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第1話

真っ暗な世界

体は冷たく石のように動かない。目を開いても光は見えず、ただただ真っ暗な世界が広がる。

次第に薄れていく意識の中で彼……野上 蒼空は自身が死んだ事を認証し始める。


(そっか……僕、死んじゃったんだ……。)


認証した事で沸き上がってきた感情は、後悔。何故、死んでしまったのか。こんなことで死んでよかったのか。薄れていく意識の中で蒼空は後悔の念を強めていく。


(結局僕は……王子様になんてなれなかった……)


叶えられなかった夢……いや、叶えなければいけなかった目標を思い返し、蒼空は後悔するとともに自責する。何故自分は出来なかったんだ。何故、守りきれなかったんだ、と。たった一つの約束でさえ守れなかった自分を死んでもなお蒼空は責め立てていく。真っ暗な世界の中、ただただ自分を責め、悔やみ、後悔していく。


(王子様になるんじゃなかったのか僕は……彼女の、彼女だけの……)


蒼空は必死に彼女への思いを浮かべる。守るべき人、守りたかった人。彼女を思い出そうとするが、断片的にしか思い浮かばない。どれだけ名前を思い出そうとしても正解にはたどり着けない。


(死んじゃうと記憶もダメになっちゃうのか……なんて、なんて情けないんだ。)


人生をかけて守りたかった人の名前すら思い出せない自分に呆れてしまう。


(……でも、もう終わっちゃったんだ。全部、全部無駄だったんだ。)


自分に呆れ、後悔すら抱かなくなる。そこには諦めという答えが待っていた。死という終わりに蒼空が諦めるという答えを出してしまった。

諦めた事で意識が眠りに着こうとしていく。微かに残っていた思念すら終わってしまおうとしていた。


全てが終わろうとした世界。そこに1つの声が聞こえてくる。

蒼空に向けられたその声は優しく、包み込むように蒼空の意識に語りかける。


「今度は私が守ってあげる。だから、待っててね?蒼空くん……」


ほんの少しの言葉だった。世界が終わる間際の一声。それはほんの少しだけ蒼空の意識をつなぎ止める。


(……誰の声だ。もう、それすらわからない。今度ってなんだ?守ってあげるのは、僕じゃないのか……?)


つなぎ止められた意識の中蒼空はその声に思考を巡らせる。聞き覚えのある声。優しく、暖かく、懐かしい。

誰の声か思い出せはしないが、不思議とその声の言っていることを蒼空は受け入れられるような気がしていた。


(今度か……もしも、今度があるのなら僕は……今度こそ、君を守らないと……)


真っ暗だった世界が光に包まれていく。

世界は眩しいくらいに光、輝き始めていく。

それはまるで、世界が生まれ変わってしまったかのように。

世界の全てが光輝いた時、蒼空の意識は完全に消えてしまう。

今度こそはという想いを抱き、世界は暗闇から光へと逆転していった。



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