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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
15/33

よろしく頼む

 勇者一行はエルフの里長に会うため、長い廊下を歩いていた。


 そしてその移動の最中、思わぬ所で暴露された趣味により、チェルはウィンとアリスの格好のからかいの的になっていた。


「……まさかあれだけ突っかかってきてたチェル自身がロリコンだとは世の中分かんねえもんだな」

「だからソレは誤解だと言っているだろう!!」

「少女趣味ね、分かってるわよ」

「確かに可愛いものは好きだがその言葉はどっちの意味で言ってるのだ!?」


 と、僅かに泣きが入り始めたチェルにナタリーが更に追い討ちをかけた。


「あ、因みにチェルの部屋ってそれはもうメルヘンチックなのよ。

 ピンクとかリボンとかレースとか縫いぐるみとか。」


 それを聞いた二人は真顔になり、顔を見合わせると微妙な反応を示す。


「……想像出来なかった」

「……まあ個人の趣味よね」


 ウィンもアリスも完全に面白がっている様だった。


「ぁぁぁぁぁああ!!ナタリーさまぁぁぁぁあああ!!?

 御二方がドン引きしているではありませんか!!!!なんて事を仰るんですかぁ!」

「様付けて呼ばないでって言ってるでしょうチェルシー?それにうるさいわよ」

「はい……」

「あらあら、しょげちゃった。かーわいーい!」

「ぅう……」


 チェルは顔を真っ赤にして大声で抗議したが、ナタリーに鋭く窘められ、ニヤニヤと笑うアリスにおちょくられ恥ずかしいのかついには俯いてしまった。



◆◇◆◇◆



 結局、流石に言い過ぎだと思ったウィンがアリスとナタリーを窘め、なんとかチェルを慰めている内に全く緊張感のかけらも無い様な状態で里長の待つ部屋に辿り着いた。

 案内をしていた少女がドアを叩くとコンコンと軽やかな音が鳴り「入れ」とだけ重々しい声で応答された。


 ドアを開けると、そこは沢山の椅子と長机が並び、俗に言う会議室の様な様相の部屋で、その中の一つに一人の男が座っていた。


「よく来てくれた。……そこに腰掛けてくれ、茶を出そう」


 待っていたのは人間の基準で言うとおおよそ20代後半から30代前半程度の見た目の翠の髪をした優男だったが、エルフの寿命は軽く人間の倍以上はあり、成長の速度も成長が止まるタイミングも人それぞれなので年齢を見た目で判断する事は出来ない。

 要するに大げさに言えば見た目が幼くとも実は500年ほど生きていたり、老人の姿でも100年程度しか生きていなかったりすると言う事だ。(流石に老人になるまで成長が止まらなかったというケースは途方も無く長いエルフの歴史の中でも数える程しか無いらしいが)


「初めまして、と言うべきかな?私の名前はレイフ・ロイ。

 知っているとは思うがここの里長をしている」

「初めまして私はナタリー・アーロン。勇者をやらせていただいています。」

「私はチェルシー・キングストン=バッキンガム。騎士だ」

「ウィルフレッド・ウィルコックス。冒険者だがいまは臨時勇者パーティー剣士って所だな」

「左に同じく魔導士のアリス・メラーズよ」


 互いに自己紹介を終え、暫しの間両者の間に沈黙が降りる。

 と、レイフが話の口火を切った。


「まず、ウィルコックス殿を不当に監禁した事については此方の落ち度だ。済まなかった」

「いや、気にしてねえよ。先に迷い込んだのは俺だしな」

「そう言ってもらえると気が楽になる」


 頭を下げてくるレイフに何と無く気まずそうにウィンがぶっきらぼうに気にしない旨を伝え、その事についてはアッサリと会話終了した。

 そしてナタリーが続けて質問をする。


「それで、異変についてですけど。教えてくれますか?」

「ああ、分かっている。恐らくはその事について聞かれるだろうとは思っていたよ。何せ霧を破ったあとメラーズ嬢が酷く訝しげな顔をしていた。聞きたいのはエルフが少ない理由だな?」

「話が早いわね」


 ウィルコックス殿を捕らえた事も僅かに関係するのだが、と言う前置きをしてから、レイフはここ暫くの森の状態を語り出した。


 内容を簡単に纏めると、


・ここの所、夜中にエルフが何者かに襲われると言う事件が多発する様になった。

・襲われた痕跡を調べても魔物の類の足跡は無く普通の人型の足跡しか見当たらない。

・襲われた者は悉くが首を締められたり胴を潰されたり貫かれたりして死んでいた。

・襲われている現場を見た者が一人だけおり、その者が言うには襲撃者は黒髪黒目の髪の長い女で巨大な植物の根の様なものを操っていたらしい。


 等の事であり、黒髪黒目と言う事でウィンに対して必要以上に警戒してしまったと言う事であった。


「恐らくは何らかの魔法だと思うのだが……如何せん我らはエルフなのでな。炎の属性に適性のある者が少ない上に森を気にしなくてはならない所為で対処するに非常に相性が悪いのだ」

「相手よりその属性に対する親和性が高ければ相手の魔法を乗っ取る事も出来る筈だけどそれすら無理だったの?今回は木属性でエルフの十八番(おはこ)でしょう?」

「情けない事に、……な」

「とりあえず俺はそいつの仲間だと思われたって事でいいのか?」

「そうだ。しかしウィルコックス殿はどうやら魂にある魔力回路の一部が欠落している様であったのでな」

「ただの剣士なら関係無いだろってことですか」

「ぶっちゃけてしまうとそう言う事になるな」

「……私には魔法云々の話はよく分からないのだが要するにその者を倒せばいいと言う事は分かったぞ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」


 話している間に何故かチェルの中ではとりあえずその襲撃者を自分達が何とかすると言う事になってしまっていた様で、「ナタリー!これは勇者初仕事ではないのか!!」などと言ってやる気にみなぎっている。


「……どうする?チェルは何かやる気見たいだけど」

「俺達はお前達に雇われた訳だしナタリーが決めればいいと思うが」

「ウィンに同じく、ね」


 ナタリーは少しの間悩んだようだったが腹をくくったのかレイフの明るい茶色の瞳を


「と言う事で、ご迷惑でなければ何か私達にお手伝い出来る事などありませんか?」

「エルフの事だ、外部の者の手を煩わせるのも悪い。

……と、普段なら言うだろうがもう我々だけでは打つ手も無い。我が同胞は数を減らす一方だ。勇者ならば我らに害をなす事もないだろう、奴を捕らえる為に手を貸して欲しい。」

「分かりました、よろしくお願いします」

「よろしく頼む」


 斯くして勇者ナタリーは初めて勇者として人々を救う為の戦いに身を投じるのであった。

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