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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
序章、出会いと旅立ち
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確か再来月辺りに10歳になるかな

「嫌い……エインズワース王国が嫌い。つまり私達の故郷、勇者の国が嫌いだと当の勇者に向かって言うとは貴様余程斬られたい様だな」


「チェルは黙ってなさい」


「しかし」


「チェルシー・キングストン=バッキンガム。私は黙りなさいと言っています。耳が遠いのですか?」


「ぅ…ぐっ……」



怒声を上げて立ち上がったチェルをナタリーが睨んで座らせる。


アリスはどうすべきか分からないので、分からないは分からないなりに、静かにしている事にした様だった。


一方ナタリーは彼女自身、何故ウィンがパーティー参加を拒んだのか分からず、内心酷く混乱していた。


何故?


幼い勇者は未だかつて、勇者の国が嫌いだと言う人間に会った事がなかった。


光の精霊の加護を受けた聖なる国が嫌いな人間などいないと思っていた。


それを今目の前にいる黒尽くめの男は否定したのだ。



「理由が話せないとは?勇者の国が嫌いとなると受け取り様によっては魔族と繋がりがあると公言している様なものですが」


「話せない理由はまだその時じゃないとか、下手な事言うよりは自分で気付けってのとか。まあ他にも色々あるんだが……あー、上手く言えねぇ。あと魔族と繋がってはいないから安心しろ」


「……分かりました」



困った様な顔で言葉を探すウィンを見て、何か大きな事情があるのだろうと疑問をしまいこむナタリー。


沈黙する五人の間に微妙な空気が流れる。


するとギルドマスターが唐突に悪賢そうな笑みを浮かべ、その空気を蹴散らしながら言葉をはなった。



「ウィンよ。」


「何だよ爺。まさか付いて行けっつうんじゃないだろうな」



ウィンが露骨に嫌そうな顔をする。



「……ふぇっふぇっ。そうカリカリするでないわ。……偶には魔物狩りだけじゃなく、個人指名の護衛依頼でも受けて見たらどうかと思ってな。恐らくは貴重な経験になるじゃろうて」



そこまで言われてやっとロイドが言わんとしている事に気がついたのか、一瞬驚いた顔をした後、ウィンはすぐに悪戯好きな悪ガキの様な顔でニヤッと笑った。



「…ほほー、ジジイも偶にはイイコト言うな。そんな抜け道があるとは…ジジイ、宛ら老狐だな」


「ふぇっふぇっ。そういうお主は中々に悪い顔しおって、まるで狼じゃわい」



貶し合っているのか褒め合っているのかよく分からないやりとりの後、ロイドが真剣な顔で勇者に切り出した。



「ウィンは冒険者じゃ。冒険者という職業は雇われれば護衛、討伐、買い出し、屋根の修繕その他諸々の人相手の殺しと盗み以外ならほぼどんな依頼でも受けるもの。」



アリスが目を見開き、あっと声を上げる。


それを見たウィンがまるで悪戯に成功した子供の様な顔でマスターの言葉を引き継いで言った。



「なあナタリー、俺達を雇わないか?」



◆◇◆◇◆



訳が分かっていなかったナタリーとチェルにロイドが説明した事をざっと要約するとこうなる。




まずナタリー達はウィンをパーティーに入れたい。


対するウィンは勇者の国、ブロムシュテット王国に行きたくない。


しかし、正式に勇者パーティーに入ってしまえば魔王討伐後ブロムシュテット王城や光の神殿に呼び出されることは必至だ。


よってウィンは正式にはパーティーに入らない。



そこで、勇者は冒険者ギルドに名指しでウィンのパーティーに護衛、もしくは協力討伐の依頼を出す。


要するにウィン達は勇者に雇われただけの冒険者という扱いになり、魔王討伐後に解雇してしまえば他人に戻りいくら国だと言っても勝手に呼び出すことはできなくなる。


よって、双方の望みが果たされる、という算段である。



その後の話し合いの結果、ウィン達に支払われる報酬は


・旅の間中の宿代

・同上の飲食代

・負傷時の治療代

・倒したモンスターの素材の売却益のうち六割


となり、


ウィンとアリスの主な仕事の内容は


・まだ実力の低い勇者の護衛

・勇者ナタリー及び騎士チェルシーへの指導

・装備や消耗品の買い付け(&値切り)

・宿や寝床、食事などの準備、その他雑務


となった。



◆◇◆◇◆



「ねえ、ウィン?思ったんだけどこれじゃただ働き同然じゃない?何か凄く申し訳ないんだけど……素材売却益のうち八割は持って行ってもらっていい気がする」


「あのなぁ…俺だってそこそこ貯金はあるし、勇者ってもまだガキだしそんな奴からぼったくるほど性根は腐ってねえんだが……アレだよ、もしパーティーに入ってたとしたらこんな感じの条件だろ?基本財布は共同で倒したモンスターの割合で小遣い制ってやつさ」


「そう言えばナタリーちゃんって何歳なのかしら。随分と幼く見えるのだけど」


「えーと、確か再来月辺りに10歳になるかな」


「えっ、つーことはまだ9歳!?何考えてんだよ神殿の奴ら……9歳に魔王討伐とか幾らなんでも無茶すぎるぞ」


「せめてナタリー12歳まで旅に出すのを待ってくれと教会には何度も直訴しに行ったたんだが聞き入れられなかったんだ……」


「お、おう…チェルも案外苦労してんのな……」

戦闘スタイルは多分こんな感じ。


勇者ナタリー…バランスタイプ

魔法も剣も防御素早さもそこそこなバランスタイプ。

勇者だけに使用が許される聖装備のお陰で敵からの攻撃はかなり半減されるため、防御は見た目によらずそこそこ固い。

技術は未熟だが引き出しが多い。



騎士チェルシー…スタミナ、パワータイプ

女の身にして大盾をもち、スタミナはもちろんパワーもあるのでタンク役にもってこい。ただ重装備のため若干動きが鈍い。



剣士ウィルフレッド…パワー、スピードタイプ

遊撃手。軽装備の剣士である上に、長身痩躯であるので体重が軽い割に歩幅などが大きいためスピードに優れる。

パワーもかなりあるので攻撃力はとても高い。

しかし、前述した様に軽装備であるため防御の面でかなり不安がある。



魔導師アリス…大火力魔法、回復、支援特化タイプ

昔は低級、中級、支援、回復の魔法を余り練習せず、自身の持つ膨大な魔力にまかせて大火力の上級攻撃魔法を連発していたため、現在でも初級〜中級の魔法の威力コントロールが怪しい(魔力を込め過ぎて威力が酷いことになる)。

ウィンと組み始めてから回復、支援系の魔法を猛特訓し、たった一年足らずで極めてしまったらしい。


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