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5 一緒に暮らそう?



「ところで、ちょっと質問があるんだが、わかるんならでいいが教えてくれないか?」

「ん? 何だ?」

「まずは、ショウの種族の成体になる年齢だな」


 ギリルの質問にショウは思い出すように目を閉じた。


「んーっと、確か100歳くらいだったかな。他の種族はまた違うらしいけど、よくは知らない。勉強する前だったし」


 ショウはよどみなく答える。他の種族についてはもともとよく知らないと言っていたのだし今は関係ないので問題はない。


「それじゃ次だ。種族の平均寿命とかは知ってるか?」

「寿命…。ええっと、350歳くらいだったかな。長生きなのは400~500歳くらいまで生きるらしいけど。確か俺のババアが400歳超えたとかで祝うって話を聞いたことがあったから」

「ふむふむ。(ってことは、こいつを人間の年に比較すれば3歳ちょっとってところか。そりゃあ、幼いな)なるほど」


 どおりで幼い仕草の筈だとギリルは一人納得していた。人間の4倍もの寿命を持つ種族なら、15歳など小さな赤子と同じだろう。


「100歳って…、そんなになるまで隠れて過ごすの?」

「仕方ねぇし、何処に接点ができるのか、今の俺じゃまだわかんねぇしな。それに、向こうの世界の奴らにとっちゃ俺が死んだとしても関係ないんだろ」

「そんなぁ…。そんな酷いことってないよぉ」


 ギリルはショウ自身が、自分がこの世界に捨てられたのだという自覚があることに驚いた。

 その上で、自分のできることをただしているというスタンスなのだろう。


(さすがは15歳ってことなのか。しかし、こっちの世界の同じ年頃と比べても、大人びてるな)


 腕を組んで、そっとショウの方へと体を近づけた。


「さてと、話をちょっと整理させてくれ。このままじゃ、混乱してしまいそうだからな」

「へ?」


 ショウはきょとんとした顔でギリルを見上げた。


「先に結論から言わせてもらうが、暫くの間かもしれんが、此処で一緒に暮らさないか? 一人っきりでこそこそ隠れながら過ごすよりは、楽しいだろうよ」


 ギリルはにっと笑って見せた。


「え? ギリルさん、それって…、いいの?」


 誠一が彼に頼みこもうと思っていた事だった。何としても、此処でショウと一緒に過ごしていきたいと思ってしまったから。彼を少しの間でも、守ってやりたいと思ったから。


「ああ。ショウ本人が良いって言うのならな。どうだ?」


 話の展開に今一つ付いていけてないショウは誠一とギリルを交互に見るだけだ。


「ねぇ、悪い話じゃないでしょ? 一緒に暮らそう?」

「え? で、でも……。えっと、そだ、この世界ってさ、生活するのに『金』っていうモンが要るんだろ? 俺はそんな物、持ってないし……」

「子供が気にすることじゃないな。ショウが成体おとなだったらこんな提案はしない。けれど、今まで聞いた話では、こっちの人間の年齢と比較すれば、ショウはまだ3歳か4歳といったところじゃないか。そんな子供を放り出すような人でなしにはなりたくないだけさ」

「ええ~、ショウ君ってばそんなに小さい子なんだ」


 誠一の叫びにきっちりとショウは反論を返していた。


「小さい子って言うな! 15歳なんだから」

「まあまあ。で、返事はどうだ?」

「ホントに、いいのか?」


 ショウの確認の小さな声にこくりと大きく頷くギリル。

 その横には期待に瞳をキラキラさせた誠一が居る。


「ん、じゃぁ…」

「いいの?」


 ショウはこくんとはっきりと頷いた。


「よしよし、んじゃ話を整理するぞ。まず、ショウは成体おとなになるまでは、自力では自分の世界には帰れない。ってことは成体おとなになれば、帰れるってことで間違いないか?」

「ああ、間違いない。って言っても確証があるわけじゃないけどな」


 ギリルはふむと頷いた。


「じゃ、次な。今は羽の色が不揃いで、魔力とやらのバランスが悪い。ってことは色が揃えば問題はなくなる。合ってるか?」


 ショウはこくんと頷いた。


「次な。じゃあ、どうすれば羽の色は揃うのか。で、どちらの色にしたい、もしくは出来るのか?」

「え、あ…。んと」


 ショウは口籠った。


「もともとの色の、白に決まってるじゃない。ねぇ」


 口籠ったショウに代り、きっぱりと言い切るのは誠一だった。ギリルはその様子に苦笑した。


「まあいいか。じゃ、とりあえず白ってことでいいか。で、改めて、黒くなった羽は白に戻るのか?」

「あ、ああ。それは時間がかかるだろうけど、生命力を取り入れなければ、戻る、はず………。多分…」

「つまり、ちゃんとご飯を食べればいいってこと?」

「ふむふむ。で、これは後で構わんがショウの種族がもともと食べる物をわかる範囲で教えてくれ。食べられないものもあるなら、その時にな」


 ギリルはこっそり安堵の息を吐いた。ショウが口籠ったわけが色が変わった翼の色は二度と戻らないなどという理由じゃなかったことに安心したのだ。ただし、そうでない限りは口籠るわけは他にあるということで、それはおそらく彼がこの世界に捨てられる原因に繋がることなのだろう。


「ここからは質問になるんだが、ショウは魔力とかいうものを持っているんだな?」

「ああ」

「それで、自分の大きさを変えたり、翼を隠したり出来るのか?」

「大きさって、誠一たちみたいな人間に見えるようにってことか?」

「そうだ。出来るのか?」

「ん、出来る。と言っても魔力が安定してないから、今の外見のままでかくなる位だけど」

「翼は?」

「それも、何とかなる」


 そう言うとショウは立ち上がって誠一の方に近づいた。

 カウンターの上から誠一のスツールに座る膝の上にひょいと飛び降りたのだ。


「うわ、っと」


 慌てた誠一がのけぞると、彼の膝の上には大きさが変わったショウが居た。


「これくらいで、どうだ?」

「それくらいの大きさなら十分だ。髪が…伸びたが、それは?」


 ギリルの言う通り、誠一の膝の上にいるショウの髪の毛が背中を覆うほど長くなっていた。小さかった時にはザンバラであちこち跳ねているような状況だった筈。


「ん、この髪の毛が、翼だったモノだ。だから切れないけど。物質変換? とかいう現象ってやつだったかな」

「ほー、なるほど」


 髪をかき分け、肌に直接触ってみれば、確かにそこに翼の痕跡は全くなく、幼児の滑らかな肌そのものだった。


「くすぐってぇ…」


 さわさわと背を探るギリルの手の動きに、ショウは擽ったそうに身を捩った。


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