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初めに

 明澄(めいちょう)第三青雲高校。その前進である東風館(とうふうかん)は有名大学への進学者多数、国内有数の進学校とまで言われた名門校である。いや名門校であった。


 過去にはここを出れば人生の勝ち組が確定されるとまで言われていたがそれも遠い昔のお話。古きを良しとする古株が幅をきかせ、柔軟な思考を失われた経営陣には現実を受け入れる余地などなくみるみる学生数は減少、進学実績も全盛期から比較すれば目も当てられないほどになってしまった。


 どれもこれも大人の怠慢が生んだしかるべき結果ではあるのだが、いつの時代も尻拭いをさせられるのは子どもたちと決まっている。東風館の生徒はいつの日か自由な校風を取り上げられスパルタもびっくりの劣悪な勉強システムを強要されていた。


 その時の生徒会長は「俺は科挙にも受かる」と発狂し、卒業式前日に蒸発。そして今は行方が知られていないとかなんとか。ここが底も底である。


 そんな感じで東風館は失ったブランディングの回復と憧れを取り戻すべく明澄第三青雲高校へとリブランドをし再起を図る。制服を有名デザイナーに注文し、週休二日制を取り入れ、厳しかった校則のほとんどを緩和した。恵まれた立地と広い敷地、校舎は古風でありながらも清潔感があり、学校行事も豊富。すぐに人気は向上。見たこともない上下を繰り返す推移は明澄の不安定さそのものを表していた。


 家庭環境が安定しなければ子どもの素行不良が目立つように、学校が不安定であれば生徒たちも不安定になる。そこに自由な校風が後押しをし、偏った主義、イデオロギーがらんらんと華やかな音を響かせれば明朗快活なバカものたちが各々の声を大にし始めた。そんな校風が今現在抱える問題の苗床となったのは明らかであろう。



 さて本題はここからである。

 今現在、明澄第三青雲高校の生徒は大まかに3分割されている。元をたどると話は10年と少し遡る。


 経営母体である学校法人明澄の起こした不祥事により、経営が悪化。取締役や役員の懲戒処分が行われたが口うるさい保護者ならびにOBOGからの非難の声は止むことを知らず、役員刷新の署名活動まで行われた。そこに追い打ちをかけるように校舎の老朽化問題が出てきた。なんせ歴史的に価値のある校舎であったため耐震工事を施工するのが遅れ、それが生徒の安全を保証できていないと火に油を注ぐ結果となった。その費用を捻出する自力なんてものはなく、議論は平行線をたどった。

 

 そこで大手企業へ権利譲渡の話が出始めた。中村重工がその第1候補であった。時代を見越した最先端のIT教育を取り入れ、高卒からでも即戦力となるような人材の育成を目的としておりかねてから学校運営に興味があったらしい。そしてその話は徐々に現実味を帯びていき、ついに明澄は中村重工からの資金援助を受けるようになる。すぐさま吸収されると思われていたが中村重工も学校運営のノウハウはなくいわばずぶの素人。改築費や設備投資などを考えるとリスクも大きく、このまま資金援助で踏みとどまるのかどうかを決めあぐねていた。


 そのいとまに学生の怒りは爆発した!


 今まで好き勝手に話を進めていたがそのどれもに学生の思いや学校としての考えはくみ取られておらず、「中村重工養育施設化反対」の旗の下に多くの生徒たちが学内での意見表明に乗り出した。それが東風派である。口を挟む機会がないのなら、聞かせてやればいい。扇動者はその言葉で生徒を駆り立て、己が主張に立派なひれをつけた。

 その東風派に対して反発したのが中村重工への経営権の譲渡を願う中村派である。2つの派閥は勢力を広げ、校内での運動はもちろんのことその声は外にまで響いていた。さながら小魚、されど強か。小さな声は重なれば大地を揺らし、免震構造が脆弱な鉄筋の校舎は縦揺れ横揺れされるがまま。そして教師までもがその狂乱に己が思想を片手に相乗りをし、生徒を混乱の渦へと(いざな)っていた。これぞ教育の敗北である。


 その狂騒に飽き飽きしていたのはなんの関心もない、"白"とよばれる生徒たちである。彼ら彼女らはその思想に差はあれど角の立つことを嫌い、そして声のデカい奴らを嫌っていた。


 そんな人々の希望の星となったのが放送部こと"明澄ブロウドキャスト"である。

 

 言葉の力を信じ、言葉に動かされるものたち。

 中立も中立。総合的ニュートラルに美徳を見いだし寛容と無関心を兼ね備えた事勿れ主義の先走り。


 この3つの派閥が学校の縮図であり、すべてである。


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