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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
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ロリコン、滅ぶべし

 ナタリーが先程見たウィンの動きを思い出しながら、なるべくそれをなぞる様に素振りをしていると、アリスがウィンとナタリーの知らない誰かを連れて戻ってきた。


「せいが出るわねぇ、ナタリーちゃん」

「あ、アリス。と、どちら様?」

「始めまして、ちっちゃな勇者ちゃん。僕はアルフィーっていうっす。こう見えて先代勇者と一緒に旅してたんで聞きたいことがあったらどしどし聞いていいっすよ」


 と、アルフィーと名乗ったエルフの男が人懐っこさ全開の笑みを浮かべてナタリーへ握手を求めて手を差し出す。そしてナタリーが手を伸ばし、差し出されたアルフィーの手に触れそうになったその瞬間、アルフィーの手首を切り飛ばさんとばかりに殺気の篭った真剣の斬撃が降って来た。


「うわっ!?」

「ロリコン、滅ぶべし」

「素早い、流石チェル素早い」

「えっ、ちょっ、まっ!?」


 大上段からの斬撃を持ち前の鋭い勘と素早さで紙一重の差で躱したアルフィーは慌てて距離を取る。


「ウチの脳筋と同じ臭いがするっすよ!! 話聞かない奴の臭いっす!!」

「ビンゴだアルフィー! 精々頑張って逃げろ!!」

「うえっ!!?」

「ロリコン退散!!! 滅ぶべし! 滅ぶべし!!」


 途轍もない速さでフェイント混じりの斬撃やら突きを繰り出すチェルシーにアルフィーは狼狽えながらも危なげなく躱していく。

 その様子にウィンは、うんうんと頷き「あの斬撃やら突きが常に出来るようになればチェルはもう教えることないんだがなぁ」などとのたまう。


「ああ……、またチェルのデストロイモードが……」

「あらあら、元気ねえ」

「ウィン、お願いしてもいいかな」

「何、これもう俺の係なの?!」


 素っ頓狂な声を上げるウィンにナタリーは背筋が寒くなるようなおよそ少女が浮かべるには似つかわしくない笑顔で笑いかける。


「お、ね、が、い、ね?」

「……アルフィー、死なない程度にそいつ伸しちまっていいぞ」

「あ、いいんすか?んじゃ遠慮なくっ」


 ウィンは若干冷や汗をかきつつもナタリーには答えず、アルフィーへと声を掛ける。

 それを聞いたアルフィーは、シッという気合の声と共に斬撃を躱しつつチェルの懐へと潜り込み、まず鳩尾に一撃、そしてくるりとターンして崩れ落ちるチェルの身体の下から抜け出すと、まだチェルが倒れ切らない内に、回転の勢いを乗せた手刀をトドメとばかりに後頭部に叩き込み完全にチェルを沈める。まさしく瞬殺と言っても過言ではない程に呆気なくチェルは無力化され、適当な場所に転がされた。

 地面に直接伸びたチェルを眺め、チェルを除く勇者一行は、チェルに段々と噛ませ犬キャラが染み付いてきていることについて複雑な感情を募らせるのであった。


 と、そこへ騒ぎを聞きつけたトラヴィスがやって来て、伸びているチェルをチラリと一瞥すると、皮肉気に一言、「呑気な物だな」と顔をしかめる。


「ああ、トラヴィスか。……まあこいつのコレは病気だしな。俺も始めて会った時はいきなり斬りつけられてビビったもんだ」

「……そ、そうか」


 皮肉を言ったつもりが軽く流され、おまけとばかりにさらりと愚痴を聞かされたトラヴィスは、一晩中愚痴を聞かされた件の地獄を思い出して顔を引きつらせる。トラヴィスの中でアレは半ばトラウマのような物になっていた。

 やれやれとウィンは肩を竦め、それからすっと真面目な顔になると「一つ聞きたい事があるんだがいいか?」と尋ねる。


「何だ、言ってみろ」


「じゃあ言うけどよ、お前達、長い黒髪の女に心当たりあるだろ」


「ッ……!」

「やっぱりな」


 何故それを、とでも言いたげな顔でトラヴィスが目を見開き、それを見たウィンは若干困った様に頭を掻く。

 そのやり取りを見てアリスは何と無く事情を察したのか、スッとその赤い目を細めてトラヴィスを見つめ、話について行けていないナタリーはきょとんと惚けたような顔をする。

 チェルシーはどうしているかと言うと、……まあ推して知るべしである。


「ねぇ、ウィン。何の話?」


 自分だけ除け者にされた様な気がして、ナタリーはおずおずとウィンに尋ねる。


「うーん、端折って言うとエルフ達が都合の悪い話を隠してたって話だな。

 ただこっちも碌に情報聞かなかったしなあ……。聞かれなかったから言わなかったのか、言いそびれたのか、はたまた言うタイミングを逃したか、まあそれは別にいいんだが」

「……其れは大事な事なのかな?」

「大事っちゃ大事なんだが相手を倒すだけなら問題は無いな。ただし、倒すだけだと色々と可哀想なことになり兼ねない娘が居る」

「可哀想なこと?」

「主に人間関係でな」


 ウィンの吐いた意味深な言葉に、ナタリーの頭は余計に混乱したが、それとは反対にトラヴィスはそれが誰の事を指しているのか完全に悟ったようだった。


「……分かった、そこまで知っているなら、話そう。……とは言っても俺もあまり詳しくない、事の顛末を知っている里長に時間を作って頂くのでそれまで部屋で待っていてくれ」


 トラヴィスはそう言うと里長のところへ向かうのか、ウィンたちに背を向けて立ち去った。

〜トラヴィスが立ち去った後の会話〜


ウィン「というかあいつ何しに来たんだ?」

アリス「さあ?頭固そうだし友達居ないんじゃ無いかしら」

ナタリー「アリス……其れは幾ら何でも酷い言い草だよ」

アルフィー「僕、空気だったっすね」

チェルシー「(気絶中)」


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