子供は靴を脱いで上がって遊ぶようだ。子供服の売り場にも同じようなマットが敷かれた場所があり、お母さんが一時子供を下して品を見れるようにと配慮されているようだ。


「このマットが敷いてあるところは裸足で歩いてもいいが、それがないところは歩かないようにしろよ。靴を履くまでは守るんだぞ?」


 ギリルがそう注意するとショウはしっかりと頷いて了解の意を示す。それを確認してからマットの上にショウを下してやった。


「じゃあ誠一と協力して、服と靴を選んでいなさい。俺はちょっと煙草を吸ってくるから」

「はーい」

「わかった」


 二人の元気のいい返事を聞きつつギリルは喫煙コーナーへと足を向けた。







「こんなのはどう?」


 誠一は手に持ったTシャツをショウに見せる。真っ赤な見ごろで、ラグラン風になった袖は鮮やかな緑だ。


「………、派手すぎねぇ?」

「そうかな? じゃ、こっちは?」


 次に手に取ったのは派手な黄色に赤い英文字がプリントされたものだ。


「………、だから派手だっつーの」

「そうかなぁ…」


 確かに子供服は色鮮やかでカラフルなものも多い。しかしそんな派手な色遣いのモノばかりではないはずだ。そんな物ばかり選ぶ誠一の中の『派手』なモノの基準は一般とは違っているようだ。


「もっと落ち着いた色のモノを選べよ。ついでに原色は無しにしてくれ」

「む~。ん~っと。あ、じゃ、これは?」


 それは確かに原色ではないが…。

 モスグリーンベースのカモフラ柄だ。


「………。お前に服のセンスがねぇって事だけは、良くわかった」

「酷いなぁ、もう。人のセンスの事はほかっといてよ」

「自分にセンスがないことを自覚してるのかよ。ギリルが戻ってくるまで待った方がマシか?」


 むーっと誠一は顔を顰めた。ギリルが戻るまでにはシャツ位は決めたいところだ、誠一にも意地があるのだから。


「絶対今の発言訂正させるもんね」


 誠一はせっせと子供服を見てショウが気に入りそうなものを探す出す。


「あ、これはどうかな?」


 誠一が手に持ってきたのは、青空のような青いTシャツだ。単一色ではなくグラデーションがかかっているようだ。


「へぇ、それはきれいだな」

「でしょ。どうかな?」


 ショウがよく見ようと手を伸ばしたところに、誠一の背後から声が掛けられた。


「そのTシャツは男の子にも女の子にも人気がありますが、お嬢ちゃんでしたらこんなのはいかがかしら? とても似合うと思うのだけれど?」


 その声の主へと二人の目は向けらる。そこに居たのは、可愛らしいピンクのフリルやリボンが沢山ついたワンピースを二人に見せるように手に持った若い女性店員だった。


「え? っと…?」

「とっても可愛らしいお嬢ちゃんですもの、シンプルなTシャツもお似合いですけど、こういった可愛い服もよく似合うと思いますよ。この服を着たら、きっとお人形さんのように愛らしくて素敵でしょうねぇ」


 うっとりとしたような店員の言葉にショウがキレないように誠一が自分の背に隠す。彼の顔にはひきつった笑みが浮かび、店員のそれとは対照的だ。


「あ、あのー。ショウ君は男の子なんですが…。さすがに男の子にピンクのワンピースは無いかと…」

「ええっ! 男の子!! あ、あらまあ。ごめんなさいね。髪が長くてとても可愛いからてっきり……」


 おほほというような感じの笑いを残し、女性店員はそそくさと逃げるように店の奥へと引っ込んでいったのだった。


「ちぇ、いくらなんでもあんなピンクなのは好みじゃないな。それよりさっさと選んじゃおうぜ。」

「あ、うん、そうだね」


 誠一は我に返りショウに同意した。


「上はその青いシャツでいいや。色がきれいだし」

「うん。これはきれいだよね。ショウ君の瞳の色にも似てるし。じゃ、あとはズボンと靴かな」


 二人はズボンなどが置かれたコーナーへと移動したのだった。

 そのあとは他の店員に女の子に間違われることもなく(おそらく先ほど間違えた店員が他の店員に情報として流したのだろうと思われる)すすめられた服を見たりして二人はズボンや靴、下着などを選んでいく。





 ギリルが喫煙コーナーから戻って見ると、二人は何やら揉めている様子だった。


「何を騒いでる?」と聞けば

「靴下!」

「いらねぇってば」と、二人から返された。


 よくよく聞けば靴下がいる、いらないで揉めていたらしい。あまりにも低レベルな会話に苦笑しか出ないギリルだ。


 その後会計を済ませベビールームを借りてショウの着替えを済ませた。さすがに身体に合った服になれば動きも楽になるのか、ショウははしゃいで飛び跳ねている。最も、今までは靴を履かない生活がほとんどだったそうなので、靴の感触が面白いのかもしれない。

 あとはボーダーに戻るだけだ。


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