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半年を経ていざ!

東京は渋谷から電車で30分、さらにバスでもう20分行ったところに、その探偵事務所はある。


探偵事務所ーと言ったところで、実は単なる一軒家なのだが、その自室にて、今日も彼女は依頼待ちだ。



「ねぇ、何か依頼ないわけ?」



彼女は欠伸しながら、僕に尋ねた。手は菓子へと向かっている。


それに対して、僕はー


「ないね。完全に0」 と、冷たく言い放った。


するとーー


バコン!


フライアウェイした菓子の空き箱が、頭に命中。


続いて



「どうして、0なの!? あんた、売り込みやってんの!?」



所長サマサマ激怒。


それで、すかさず



「はぁ? ちゃんと、やってるけど?」



と僕も逆ギレ。




一挙に事務所は、戦場と化した。




「やってない! サボってる!」

「んな訳あるか?! やっとるわ、ちゃんと!」

「目が泳いでる」

「濡れ衣だ!」

「じゃあ、あたしだけを見て」

「さりげなく、告白すんな!」

「そんな目で、あたしのこと見てたの?!」( 鳥肌)

「あ、いや、そういう訳じゃ……」

「お巡りさーん!」

「誘導尋問だ! 虚偽の自白だ!」

「疑わしきは、とりあえず、罰す」

「とりあえずで、法を曲げるな! これで探偵とか、アウトだろっ!? つか、だから 、依頼ないんだよ!」


僕は、とち狂ってる幼なじみを激しく罵倒 する。

が、それでも、彼女はめげずに言い返した。


「それにしたって、開業半年で、依頼0っておかしくない?」



……衝撃の余りに、心臓が止まった読者がいたら、ご冥福をお祈りする。


そう、この幼なじみ、山田麗香が開いた探 偵事務所は、開業から早半年。

その間、累計依頼件数0と、世界記録を絶賛更新中だ。


その半年間、僕が売り込みに売り込みを重 ねたのは、言うまでもない。

不本意ながら、引き受けた仕事は、完遂せずにはいられない質なのだ。それは、幼なじみの強制参加でも変わらない。


ここ半年、来る日も来る日も、ブログやテ ィッシュ配りで頑張ってきた。

暑い日も寒い日も、雨にも負けず風にも負 けず、頑張った。


しかし、気付けば、秋は釣瓶落としの如く過ぎ去り、関東の冬はろくになく、学年末試験も終わり、先日高二の始業式が行われていた……。



あっという間の半年だった。



二人で語らいながら、紅葉狩りをした時に 、まさか花見をしながら同じことを話すな んて、想像してただろうか?




ともかく、どうあがいても、依頼は0だ。




広報の僕が、抜かりなくやったはずなのに ………これだ。





そしたら、 もう、 原因は

一つしかない…………。



「麗香……。やっぱ……このコンセプトが、 分かりにくいんじゃないか……?」



僕がそう言うと



「ふん。有り得ないわ!」



麗香は鼻で笑って却下した。


僕はその態度にイラつきつつ、依頼のメールをチェックする。





ーが、当然

















依頼は0だ。






















そりゃそうだ。こんな探偵、聞いたことな い。



僕は、更新のために立ち上げたブログ管理者の事務所名に、眉根を寄せた。


これで来る方が、どうかしてる……。


いい加減、幼なじみの児戯も終わらないか なぁ……。




僕が、くだらないごっこ遊びに、

我慢の限界を感じた時ー






























ピンポーン



















……。
























…。

















いや……まさか………(汗)。
















「和博……」

「何だ?」

「チャイム……」

「……それが、どうした?」

「どうしたじゃないわよ。鳴ったわよ!」

「そりゃあ、まあ、あればなるでしょう……」















……。















「か、ず、ひ、ろ。あんた、こ、ろ、す、 わ、よ」

「あ、はいはい!行きます、行きます、行ってきまーす(大汗)」



僕は、黒オーラから逃げるように部屋を転がりでると、二、三段飛ばしで階段を駆け降り、玄関のドアを開け放った。





そうだ、依頼とは限らない!


宅配の可能性もある!





僕は、児戯からの解放を願って、ドアを押し開けたー。









開け放たれたドアの向こうには、春のどんよりとした曇り空。


道向こうの桜の老樹は、雨に濡れ、混じり始めた葉が、黒々と光っている。


庭の草木も怪しくてかり、そんな中、咲き誇るジューンベリーは、白い光を投げかけている。




その光の下、少女は雨に濡れて立っていた 。




クロネコでなかったことに失望する一方で 、広報の努力が報われたことには、ホッとした。





「……」

「……」


少女は無言だ……。

僕も、あきらめと報われの喜びのもと、困 惑して固まってしまった……。



互いが黙り、沈黙が続く………。



それを先に破ったのは……



「いらっしゃい。言葉探偵にようこそ」



……我らが所長、山田麗香だった………。


























かくして、前代未聞の珍妙探偵ー



言葉探偵、第一の事件は、

幕を開けたのだーー。






































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