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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
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んだとコラ

 一方、ラナが立ち去り、たった一人で取り残されたウィンは、節くれ立ち、捻じ曲がりながらも屹立している木々の最中に、どうしようもない孤独感と焦燥によって喉を締め付けられる様な息苦しさを感じていた。

 暗く、狭い場所に閉じ込められた時の様なじわじわと這い寄るような恐怖が段々と込み上げ、走った訳でもないのに呼吸が荒くなっていく。


「……何だ、この感覚」


 魔力の感知などの能力に欠けるウィンからすれば知る由もない事であったが、この時ラナは、ウィンをいずれ邪魔になるであろうが真正面から挑んだところで勝てそうにもないと判断し、結界の中に閉じ込めようとしていた。

 それを閉所恐怖症の本領発揮と言うべきか勘が鋭いと言うべきか、ウィンは本能に近い物で閉じ込め(・・・・)られかけ(・・・・)ている(・・・)という現状を確かに感じ取っていた。


「ウィン!! 何処なの?!」


 そんな時、ウィンはふと木々ののざわめきに紛れてアリスの声が聞こえた気がして顔を上げ、もう一度聞こえはしまいかと縋るように耳を澄ます。


「ウィーーン!!」


 今度はしっかり聞こえた。

 しかも結構近い。


「ウィンのアホーー!! バカーー!! マヌケーー!!」

「んだとコラ」


 酷い暴言に苦笑しながらも、ウィンはすぐさまアリスの声に向かって走り出す。

 先程までの恐怖はもう殆ど感じなくなっていた。



◆◇◆◇◆



「っ!? これは!!」

「……結界、みたいっすね?」


 アリスとアルフィーはウィンの元へ向かう途中、ラナが発動した隔絶結界の気配を感じ、歩みを止める。

 が、アリスは一旦止めた足を再び動かし、ある場所でまた立ち止まる。

 そこは、このままだと自分達まで閉じ込められてしまうかもしれないというギリギリの位置。





 そこでアリスは、____。





「ウィン!! 何処なの?!」


「ウィーーン!!」


「ウィンのアホーー!! バカーー!! マヌケーー!!」





 ____思いっきり叫んでいた。





「……ア、アリス……さん? そんなんで来るんすか……?」

「煽れば来るわよ。

 だってあの人ああ見えて結構喧嘩っ早いんだもの」

「へ、へえ……。そーなんすかー」


 凡そ淑女らしからぬ子供っぽい内容の罵詈雑言の羅列に、アルフィーは軽く頬を引きつらせながらアリスに問う。

 そして、帰って来た答えにアルフィーは考えることを辞め、己から問い掛けた手前無反応というわけにもいかずに軽く驚いて見せた後、アリスに聞こえない様にポツリと呟く。


「ちょっとは人間らしくなったのかなぁ」


 何せ彼の知っているウィルフレッド____ウィンはまるで命も感情も持たない人形のような幼い少年だったのだから。


「ねえ、アリスさん?」

「何かしら?」

「……今君が探しているのはウィルフレッド・ウィルコックスっすよね?」


 アルフィーがそう言うと、アリスは炎の様な色の瞳を真ん丸く見開いた。


「どうして……私はアレの名前を貴方に言ってなかったと思うのだけれど」

「いや、僕達(・・)ね、あいつとは割と古い知り合いなんっすよ。……それこそあいつがロイドに引き取られる以前、こんな子供の時からの知り合いでしてねぇ。何かと気にかけてるんっす。君もあいつの近くにいるなら知ってると思うんすけど。……誰に似たのか色々と危ういっすからね、あいつは」


 アルフィーは手の平を地面と水平にして腰のよりも下の、丁度太ももの付け根の辺りでヒラヒラと振りながら、少し困った様な、それでいて何処か面白がる様な含みのある笑みを浮かべると、それに、お二人さん結構有名ですし。と付け足した。

 と、丁度そこへウィンがガサガサと茂みを掻き分けてやって来た。

 ウィンはまずアリスの顔を見ると、少しだけホッとしたかの様に目元を緩め、それからアルフィーを見てぎょっとした様に固まった。

 どうして此処にこいつが居るのか。そんな驚きを顔面にありありと浮かべたウィンは暫くの間、思考停止したように立ち尽くしていたが、二度、三度と瞬きをすると、「どうしてここに」と、今度は思わずと言った様子で口に出した。


「やぁ、久振りっすね〜元気してたっすか? こっちには色々と噂が流れてきたりはしてたんっすけどねー! いやー、生のアリスさんが噂以上の美人さんでびっくりしたっすよー!! このこの〜、意外と隅に置けないっすねぇ〜」

「……アリス、すまん。こいつ昔から馴れ馴れしくてな。鬱陶しかったらいつでも言ってくれれば俺が吊るしとくから」

「あ、えと、はあ」

「ガ、ガン無視されたっすか!!?」


 アルフィーが騒ぐのに対し、ウィンは無視を決め込んだが、余計に煩くなったので、無視することを諦めたらしく鬱陶しそうに顔を顰めると、半眼でアルフィーを見、呆れた様な口調で言った。


「お前はいい歳して相も変わらぬ煩さだな……」

「開口一番それっすか!!」


 酷いっす!あんまりっすよ!! そう言ってよよよ、と嘘泣きしながらくずおれるアルフィーを、じとっとした目で眺めるウィン。

 謎のテンションによって行われる謎の掛け合いにいい加減ついていけなくなったアリスは、結界の事など最早すっかり頭に無い二人を放置し、閉じる寸前だった結界を手早く分析、解体し、二人のテンションが通常通りになるまでの間、暇を持て余して所在無さげに立ち尽くすのであった。

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