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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
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……多分な!!

「はぁ…ひっでえ目に遭った」


 ウィンは一人、長老の館の外に出てとうの昔にとっぷりと日も暮れてほぼ真っ暗になったと言っても過言ではない様な夜道を何とは無し歩いていた。散歩、或いは散策などと言ってもいいだろう。

(因みにウィンは夜目が効くためほぼ真っ暗でもあまり問題はない)


 何故こんなことをしているかといえば、別に夜風に当たりたかったとかそういうわけではなく、単なる機嫌の悪いアリスからの避難である。


 ウィンは(個人的に)アリスの機嫌があまりよくない時は落ち着くまで離れるのが一番だと思っている。何せウィンにとっては女心とは良く分からないものであり、何時(いつ)何時(なんどき)逆鱗に触れるが分かったものではないのだ。

 こういう時に下手に何か言うと恥ずかしいエピソードや耳が痛くなるようなエピソードなどを怒涛の如く暴露し出すので、ウィンはそういうところがなければモテるんだろうに、などとかなりお門違いな感想を抱いていたりする。当然口に出したらまず(あぶ)られるのでそれを言ったりはしない。


 適当にぶらつきがてら見張りも兼ねるつもりで周りを多少は警戒しながら歩いていると、ふと、視界の端で何かが動いたような気配を感じ、そちらを注視すると、鬱蒼とした暗い夜の森の最中に輝くような碧色がちらりとだけ見えた様な気がした。

 ウィンは始め気のせいかとも思ったが、一瞬だけ木々の間から垣間見得た碧色が何故か見覚えのある物、しかもごくごく最近見た物のように思えて暫く悶々としていた。が、(やが)て気になって仕方がなくなってきた為に、その碧色が消えた方へと歩を進めてみることにした。


 ウィンが碧色が見えたと思しき地点へ向かう為に森の中へと分け入り、誰かしら其処にいたのかどうか狩りの時と同じような要領で地面に残った痕跡があるかどうかを調べてみると、人らしきモノの足跡、それも真新しい小さく歩幅の狭いものが森の闇の中へと吸い込まれるように続いていた。


「何だってこんな夜半に……子供?いや、ゴブリンか?」


 そこでウィンの脳裏に昼間見た少女の頼りなげな面影が浮かぶ。確か彼女の髪も鮮やかな碧色だった。

 碧の髪はともかくとして、彼女は恐らく純粋なエルフではないのだろう。そもそも瞳の色が黄色のエルフなど見たことがない。


 黄色は風の派生である空からさらに派生した雷属性の色。雷属性は普通属性としては異端中の異端とも言っていいもので、土を除くほぼ全ての属性に通用する属性だ。まあどれに対しても弱点を持たない代わりにどれに対してもそこそこの威力しか出ない訳なのだが。

 そしてそんな雷属性は竜人族とごくごく僅かだが人族に発露する場合が多い物だ。エルフは風の属性をもつことも間々あるが他種族と交わる事無く、純粋な血を持つものが雷の属性を持つ事は人族と比べても更に稀有だ。

 つまり彼女は竜人族、もしくは人族の親からその雷属性を受け継いだ可能性が高いのだ。


「……まさか、な……見間違いか?

あんな子がこんな夜中に出歩く理由もないし。

 うーん、誰だか知らねえがここは一丁後を尾けるか?いや、でも一人で深追いするのもなぁ」


 本来竜をも単独で屠れるような男であるため別段悩む必要もなく追えばいいのだがそこはウィン、安全がどうのこうのとグダグダと悩んでいる内に別の気配を背後に感じ、振り返る。

 と、いきなり怒気を孕んだ罵声(のようなもの)が飛んで来た。


「おい、其処の貴様!人族の者、しかも黒児(くろご)がこんな所で何をしている!!」

「ん、何か用か?」


 とウィンが言うと弓を構え、ウィンを怒鳴りつけた男は警戒しつつも近付いて来る。


「何か用か?ではない。何をしていると聞いている」

「何って……俺ァ散歩がてら見回りしようと思ってな。

ってかクロゴ?って何のことだ。……あと気になったんだがエルフって常に弓矢担いでんのか?」

「見回りなら何故そんな所でしゃがみ込んで地面を見ているのだ。何か怪しい術でも使う気か?」

「いや、ここら辺に何かいた気がしたんだがな。ほれ、ここに……うん?」


 そう言って先程見つけた足跡があった場所を見ると、其処には何の変哲も無い地面が有るだけだった。


「ん?……何もないではないか」

「あっれー……おっかしいなぁ、俺の気のせいだったのか……?まあいいか。勘違いだわ……多分な!!」

「なっ……そんないい加減な」

「俺を疑ってた奴に言われたくはねえな、ってかお前俺が捕まった時も居たし牢屋から出してくれたのも確かお前だったような」

「ああ、そうだ。あとお前ではない、私の名前はトラヴィス。

トラヴィス・フェアフィールドだ。覚えておけ」

「ん、トラビスか、覚えたぞ」

「発音が違う。トラヴィ(・・)スだ、ヴィ(・・)だ、ヴィ(・・)。」

「うっせえな、わざとだよわざと。

分かっててやってるんだよ、お前があんまりにもお堅いんでな。トラヴィス。ほら言えるだろう?

あ、俺の名前はウィルフレッドな、ウィルフレッド・ウィルコックス。ウィルじゃなくてウィンって呼べよ。ほら、みんなそう呼んでるし違ってるとややこしいだろ?後さっき聞いたと思うだがエルフってのは常に弓矢持ってるもんなのか?それと黒児っつうのはなんだよ!!」


 ウィンはトラヴィスが名乗ると待ってましたと言わんばかりに怒涛の如き勢いで一息に長台詞を言い切り、ちょっとばかし満足気にトラヴィスを見返す。

 その若干笑みを含むドヤ顔に、トラヴィスは非常にイラッとさせられ、思わず「今更それを蒸し返すのか!!?」等と突っ込んでしまい、突っ込んだ後に苦々しげにその端正な顔を歪めたのだった。

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