昭穂と先輩1
「放送部の紀伊昭穂です。本日から我らが放送部に2人の新たなメンバーが加入したことを報告いたします。詳しい情報に関しましては玄関前ピロティーの掲示板にて掲載しておりますのでそちらの方をご覧ください。それでは今後ともよろしくお願いいたします」
放送ブースはジメジメとしていて梅雨本番にさしかかったことが肌身を通じて分かった。今年は梅雨前線がどうたらこうたらで大雨が続くと慧が言っていたのを思い出す。昭穂は朝の仕事を終え、灰色の雲がせめぎ合っている窓の外を眺めながら自分のクラスへと戻る。
明澄の構造は中央棟を正面からみて右手が中村派、左手が東風派と派閥によって分けられている。こんなバカな分け方をしなくてもとは思うがそうしなければすぐにドンパチやってしまうのだ。
校舎の窓ガラスが割れるのなんて当たり前で、ペイント弾の乱射、備品の窃盗などが相次いだせいでこのような形になってしまった。白の生徒たちはそれぞれ分散して配属されている。なので所属したクラスの色に染め上げられることも多々ある。
昭穂と慧は中村派、涙と姿見は東風派の棟にいる。そのおかげで両派閥がどのような動きを取っているのか、だいたいは把握出来ているつもりだった。
この仮初めの平穏は、どちらかが手を出せばすぐに崩壊する。それをのぞんでいるものはいないに等しい。みなどこかで茶番のようにこの派閥争いを演じている。あるものは親の意向で、あるものは暇つぶしに、あるものは大学推薦のため。明澄第三青雲の名が欲しいためにここに訪れた生徒たちは常に平穏を願っている。
だが、一部はそうではない。本気で改革を起こそうとしているものもいる。そして無関心な生徒たちも、たちまち隊列を組みシュプレヒコールを叫べば、所属意識が芽生え、それは強固な団結力へと繋がる。人はすぐにその場の色に染め上げられる。
だから染まらないように白の生徒を導く必要がある。
それが黛先輩の意思だ。




