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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
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ほら、泣かないで、ね?

 ウィンがラナと別れ、丁度森の中を彷徨っていた頃。


 エルシーは暗い藍色のエプロンドレスを翻し、かと言って枝に引っ掛けたりなどすることもなく森の中を駆けていた。

 この森の中心、巨大な老木を目指し、一心不乱に脇目も振らずに駆けるエルシーはそのうち彼方此方に張り出した木の根などに足を取られて転んでしまいそうな物だが、森の木々や草花はまるで彼女を傷つける事を恐るかのようにザワザワとざわめきながら道を開ける。


「どうして……っ!」


 切れ切れの息の間に悲鳴じみた声を上げ、薄い蜂蜜のような色の瞳には涙が滲む。


 エルシーはハーフエルフだ。

 そしてただでさえ敬遠されがちなハーフエルフである彼女の母親はエルフたちの間で黒児と呼ばれ、恐れられると同時に忌み嫌われる存在であった。

 そうであるからして、エルフたちから受ける扱いなどは想像に難くない。

 割と歳を食い酸いも甘いも知り尽くしたような者や、人の街に冒険者などとして出て行ったことがある者などは普通に接してくれる。

 だが、そう言った者たちの目の届かない所でエルシーを虐げる者が居ない訳では無いのだ。

 村長であるレイフはなるべくそういった者達に出会わないで済むように館で預かってくれている。

 それでも、余り家の中にばかりいるのも良くないため、外に出なければならない時などには冷たい視線に曝され、無言の威圧や酷い場合には暴力を振るわれる事もあった。

 その度にエルシーはこうして森の中を駆けて世界樹の分け木である千年樹と呼ばれる大木の元へと向かった。


 母親には心配をかけたくはなかった。


 其れは母親が病で死んだ(・・・・・)時も同じだった。


 大木に背を預け、座り込むと何時も何処からか声が聞こえた。

 その声の主は姿を見せなかったけれど、その声は酷くエルシーを安心させる慈しみに満ちた物で、その声を聞くだけでエルシーはささくれ立った心が癒されていくことを感じた。


 しかし、母親が死んだ直後から、その声はパタリと止み、まるで入れ替わりでもしたかの様に死んだはずの母親が現れた。

 始め、母親の姿を見たエルシーは幼さ故、あり得ないはずの光景を前にしても、特に疑問も持つ事もなく酷く喜んだ。

 だが、少しずつ、少しずつ、違和感を覚えていった。

 とても優しく、何を言われても顔色一つ変えずにいた母親が、時折酷く冷たい笑みを浮かべる様になった。

 誰にも私が居ることを教えてはいけないわよ、そうラナに言われたエルシーは彼女の存在を誰にも話さなかった。


 そんなある日、一人目の犠牲者が出た。


 捻じ曲がった真っ黒な木の根らしきもので貫かれたその男は、以前エルシーを殴った男だった。

 其れから、毎日の様に犠牲者が出るようになった。

 そしてその誰もが、エルシーが以前、泣きじゃくりながら声の主に今日は誰に何をされたかと語った者達だった。

 流石のエルシーも幼いとはいえ、これが異常な自体であることには気が付いていたし、恐らくその原因はとっくの昔に死んでいるはずの自らの母親にあるのであろうことにも薄々感じ取っていた。

 そして、今日自分が母の元へと案内した男も、きっと母のターゲットの内に入ってしまっているのであろうことも。


「どうしてこんなことにっ!!」


 上がった息を整えるのも煩わしいとばかりに声を上げる。


 私は別に復讐してくれだなんて一言だって言っていないのに。

 どうしてこんなことするの。

 私は誰かに話を聞いて欲しかっただけなのに。

 辛かったけれど、それでも確かに私は幸せだったのに。

 どうしてこんなことになったの。

 私は何処かで間違えたの?

 誰かが死ぬのはもう嫌、嫌なのに。

 私が悪い子だったから?

 誰か、誰か教えて。

 私を助けて。


「エルシー」


 名前を呼ばれて心臓が跳ね上がる。

 慌てて振り返ると、そこには何時もと変わらぬ病的に美しい母の姿。

 母は美しい顔に慈愛の表情を浮かべて微笑み、一歩、また一歩と歩み寄り、手を差し伸べる。


「愛してるわ、エルシー。

 だって貴女は可愛い可愛い私の娘なんですもの」


 ああ、駄目だ、………逃げられない。


 吸い込まれそうな程に暗い瞳がエルシー捕らえて離さない。


「お……かあ、さん」


 エルシーの瞳が揺らぎ、途切れ途切れの声に怯えが滲む。


 ラナは、お母さんは狂っている。

 分かってはいても、エルシーに逃げるという選択肢は用意されてなどいなかったのだ。

 死のうが狂おうが、例え彼女が魔王に成り果ててしまったとしても、やはり彼女はどうしようもないほどに自らの母でしか無いのだから。


 そして、エルシーが差し出された手に自らの手を伸ばしかけた時、ラナがハッとした様に顔を上げ、何処か遠くを凝視して、それから忌々しそうに表情を歪める。


「結界は破られたのね……」


 ラナは差し出していた手をエルシーの頭に乗せ、優しく撫でる。


「あなたの事は私が守るから、ほら、泣かないで、ね?」


 エルシーは何も言えないまま、ただ頷くことしかできなかった。

何か色々酷いなーとか読み返して思うけど書き直す気はあんまりないとかいうクズっぷりです。ハイ。

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