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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
10/33

ウィンは逃げ出した!!

時代は3D(立体)なのです。

ドラゴン二体同時討伐。


ウィンはさも当然の様に笑ってその高みまで登って見せろと幼い少女に言い放った。


瞬間、空気が凍りついた。





そんなの無理だ、殺されるに決まっている。



チェルはそんな事を口走ろうとしたが慌てて呑み込む。


隣には張本人のナタリーが居るのだ。

恐怖心を煽る様な事はしてはいけない。


幼い勇者はこれからそのとてつもなく大きな差を埋めなければならないのだ。



「で、でもまず一体よね、それにそんなの才能が無きゃどうにもならないじゃない」



アリスも多少戸惑っているのかそんなことを言い出した。



「勇者に才能がないわけないだろう、仮にも精霊が選んだわけだし」



呆れたとでも言いたげにウィンが表情を歪める。がとても変な顔になった。


三人は危うく笑うところだった。

凍りついた様な空気が変顔のおかげか少しだけ緩む。



それに、とウィンがニヤッと笑って続ける。



「勇者とそのパーティーには精霊の成長補正がかかる。普通よりは強くなりやすくなる筈だ」



……言われてみれば、勇者の従者として選ばれてからは体の動きが何時もより少し良くなった気がした。


しかし…



「少し聞きたいのだが、何故ウィンはそこまで勇者に詳しいのだ?」


「……えーと、まあ知ってるもんは知ってるんだから仕方ねぇだろ」


「全く答えになってないよウィン」


「う、噂話で……」


「そんな噂聞いた事が無いわね」


「ぐっ……ぎ………」



いつの間にか女性三人(内一名幼女)に詰め寄られ、明らかに目を泳がせるウィン。


端から見ればまるでそれは三叉をしていたのがばれて問い詰められて居るとでもいうかの様な状況。


__全く、女は勘がいいからどうにも苦手だ。


勘もへったくれもないのだが、ウィンはどうやって誤魔化そうかと目をそらしながらもグルグルと考えていた。

しかし、残念ながらウィンの頭では限界までひねり上げても大した案は出ず仕舞い。


が、一つだけ方法が無いでもない。



(ッチ……こうなったらアレしかねえか…)



心の中で悪態を吐いて三人にばれない様に三人の隙を伺う。




---------------------


ウィンはどうする?


たたかう どうぐ


じゅもん →にげる



ウィンは逃げ出した!!


---------------------



そう、最後の奥の手とは持ち前の身体能力をフル活用した逃走である。



◆◇◆◇◆



……嗚呼。

またか。



アリスはあっという間に逃亡したウィンが消えた方向をぼんやりと眺めていた。



ウィンは唐突に垂直跳びで近くの木の枝まで跳び、それを掴んで腕力だけでよじ登り、さらに跳んで木から木へとまるで猿の様に飛び移って文字通り飛ぶ様に逃げ去った。



それを見てアリスは、過去に何度も同じ様な事があったことを思い出す。



大抵は聞いたことは何でも気軽に答えてくれるしよく喋るウィンだったが、勇者が絡むと途端に挙動不審になるのだ。


その上、異常なほど細部まで勇者の装備の性能や特徴などに詳しい。

その癖、勇者の国には行きたくないと言う。


また、どこで誰に勇者の情報を聞いたのか問い詰めようとすれば先程のようにあっという間に逃げ去ってしまう。



信頼されていないのか、とか。

どうして話してくれないのか、とか。


そう言ったことを聞けばウィンは必ず少し悲しそうな、淋しそうな顔で笑って誤魔化す。



『お前は知らなくてもいい事だから』



そう言ってアリスの問いをのらりくらりと躱していく。


ロイドも何か知っていそうだったので訪ねてみたが、結果は同じようであった。



言えない。それは下手すれば命に関わるような重大なことなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。



なんだかんだ十年近い時をウィンと共に過ごしたアリスだったが、時たまこうしてウィンが逃げ出す度、アリスはその分だけウィンの事がよく分からなくなるのであった。

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