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2言目 不安ながらの初めの一歩……

 苦労してまとめた事件の概要は、以下のようなものだった。




去る4月8日の日曜日午後、依頼人幸直子の母、幸詩織(43)が、自宅の庭で頭から血を流して、倒れているのが発見された。

遺体は、うつ伏せの状態で、左手を前に投げ出し、右手を頭部の血に染めて倒れていた。

凶器には、近くに落ちていたレンガが使用されたと思われる。が、レンガから指紋は検出されておらず、ここから、被害者の上にあった棚よりレンガが落下して、頭部に直撃したという事故死も否定できなくなっている。

また、当時、家では依頼人の高校入学を祝ったパーティーが行われていて、招待客が複数名いたことが分かっている。





 なんか……本物の調書っぽいなww。



「うーん、なるほど……」

 直子さんの説明を聞いてポカンとしていた麗香に、ノートを見せてやると、納得したように頷いた。


 押し寄せる感情の津波を吐き出せたからか、直子さんは、少し落ち着きを取り戻していた。けれど、万全とは言えないようで……

「あ、あの………」

 直子さんは、もの言いたげに視線を泳がした。

「どうしました?」

 麗香がまだノートに見入っているので、僕が対応する。

「こ、ここって……言葉、探偵………ですよね………」

「ええ、そうよ。言葉の謎解きみたいな事件が……得意かしらね」

 ノートから顔を上げて、麗香は楽しそうに言った……。

 それでも、最後が若干詰まったのは、これが初依頼であり、当然、言葉探偵の特徴的な活動が未知数で不安だからだ。



 そんな状態で僕も無性に心配になる。

 が、ここは麗香に任せる他ない……。

 なにせ、言葉探偵が"言葉"探偵たる理由は、僕でなく、麗香にあるのだから……。



 僕の期待が伝わったのか、急に元気溌剌となって、麗香は言ったー。

「駄洒落がらみだったら、もっといいわよ! どんと来いって感じよ!」

 僕はDon‘t来いだけどな……。

 や、そもそもそんな事件、Don‘t comeか……。

 僕の想像通り、直子さんも「いや、駄洒落は……」と狼狽している。


 ちなみに、言葉探偵が"言葉"探偵たる理由は、紛れもないー



 この麗香の駄洒落好きである。



 幼い時から、布団が吹っ飛んだとか、アルミ缶の上にあるミカンとか、もはやオヤジも言わないオヤジギャグを一人でかましては、一人で爆笑していた……。

 そんな腹を抱えて笑い転げる姿は、端から見るとイタイタしいことこの上なく、「お腹いたい〜〜〜」と泣きつかれる度に、こちらは頭がいたくなった。

 あまりにうるさい時は、麗香にキャベジンを勧めたが、僕はその度、バファリンを呑んで胃痛を起こした。それで、結局、僕がキャベジンを服用する羽目になるのが毎度のオチだった……。




 いや。極めてどうでもいい。しかも、最後、僕の失敗談になってるし……。


 重要なのは、言葉探偵が"言葉"探偵たる理由が、麗香の駄洒落好きにあるということだけである。





 直子さんは、しばらくオロオロしていたが、駄洒落駄洒落と騒がしい麗香を僕が取り押さえて静かにさせると、再び口を開いた。



「駄洒落ではないのですけど……ダイイングメッセージが……」



「「ダイイングメッセージ……」」


 興奮気味だが、どこか低く抑制された、二人の声が重なる……。


「は、はい……」


 依頼人直子さんは、か弱く返事をする……。そして、震える手でスカートのポケットから財布を出し、そこから、一枚のスナップ写真を取り出した……。



「これです……」



 そう言って、ソファーの間のテーブルに、静かに滑らせる。



「これが……母からの……最期のメッセージです………」



 麗香は少し前屈みになって、僕は小テーブルに歩み寄って、その写真を覗き込んだ……。





 写真には、血濡れの右手と割れた頭部、花壇の端と花の一部、そして中央にーーー













 問題の血文字が、写っていた……。












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