燻る火種
昭穂たちが放送室で遊びに興じていたその時、新たな火種が燻っていた。
高崎架純は図書室の地域資料展示室にて書架越しにあいての姿を確認する。
「お疲れさま」
「君の見解はどうだ」
挨拶ぐらいしろよ。架純はこの人物が嫌いだった。必要なこと以上はなにも答えない。自分の組織の持っている情報も、思想も、相手から情報を抜き出すために必要であると判断したときにしか口にしない。
「どうって、たった4人ですよ」
「そうだ。たった4人。でも希少性には価値が生まれる。石ころでもおもちゃでも、取るに足らない存在に偽りの輝きを与える。それを手にしてまで彼らがしたいことはなんだろうな」
放送部は人数が増えたところでそこまで表向きの活動内容が変わることはないだろう。ただ彼らが情報面での行動を加速させれば話は別だ。この高校の情報伝達機関は放送部にすべて権限がある。スマホもパソコンもなにもかもが死んでいるこの学校では、校内放送より有効な伝達手段がないのである。そして噂では校内の防犯カメラの記録データもすべて保管しているとか。そこまでの権限があるのなら校内に張り巡らされた妨害電波のせいで今はないに等しいネット回線の大本も管理しているはずだ。
情報戦になれば厄介だ。
「さあ。私には狙って人数を少なくしているとは思えません。情報戦になれば面倒ですが、あの様子だと刃向かってくることもまだないでしょう。今のところ放送部は独立的な組織になっていますが、その人気はすべて有坂に依存しています。どれだけ意匠を施してもハリボテはハリボテです。が本物は意匠を施せばたちまち唯一無二になります。その輝きは色を与えます。もし放送部が人気をすべて引き連れて中村派に流れ着くのであれば私たちの負けは確定でしょう。まあ、有坂が本物であればの話ですが。私としてはその可能性さえなければいいと思ってます」
カチャカチャと音を鳴らしながらあいては私の話を聞き、そして本を選ぶふりをしながら言葉を紡ぐ。
「つまり、取るに足らないと言うことか」
「そうですね。危険と判断するには」
「でも、潰すんだろう。それは何でだ。私怨で物事を進めるのを私はあまり賢いやり方だとは思えないが」
「すべてこの学校を残すためですよ。それはあなたたちも一緒でしょ。今日だって同士がかわいそうだから来てあげたのにすぎません」
そういって小包を渡す。あいては無遠慮に包装を破き、中身を確認する。
「確認した。にしても小さな」
「いいから写真を出しなさい」
さっさとこんな場所から離れたいのだが主導権を握っているのはあいての方である。架純は苛立ちを隠さないなりに、頭の中は冷静であった。あいての目的は結局のところ放送部の解体だ。なら利害は一致している。今のところは従うふりを見せておいて最後の最後で寝首をかく。温めていた作戦は今もまだ息をしていて、卒業までの残りの時間ですべて終わる算段だった。
だが、放送部が動き出したら話は変わる。
「絶対に潰します。そして中村派の柳を降伏させます。あなたがどちらの勢力でなくとも、それは嬉しいことですよね」
それと
「放送部はきっとそこまで大きなことを企てていませんよ」
なんせトップが手綱も意味をなさない大馬鹿だ。
「どうせ、黛清司郎の敵討ちが目的です」




