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第2話

「手続き終わらせてきた?」


「うん、試験はどんな感じ、なの?」


「試験は、ランダムに選ばれた3人と対局して、その内容で決めるらしい だからもし負けても受かる可能性がある」


「なるほど……」


 相手が誰なのかによるけど、変に緊張せずにベストを尽くすことが大切だと思う

 負けても内容次第で合格になるし


「ふふ……向こうじゃオンラインで、そもそも盤を使ってなかったから、こういうの初めて、リアルでやる対人戦」


「そ、そうなんだ」


 世界中に将棋に似たゲームあるって聞くし

 チェスが向こうだと主流なのかな?

 チェスのルール知らないけど、結構違いとかありそう


「藤澤さん、そろそろ時間なので対局お願いします」


 職員さんが声をかけてきた


「行ってくる、ね」





 初戦は、小学生の研修会員だった

 戦型は、僕とやるときはすごく個性的なのを選んでいたけれど


 意外にも、スタンダードな角換わりだった

 しかも、直近トッププロの間でめちゃくちゃ指されてる戦型


 向こうの子は少し対応できなかったのかな?

 エレナが序盤から相手の盤面の綻びを突いていってそのまま勝ち切った



 2局目は、幹事を務めるプロの人が直々に対局してくれた

 こちらも最近流行ってる形の相掛かりになった


 中盤までは普通に互角みたいだけど、終盤で負けた


 プロの底力なのか、はたまた地力の差なのか

 どちらにせよ、僕に足りないようなものを見せられた気がする






 休憩時間になったので、僕とエレナは連盟に併設されてるカフェでお昼を食べることにした


 それと、対局を見て気になったことがあるのでいくつか聞いてみることにする


「このカレー、辛くて美味しい」


「あのさ、なんであんな序盤指せたの?いつも僕とやるときはあんな感じじゃなくへんてこでめちゃくちゃなのに」


 エレナは少し考えてから、こう答えた


「わたし、向こうでAIについて研究してた 色々分野はあるけど、わたしの専攻はゲームに関すること その研究の一貫として、わたしは教授から将棋AIをおすすめされた」


「そ、そうなんだ……」


 ぱっと見、僕と年齢は同じくらいだけど、エレナのほうが年上だったり?

 現役なのか、卒業済みなのかわからないけど、少なくとも3つ以上年上かな?


「日本出身なのだから独自性を持たせたほうが学会で高く評価される……そう言われたから、そして、わたしはAIを作った」


「それで?」


「電竜戦に出させた、結果は予選敗退だったけど、それで論文を書いたりしたり、チェスにプログラムを応用させたりした」


 電竜戦とは、AIたちの棋戦

 人間同士で対局するように、AI同士で対局して優勝を決める


 かつては電王戦という人間VSAIという戦いもあったのだが、今は廃止されている


「だから、そのAIを使ってだいたいの戦法の序中盤の変化とか、指しちゃいけない悪手とかは覚えてる」


「そうなんだ……」


 お、思ったよりすごい人だったかも……


「3局目もがんばる、ね」


「じゃあ、なんで僕とやるときは……」


 先ほど指した角換わりと相掛かり

 これはプロ棋士の中で指される割合がかなり上位の戦法

 もちろん、AIもかなり好んでおり、研究もかなり進んでいるとのこと


 一方、僕とネットで対局する戦法……袖飛車やひねり飛車はあまり見かけないレア戦法


 それしか指してないから、そういうのしか指せないのかなと思ってたけれども、相掛かりとか角換わりとか普通に指せると知ってびっくりしてる


 多分、さっきの指したの見た感じだと雁木とか横歩取りとか、プロの間で指される頻度が高い戦型も普通に指せそう


「それは、わたしがやってみたいから、だよ、日本ここに来たのだって、棋士になりたいからだし」


 自由人だなって思った

 世の中はそんな人が成功するのかな?





 定刻より少しはやめに僕たちは戻ってきた

 1勝していて、負けた内容も途中まで互角で相手はプロ棋士なのでほぼ合格だと思う


 3局目の相手は誰だろう?

 なるべく弱い人がいいな

 僕が気になっていると


「新規研修会員の相手?あたし、やりますよ」


 聞こえ覚えのすごくある声がした

 そして、それがただの勘違いであることを、祈って




「この女の人、わたしたちのこと、すごく見てるね」


 見てるというより、睨まれてるとか、圧をかけられているほうが近い気がする


「なにか、やらかしたりした?あの人に対して」


「な、何もしてないんだけど……」


 この子、浅倉陽葵あさくらひまりは僕の幼馴染

 でも、今は僕とは絶縁関係にある

 昔はずっとずーっと一緒にいたんだけど、今はそんなことはない


「あの人、次の相手だと、嫌かも」


 エレナがそう口にする

 僕も嫌だ 絶縁中なんだし


 しかし、そんな願いは虚しく


「藤澤さん、次の相手はそこの……浅倉さんとお願いします」


 陽葵と対局することになってしまった



 陽葵は僕と同じ奨励会二段

 研修会を通過して、女流棋士にならずに奨励会に在籍している

 じゃあなんで研修会の例会に来ているのかは

 一部の奨励会員は、定期的に研修会に来て駒落ち対局をしなければいけないからだ

 今回は、力量を試すために平手でやるけど


 その担当がたまたま、陽葵という不運にぶち当たっただけ


「あの人、どんなの、使うの?」


「どんなって言われても……」


 なかなか言語化は難しいんだよね……

 これまで対局した経験や陽葵の棋譜とかから、多分……


「受け将棋、相手の攻め駒を全部断ち切る……あと、記憶力がいいから普通の角換わりとか相掛かりとかじゃ危険かも、変化手順かなり覚えてるし」


「なるほど、わかった」


 エレナはそう言い残し、対局へと向かっていった

 エレナは格上に一発食らわせることができる秘密兵器を持っているのかな?

 妙に自信ありげだったけど





「なんでいつも僕とやってるような将棋したの?」


 なんとエレナはひねり飛車をやってきた

 飛車を左側にぐいっとひねって後手側の飛車先を逆襲して、一気に攻めた

 しかし、早々に飛車を詰まされて、桂馬を取られ、攻めが途切れてから一気にバラされて終わった


 調べてもそんな前例が滅多になさそうな戦型で挑んだのだが、結果はボロ負け


 前の2局の結果で案の定合格したのだが、課題は多そう


「だって、これまでみたいな相掛かりとか角換わりだと、対策されてつまらなそうだから、記憶力いいって言われたから、未知の局面に誘導してみたんだけど……ダメだった?」


「ダメとはひとことも言ってないけどさ……」


 確かに、格上を倒すには有効な作戦かもしれない

 自分の土俵に持ってきて、一方的に研究ハメをして相手の時間を奪い、苦しめて勝つ

 でも、それをするには……


「……ちゃんと事前研究してる?」


「あんまりしてない」


「だろうね……すぐに攻めが切られてたし」


 ちゃんと事前研究をしないといけない

 相手が指しそうな手を予測して、対策をする

 基本的なことだが、そこをしっかり固めないと勝てないのだ


「ていうかさ、何歳なの?研修会には年齢制限あるんだけど、大丈夫?」


 少なくとも大学に入っていたと聞いている

 最速で中退したとしても、19歳以上……研修会入会時点では、かなりの高齢


 そもそも、中学生で女流棋士になる人だって最近増えてるし

 僕は中学2年生のとき、陽葵は中学1年生のときに奨励会に入った


「ふふ……知りたい?」


 少し笑みを浮かべながらそう言ってきた


「ま、まぁ……」


 女の子に年齢を聞くのは悪いことだとは知ってるけど

 でも、心配で……

 このまま、年齢制限で退会して、嫌な思い出にだけはなってほしくないから……


「15歳」


「は?」


「ことしで16歳になる、15歳だよ、ちなみに大学は卒業済み」


 お、同じ年???

 な、なんかすごすぎませんか?

 着払いで向こうの大学にでも、学会にでも送り届けたほうがいいんじゃ……




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