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2章 石の城

いよいよ旅立ち。

2章 石の城

翌日、ウェールとユウカに朝食を出しながら、俺は二人にきいた。

「なあ、俺もおまえたちの旅に同行させてくれないか?」

二人は驚いて、顔を見合わせたが、やがてこちらに向き直った。

「おれたちは別にかまわないけど、いいのか?長旅になるぞ?」

「こんなところにいるよりマシさ。」

もう長旅の覚悟はできている。それに、昨夜のうちに準備は終わらせた。

「まっ、人数は多いほうがいいな。ところで、準備はできたのか?」

「もちろんだ。」

ユウカの問いに、俺は短く返した。

 朝食を終わらせ、俺たちは出発した。


 荒れた土地をしばらく歩くと、町が見えてきた。

 街は2種類あり、下層階級の人々(平民)が住む街と、上層階級の人々(貴族)が住む街がある。ここルンドの町は下層階級の町である。

 下層階級の町とはいっても、活気づいていて、にぎやかだ。

「すごいな。1年前はさびれてたのに。」

不思議そうな顔をしながらユウカが言った。確かに、以前はこんなににぎやかではなかった。すると突然、

「ユウカ様ー」

子供が何人かこちらに走ってきた。

「ん?なんだよお前ら。」

ユウカには思い当たる事がないようだ。というか、なぜ『様』がついているんだ。

「ユウカ様はこの町にいろいろしてくれたんでしょ?」

「ユウカ様のおかげで楽しい町になったんだよ。」

子供たちは口々にいった。ユウカに憧れの目をむけている。

「おっ、お前らあの時のガキか!こんなにでっかくなりやがって。分かるわけないだろ。」

俺には会話の意味がわからなかった。ウェールは眉をひそめていたが、やがて何度かうなずき、納得したような顔になった。

「おお、ユウカ様じゃ。ユウカ様がおられるぞ!」

子供たちの声に気づいた老人が叫んだ。嬉しくてたまらない、といった様子だった。

「ユウカ、お前人気者だな。」

俺が皮肉っぽく言うと、ユウカよりも先に子供たちがいった。

「誰?この人たち?」

「金髪の人がウェールで、黒髪の人がジンだ。二人ともおれの仲間さ。」

ユウカは子供たちにそう紹介した。『仲間』という言葉に、俺は照れくさくなった。

「ほう、ウェール様とジン様ですか。ささ、どうぞこちらへ。」

俺たち三人は民宿のようなところへ案内された。長いこと歩いていたので、とりあえず休んだ方がいいだろう。疲れた体では、アクシデントが起こりやすいからな。

「なんでユウカをしってるんだ?」

俺は誰となくきいた。

「以前、この町にいろいろ寄贈したからな。」

ユウカが、懐かしがるように言った。小さな町にしては豪華な料理が運ばれてきた。

 すでに日は暮れかけていた。明朝に上層階級のファオスへ行くとして、今日は休むことにした。しかし、この町を発展させる手伝いをするなんて、と俺は内心ユウカに舌を巻いた。


翌日、ルンドとファオスを隔てる壁の前へ行った。前までは限られた人しか通れなかったが、城が石化してからは一般通行ができるようになっていた。

 ファオスは貴族が住んでいるだけあって、豪華で壮大な建物ばかりだ。そんな街を歩いていると、二人の女性が話しかけてきた。

「あれ?ユウカじゃない。」

茶髪でエメラルドグリーンの瞳をした少女が言った。姿はなんだかユウカに似ている。

「マリンにキララか。久しぶりだな。」

ユウカに似たマリンと、20代くらいで赤っぽい髪にグレーの瞳をしたキララは嬉しそうな顔をした。だが、ユウカは声も表情も嫌そうだった。

「調子はどう?ユウカ。あっ、それともか・・」

「ユウカでいい。」

キララの言葉をユウカは遮った。キララが言いかけたのはユウカの別の呼び名だろうか。『か』ではじまるあだ名、といったところだろう。

「ねえ、ユウカ。後ろにいる黒髪の人、ジン将軍?」

「ああ、確かにこいつはジンだけど・・・って将軍?」

ユウカは驚いて振り向いた。俺の方が背が高いので、見上げる形になる。

「今は城が機能していないからな、『元』将軍だ。」

これには4人全員が驚いていた。今までそんな事を言っていないのだから当然である。

「たまたまその時バイオ諸島にいてな。戻ってきたときにはすでに城が石になってた。」

 あの時はさすがに驚いた。気が狂ったかと思ったほどだ。

「すごいわねー、将軍様連れてくるなんて。まさか、『かっさらってきた』とか言うんじゃないでしょうね?」

「こいつが勝手についていきたいと言ったんだ。しかも、なんでかっさらう必要がある?」マリンは感心したような口調だが、ユウカの声は怒りを帯びていた。かっさらうって俺を?そんなことを言われるなんて、ユウカは一体何をしてきたのだろうか。

 いままで成り行きを見ていたウェールが、ずいっと前へでてきて城の方へ歩き出した。

「あっ、ちょっと待てよ!悪い、おれら先いくな。」

慌ててウェールを追いかけ、先を急いだ。


 バイザー城は、1年前と同じ姿をしていた。違うのは観光地となったことで、中を見られることである。

 城の内部はいままでと変わらないが、立ち入りが規制されていた場所も入れるため、見たこともないものがあった。

「自分でやったことなのに、こうして見ると変な感じだな。」

ユウカがしみじみと言う。しかし、人々は二人のうちどちらがやったのか知らない。普通はウェールのほうがやったという意識が強い。ぐったりとした少女を抱いて出てきたら、誰だって青年の方を疑うだろう。俺も最初はそう思った。復讐までしようとした。だが、今では城を石にして正解だったのではないかと思えてきた。


 城の外へ出ると、異国の服を着た男性が呼び止めてきた。

「これはこれは。ユウカ様ではありませんか。もしよろしければ、この豪華客船でビル大陸まで連れていきましょう。」

ビル大陸は、このスム大陸より北にあり、また、ここよりも大きい。二つの大国といくつかの小国があるときいている。ただ、話がうますぎる。罠だろうか。

「俺たち、あまりお金を持ってないんだが。」

「心配はいりません。ユウカ様ほどの魔法使いを迎えいれたいと、陛下がおっしゃっています。お金なんかとりませんよ。」

男性は恭しく言った。いい話だが、何かひっかかる。

「外の大陸へ行けるのか?だったら行きたい!」

おもちゃを買ってもらった子供のように、ユウカははしゃいだ。まあ、誘われた本人が行きたいと言っているのだからいいか。ちらりとウェールを盗み見ると、どうやら同意見のようだ。

 俺たちは、男に連れられて、船に乗った。

伏線張りまくっているけど、回収しきれるか心配だったりする・・・

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