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上がる煙と割れる仮面7

 スカートにはシミができてしまったので仕方なく体操服姿で過ごすこととなった。


 (るい)は自身のプロモーションに満足していた。いじめに屈しない。それでいて彼女なりの解決法を提示する。


 先日の部室で姿見(すがたみ)に言われたことを思い出す。


「ぼくとはもう関わらない方がいいよ。たぶん標的にされるから」


 彼の見立ては正しかった。それは分かっていた。それを踏まえてでも涙が彼から離れる理由にはならなかった。


「昔のあなたならそうは言わないでしょ」


「いつの話だよ」


「小学生の頃の話かな」


「もうぼくは変わったよ。涙、きっとこれから君は嫌がらせを受ける。そしてその度に君の最も嫌う視線を受けることになる。それがぼくには耐えられないんだ。身から出た錆だ。君が被害を被る必要はない。それに…」


「そこまで。私は弱くないですよ。ここにいる奴らに知らしめてみせるから。あなたは親とは違うということを。ですから、いつもみたいに信頼して欲しいです」


 いつもなら言えない言葉も、他の目的があればスラスラと口を吐いた。きっと本心というのはそういうものなんだろう。それでも姿見は頷かなかった。だからきっと彼はもう自分に近づいてこないのだと、涙は理解した。そのまま静かに関係がフェードアウトしてしまうのではないかと恐怖した。


 だから抗う。すべてに抗う。彼が距離を取るのなら、私は倍の速さでそれをつめる。


「かずま!」

 姿見のいる教室に突撃する。彼はいたって平穏な生活をしていた。本を読んでいる彼の周りにはぽっかりと穴が空いていて、涙にはそれが懐かしくもあった。他の生徒の目線も気にしないで机をかき分け、彼に近づく。


一歩、また一歩。


「来るなよ」


「いやだ」


「どの面下げて、ここに来たんだ」


 少し調子が狂う。なんと言うべきだろうか、言葉にならない。涙は困った顔を作ってかずまの次の言葉を待った。心臓が高鳴って、それが私の失態を曝しているみたいだった。


「お前だろ、写真の出所は」


… … …どうしてバレたのだ。


 いや、それも時間の問題だっただろう。涙はすぐに冷静を取り戻した。これから口にするすべての言葉が空虚なものに思われようともいわなければならないことがあるだろう。


「そう。私。言い訳もできない」


 すべてが私の不始末。涙は常にそのことが頭にちらついて仕方なかった。高校一年生の春。これまで多くの失態を犯してきた彼女の中でも、いつも小骨のように喉に刺さっていた苦い記憶。どうにか楽観視してきた。姿見に近づくたびに、毛色の違う心臓の拍動が胸をざわめかせた。


「私は味方だから」


 でも、だって、実は。その類いの言葉は不適合。言い訳が口を吐こうとする。それを必死にせき止める。


 涙をにらみつける姿見の瞳は黒く漆のような艶やかなものだった。


 頭の中に、昔のかずまが顔を出す。

 涙は懐かしい記憶を思い出す。


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