3言目 明かされる鍵
「マキ……」
僕は呟いた……。
目の前には、一枚の写真……。
母を亡くした依頼人、幸直子が持参したものだ。
そこに、母からの最期のメッセージが、写っていると言ったのだ……。
「マキ……」
僕は再び呟いた。
マキ。
これがダイイングメッセージ……
つまり、僕ら言葉探偵の、事件解決の鍵だった……。
「友人にマキという名前の人は、いなかったのですか?」
僕は念の為確認するが、
「いいえ……。一人も……」
依頼人は首を振るだけだ。
(まあ、そりゃそうだ)
(心当たりがはっきりあるなら、そもそも、ここに来ないわけで……)
僕は、うーんと唸る……。
そして、唸ってから、今更過ぎるー本当に今更過ぎることに気付いたーー。
「麗香……?」
麗香が、物音ひとつ立てないのである……。
まるで泳ぎ続けなければ、死んでしまうマグロのように、四六時中喋り続けるあいつが、であるー。
一体、何事だ?
雪でも降るのか?
「れ、麗香?」
僕が、心配になって振り返った時、
「うわわっ!?」
そこで第二の事件が発生していたー!
厳密には、二次災害と言うのだろうが……。
僕は、半永眠状態の幼なじみに、問い掛けた。
「お前……血……苦手だったっけ………」
気絶体は答えない……。
が、もはや、それ自体が答だ……。
直子さんも、それを見てギョッとしている。
「少しお待ち下さい。彼女は、血が苦手なものでして……」
僕はそう弁解すると、洗面所でタオルを濡らし、ソファーに横たわる麗香の額にあてた。
まったく、この幼なじみは……。
普通なら、こう苦笑いするところだろう……。
けれど、僕の唇は、そんな風には曲がっていない。
唇は一文字に結ばれ、密閉された口内からは、激しい歯軋りの音が漏れた……。
一般は、憐れみに染まる目も、それだけでない、何かごちゃ混ぜだった……。
(麗香……迷惑かけて、すまない……)
言葉探偵が、"探偵"たる理由………
それは麗香でないーー
この僕にあるーーー。
どうも! 作者のまきろん二世です!
『言葉探偵』3言目、楽しんでいただけましたか?
ここまで、計4回更新したわけですが……
なんと………
言葉探偵らしさ0という………(汗)。
正直、言葉探偵ってなんぞや、と思ってる方が、多いかと思います。
でも、ご心配なく。
ここまでは、物語の都合です。
次回からは、ようやく、言葉探偵始動といった風になる予定でいます。
なので、もうしばしのお時間を……。