4kgの恋心
私は権藤 茜。17歳。あだ名は『ゴン』。
お父さんの影響で砲丸投げをやっているせいで、体型も性格も女の子っぽくないって言われる。だから、みんなが『ゴン』って呼ぶんだ。隼人くん以外はね。
グラウンドでストレッチをしていると、遠くから吹奏楽部の音が聞こえてきた。
「え、今日はそっちも練習?」心の中でつぶやく。
隼人くん、いるかな。あ、いた。やっぱりかっこいいな。
隼人くんが近づいてきた。挨拶しなきゃ。
「おはよう、茜ちゃん」
「おはよう、パヤ。調子はどう?」
「まあまあ。サックス、まだまだだね。でも、楽しいよ」
「そっか。頑張ってね」
隼人くんは軽く手を振って立ち去った。
パヤは隼人くんのあだ名。
本当は…私も「隼人くん」って呼びたいのに、なかなか言えない。
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放課後、花壇の近くで隼人くんと由緒ちゃんが楽しそうに話しているのを見てしまった。隼人くんが笑ってる。
「やっぱり、由緒ちゃんみたいなか弱い感じの子が好きなのかな…」
私は自分の前髪を触りながらため息をついた。せっかく頑張って前髪作ったのに、意味なかったな。
「私、嫌な女の子になっちゃった…」小さな声でつぶやく。
「こらー、ゴン。なんだその前髪は。くくれ、くくれー!」
顧問の声で我に返る。涙を拭って、前髪をぐしゃぐしゃにした。大丈夫、私には砲丸があるもの。
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インターハイの決勝。
昨日、隼人くんに告白された。「ずっと好きだった」って。信じられなくて、私は返事を保留した。「決勝が終わったら答えるから」って約束した。
砲丸を構え、深呼吸する。スタンドの先、隼人くんが大きく手を振ってくれている。
私、彼が私を好いてくれるのはわかってたのに、自分を信じられなかったんだ。
力がみなぎる。今までためてきたすべての力が体の中で爆発しそう。
「よし!」掛け声とともに、砲丸を放つ。
隼人くん … … …
「私もぉっ、好きーっ!」
私の4kgの恋心が、高く高く、遠く遠く、空へと舞っていく。




