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第1話

 プロ棋士

 それは、すべての将棋指しの憧れ

 過酷な道のりを、駆け上がってきた人しか手に入れることができない称号

 そのプロ棋士たちの最上位のタイトルホルダー

 強者の中の強者しか手にはいらない、その称号


 僕、十六夜月宵いざよいつくよは、そんな存在になりたくて、その養成所、奨励会で……



「……負けました」


 負けまくっている


 これで今日の分は0勝2敗、前から合わせて6連敗

 4月から1ヶ月間勝利がない状態


 ……もう、どんなふうに研究すればいいのかも、よくわからない

 今の流行りの戦型とかは、プロ棋士の対局を見てわかってるつもりだけど

 いざ対局をすると、あっさりと負けてしまう


 対局した棋譜をなんとか思い出してAIに読み込ませても、ほとんど序盤から悪くなってそのまま負けてしまってる

 今の僕は、いいところや見せ場なんてなく、淡々と負けるだけのマシーンになっている


 昔はこんなんじゃなかったはずなのに……


 はぁ……いったいどうしてこんなことになったのか




『ルナ強いね、また負けちゃった』


 気晴らしに、ネット将棋のフレンドをボコすことにした

 ルナというのは僕のプレイヤーネーム

 相手はエレナという子

 やはりサンドバックというのは大切で、負けまくると自分を否定された気がして非常に悪い精神状態を下の存在を見るで緩和させることができる


 それにしても、エレナ、なかなか個性的な戦型を使ってくるな……

 ひねり飛車に袖飛車、なんか見たことない形の戦型や囲いを使ってきたり

 終盤で無理やり勝ってるけど、盤面をぐちゃぐちゃにされて限られた時間では読み切るということが上手くできない

 弱いくせになかなかウザいんだよな……


『そういえばさ、わたし、日本に帰国することになったから、会わない?』


 エレナはアメリカに住んでるらしい

 結構前に本人が話してくれて、かなり驚いた

 どうやら、向こうで色々研究や勉強などをしているらしい


『いいけど、どうして?』


『日本に知り合いいないし、東京とか初めてだし、あ、ルナの住み東京?』


『そうだけど』


『じゃあ、決まり 3日後、東京駅のお土産屋さんで待ち合わせ』


 そのあと、時間とかお土産屋さんの場所とかを決めて、僕とエレナは待ち合わせをすることになった





 3日後


 僕は待ち合わせ場所でエレナを待っていた

 すると……


「きみが……ルナ?」


 薄ベージュの髪を腰まで伸ばした、美少女が話しかけてきた

 年齢は……見た感じ同じくらい?

 ミステリアスな雰囲気で、肌白くて手足長くて、可愛い子だなって思った


「ふふ……お土産買ったあと、あそこのお店でおはなし、しよ?」


 誰にお土産を買うのか……

 エレナは、お店でなんかたくさんお土産を買っていた


「自分用のもあるから、ね、ルナも買う?」


 別に僕はいつでも買えるからいいんだけど……




「ていうか、何をしに日本にやってきたの?」


 ま、まさか、家族のお葬式とか……?

 たくさんお土産を買ってきてるとなると……

 でも、それならアメリカのお店で買えばいいんじゃ……


「わたし、プロ棋士になりたい、だから日本にきた」


「は?」


「師匠も用意してある、だからこのあと、将棋連盟に連れてって、だいたいどこにあるのかとか、知りたいから」


 奨励会どころか、研修会にも入ってなさそうな目の前のエレナ

 まずどこから突っ込めばいいのかわからないけれど、ひとまず連れて行くことにした




「おぉ〜……ここが、将棋連盟」


「うん、ここが将棋連盟、渋谷にあるよ、2回目からは自分でマップ見て行って」


「わかった、今日はありがと」


 僕たちは連盟の前でひとまず解散

 ほ、本当に大丈夫かなぁ?

 エレナ、棋士と女流棋士の区別も多分できてないと思うけど……





『月宵!4人目の弟子ができる!』


『なんですか師匠?深夜にお元気ですね 対局終わりでハイになってるからってそれを弟子にぶつけるのはやめてください』


 エレナと会った日、僕の師匠が深夜にも関わらず連絡をしてきた

 しかも文を見るに超ハイテンション

 対局に勝ってこれは浮かれているな


『可愛い可愛い女の子でさ、今度、月宵も会ってみなよ!』


『キモいのでやめてください』


 僕の師匠……京本崇矢きょうもとたかや七段

 師匠と聞いて50〜60代だと想像するかもしれないが、僕の師匠はまだ28歳

 まぁ、四段昇段すれば弟子取っていいらしいし、過去にはプロ入りしてすぐに弟子を取った人とかもいるらしい


 師匠と聞いて、稽古をつけてもらったり、住み込みで技術を教わるとか、そういうことを想像してしまうのかもしれないが、僕はそういう経験はない

 ただの書類上の師弟関係

 でも、ドライというわけではなく、こうして普通に話せたり、頼み事とかをすることができる関係

 ビジネスパートナーみたいなのかな?


『頼みたいことがあるんだけどさ、いいかな?』


『なんですか?無茶振りならやんないですよ?』


『その新しい弟子を今度の例会に連れてやってほしいんだ 初めての東京らしいから場所とか不安だと思って、月宵が一緒なら大丈夫でしょ』


 新しい弟子、多分、年齢的には小学生くらいかな?

 僕、あの年代くらいの子供、苦手なんだよなぁ……

 なんか生意気そうだし、プロじゃないからってすごく舐められそうだし

 そうなったら全駒して泣かせてやりたい


『というわけで、そろそろ寝るからお願いね 月宵もはやく寝なよ?』





 研修会というのは、奨励会の下部組織と言えば分かりやすいと思う

 色々条件はあるけど、そこで勝ちまくれば女流棋士、奨励会員の資格を得ることができるのだ


 待ち合わせの渋谷駅で僕は待つ

 いったい、どんな人なんだろうな

 可愛い可愛い女の子と聞いている

 どれくらい可愛いんだろう……

 棋力は大丈夫なのかな?

 なんか可愛いから棋力とか見ずにスカウトとかしてないよね……?

 な、なんか心配になってきた……


「あれ?ルナ?」


 あ、エレナだ

 エレナは渋谷に遊びに来てるのかな?

 そういえば東京は初めてとか言ってた気がする

 遊ぶ場所とか美味しい料理とかたくさんあるから、東京を楽しんでいるのかな?


「ん?エレナ?どうしたの?こんなところで」


「ま、まさか、ルナが……?ふふ、今日はよろしくね、連盟に、つれてって」


 ま、まさか、れ、エレナが……

 師匠の言ってた可愛い可愛い女の子の弟子って……

 え、エレナの顔出しはかなり整っていて可愛いなって、初めてあったときは思ったけどさ……

 まさか、そうは思わないじゃん


「わたし、きょう、研修会の試験受ける」


「ま、まさか、し、師匠の名前は……?」


「きょーもとっていう人、すごく強いらしいよ」


「えぇ……」


 ま、まさか自分の同門だとは思わないよ……


 エレナの棋力というのはわからないけれど、研修会の1番下のクラスでもアマチュア二段程度はある

 安易な気持ちで思い出受験をすると、容赦なくボコボコにされてしまう

 僕は人の棋力を測るのは苦手なため、どれくらいの実力はあるかは知らない

 でも、試験を通るか通らないかの怪しいラインにいるとは思う


「だ、大丈夫?受かりそう?」


「ふふ、へーき」


 いつも僕にボコされているのに、何か秘策があるのかな?


「ふふ……まだルナのお名前、知らない わたし、藤澤英莉ふじさわえり、よろしく」


「十六夜月宵、よろしく……」


 つ、次からエレナって呼ぶか、素直に名前で呼ぶか、どっちにしよう……

 いきなり名前呼びは馴れ馴れしいよね、でも、エレナ呼びは向こうが距離感じちゃったりしないのかな?


「つくよ……月、だからルナって名前なんだ」


「うっさい、適当に付けた名前だから意味なんてないんだけど?」


 ルナという名前は幼馴染が付けてくれた名前

 僕がプレイヤーネーム考えようとして、面倒になったから幼馴染が適当に付けてくれたんだろうけど


 そこに込められた意味とか、聞いてみないと分からない

 まぁ、今は聞けないんだけどさ


「エレナ、さっさと行くよ」


 まぁ、エレナ呼びが無難かな?

 呼び慣れてるし


 僕たちは、将棋会館に向かった



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