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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
序章、出会いと旅立ち
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ジジィが偉そうだったからつい

「と、とりあえず爺さん…じゃなくてギルドマスターの所に行ってから詳しい話をだな」


「それが良いわ。こんな所でこのメンバーとか目立って仕方ないもの」


「そ、そうだな」


「そうだね」



何ともカオスな空気の中、やっと頭がまともに回り始めたのかウィンが周りからの視線を気にし始め、キョドりながらも提案すると全員が一も二もなく賛成した。



◆◇◆◇◆



冒険者ギルド最奥、ギルドマスターの部屋。



左眼に眼帯を着け、真っ白な髭を蓄えた枯れ木の様な老人がニッコリと笑い出迎えて来た。



「これはこれは、勇者ナタリー様、それとチェルシー様。遥々隣国よりようこそおいで下さった。大したものは出せないでしょうがごゆっくり御くつろぎ下さい」


「何だよギルドマスター(クソジジイ)俺らと接する時とまるで態度が違わねえか?」


「ふん、お主らのような若造(ハナタレ)に何ぞ敬意を払う必要無かろうて。お主らに払う敬意なんぞがあるならワシはそこらで力強く生きておる野良犬に払うわい」


「ほう、それはありがたい。何時だったか俺のことを野良犬だと言ったのはどこのジジイだったかな?」


「お主は狂犬じゃろうて」


「そういう爺はアレだ、悪賢い老いぼれ猿だろう」


「ふぇっふぇっ、言う様になったのう…昔はこんなチンチクリンだったんじゃがの」


「はんっ、そういう爺は縮んだんじゃねえの?」


「なにを言うかワs「ハイハーイ、ウィンもマスターも今はそこまでー。勇者様方が固まっちゃってますから後でやってくださいねー」」


「「あっ」」



ギルドマスターはそれはそれはにこやかに出迎えたのだ。


が、


ウィンと顔を合わせた瞬間から空気が張り詰め、いきなり途轍もない速さで嫌味の応酬が繰り広げられたためアリスは何時もの事としてナタリー、チェルが状況を理解できず惚けてしまったのだ。


アリスによって勇者達がいた事を思い出したギルドマスターとウィンは顔を真っ赤にして俯いたり、壁際に行って悶絶していたりとそれぞれ先程の醜態を恥じている様であった。



「…あ、えーと。これは何時ものこと…なの?」


「そうですね。さっき二人の言い合いにも出てきた様にウィンとマスターは犬猿の仲ですので…御見苦しい所を御見せし申し訳ございませんでした」


「いや、唐突過ぎて驚いただけですので御気になさらず…」


ナタリーがアリスに質問するも、アリスのあまりに丁寧な態度に調子を狂わされて何故か敬語で応えてしまう。


そしてチェルシーはと言うと、オロオロしているだけである。



__またしてもカオスな空間が出来上がっていた。



◆◇◆◇◆



〜数分後〜



「ゴホン…それでは改めて。」


ギルドマスターが仕切り直し、改めて簡単な自己紹介をする事になった。



まずはギルドマスター。


「私はここ、ブロムシュテット王国の王都にある冒険者ギルド本部にて、ギルドマスターを務めているロイド・マゴーナグル(Lloyd McGonagle)と言うものであります。以後よしなに」



次にウィン。


「もう知ってると思うが俺はウィルフレッド・ウィルコックス。剣士だ。」



そしてアリス。


「私はウィンのパーティーメンバーのアリス・メラーズ。魔導師よ。」



冒険者陣営からの簡単な自己紹介が終わった。


が、そのまま終わるはずも無く。



「おいアリス。さっきまでバリバリの敬語じゃなかったか?」


「ウィンが偉そうだったからつい」


「ジジィが偉そうだったからつい」


「……なんじゃお主らワシが元凶だとでも言いたいのか」


「コホン」


「「「あっ」」」



再びコントが始まり、今度は勇者が咳払いをしてその場を納めた。



勇者サイドの自己紹介が始まった。


「えーと、私達は全く自己紹介をしていなかったよね」


「そうだねナタリー」


「まず私から自己紹介をするね」


「分かったよナタリー」


「私は隣国、エインズワース王国からやって来た勇者、ナタリー・アーロンと申します」


「次は僕かなナタリー」


「ねえチェル。さっきからうるさいんだけど変な合いの手入れるのを止めてくれる?」


「分かったよナタリー」


「チッ」


「ヒッ、ぼ、僕はチェルシー・キングストン=バッキンガム。勇者様の従者をしています。見ての通りの騎士です」


勇者サイドも負けじと主従コントを披露し無事に自己紹介が終わった。

そんなに怯えるならナタリーをからかわなきゃいいじゃないか、と言いたくなるのを皆必死に堪えた。


「な、なんか自己紹介だけでドッと疲れた気がするよ」


「チェル、あなたが余計なことするからでしょう?」


「なあ、ナタリーとチェルって何時もそんなんなの?」


「そうだね…だいたいこんな感じ」


「所で二人はウィンに何か用があったんじゃないの?」


「ウィンに用事?止めとけ止めとけ、こいつにゃものを頼むもんじゃない。何かものを頼むとすぐ人がして欲しくないことばっかりしでかしおってからに…」


「それはギルマス(ジジィ)、あんただからさ」


「なにを言うかこの三十路童貞(まほうつかい)めがっ!!」


「なっ、ジジィだって独り身のくせにっ!それにまだ俺三十路じゃねえし!!」


「な、何とはれんちな事を言うのですかマゴーナグルさん!?」


「ええぃ!だまれ!!妻はおったが子供連れて逃げたんじゃい!!それとチェルと言ったか従者!この程度で破廉恥なぞと言っておったら貴様冒険者の中に入ったら憤死するぞ!!」


「そ、そんなっ…冒険者とはそんなに低俗で野蛮な者の集まりなのですか!?」


「んな訳あるかアホ騎士」


「少々口が悪い人が多いだけですから安心しなさい。因みにここにいる頑固なお爺さんはその中でも口の悪さでは天下一品よ。まあ今日は流石に抑えてるみたいだけどね」


「お主……柔らかい中にさらっと毒の棘を混ぜてくるのは止めてくれぃ」


「ねみぃ」


「奇遇ね、私も疲れたのかとても眠くなって来たわ」


「ダメだわ、こいつら早く何とかしないと…」


__結局、その後も肝心の本題に触れる事無く時間はズルズルと過ぎて行き、主にロイドの時間の都合や肝心のウィンの睡魔などの理由で、勇者とウィン初のまともな面会はただの顔合わせだけでお開きになってしまったのである。

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