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熊と狩猟乙女  作者: 魔王の善意
熊編
18/41

デイビー=ダビットソン⑱

更新遅くなってごめんなさい。

また体調を崩してました。


お花屋さんを後にした僕達は続いて昼食を食べにお店に向かっていた。

実は事前に昼食をとるお店は決めていて予約もしている。

まぁ、リンディさんの家に行くのでリードザッハ家で昼食を取る可能性も十分に考えられたが、今日は一応デートのためにやってきた側面もあるのでしっかりと予約は取ってある。


(無駄にならなくてよかった。)


そんな内心でホッとしたことを知られない様にしつつも御者に行先を伝えて馬車に乗る。

御者の人が行先を聞いて「本当にここなのですか?」と尋ねてきたが、「そうだ」と答えた。

でも、なんだろうか。

そんな質問されるような場所なのだろうか?

普通においしいお店だと部下からは聞いているのだが・・・


(あ、でも・・・)


よくよく考えれば、部下がいつもよく行くのは一般の人達でも入れる地区のお店だ。

リンディさんのような生まれながらにして高貴な貴族の令嬢がいつも行く場所とは異なっている。

そうすると少し不安だ。

彼女の口に一般のお店の料理が合うだろうか・・・。


(いや、でも・・・)


リンディさんは地方での特産物や郷土料理的なものに詳しい。

そのことから料理に詳しく味に厳しい評価を下しそうに思うが、貴族御用達の高級路線しか食べないということはない。

今回行く場所は一般的な庶民の料理店だが、味に関しては内の団員たちが保証してくれている。

店内の様子などもそこそこ落ち着いたお店であることはミーファちゃんの証言で分かっているので問題ない。


「これから行くお店はどんなところですの?」


僕が予約した店のことが気になったのか。

リンディさんが話しかけて来てくれた。

ここはお花屋さんまでの道中での失敗を払拭すべくなるべく普通に話をしなくては・・・!


「ええっとですね。実は騎士団の皆に相談して決めたので僕も始めていくお店なんですよ。確か魚料理の美味しいお店で・・・」


僕はそう言いながらメモ帳を取り出してお店について書いている頁を開いた。

開いた頁の中から今日行くお店のことが書いてあるところを探し出して指さしながらそこの場所を読もうとして・・・


「どれですか?」


横から出て来たリンディさんの頭に遮られて言葉を詰まらせる。

というか、後頭部で見えない。

でも、それ以上にメモ帳を覗き込むために僕の掴んでいたり、体重を預けていたりしていることや、後頭部が近いから髪の毛からいい匂いがするだとかが僕の思考を奪う。

最大の兵器は体を前のめりにしているから僕の腕に当たる二つの爆弾。

柔らかく弾力のある重量兵器。

女性に重たいという言葉は禁句だけれども、会えて言おう。

重量兵器であると・・・!


(大事なことだから二回も思ってしまった・・・)


などという反省をしつつも、口に出すことをしなかった自分を褒めてあげたい。

まぁ、緊張で声が出なかっただけだろうけどね。

リンディさんのいい匂いを感じながら腕にかかるほど良い重みを堪能しつつ彼女にメモ帳の中身を見せる。


「へぇ~。蒸し料理のお店だなんて珍しいですわね。」


と、リンディさんが顔を上げてこちらに振り向いた。

顔を挙げたことにより二つの爆弾が僕から離れたのは少しさびしいが緊張が少し和らいだ。


「ええ、まぁ。そうですね・・・」


顔が近くて恥ずかしいので僕は顔は背けず視線だけを彼女から外して答える。

まぁ、確かに我が国では煮たり焼いたりする料理は多いが蒸すのはあまりしない。

事実、この店の店主は他国の出身者らしい。

店主はこっちに別件の仕事で来たらしいのだが、自国の蒸し料理が恋しくて自分で店を出したという変わり種で、そのために蒸し料理専門と言うこだわりのお店らしい。

中でも、蒸した魚料理は絶品だそうだ。

それにしても、なぜうちの団員が店主の経歴を知っているのだろうか・・・。


「他のお店も興味深いですわ。またの機会に行ってみたいわ。」


リンディさんはそう言ってメモ帳に視線を戻してそう言った。

そこで僕もようやく視線を戻す。

そこにはメモを嬉々として見つめるリンディさんの横顔が映った。


「そうですね・・・。都合がつけば今回の休暇中にもう一度くらいはこういう時間を持てると思いますよ。」


僕はなんとなく視線を窓の外に向けてそう答えた。


「・・・では、期待してお待ちしておりますわ。」


リンディさんは僕の腕から手を離すと椅子に座り直し、肩を預けてそう言った。

恥ずかしがり屋な僕に気を使ってくれたのだろう。

ありがたいことだ。


「そういえば、演習はどうでしたの?」


「ええ、滞りなく終了しましたよ。ただ・・・」


その後、僕は場所の中で演習での出来事を話した。

彼女は話し上手で聞き上手なのだろう。

僕は促されるままに演習での出来事を彼女に話した。

特に面白い話はなかったのだけれども、僕とリンディさんはすごく打ち解けることができた。

だから、今回のデートは無事に成功すると思われたのだが・・・




「誠に申し訳ありません。」


僕達の前で深く頭を下げる男。


「いや、別に店主さんのせいじゃないですし気にしないでください。」


この頭を下げた男に僕はできるだけ優しく声をかけた。

馬車に乗った僕達は無事に目的のお店に到着することはできた。

ただ、問題だったのはそのお店が臨時休業になってしまったこと。

なんでも、調理場の危惧が壊れてしまったらしい。

自国から取り寄せた特注品らしく替えはないそうだ。

修理も再購入も自国の技術者に依頼をしないといけないらしい。


「ま、まぁ。こんなこともありますわ。」


僕はリンディさんに慰められつつ馬車に乗り別のお店に向かうことにした。


「ええっと・・・ 今日は人が多いみたいですね。」


僕は馬車から降りることなく窓の外を見て次の店の前を見てそう言った。


「ええ、本当に人気なんですのね。」


そんな僕の言葉に優しく答えを返してくれるリンディさん。

でもなんだろう。

少し気まずい。

だって、店の前にはものすごく長い行列ができていて、店員さんが列整理をしているのだから・・・


「他の店にしましょうか。」


「そうですわね。」


目をつけていたお店は他にもあるので僕達は別の店に移動することにした。

良さそうなお店はあと五件もあるのだ。

その中のどこか一つぐらいは空いているだろう。

そう思いつつ場所を走らせる僕達・・・・


だが、結果は惨敗だった。


休業しているお店が二件。

行列のため入れそうになかったのが一件。

最近、完全予約制に変更したお店が一件。

人気のため品切れになったお店が一件。


完全敗北とはこのことである。

五件も回ったので時間も昼食にしてはかなり遅い時間になってしまった。


「まぁ。こんな日もありますわ。・・・そうですわ。ランチはどこかでお弁当を購入して公園で食べません?わたくし、すごく景色のいい場所を知っていますのよ。」


隣で肩に手を乗せてリンディさんが励ましてくれる。

そして、少し考えてから両手を合わせて名案を思い付いたとでも言いたげに告げた。

なんて優しい女性なんだ。

こんな情けない僕に優しい言葉をかけてくれるだなんて・・・


女神だ・・・


僕は彼女の手を取り優しく握る。

改めて握った彼女の手は小さくてか細い手だ。

顔を見れば僕に手を取られて驚いているのか顔を赤くして目を見開いている。

そんな彼女の姿が可愛らしく感じてしまう僕は性格が悪いのかもしれない。


「近くにおいしいパン屋さんがあるのでそこに行きましょうか。」


しばらく、見つめ合った後、僕はゆっくりと手を離して彼女から距離を取ってそう言った。

け、決して恥ずかしく手を離したわけではない。


「あ、はい。」


彼女の返事を聞いてから僕は御者の人に行先を伝えて行き付けのパン屋へと向かった。




「いらっしゃいませ~。」


店に入るといつも通りに店員さんがお出迎えしてくれる。


「今日は珍しくお一人じゃないんですね。」


「ええ、いろいろありまして・・・」


店員さんの問いかけにどう答えればいいのか分からずに話を濁す。


「デイビー様。お勧めは何かありますか?」


色とりどりのパンを一通り眺めた後で


「ここは基本的に何でもおいしいんですが・・・ そうですね。あえて挙げるなら、サンドイッチなんかがお勧めですね。特に野菜のが自家製なのでおいしいんですよ。あとは季節や入荷した品物を使っている本日のお勧め品が美味しいですよ。」


「では、わたくしは野菜サンドと季節のフルーツを使ったサンドイッチとこのマフィンをくださいな。」


リンディさんは僕のお勧め品と目に留まったマフィンを購入した。


「じゃ僕も同じ物を三人前とカツサンドとタマゴサンドも三人前下さい」


僕はリンディさんと同じ物と少し多めに購入する。

さすがにリンディさんと同じ量では僕には少なすぎる。

サンドイッチを購入した僕達はリンディさんの案内で公園へと向かった。


貴族街にある公園だからか人が少なく緑が多く綺麗に整えられている。

僕達は適当なベンチに腰を落ち着けると食事を始める。

同じ物を食べているので料理の感想を言えば話が途切れることはない。

リンディさんよりも大量にサンドイッチを購入した僕だが、リンディさんが先に食べ終わるということはない。

彼女は貴族の令嬢らしく小さな口で頑張って頬張っている。


それはまるでリスが一生懸命にひまわりの種を食べているかのように愛らしい。

逆に僕は一口二口でサンドイッチを食べ終わる。

歯応えを出す為にサンドイッチは二重にして頬張る。


少々行儀が悪いかもしれないが、気にしない。

食事は楽しくが基本だ。

それは彼女も分かってくれているので特に驚くこともなくこちらを見て微笑んでいる。

その笑顔に思わず顔を逸らしたくなるけれど、グッと我慢だ。

変な誤解を与えてはいけない。


恥ずかしがっていてはせっかくのデートが台無しになってしまう。

先程までの馬車内と違って今は僕とリンディさんの間にはサンドイッチが入ったバスケットが置いてあるのだ。

これで緊張していては男として面目が立たない。


(フッフッフ。僕も女性への免疫が大分ついて来たな。)


そんな晴れやかな心境で内心ほくそ笑んでいる僕の心を読んだかのようにリンディさんが動いた。


「そちらのカツサンド。とてもおいしそうですわ。一口頂いてもよろしいかしら?」


首をコテンと傾げて愛くるしく聞いてくる。

免疫ができてきたとはいえこれは反則じゃないかと思うほどに可愛らしい。

しかし、ここで問題が一つ。

カツサンドは今僕が持っているので最後だ。

バスケットの中にはすでにない。

と言うことはこれを差し出さなければならないのだろうか?


いや、食い意地が張っていて嫌なのではなく・・・

これ、すでに僕が一口食べているんですが・・・


「えっと・・・」


僕は二つ重ねていたカツサンドはとりあえず二つに分けて交互に見る。

どちらを上げるべきだろう。

というか、食べ差しでも問題ないのだろうか?


「いただけませんの?」


差し出してよいのかどうかに迷っている僕にリンディさんが口を尖らせて拗ねた様な声を上げる。

このままでは彼女の好感度が下がってしまうかもしれない。

そう考えた僕は片方のサンドイッチを彼女の前に差し出した。


「あの、食べ差しですいませんが・・・」


と、頭を下げて謝りながら差し出すが彼女は受け取ろうとはしなかった。

やはり、僕の食べ差しは嫌だったのだろうか・・・

心配になって顔を上げると彼女は貴族の令嬢らしからぬ状態であった。

こちらに顔を向け、口を開けた状態で待機したいたのだ。


(これはまさか・・・)


都市伝説でしか聞いたことがない。

幻の行為。

人前でもイチャイチャでラブラブなカップルのみが行うという伝説の・・・

『あ~ん』と言う奴だろうか・・・


何かの間違いかも知れない。

そう思い僕は首を左右に振ってもう一度彼女を見た。

彼女は微動だにせずにそのままの状態で待機している。


僕は今度は周囲を見渡して人がいないことを確認する。

幸い、ここには僕たち以外に人はいないようだ。

木の陰の向こう側には誰かいそうだが、ここは貴族街にある公園だ。

覗きなどという不届きなことをする者はいないだろう。


「デイビー様。どうしまして?」


周囲を見ていた僕の様子が気になったのか。

彼女はそう言って不安げに僕を見つめる。

僕が周囲を気にしているのを拒絶と認識しているのかもしれない。


「えっと・・・ あ~ん・・・?」


少々疑問形になりながらも僕はそう口にした。

リンディさんはニッコリと笑みを浮かべると「あ~ん」と声を上げて僕の差し出したカツサンドに齧り付いた。

何と恥ずかしい。

こんなところを人に見られたら・・・


恥ずかしすぎて顔が熱い。

きっと今の僕は赤面して真っ赤になっているのだろう。

早く食事を終えて帰りたい。


「おいしいですわ。」


僕が赤面している間にリンディさんは一口食べたカツサンドを咀嚼し終わった様子で、感想を述べてきた。

そんな彼女の顔をまともに見ることができず、僕は手に持ったカツサンドを即座に食べて食事を終わらせようとする。

なんだかリンディさんの顔をまともに見ることができない。

顔が赤くなっているのも知られたくない。

だから僕は一生懸命に食事に集中した。


「これ、おいしいですわよ。」


そう言って彼女は僕の目の前にマフィンを差し出してきた。

マフィンなら僕も買ったのでそんな前に突き出さなくとも・・・

と思ったが、それは僕が買ったマフィンとは別の物だった。

おかしい。リンディさんと同じ物を購入したはず・・・

店員の入れ間違えか?


「これ、お店の新作なんですって。無理を言って一つ分けてもらいましたの。とてもおいしいですわよ。」


そう言って彼女は齧った後のあるマフィンを差し出してきた。

バスケットを見れば、いつの間にか中身は空になっている。

目の前には見たこともないマフィン。

ただし、リンディさんが口をつけた物が差し出されている。


これは・・・

あれだろうか。

『あ~ん』のお返し的な・・・


バクンバクン


なぜだろう。

戦場でも聞くことのないほどに心臓が鼓動を上げている。

数多の戦場を経験し、視線を超えた来た僕が後ずさりたいと思ってしまう。

しかし、ベンチの後ろには背もたれが、右には肘置きがある。

左にはバスケット。

目の前にはリンディさんの手が伸びて来ている。


(に・・・ 逃げ場がない・・・)


戦場で数々の修羅場を経験したことのある僕だが、ここまで完璧な包囲を受けたことはない。

さすがは武の名門。リードザッハ家が長女。

侮れない実力の持ち主だ。


「あ~ん」


意を決した僕は、覚悟を決めて差し出されたマフィンを一口食べた。

残念ながら味を理解することはできなかった。

だが、隣でリンディさんが嬉しそうにしていたので良しとしよう。


こうして、僕達は少し遅いランチを食べた後。

リードザッハ家に帰ったのだった。


いや、あのままあそこでゆっくり過ごす度胸は僕にはない。

リンディさんには申し訳ないが、今日は早く帰りたい。

だって、心臓が何だか以上に脈打って平常心を保てないんだもの・・・。


リハビリついでに書いている小説は気にしないでください。

ちょっと人外物の小説見て書きたくなっただけです。

最近はVRRPG物?の小説に嵌っております。

OSOの面白さに脱帽。

僕も似たような感じの小説家かこうかな。

その前に連載してる何かを終わらせないとね・・・

最初の話作るのは楽だけど終わりまで持って行くのが難しいんですね。

作家さんは大変だなぁ。

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