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熊と狩猟乙女  作者: 魔王の善意
熊編
16/41

デイビー=ダビットソン⑯

『転スラ』読んでたら更新忘れてました。

少し短いです。

『転スラ』面白いよ!

え? 知ってる? 知らぬは作者ばかりなりorz

うう・・・

何を話せばいいのか分からないまま庭園についてしまった。

なんだか気まずくて何を話せばいいのかわからない。


「先程は妹が申し訳ありまえんでした。」


僕が何を話せばいいのか分からずに戸惑っているといつの間にかリンディさんが僕の前に出て頭を下げていた。


「ああ、いえ。気にしないでください。」


僕の様な元平民の大男がお姉さんの婚約者候補だとソフィア嬢も知っているだろう。

だからこそ、あんな公爵家の令嬢としてあってはならない態度を見せて僕を遠ざけようとしているのだろう。


「すみません。私の以前の婚約者達が悪人ばかりだったので・・・ あの子は少々、男性嫌いな所がありまして・・・」


顔を挙げたリンディさんは妹さんのことを必死に弁明しようと悲しげな顔でそう述べた。

なるほど、リンディさんの以前の婚約者たちの影響は彼女だけでなく、彼女の妹や家族にまで及んでいるのか。


「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。昔からこの外見のせいで怖がられたり、危険視されるのには慣れてますからね。寧ろ、物怖じしない態度だと僕的には助かります。よく、怖がられて泣かれたりしますからね。」


「まぁ。でも、それはデイビー様の中身を知らないからですわ。こんなわたくしにも優しく接してくれて、デイビー様は紳士ですのね。」


僕は自分の不幸自慢をしただけなのだが、なぜか好印象を得たらしい。

勘違いされているような気がしないでもないが、この際、それは放っておこう。

好印象を持たれていることは悪いことじゃない。


「そ、そんなことより。どの花を飾りましょうか? やっぱり派手で華やかな花がいいんですかね?」


とりあえず、この話はここまでにして、僕は話題を変えることにした。

そう、この庭園に来たのはソフィア嬢から逃げるためでも、謝罪を受けるためでもない。

僕が買ってきた花瓶に生ける花を探す為だ。

そのために僕は、派手目な花を求めて近くの花壇に足を向ける。


(確か赤い色が好きなんだよな? じゃ、赤い花が咲いている方が好みなんだろうか?)


そう思って赤い綺麗な花を探す。

これかな? それともこれ? こっちか?

花の種類はよくわからないが、庭園には色とりどりのいろんな花が咲いている。

この中から選ぶだけならば指させばいいだけだから難しくはないだろう。


リンディさんが花の名前に詳しければ、花の名前を聞きだしながら会話をすることができるし、知らない場合でもこれだけたくさんの種類があるんだ。

会話の内容は何とかなるだろう。

そう考えるとなんだか心が軽くなった気がするな。


「そうですわね。でも、あの青い花瓶には白い花が映えると思いますの。」


そう言ってリンディさんは白い花に手を当ててこちらに尋ねてきた。

言われてみれば、青い色の花瓶に紅い花では少し浮いてしまうかもしれない。

白ならば、花瓶の色も引き立つしいいのではないだろうか。


「なるほど、そうかもしれませんね。では、この花にしますか?それとも・・・」


そう言って僕は他に白い色の花がないかと庭園を見渡した。

だが、色とりどりの花々が咲くこの庭園にも残念ながら白い花は今、リンディさんが手を添えているその一種類のみ。

無論、それでも問題はないのだがもう少しこう・・・


(お話をする機会が欲しい。)


そんな邪な感情を抱きつつ、なんとかならないかと周囲を見渡すが白い色の花はなかった。

かと言って、他にどんな色の花を花瓶に添えればいいのかなんて僕には思いつかない。


「すみません。季節的に今、我が家にはこのお花しかないみたいですわ。」


そんな僕を見かねてか。

リンディさんが申し訳なさそうに頭を下げる。


「いえ、そんな!気にしないでください!」


僕は申し訳ない気持ちになりながらリンディさんに頭を上げる様にお願いした。

彼女はすぐに頭を上げると、しどろもどろな僕を見て楽しそうに微笑んだ。

ああ、やっぱり女性の笑顔は見ていて気持ちがいいなと思った。


「では、このお花にしましょうか。誰かいる?」


彼女が声をかけるとどこからともなく庭師と思われる男が現れた。

なんという気配消失能力。

こんなに近くにいたのに僕が気づかなかっただなんて・・・

この男、できる!!

などと、感心していると男ははさみを取り出してリンディさんが選んだ花を摘むために歩き出す。


ん?

待てよ?

さっきの彼女の思い出せ!

確か・・・ 「すみません。季節的にうちにはこのお花しかありませんわ。」 だったよな?

ってことは他の場所にはあったりするのだろうか? たとえば、花屋さんとかには・・・


「あ、すみません。待ってください。」


そう考えた僕は庭師の方に待ったをかける。

それを見て、リンディさんもこちらを見て「どうしたのですか?」と説いたげに小首をかしげている。

その仕草が妙に幼く見えて可愛いので、もう少し見ていたいがここで黙り込むとおかしな人だと思われる。


「そ、その。他にもあるかもしれませんし。もう少し探してみませんか?」


可愛いしぐさに見とれて言葉を噛みながらも何とか言葉を紡ぎだす。


「え、でも・・・」


彼女は僕の言葉に驚きつつも周囲を見渡す。

この庭園はどこからでも花が見える様に調整されている。まさに、『お花畑』という言葉が似合う庭園だ。

だが、それ故にここに白い花がないことは今いる位置からでもよくわかる。

彼女には僕が何を言い出したのかよくわからないのだろう。

だから僕は勇気を出して言葉を吐き出す。


「ここにはないですが、街に出ればあるかもしれませんよ?ほら、街には花屋さんとかもありますしね。」


そう言って僕は、遠回しにリンディさんをデートに誘う。




こうして、俺は期せずしてリンディさんとデートすることになった。

いや、僕が誘ったんだけどね。


(失敗したかもしれない。)


ふと、そんなことを思ってしまう。

リンディさんに失礼な奴だ。そう思う人物がいるかもしれないが、俺の今の現状を聞けば納得してくれると思う。


今、俺はリンディさんとデートに出かけるためにリードザッハ家の外に出た。

元庶民の俺はデートに出かけたのだから徒歩で移動するものだと思っていた。

手をつなぐのは難易度が高いので、隣を歩くことは覚悟していた。

周囲の目が痛いことになるだろうが、もともと目立つ体格なので周囲の視線には慣れたものだ。


だが、俺のそんな予想と覚悟は家を出る時に覆された。

それはリードザッハ家の館を出た瞬間のことだ。

僕とリンディさんの目の前にはリードザッハ家所有の馬車が止まっていたんだ。


リードザッハ家所有の馬車は、四大貴族の一角が所有するのに相応しく僕とリンディさんの2人で乗っても大丈夫な代物だ。

貧乏貴族である僕が所有している馬車とは比べ物にならないぐらい大きくて立派だ。

だが、問題はそんなことではない。

そう、この場合において、大きさなんて問題ではない。

問題なのは僕とリンディさんが2人っきりでこの馬車の中に乗り込むということだ。


今まで二人っきりになる瞬間は確かにあった。

でも、それは広い野外でのことだ。

こんな狭い密閉空間でじゃない。

いくらリードザッハ家の馬車が大きくて立派でも熊のようにガタイの大きい僕が乗り込めば多大なスペースを占有してしまう。

そうなれば、いくらリンディさんが小柄で可憐な女性であろうと肩と肩が触れ合ったり足が当たったりしてしまうかもしれない。


(ど、どうしよう・・・ 狭い空間で2人っきりだなんて予想外だよ・・・ でも、外出に誘ったのはこっちからだから断れないし、馬車以外での移動じゃ護衛の関係もあるだろうし、こういう状況が嫌ってわけじゃないし・・・)


僕は心の中での葛藤と恥ずかしさでどうすればいいのかわからなくなってしまう。


「どうかしまして?」


僕が心の中で葛藤している間にすでにリンディさんは馬車に乗り込んでいた。

そして、なかなか入ってこない僕を心配そうに見つめながら小首をかしげている。


(か、可愛い・・・!

ってそれどころじゃない。

な、何か良い言い訳を考えなければ・・・!)


「何か気になることでもおありですか?」


僕が口ごもっていると隣から執事の人が話しかけてきた。

不手際があったのではないか心配なのだろう。

しかし、そんなそぶりを見せることなく馬車を一瞥してこちらを見る執事さん。


そんな執事さんと俺を見る視線がもう2つ。

一つはリンディさん。

もう一つは馬車を動かす御者さんだ。

おそらくは、馬車の整備もしている人なのだろう。

執事さんの言葉を聞いて少し顔が青くなっている気がする。


「あ、ああいや。なんでもない。気にしないでくれ。」


僕は執事さんにそういうとリンディさんの待つ馬車に乗り込んだ。

御者の人に迷惑がかかってもいけないし、何よりリンディさんを待たせるわけにはいかないからだ。


(大丈夫、普通にしていれば問題ない。)


自分にそう言い聞かせながら乗り込んだ。

乗り込んで扉を閉めてからさぁ出発。

ゆっくりと馬車は動き出した。

不安に胃が潰れそうな僕を乗せて・・・


馬車に乗って初めに思ったこと。

それは意外に広いということ。

もっと詰め詰めの状態かと思ったけどそうでもない感じだ。


まぁ、リンディさんと肩は触れあってるけどね。

男ならここは喜ぶべきなんだろうけど。

こんなに近くに女性がいることってまずないんだよね。


おまけに相手は超絶美人のリンディさんだ。

チラリと横を見れば美しい横顔が見える。


(顔が近いよぁ~。)


すぐに視線を窓の外に向けてしまう僕はチキンなのだろうか。

だが、そっぽを向いたぐらいでリンディさんの存在感は消えない。

馬車が揺れるごとに当たる肩の重み。

場車内という狭い空間であるゆえに嗅いでしまう女性特有の甘い香り。

香水なのかもしれないけれど、甘い優しい香りが僕の鼻孔をくすぐってくる。


(ああ、なんて甘くていい香りなんだ・・・。 僕は天国か妖精の国にでも迷い込んだのだろうか・・・。 ・・・は! もしや、僕の体臭もリンディさんにバレているのでは?! 獣臭いとか思われたらどうしよう?!)


馬車内の甘い香りに変な妄想を思い浮かべていると突如として気づいた現状に自分の匂いが気になりだした。

クンクンと自分の匂いを嗅いでみる。

今日の朝はちゃんとお風呂に入ってきたし、服も洗濯されたばかりの物なので変な臭いはしない。

大丈夫の様だ。


それを確認すると僕はリンディさんの方をチラリと見た。

僕が気づかないだけでリンディさんは気にしているかもしれない。

少しでもおかしな様子だったら素直に謝ろう。


「・・・」

「・・・」


そう思って彼女の方を見るとリンディさんもこちらを見ていたようで目があった。

ただ目があったが、どちらも何も話さない。

お互いに相手の出方を待っている。そんな感じだ。

目が合っているのに、見つめ合っているのに何も話さないので、なんだか気まずい空気が流れているような気がする。


(オーノー! 誰か僕に何を話せばいいのか教えておくれ!)



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